昨今、企業の採用活動で注目が集まっている「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」。単なる採用業務のアウトソーシングだけでなく、特定領域のノウハウを持った採用のプロとしての役割に広がっています。RPO導入を検討する上で重要となる2つのポイントや自社にあったRPOサービスの選び方まで、長年RPOサービスに携わってきたプロフェッショナルである、InterRace株式会社の木津和さんにお話を伺いました。

RPOの導入が進む背景
RPOとは、Recruitment Process Outsourcingの略で、日本では「採用アウトソーシング」や「採用代行」と訳され、採用プロセスのすべて、もしくは一部をアウトソーシングするビジネスを指します。欧米では約20年前よりRPOのモデルが広まったと言われており、当初はアウトソーシングサービス(BPO)の一部として、オペレーティブな採用業務を請け負うことが主流でした。例えば面接など自社の魅力を求職者に直接伝える業務は自社で行うべきですが、スカウト送信や応募集計、求職者への連絡などは毎日確実に行うことが求められるため、外部に委託するといった切り分けがなされてきました。
日本の採用市場では、労働人口の減少によって採用活動が活況化し、エージェントサービスやスカウトサービスなど、さまざまな採用手法が乱立している状態に突入しています。そのなかで「どのサービスをどのように使えば採用につながるのか」といった専門的な知識が求められるようになり、急速に採用活動の複雑性が増しています。そのような背景から、RPOサービスも単なる業務のアウトソーシングではなく、自社ではカバーできない採用の専門領域でノウハウを持つ外部パートナーとして期待され、企業からのニーズが高まっています。
RPOの導入を検討した方がいい企業とは
企業側で採用目標を決めた後は、具体的にどの採用チャネルを使うのかを戦略的に決定し、スムーズに選考を進めるオペレーション体制を用意します。そのための「採用ノウハウ」と「体制」に不安がある場合は、RPOを検討した方が良さそうです。
採用ノウハウが溜まっていない
まず「採用ノウハウ」の課題ですが、採用環境が複雑化する中で、その道でずっとやってきた方は別として、効果的な採用チャネルを決めるのは非常に難しい業務になっています。なかには3年などのジョブローテーションで採用担当を任せている企業もあり、結果的に人事部門に採用ノウハウが溜まりにくい構造になっています。採用領域は非常に幅広く、正社員やアルバイト・パートなどの雇用形態、新卒・中途、メンバークラス・マネジメントクラスなどによって細分化され、採用ターゲットによって採用チャネルも異なります。これは2〜3年でキャッチアップできるものではありません。今後は採用の専門化やプロ化がますます進んでいくため、採用ノウハウの面で不安がある場合は、外部の専門知識を取り入れながら採用を進められるRPOがおすすめです。
人員体制が十分でない
もう一つは「体制」です。現在の体制が「何とかオペレーションを回している」という状態であるなら、PDCAまで手が回っておらず、採用活動の分析や改善ができていないことが想定されます。そのような企業が「採用数を増やす」「採用目標に足りていない」という状況になると、さらに追加工数がかかります。オペレーションを回すだけで精一杯になっていたり、課題を解決するための追加工数を自社で確保するのが難しい場合も、RPOの導入を検討した方が良いでしょう。
自社にあったRPOサービスの選び方

RPOの定義は曖昧で、幅広いサービスを含んだ言葉になっています。ただ主には、母集団が集めるための「採用コンサルティングサービス」と、オペレーションの部分を担う「代行サービス」の2つが主流。大手人材サービス企業を中心に、コンサルティングからオペレーションまで一貫して請け負う企業もありますが、特定領域のコンサルティングに特化したRPO企業もあります。採用代行にもさまざまなサービスがあり、スカウトメールの送信代行を行うダイレクトソーシングサービスだけでも、ここ数年で一気にその数が増加しています。他にもエージェントマネジメントだけを行う企業などもあり、RPOも専門性が進んでいると言えます。
RPOサービスでインターネット検索をするとたくさんの企業が出てくると思いますが、企業によっても業務範囲も異なります。そのため、自社が困っていることは何なのか、「ノウハウ」と「体制」のどちらにより課題があるのかといった観点からいくつかの企業を検討してみてください。企業によって任せられる業務範囲や価格が異なるので、自社に最もフィットすると感じた企業を選びましょう。コスト感は、定型の業務のみを行う代行サービスであれば比較的コストは抑え目ですが、採用コンサルティングの領域になると付加価値が高い分、金額も上がります。
また、RPOの場合は、企業の採用担当者とRPO会社の担当者がプロジェクト型で業務を行うケースが多いので、「信頼関係を築いて一緒に取り組めるか」というコミュニケーションの部分が非常に重要なポイントになります。RPOでは最低でも3ヶ月、通常1年以上をかけてプロジェクトを進めていきますので、企業の事業変化によって採用の状況も変わっていくことは珍しくありません。たとえば、急に採用が止まったり、新しいポジションが出てきたり、同じ職種であっても採用要件が変わったりということも多いものです。こうした採用の変化が激しい企業の場合は、RPOの担当者と定期的にコミュニケーションを取り、採用方針をチューニングしながら柔軟に進めていけそうかという点も意識していただくと良いでしょう。
とはいえ、RPO会社側では当初の採用計画に合わせてプロジェクトを組むので、途中で採用計画が縮小・拡大すると、価格や体制を見直さなくてはなりません。「話が違う」とならないように、採用担当者は常に現場の最新の情報をキャッチしておき、採用計画が途中で変わる可能性がある場合は事前にRPO会社に伝えて、柔軟な対応を相談しておくことをおすすめします。
最後に
採用ノウハウやオペレーションの部分の工数を減らすことで、採用担当者は最もパフォーマンスを発揮すべき面接や社内調整などに注力できます。さらに、会社をどう認知させるのかといった採用ブランディング、入社後の育成や定着など、さまざまな人事テーマに取り組めるようになります。昨今、戦略人事という言葉がよく使われますが、会社の中での人事の重要度が上がっており、経営層や現場と一緒に戦略を作っていく役割が期待されています。オペレーション人事は外部に委託し、考えるところに時間を使う。そのための手段としてRPOのニーズは今後も増していくのではないでしょうか。