転職活動で履歴書は必須となる書類です。なかでも、志望動機は選考に関する重要な項目といえます。ただ、転職活動の経験が少ない人からすると「どのようなことを書けば良いのだろうか」と頭を悩ませてしまうものです。そこで、この記事では志望動機が必要な理由や知っておきたい基本的なルール、書き方の具体例や避けるべき志望動機の特徴について解説します。


目次
志望動機はなぜ重要なのか
「履歴書の志望動機を書くのが苦手だ」という人は多いものです。志望動機は転職活動に欠かせないものであり、応募者にとっても企業にとっても、非常に重要な要素です。ただ、なぜ転職活動において志望動機が重要視されているのでしょうか。その理由は、志望動機の内容によって企業は応募者の志望度や熱意を判断するためです。一般的に、企業の多くは自社への入社を熱望する人材を欲しがるものです。
採用担当者は選考を通じるなかで、応募者が自社のどのような点に魅力を感じ、なぜその魅力を感じたのかを知りたいと考えています。そこで、志望動機の内容から自社への興味関心や入社意欲の高さを図ろうとします。少し興味があるという程度の説明では、働くためのモチベーションや入社意欲が低いと判断される原因になるため注意が必要です。また、志望動機は企業と応募者のミスマッチを防ぐ目的もあります。入社してみたものの、いざ現場で働き出すと企業側と応募者側とで「お互いに抱いていたイメージや期待していたことが違った」というケースも少なくありません。
このような場合、仕事で十分なパフォーマンスを発揮できなかったり、早期離職につながったりする原因になり得ます。こうした事態は企業・応募者のどちらにとっても、なるべく避けたいものです。企業側は入社後のミスマッチを未然に防ぐため、志望動機の内容を確認し、社風や業務に適した人材であるかどうか判断しています。なお、履歴書を作成する際に志望動機と自己PRの違いが分かりにくいと感じる人もいるかもしれません。簡単にいうと、両者はそれぞれの役割や目的が異なります。
自己PRは企業に対して「自分がどのように貢献できるか」を提示することが主な目的となる項目です。一方、志望動機は「ほかの会社ではなくなぜその会社なのかをアピールする」ことが主な目的となります。どちらも記載する内容に共通部分はあるものの、メインで主張する内容が異なることを覚えておきましょう。


志望動機を書くときの基本的なルール
志望動機はどれくらいの文章量を書けば良いのか、どのような点を意識すれば質の高い内容になるのか、まずは基本的なルールを押さえておくことが重要です。ここでは、志望動機を書くときに意識したい基本ルールを説明します。
適切な文章量を守る
志望動機を書く際は、適切な文章量を守ることがポイントとなります。目安として、履歴書の記入欄の7~8割ほどを埋めるようにしましょう。基本的には、採用担当者が1分程度で読めるように、300文字程度にまとめられていることが理想です。文字数が多くなりすぎると情報過多となり、アピールポイントが分かりにくくなってしまいます。反対に、文字数が少なすぎると空白が目立ってモチベーションが低い印象を与えてしまい、入社への熱意がうまく伝わらないおそれがあるため注意が必要です。相手への伝わりやすさを意識して文章量をコントロールし、程よいバランスで作成しましょう。
どうしても伝えたいことがあり志望動機を多めに書きたい場合は、志望動機欄が大きめのフォーマットの履歴書を選ぶ手もあります。もしくは、自己PRの欄に伝えたいことを追加し、アピールするのも良いでしょう。
具体的で質の高い文章を心がける
質の高い志望動機を作成するためには、できるだけ具体的な内容を盛り込むことがポイントとなります。その際、重要になるのがなぜ転職しようと思ったのか「自分自身の言葉で記載する」ことです。転職によってどのようなことを成し遂げたいのか、今までの仕事ではなぜそれを叶えられないのか、具体性を意識しつつオリジナルな言葉と表現で伝えましょう。さらに、自分の強みや経験をどのような場面で生かして活躍できるのかを盛り込むと、説得力のある志望動機になります。なお、志望動機は書き出しと締めくくりに注力することが基本です。
書き出しは応募先企業を選んだ理由を、結論ファーストを意識して記載しましょう。続けて応募先企業が求める人材である根拠を絡めながら記載すると、採用担当者の興味を引く内容に仕上がります。締めくくりは応募した職種で自分が活躍できるイメージを与えられるように、入社後にやりたいことや即戦力になるアピールを盛り込むと効果的です。志望動機で企業は応募者の意欲や熱意、自社で将来的にどのように活躍してくれるのかを図っています。締めくくりは印象に残りやすい部分だからこそ、自分がその企業で活かせる要素を全面的にアピールしていきましょう。
応募企業ならではの魅力を盛り込む
志望動機は「その企業でなければならない理由」を忘れずに記載する必要があります。そのためには応募先企業の商品やサービスを始め、企業理念や事業戦略など幅広く情報を集め、理解を深めておくことが重要です。理解が深まるほどその企業ならではの魅力が見つかり、より具体性や説得力のある理由を記載できるようになります。例えば、ライバル企業と比較して優れている点や経営者が発信するメッセージ、中長期の経営計画内容などに着目すると、ほかの企業にはない魅力を発見できます。
これらの要素をベースに同業他社との違いを明らかにした志望動機を考えていきましょう。また、応募先企業の強みと自分が保有するスキル・経験で重なる点があれば、より筋の通った志望動機になります。


志望動機を書くときの例文を「同業種」と「未経験業種」別に紹介
転職で履歴書の志望動機を書くときに「同業種」と「未経験業種」では、書き方の方向性も変わってきます。そこで、ここでは志望動機を書くときの具体的な例文を「同業種」「未経験業種」に分けて、それぞれ紹介します。
同業種の場合
同業種に転職する場合は「今や前の会社ではダメな理由」を説明する必要があります。今までどのような経験をして何に課題を感じているのか職務経歴を端的に説明し、培った知識やスキルを応募先企業でどのように活かしたいのか、明確に示すことが大切です。
具体的な例文としては「長期のプロジェクトを経験したいという希望から、貴社のプログラマー職に応募いたしました。現職では5年間プログラマーとして従事しておりますが、業務形態の都合から途中でプロジェクトが変わることがほとんどです。短い間隔の業務を繰り返すなかで、1つのプロジェクトを最後までやり遂げたい気持ちが日に日に強まりました。貴社ではプロジェクトメンバーの固定を基本としており、長期的な案件を多く取り扱う点に魅力を感じております。開発言語はJAVAが専門です。現職で身に付けた技術を活かし、貴社が得意とするサーバー用アプリケーションの開発に貢献できればと考えております」などが挙げられます。
未経験業種の場合
未経験業種に転職する場合は「なぜ未経験分野に挑戦したいと思ったのか」を分かりやすく説明することが求められます。未経験業種への応募は、経験者と比較されるとどうしてもハンディキャップとなります。そこで、未経験ではあるものの自分にどのような付加価値があるのか、積極的にアピールする必要があるでしょう。
例文としては「昔からゲームが好きで個人的にプログラムの勉強を続けており、夢を叶えるため貴社への応募を決心しました。現職はインターネットの広告代理店で営業職を4年間経験しております。仕事は順調ですが、今後のキャリアを考えたときに昔から好きなゲーム開発に携わりたい気持ちがよみがえり、転職活動を始めました。数あるゲーム会社のなかでも、VRの新技術がふんだんに盛り込んだ貴社のソフトに強く魅力を感じております。プログラムに関しては今後さらに勉強が必要ですが、前職の広告営業で培ったwebマーケティングのノウハウを活かし、売れるゲームの企画にも貢献したいと考えております」などが挙げられます。


マイナス印象になりがちな志望動機の特徴
志望動機は内容によってはマイナスの印象を与えてしまう場合があります。例えば、ありふれた表現を使用したり、待遇面だけに偏った意見を述べたりすると、採用担当者に響かない可能性があるでしょう。具体的にどのような点に注意すれば良いのか、ここではマイナスの印象になりがちな志望動機の特徴を紹介します。
経営理念に共感という表現を安易に使う
志望動機を作成する際、よくある表現の1つが「貴社の経営理念に共感して応募を決心しました」というものです。しかし、この経営理念に共感という表現は、あまり深く考えずに使うことは避けたほうが良いといわれています。もちろん、経営理念に共感したという志望動機自体が間違っているわけではありません。問題は「どこに共感しているのか」という具体的な説明がない点にあります。文章から具体性が読み取れないと、どうしても内容が薄くなり、採用担当者の心を掴むことが難しくなるのです。
その企業のどのような点になぜ共感したのか、自身の考え方や経験を踏まえて具体性を示す必要があります。もしも企業が納得のいくような説明ができない場合は、経営理念に共感という言葉は安易に使用しないほうが無難でしょう。また、経営理念に共感しているだけでは、企業側にメリットがありません。企業に「この人材が必要」と思わせるためには、自分を採用するメリットを提示しなければならないのです。企業理念を踏まえつつ、自分ができることや貢献できることを伝えていきましょう。十分なメリットや付加価値が伝われば、採用に一歩近付けます。
貴社で学びたいという受け身の姿勢
入社への熱意を示すために、志望動機で多くみられるのが「貴社で学びたい」という表現です。学びたいという言葉は、一見謙虚に捉えられるかもしれません。しかし、捉え方次第では「企業に成長させてほしい」という他人頼みで受動的な印象を与えるおそれがあります。企業の多くは応募者に対し、仕事に貢献する即戦力や自ら行動できる主体性を求めています。謙虚・真摯というアピールをしているつもりが、場合によっては企業任せのような印象になってしまう可能性があるため、表現には十分注意しましょう。
同様に「未経験でも良いと求人に記載があったため」「研修制度が整っていると説明があったため」というような受け身の印象を与える理由も、あまり好ましい志望動機とはいえません。受動的な志望動機にならないよう、まずは前職のスキルを活かして貢献できる要素を伝えましょう。そのうえで「足りない知識やスキルは今後勉強して取り入れていきたい」といった積極的な姿勢をアピールすると効果的です。これにより、前向きな姿勢やモチベーションの高さをアピールできます。
志望動機が待遇面に偏っている
志望動機を記載する際は「内容が待遇面に偏らないようにする」ことが基本です。「福利厚生が充実しているため」「実家の近くに会社があり通勤が楽なため」というように、あまりにも待遇面にフォーカスし、偏っている内容の志望動機は不採用となる確率が高まります。もちろん、待遇に注目することは間違いではありません。特に仕事を長く続けるために、待遇の良し悪しは重要なポイントとなります。とはいえ、それは自分自身で考慮すべき要素であり、志望動機としては記載しないほうが無難です。
なぜなら、待遇面を重視する姿勢を見せると、多くの企業は「ほかにより良い待遇の仕事が見つかればすぐ転職するのではないか」と不安や疑念を抱くためです。志望動機はあくまでも「待遇に魅力を感じるから働きたい」のではなく、「仕事に対する興味や意欲があるから働きたい」という態度を示すのが重要になります。
ユーザー目線で応募企業をみている
意外とやりがちなのが「ユーザー目線で応募先企業をみた志望動機にしてしまう」ことです。応募先企業の製品やサービスのファンだと志望動機欄に記載するのは、よくあるパターンの1つです。応募先企業の製品やサービスを褒めるのは、決して悪いことではありません。むしろ実際に興味を持って製品やサービスを使用し、企業理解を深めるのは良いことといえます。しかし、「製品のファンです」「いつもサービスを利用しています」のように、ただ褒めるだけでは一般ユーザーと何も変わりません。一消費者としての意見を志望動機で述べるだけでは、何も自分のアピールにつながらないのです。
志望動機で自分の評価をアップさせるためには、どのような点が他社製品・サービスと比較して優れているのか分析し、説明することが求められます。また「自分であればこのように改良する」など、独自の視点で提案できると好印象につながりやすいでしょう。ただの「一般ユーザー目線」ではなく、実際に働く者としての「ビジネス視点」を志望動機に含めることがポイントとなります。
説得力のある志望動機で採用担当者に興味をもたせるアピールを
志望動機は書類選考や面接などの選考結果を左右する重要なポイントの1つです。書き方の基本的なルールを守り、採用担当者が「会ってみたい」「採用したい」と思うような内容を目指しましょう。また、マイナス印象を与えがちな志望動機の特徴を把握し、その内容にならないよう十分な注意が必要です。応募先企業に対して自分をアピールできる志望動機になっているかどうか、履歴書の提出前にしっかりと見直しを行いましょう。
