ソーシャルリクルーティングとは?採用に役立つSNSの始め方

SNSを活用した採用活動「ソーシャルリクルーティング」。うまく活用することでどんな採用につなげられるのでしょうか。組織人事コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

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粟野 友樹(あわの・ともき)さん
組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタント。筑波大学・大学院にて人材教育ファシリテーション等の経験を積み、大学院を修了後に、GMOインターネットグループにて求人広告営業とマネジメントを経験。外資系金融機関を経て、パーソルキャリア株式会社にて主にキャリアアドバイザー業務に従事。2018年9月にSeguros(組織人事コンサルティング)を開業。延べ約3000名のキャリア面談、500名以上の転職支援等といった求職者向けの実績と、20数社の企業採用担当として、採用の上流工程から担当する。保有資格:国家資格キャリアコンサルタント。

その他、働くことに関わるPodcast番組「アワノトモキの読書の時間」を運営

ソーシャルリクルーティングとは

ソーシャルリクルーティングとは、SNSを活用して行う採用活動のことです。企業が求職者に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」の一種で、使うツールがSNSである場合を指します。

具体的には、Twitter、YouTube、Facebook、Instagramのほか、学歴や職歴を登録できるビジネス特化型SNS「LinkedIn」やブログサービス「note」などが挙げられます。

企業は、SNSそれぞれに設けられたメッセージ機能を活用し、一人ひとりに直接コンタクトをとることができます。

ソーシャルリクルーティングのメリット

では、ソーシャルリクルーティングには、企業側にどんなメリットがあるのでしょう。

求職者の企業理解を深めるチャンスに

SNSは低予算で自社をPRできるツールです。テキストだけではなく、画像や動画を使って情報を発信でき、求職者は多面的に企業について知ることができます。

採用関連の情報以外にも、

・事業内容やプロダクトの魅力
・他社とのコラボ情報
・働く社員の様子
・社内外のイベント

なども自由に発信しやすくなります。

求職者は、興味関心を持った情報から自然に、企業にアクセスできます。

SNS上では、そうした求職者に対し、イベント開催の告知やレポートなど、企業からの発信をある程度カジュアルに行うことができるのも特徴のひとつです。こまめに更新することで、一度興味を持ってくれたユーザーへ定期的に情報を提供し、企業理解を深めてもらうチャンスを作ることができるでしょう。

転職潜在層と出会うチャンスに

SNSでは、まだ転職活動をしていない人にもアプローチが可能です。

転職サイトや転職エージェント経由では、転職に向けてアクションを起こしている人のみ対象になりますが、SNSでは対象の幅が潜在層まで大きく広がるので、数多くの方にリーチすることができるでしょう。

潜在層の中には、「今は転職を考えていないけれど、条件に合う環境があれば検討してみたい」と思っている人もいます。そうした人と接点を一度持つことで、中長期的なスパンで採用につながる可能性があります。

求職者の人柄や考え方が見えやすい

採用側としても、SNSを運用すると同時に、求職者のSNSへの投稿内容をチェックすることができます。

人事や広報、エンジニアなど、あえて実名や所属企業名で専門知識を発信する人も珍しくないので、経験・スキル、その人の持つ人脈を推察したり、普段の情報発信や興味関心ごとが分かったりします。

投稿した写真や文章から、面接や職務経歴書には書かれない日常の様子が垣間見られることも。求職者たちのパーソナリティなど、仕事以外の”素“の様子を感じ取れるかもしれません。

マッチングの観点からみても、こうした情報は貴重だといえます。

ソーシャルリクルーティングを始めるには

では、ソーシャルリクルーティングはどのように始めればいいのでしょう。

転職サイトや転職エージェント、ダイレクトリクルーティングなどの採用手法と同じように、採用ターゲットに沿ったチャネルの選定は欠かせません。SNSにおいても、それぞれの特徴をユーザー数や年齢層などから把握し、自社の課題解決や目的に合ったものを選ぶことが大切です。

Twitter:情報拡散力の高さが大きな特徴です。140字以内の文字制限があるため、気軽なコミュニケ―ション手段として、「就活のヒント」「特徴ある社員紹介」「面白い制度紹介」など1日1投稿を目標にこまめに発信するといいでしょう。イベント告知などにも有効です。人事担当者がアカウントを持ち、パーソナルな情報発信をするケースも多くあります。
Instagram:写真や動画などビジュアル訴求に強いのがInstagramです。社内の雰囲気、社員の素顔、商品などを視覚的に発信するのに適しています。写真や動画撮影の得意なメンバーを運用担当にするといいでしょう。
Facebook:名前や学歴、経歴などの情報の信頼性が高く、ダイレクトリクルーティングに適したSNSと言えます。イベント機能があり、採用向けイベントをFacebook上で行うこともできます。ただ、特に若い世代に対しては拡散力が高いとはいえないため、他のSNSと併用して情報を届けるなどの工夫も必要です。
YouTube:視覚・聴覚に自由に訴えかけられる動画コンテンツとして、多くの企業が活用しています。時間制限がないため会社説明や社員紹介に適したプラットフォームですが、長いだけの内容は視聴者に飽きられてしまいます。テンポよく編集する高い技術が求められます。
note:長文を発信するのに適したSNSです。各企業がアカウントを持ち、社長や人事、社員が、会社や仕事に対する思いを綴っているコンテンツが多くあります。ほかのSNSから流入してきたユーザーに向けて、「ここでしか伝えられない会社の魅力」をテキストでしっかり読んでもらいたい。そんなニーズに合ったツールと言えるでしょう。

ただ、当然のことながら、SNSは採用のためにあるツールではありません(ビジネス特化型SNSを除く)。即効性を求めて具体的な採用人数を追う上では、成果をすぐには出しにくいでしょう。

直接的な採用成果ではなく、

・企業の認知度を高めるため
・採用ブランド力を上げるため
・選考に進む求職者とのコミュニケーションに生かすため

など、求職者と企業の相互理解のために使う意識で続けてみてはいかがでしょうか。

ソーシャルリクルーティング運用で気をつけたいこと

ソーシャルリクルーティングは、お金をかけずに気軽に始められる採用手法です。ただ、自社で継続的に運用するのには、人的パワーがかかります。

始めるには、「時間がかかり、具体的な成果を出しにくい」点を理解した上で、継続できる体制を作れるのかきちんと人員工数を設計し、SNS担当を決めるか、あるいは社外の専門家に運用を任せるかなど、方針を決めていきましょう。

継続するための工数設計を行う

どのSNSでどんな情報を発信するのか、発信内容・投稿スケジュールを決めていきます。投稿にどれくらいの時間がかかるのかを設定し、週・月に何本程度投稿するのか、そのために担当者が何人必要かを考えていきましょう。

炎上リスク防止のルールを決める

SNSは即時性が高く、拡散スピードが早いゆえに、炎上リスクは常に付きまといます。

企業に親近感を抱いてもらいたいと考えて投稿した“カジュアル”な内容が、思わぬ批判を呼ぶことは少なくありません。採用担当者など一社員が企業のアカウントで個人的な考えを発信して炎上し、企業ブランドの低下につながったケースも数多くあります。

ソーシャルリクルーティングを始める際には、

・特定の属性を貶めるような差別表現はないか
・社会情勢を考えた際に不適切な表現はないか

など、発信内容のチェック体制を作り、ガイドラインを定め、コンプライアンスチームと連携したトラブル対策を事前に考えるなど、リスク管理も重要になるでしょう。

採用サイトや転職エージェント、ダイレクトリクルーティング活用に加えた一つの手法として、SNSは長期的な視点で運用していくことが大切です。

ライター:田中 瑠子

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