転職エージェントに依頼している企業の声としてよく聞くのが、「頼んでいるものの、いい人を紹介してくれない」「そもそも紹介が上がってこない」という悩み。今や採用マーケットは売り手市場で、転職エージェント側もできるだけ採用決定できるクライアントを優先して紹介していく傾向があります。
では転職エージェント経由で採用決定に結びつけるには、どんな転職エージェントを選び、どんなことに気をつけて依頼するべきなのでしょうか。数多くのベンチャー・スタートアップ企業への転職のサポートをしている株式会社キープレイヤーズ代表取締役の高野さんに詳しく伺いました。

ベンチャー、スタートアップ企業の採用支援を行うキープレイヤーズ
知っておくべき転職エージェントサービスの本質
転職エージェントサービスは、基本的に成果報酬型サービスです。中には依頼時点で費用が発生する固定報酬型や、分割して払う複合報酬型を採用しているところもありますが、多くの転職エージェントは成果報酬型を採用しているため、入社決定して初めて報酬を受ける取ることができます。つまり転職エージェントとしては、企業に人材を紹介して、求職者に企業の魅力を伝え、面接をセッティングし、フォローするという採用決定までのサービスはあくまで投資です。それを回収するためには、できるだけ採用成功する確率の高い企業を優先して人材を紹介していくことになります。
発注する企業にとって、転職エージェントは初期投資が無料で始められるサービスですが、それに甘んじて受身の姿勢でいては、なかなか紹介の数は増えません。こうした転職エージェントサービスの本質と立場を理解した上で、転職エージェントを握りにいくこと、転職エージェント内での自社の優先順位を上げてもらうために、意識して工夫や働きかけをすることが大切です。
エージェント内での自社の優先順位を高める方法
自社に優先して人材を紹介してもらうためには、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか。一番はやはり「決まる会社」になることです。自社の面接力に問題はないでしょうか。積極的に候補者を口説く準備や姿勢を整えていますか。選考や意思決定のスピードに問題はありませんか。面接辞退や内定辞退が多く出ていないでしょうか。こうしたことの積み重ねによって、転職エージェント側に「決まらない会社」と判断されてしまい、紹介そのものが来ないという結果になりかねません。採用成功につなげるためにも、採用条件や選考フローの見直しなどを行ってみてください。
しかしその前段階として「そもそもいい人材を紹介してもらえていない」という不満があるかもしれません。本来であれば転職エージェントから「どういう人なら決まるか」を定期的にコミュニケーションとるような働きかけがあって然るべきかもしれませんが、成功報酬型の転職エージェントにとってそこはあくまで無料のサービスです。数社に紹介していることもあり、そこまで1社に対して頑張って「紹介」部分に力を入れられないという実情もあります。そんな中で、転職エージェントをうまく使って良い人材を採用している企業の共通点として、「転職エージェントの担当者任せにしない」という特徴があります。人事担当者が積極的に情報をとりに行き、転職エージェント側への情報共有も迅速に行う。中には毎日データベースを見に来る担当者もいて、そうした企業はやはり採用成功につながる傾向が高いようです。
ベンチャー採用において重要なのは、「巻き込み力」です。創業直後は友人、知人といった候補者にあたっていくことになると思いますし、魅力的な人材がいればコンタクトをとっておくことで後々のジョインにつながることもあります。転職エージェントに対しても同様で、うまく巻き込んでいくことで、「応援したい」と思ってもらえるようなリレーションを意識しましょう。転職エージェントは「この会社をサポートしたい」と強く感じた時に、より深く踏み込んだコミュニケーションを取って来るので、そう思わせることが大事です。
経営者と転職エージェントが深くつながっておくことも大切な手段です。会話の中で「資金調達に向けて動いている」「新規事業を始める」「事業責任者が退職する」といった情報をキャッチアップして、転職エージェント側から最適な人材を紹介するという動きもあるでしょう。優秀な人材は表立って転職活動はしていないケースも多く、潜在層にリーチする必要があるので、転職エージェントと懇意にしておくことでそうした優秀人材との出会いにつながるかもしれません。
ベンチャー企業にオススメの転職エージェントの見抜き方
「ベンチャー転職におすすめの転職エージェント」を探すための何よりも重要な基準は、ベンチャー業界に詳しいかどうかです。この「詳しい」というのは、単に企業名を知っているわけではなく、そのベンチャー企業がどういった社風であり、どういった形でビジネスを伸ばすかを知っていることを指しています。
例えば、表面上の決算の数字しか見られない担当者の場合、「この会社は赤字だから辞めたほうがいいよ!」と求職者にアドバイスをしてしまうかもしれません。しかし、昨今のスタートアップ企業の中には、ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達をして急成長をしていく企業があります。黒字化よりも、売上の増大、もしくは競合よりもシェアを獲得することを目指すため、その過程で大きな金額の赤字を決算で出すことも珍しくありません。「今は赤字でも、今後間違いなく黒字化して伸びていく企業を選ぶことのほうがチャンスも広がる」と判断できる人の方が、ベンチャー企業の担当者としては向いていますよね。ベンチャー業界の細かな動きや最新の情報を把握している転職エージェントがおすすめです。
とはいえ、どのような人材の紹介があるかは未知数ですし、自社を理解してくれる転職エージェントの担当者と出会うことも成功の鍵になります。基本的には成果報酬型のサービスですから、様々な転職エージェントにアプローチしてみることをお勧めします。大手の転職エージェントや小規模の領域特化型エージェントなど、それぞれの特徴や得意領域が異なりますので、ぜひ自社に合ったエージェントを見つけて、信頼関係を築いてください。