採用選考の第一関門となる書類選考では履歴書を提出することが一般的ですが、履歴書には記載しなければならない事項が多く、いざ書こうとするとどのように書けばよいか悩んでしまう人もいるでしょう。履歴書には履歴書ならではの書き方のルールやマナーがあり、それらをしっかり押さえて作成することが必要です。そこで、この記事では、履歴書の基本的なマナーとともに履歴書の書き方について項目別にわかりやすく解説します。


目次
まず理解!履歴書の意義
選考の際に企業から提出が求められる履歴書には、そもそもどのような役割があるのでしょうか。履歴書とは、自分の履歴を記載する書類です。記載する内容は、市販の履歴書であれば商品によって異なる場合もありますが、基本的には氏名や生年月日、学歴、長所や短所など、応募者のプロフィールを記載します。つまり、履歴書は応募者がどのような人物であるかを明らかにするための書類であり、いわば企業に対する本人確認のための書類です。企業は、履歴書に記載されている内容や書き方を見て、応募者が自社や募集している職種などに合う人物であるかを判断します。
チェックしているポイントは、経験やスキル面だけではありません。社会人としてのマナーや組織への適応能力、仕事に対する丁寧さなどを持ち合わせているかも見ているため、履歴書は慎重に作成することが必要です。実際に書類や面接時に履歴書を資料とするケースも多く、無事に内定を獲得したいならクオリティの高い履歴書を作成することは重要となります。
履歴書の書き方を項目別にチェック
ここでは、履歴書の書き方のポイントを項目別に解説します。
写真
写真は採用担当者が履歴書を手にしたときに目に付きやすく、写真によって採用担当者が持つ応募者の印象が大きく変わる場合もあります。そのため、写真選びも履歴書を作成する際には十分に注意しておきたいポイントです。
写真を用意する際には、まず履歴書の用紙に適したサイズを選ぶ必要があります。用紙によって推奨されているサイズは異なりますが、一般的な市販の履歴書であれば縦が4cm、横が3cmであることが通常です。写真の撮影方法には特に決まりはなく、自動で撮影する証明写真機で撮っても問題はありません。ただし、少しでも印象のよい写真を用意したいなら、写真のクオリティが上がる写真館での撮影がおすすめです。写真館を利用すると、完成した写真に気になる部分があってもレタッチで加工や修正をしてもらえます。
また、撮影するときの服装は黒や紺など落ち着いた色のスーツを選ぶことが一般的です。男性は、フォーマルな印象を与えるためにネクタイも着用しましょう。女性はメイクも印象を左右するポイントです。気合いを入れ過ぎて派手にならないように、ナチュラルメイクを心がけましょう。髪型は男性も女性も清潔感を意識したスタイルにし、撮影前には髪の毛が目や顔にかかっていないかを確認しておくことが大切です。
そのほか、撮影中には姿勢や表情にも注意しておく必要があります。まず姿勢は背筋を伸ばして真正面を向きましょう。一方、表情は口を閉じて口角を少し上げて自然な笑顔を作るようにします。
出来上がった写真は、履歴書の枠内にのり付けしますが、その際には写真が斜めになって枠からはみ出ないように気を付けなければなりません。万が一写真が剥がれても誰の写真かわからなくならないように、写真の裏面に氏名などを書いておくと安心です。


基本項目
まず、履歴書に書く日付は実際に記入した日ではなく、履歴書を発送する日です。郵送による提出ではなく、面接などで自ら持参して提出する場合には持参日を記入します。また、履歴書は本人確認の書類でもあるため、氏名は略字ではなく正式な漢字で書くことが必須です。生年月日については書き方に和暦と西暦の2つの表記方法がありますが、どちらで書くかについて特に決まりはありません。ただし、ほかの項目の日付と書き方を統一しておく必要はあります。
現住所や連絡先は郵便番号や都道府県名、市外局番なども省略せずにすべてそのまま記入しなければなりません。ちなみに、氏名や現住所の上に書く読み仮名の表記方法は、項目欄に「ふりがな」と書いてあれば平仮名、「フリガナ」と書いてあったらカタカナで記載しましょう。一方、連絡先は携帯電話と固定電話のどちらを書いても構いませんが、企業から連絡を受ける番号となるため、つながりやすい方を記入しておくようにします。同じく、メールアドレスも企業からの連絡先となるため、日頃から頻繁にチェックするものを書いておくようにしましょう。さらに、記入したメールアドレスについては、企業からの大事な連絡を迷惑メールとしてブロックしないように受信設定を確認しておくことも大切です。
学歴・職歴
学歴と職歴を書く欄が同一になっている場合、まずは1行目に「学歴」とだけ記入し、2行目から具体的な学歴を学校ごとに書いていきます。学歴として書く内容は入学や卒業をした年月と学校の名前や学部などです。同じ学校でも入学と卒業では年月が異なるため別の行に記載します。また、学歴は義務教育が終わるタイミングである中学校の卒業以降を明記することが一般的です。最終学歴まで書き終わったら、空白行を一行挟み、今度は「職歴」とだけ記入します。そして、「職歴」と書いた行の次の行から職業や職務の経歴を具体的に書いていきます。
職歴として書く内容は入社や退職をした年月や企業名、部署名などです。さらに、過去に担当した仕事が選考のアピールとなる可能性もあるため、企業名や部署名の下にそのときの担当業務も記入します。ただし、転職の場合、履歴書とともに職務経歴書を提出するケースも多く、詳細な内容を職務経歴書に書くのであれば、履歴書の職歴欄は簡潔な記載に留めてしまって構いません。
過去の職歴をすべて記載したら、最新の情報として、在職中であれば「現在に至る」、退職している場合には「一身上の都合により退職」と記入します。さらに、改行した右端に締めくくりの言葉として「以上」と書いたら、学歴と職歴の欄の記載は終了です。ちなみに、学歴や職歴で書く年月の西暦または和暦の表記方法は、基本項目の日付や生年月日などと合わせておかなければなりません。
免許・資格
免許や資格は取得年月の古いものから順に書くことが、履歴書の書き方のルールです。必ずしも取得しているすべての資格を書く必要はありませんが、公的な免許や資格はスキルや知識を客観的に証明してくれるもので、選考の大きなアピールとなり得ます。そのため、応募する企業や業務と関係があるものは、できるだけ記載しておくようにしましょう。ただし、応募する企業や業務との関わりが浅いもの、関係がないものは、書くことによって逆に適した人材ではないとみなされる恐れもあるため注意が必要です。書くべき資格は人によって変わりますが、自動車の運転免許は企業や職種に関わらず活躍の場が幅広い資格のため、最初の行に書いておくとよいでしょう。
志望動機
志望動機は、応募者が自社にマッチする人物であるかを見極めるにあたり、採用担当者が特に注目する項目です。どのように書くかを慎重に考え、完成度の高い内容にする必要があります。志望動機の欄で求められている内容は、その企業で働きたいという熱意や意欲、入社したらどれほど貢献できるかなどについてです。これらをしっかりアピールするためには、「数ある企業のなかから応募先企業を選んだ理由」「どのようなスキルや技術があり、それをどのように生かせるか」「入社後に何を実現したいか」の3点を意識して文章を作成することがカギとなります。
また、ほかの応募者と差別化を図った内容にし、採用担当者の心に響かせることも大事です。たとえば、応募する企業の商品やサービスに触れる内容とするだけではなく、理念や経営状況、今後の事業展開などにも絡めた内容にすると、自社の企業研究をしっかりしている入社意欲の高い志望者という印象を与えやすくなります。


趣味・特技
趣味や特技で書いた内容は、学歴や職歴などからだけでは判断しにくい応募者の人柄を採用担当者が探る材料とされていることも多く、面接などでは話を広げるきっかけとなる場合もあります。そのため、趣味や特技がある場合だけではなく、ない場合でもできるだけ記入はしておくようにしましょう。趣味や特技と呼べるようなものが特にない場合には、日頃から興味を持っているものを趣味に、周囲から褒められることを特技として書くようにします。どのような内容のものを書いても構いませんが、非常識なものは避けるようにしましょう。応募する企業や仕事に関連するものであればより有効です。
自己PR
採用担当者は自己PRを通して、応募者の自社への適性や応募者が正しく自己分析ができているかを見ています。そのため、自己PRでは、自分の能力や人柄、また、そのような能力や人柄を持つ自分を採用するとどのようなメリットが期待できるかを採用担当者にしっかり伝えなければなりません。採用担当者に自分を採用するメリットをよりリアルにイメージしてもらうためには、経験した成功体験や努力の成果を具体的に書く方法が有効です。自分が会社に貢献できることやどのように貢献できるかについて、実際に経験したエピソードを交えながらアピールするとよいでしょう。
ただし、アピールする際には、ただの自慢話にならないように気を付けなければなりません。成功体験などを書くのはあくまでも採用するとどのようなメリットがあるかを採用担当者に伝えることが目的であることを忘れずに、企業が求める人物像につながる内容にするようにしましょう。
本人希望記入欄
本人希望記入欄は応募者が希望していることを自由に書ける欄です。入社後に給与や勤務時間などの労働条件について企業との間でミスマッチを起こして早期離職などをしないようにするために設けられています。ただし、希望を自由に書ける欄とはいえ、実際に詳細な希望を書くと企業から敬遠される恐れもあるため注意が必要です。一般的には、どうしても譲れない条件がない限りは「貴社の規定に従います」と書きます。


覚えておきたい履歴書のマナー
履歴書には各項目に書き方のルールがあるだけではなく、記入や提出の際に注意しておかなければならないマナーもあります。基本的なマナーを守れていないと社会人としての評価も落ちてしまう恐れもあるため、気を付けなければなりません。ここでは、基本として押さえておきたい主なマナーを3つ紹介します。
修正液は使わない
履歴書では修正液や修正テープ、消せるボールペンの使用は禁止されています。一度書かれたものを誰によって直されたかも不明確な状態で修正することは、書類の信ぴょう性を落とすからです。また、修正液などで手っ取り早く修正すると、採用担当者に雑な人という印象を与える場合もあります。そのため、記入している途中に間違いや誤字脱字に気付いたら、基本的には新しい履歴書を用意して一から書き直しをしましょう。間違えてしまいそうで不安がある人は、ボールペンで書く前に鉛筆で薄く下書きをしておくとよいでしょう。
郵送時は折り曲げずクリアファイルに入れて送る
履歴書は折り目のないきれいな状態で企業に提出することがマナーです。市販の履歴書には最初から二つ折りにされているものも少なくありませんが、そのような履歴書はそれ以上折らなければ問題はありません。折り曲げないマナーは直接持参するときだけではなく、郵送で提出するときにも守る必要があります。履歴書を折らずに郵送できるよう、A4サイズの用紙がそのまま入る角形2号の白い封筒を使用しましょう。
また、履歴書には送付状を付け、送付状と一緒にクリアファイルに入れて送ることもマナーです。クリアファイルに入れて送ると、履歴書が折り曲がらないだけではなく、取り出しや保管が楽になるため採用担当者への気遣いにもなります。さらに、大事な履歴書が採用担当者に間違いなくスムーズに届くように、封筒の左下に「履歴書在中」と記載することも忘れてはなりません。「履歴書在中」は目立つように赤字で記載し、さらに、その字を赤い線で囲みます。
嘘を書かない
履歴書は本人確認のための書類であり、虚偽の情報を書くことは許されません。自分をよく見せたいと思っても虚偽の内容を書くことは避け、真実だけを正直に記載しましょう。履歴書に虚偽の内容を書くことは経歴詐称です。また、詐称した内容によっては詐欺や文書偽造の罪に問われる場合もあります。たとえ、嘘だと気付かれないまま入社できたとしても、入社後に発覚する可能性は高く、実際に入社時や入社後に提出する公的書類などから嘘があったと気付かれるケースも少なくありません。嘘が発覚すると解雇の対象となり、最終的には自分が困ることになるため履歴書には嘘は書かないようにしましょう。


書き方のポイントを押さえて魅力的な履歴書を作ろう!
書類選考は採用選考の最初のステップであり、書類選考の際には履歴書が選考の判断材料となります。内定の獲得に向けて第一関門の書類選考を通過するためには、ライバルよりも充実した内容の履歴書を提出することが大切です。まずは基本的な書き方やマナーをしっかり押さえたうえで、よい印象を与えられるようなクオリティの高い濃い内容の履歴書作りを心がけて、内定獲得を目指しましょう。
