企業を退職することになった場合、退職の挨拶は必須です。退職の挨拶をメールで送ることはよくありますが、実際に書くことになったとき、何を書くべきなのか、どのタイミングで送るべきなのかなどを迷う人もいるでしょう。この記事では、退職の挨拶をメールで送っても良いのかという基本事項を踏まえたうえで、メールに書く内容や送るタイミングなどを社内向け、社外向けの場合別に解説します。


目次
退職の挨拶をメールで送っても問題はないのか?
退職の挨拶をメールで送ることはビジネスマナーに反するのではないかと心配する人もいるでしょう。確かに、お世話になった人への退職の挨拶は、可能な限り直接相対して口頭で行うことが理想的です。しかし、お世話になった人や取引先の相手の人数が多ければ多いほど、全員に口頭で挨拶するのは難しくなるでしょう。こうした事情から、遠方にいる相手や直接挨拶するタイミングを見つけることが難しい相手にメールで退職の挨拶をすることはビジネスマナー違反にはならないとされています。
ただし、年齢層が高い人の中にはメールで退職の挨拶をすることに対し、好意的な気持ちを抱かない人もいる可能性があるので注意しましょう。特にお世話になった上司や取引先の相手に対しては、メールで済ませるのではなく、直接出向いて感謝の気持ちを伝えることが望ましいです。退職の挨拶は直接出向く、メールで送る以外にもはがきや手紙でお知らせする方法もあります。退職の挨拶の仕方は自分と相手の関係性を見極めながら決めていくとよいでしょう。
退職挨拶のメールを書くときに意識しておきたいポイント
退職の挨拶をメールで書くとき、どのようなことに意識すべきなのでしょうか。メールを送るといえども、社内向けと社外向けではそれぞれ押さえるべきポイントは異なります。ここでは、社内向けの場合と社外向けの場合に分けて解説します。
社内向けの場合
社内向けに退職の挨拶をメールで送る場合、これまでお世話になった感謝の気持ちを伝えつつ、端的な文章にまとめることが大切です。この段落では、社内向けに退職の挨拶メールを書く場合に押さえておくべきポイントを解説します。
感謝の気持ちを込める
退職の挨拶メールは、これまでお世話になったことに対して感謝の気持ちを述べるものです。職場にいた期間が短くても長くても、一緒に仕事をした同僚や上司とは絆ができています。退職して新たなステージに進む場合でも、元同僚や元上司とは関わりを持つこともあるでしょう。退職に際してきちんと挨拶をすることで、退職後も元同僚や元上司と円満に連絡を取り合うことができます。退職の挨拶メールには、単に「お世話になり、ありがとうございました」と書くだけでは相手に自分の気持ちが十分には伝わりません。
文面には、どのようなことでお世話になったのか、相手からどのような影響を受けたのかなど、具体的な事象を盛り込むことでより印象的な挨拶文になります。感謝の気持ちを伝えたい余り、長文になってしまう人もいるかもしれません。しかし、長文は読むのに時間がかかり、相手に負担を与えてしまいます。文面はパソコンの画面の範囲内に収まる程度に、コンパクトな長さでまとめましょう。会社に対する批判や愚痴は感謝の気持ちとは相容れないものですので、退職の挨拶に含めるべきではありません。明るく前向きな文章になるよう心がけましょう。
宛先は一斉送信でかまわない
退職の挨拶メールを送る相手は、これまで仕事をするうえでお世話になった人や関わりがあった人が対象となれば、かなり広範囲にわたり、人数が多くなる可能性があります。そのため、多くの人に同じ文面を送る一斉メールで退職の挨拶をしてもマナー違反にはなりません。大切なのはメールの送り方ではなく、メールに書く中身です。ただし、一斉メールを送る際は、宛先に注意が必要です。宛先を「TO」や「CC」で送った場合、メールを受け取ると他の人のアドレス見えてしまいます。
メールを受け取った人同士で他の人のアドレスを見られないようにするためには「BCC」を付けましょう。本来、「TO」はメインの受信者の名前を入れますが、「BCC」でメールを送信する場合は「TO」の箇所が空欄になってしまいます。空欄のままではメールが送れないので、「TO」には自分のメールアドレスを入れましょう。また、特にお世話になった人には一斉メールではなく、個別にメールを送るとより気持ちが伝わります。
件名はわかりやすく
メールが大量に送られてくる人の場合、せっかく退職の挨拶メールを送ったとしても、迷惑メールや自分に関係ないものとして読み飛ばされてしまう可能性があります。相手に読んでもらえなければ挨拶をした意味はありません。退職の挨拶は大切なお知らせですので、受け取った人がすぐに分かるような件名にしましょう。「退職のご挨拶」「退職のご連絡」などの題名の後ろに自分の名前をかっこ書きしておくと、端的でわかりやすいものになります。
退職理由の詳細には触れない
退職の挨拶のメールで退職の理由を細かく述べる必要はありません。退職理由を書いていくと、会社や特定の個人の批判につながるネガティブな内容になる恐れがあるためです。退職するに至った細かい事情に触れることはビジネスマナーに反するだけでなく、自分の退職後も社内に残る人に対して失礼になります。退職理由をどう書けば良いか迷った場合は「一身上の都合により退職」と書くのが無難です。
メールは履歴が残ってしまいますので、どうしても退職に至った理由を伝えたい人がいるなら、電話で言うか、直接会って話をするなどの方法を取りましょう。転職先が以前の業界とつながっている場合もありえます。ネガティブな情報は業界内で伝わりやすいので、新たな転職先で思わぬ不利益を受けることがないとはいえません。そのためにも、退職するにあたっては、なるべく悪い印象を残さないことが大切です。退職理由が結婚や出産などお祝い事によるものの場合は、退職理由として書いても問題にはなりません。
退職後の連絡先を記載する
退職後もこれまでに築いた関係を続けて交流していきたいと思う人もいるでしょう。その場合は、今後の連絡先として個人持ちのメールアドレスや携帯電話の番号を書いても構いません。会社を退職してしまうと、多くの場合に現段階で使っているメールアドレスは使えなくなってしまうため、個人持ちのメールアドレスや携帯電話の番号をお知らせするのがポイントです。退職の挨拶メールを見るタイミングが自分の退職後になってしまった人がいる場合、今後の連絡先が書かれていれば先方から連絡を取ることができます。


社外向けの場合
社外に対して退職の挨拶メールを送る場合も、社内に対する退職の挨拶メールと基本的な書き方は大きく違いません。一方、退職日を明確にする、後任の紹介をするなど、社内に対するメールとは違う点もあるので、しっかりポイントを押さえておきましょう。ここからは、社外向けの退職の挨拶メールの書き方を解説します。
退職日の報告と引継ぎを確実に
社外に向けての退職の挨拶メールは、退職日を明記することが重要です。退職の挨拶メールを見た取引先の人が連絡してきたとき、既に退職していたという事態が生じると失礼になります。退職に際して有給休暇を消化する場合は、最終出社日を記載しましょう。自分が在職中に行ってきた仕事は別の人に引継ぎを行うことになるので、後任者の名前も明記します。後任の人が決まっていない場合は、連絡の取れる部署や連絡先を明記しておきましょう。引継ぎの連絡も社外に向けての退職の挨拶で重要なポイントです。本来なら退職前に後任者と共に挨拶に行くのが理想ですが、日程的に難しい場合はお詫びの一文を書き添えましょう。
連絡先や退職理由は書かない
社外に向けての退職の挨拶メールには個人的な連絡先は書いてはいけません。もし個人の連絡先を書いてしまい、後にそれがビジネスに発展した場合、会社の所持する顧客情報を利用していると受け取られかねません。わざわざ自分から不利益が生じる可能性があるようなことを起こさないようにしましょう。これまで築いた関係性をこれからも続けていきたい気持ちがあるなど、どうしても個人的な連絡先をお知らせしたい場合は、事前に上司に相談し、承諾を得ることが必須です。また、退職理由も詳しく書いてはいけません。退職理由によっては、会社の社会的信用に傷をつける可能性があるためです。社内に向けての退職の挨拶の場合と同様に「一身上の都合により退職」と書くようにしましょう。


退職挨拶メールを送るべき最善のタイミングとは?
退職の挨拶メールを送るタイミングも事前によく考えておくことが必要です。タイミングを間違えるとメールが送れないという事態が発生することがあります。メールを送るタイミングもメールの内容と同様に、社内向けと社外向けで異なりますのでしっかり確認しておきましょう。ここからは、社内向けと社外向けに分けて退職の挨拶メールを送るタイミングについて解説します。
社内向けの場合
社内向けの退職の挨拶は、退職することを皆に知らせるというよりは最後の挨拶という意味合いが大きいです。そのため、最終出社日に行われるのが一般的といえます。なお、最終出社日は自分が使っているパソコンを会社に返却し、初期化してもらわなければなりません。そのため、パソコンをどのタイミングで返却するのかもあらかじめ把握しておきましょう。パソコンを返却してしまった後ではメールを送りたくても送ることができません。もし可能なら、パソコンを返却する直前に送るのではなく、少しゆとりを持って早めに送るとよいでしょう。
そのほうが、自分がまだ会社にいるうちに退職の挨拶メールを見てもらえる可能性が高いです。退職の挨拶を送った直後にパソコンを返却してしまうと、メールを見て返信してくれた人のメールを読むことができません。また、直接挨拶に来てくれた人があった場合、既に自分は退社してしまっているという状況もありえます。退職の挨拶メールを送るタイミングは会社ごとにさまざまです。勤務時間終了後という会社もありますし、退職の1週間前という会社もあります。
会社それぞれの慣習がある場合も想定できるので、これまで退職していった人がどのタイミングでメールを送信してきたかを参考にしましょう。なお、退職することはまず直属の上司に伝えます。その後、引継ぎの日程などを打ち合わせし、いつ退職することを開示してよいのかを上司に尋ねることが大切です。自分が退職の挨拶をする前に、上司が部署内や他の部署に開示を行います。上司が開示しないうちに退職の挨拶メールを送ることは絶対に避けなければなりません。他の部署や社員に波紋を広げてしまいますし、上司に対しても礼を欠く行為です。
社外向けの場合
社外向けに退職の挨拶をする場合は、会社から退職の公表に関して許可を得た後、退職日から数えて2~3週間前までに連絡しましょう。社外向けに退職の挨拶をする目的は、引継ぎを行うための適切な期間を設けることにより、取引先に安心してもらうことです。退職の挨拶から退職日まで日程の余裕がないと、取引先から「仕事に対する責任感が希薄」だと思われてしまう可能性があります。引継ぎのために適切な期間があれば、何か問題が発生することがあったとしても、慌てずに対処できるでしょう。
引継ぎがうまくいかないと、取引先に迷惑をかける可能性があるだけでなく、自分や会社の印象を下げてしまう可能性があるため注意が必要です。転職先が同じ業界の場合やフリーランスとして働く場合は、今後の業務に影響してくる可能性もあります。取引先への挨拶は、退職日から逆算してあまり早すぎる段階で行うのも良くありません。「退職すると言ったのに、まだ働いている」と相手に不審な思いを抱かせてしまう懸念があります。
退職挨拶のメールが返信された場合の対応
退職の挨拶に対して返信をもらった場合は、お礼の気持ちを添えて返信するのが一般的です。退職の挨拶に対する返信で転職先や今後の予定を聞かれることもあるでしょう。社内の人から聞かれた場合は、直属の上司に話してあるような内容であれば、言ったとしても問題が起こりにくいでしょう。上司にも伝えていない内容や会社の不満を話してしまうと、発覚したときにトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
退職の挨拶に対する返信メールを受け取った場合、できるだけ返信したほうがよいですが必須ではありません。退職者は多くの人に一斉メールを送っているので、すべてのメールに対応するのは時間的に困難です。仕事上のつながりや関わりがあまりなかった人には返信しなくてもマナー違反にはなりません。返信を送ってくれた人との在職期間中の関係性をもとに、優先順位を判断していきましょう。
退職挨拶のメールマナーを習得してクリーンに会社を辞めよう
退職の挨拶は、在職中にお世話になった人に感謝の気持ちを伝えることが目的です。会社の不満や批判などを書くことは今後も社内に残る人達に失礼ですし、印象も良くありません。メールの履歴にも残ってしまうので避けるべきです。社外に対しては、引継ぎをスムーズに行うことが目的なので、退職日まで余裕を持たせて適切な時期に退職の挨拶メールを送りましょう。
