転職活動をして複数社から内定を受け取った場合は、実際に入社する企業以外は辞退する必要が生じます。内定を出してくれた企業に辞退の申し出をすることに心苦しさを感じる人も多いでしょう。また、内定辞退は電話とメールのどちらで伝えるべきか迷っている人もいるのではないでしょうか。この記事では内定を辞退する際のマナーやポイントなどに加え、内定辞退でトラブルが発生した際の対処法も解説します。


目次
内定辞退を躊躇してしまう理由とは
内定を辞退する企業はすでに決めているものの、行動に移せない人も多いようです。多くの人が内定辞退の申し出を躊躇してしまう理由はどこにあるのでしょうか。その理由の1つは「怒られるのが嫌だ」という感情が湧いてくるためでしょう。面接時に第二希望や第三希望であることを伝える人はいないでしょう。当然、志望動機や入社への意欲を伝えているはずです。それにもかかわらず内定を辞退するのであれば、面接を実施してくれた企業に対する裏切りになると判断する人もいます。面接の日程の調整に応じてくれたなどの配慮があれば、より申し訳ないといった感情が湧いてくるのも当然です。
しかし、内定の辞退者が出ることは多くの企業にとっても想定内です。ですから、内定者が過剰に心配する必要はないでしょう。重要なことは、時間や労力をかけて選考し、採用を決定してくれたことに対して感謝を示し、誠意のある行動をとることです。誠意ある行動とは、内定辞退を速やかに連絡することであり、辞退の連絡をしないのはマナー違反です。社会人として、やってはいけないことです。また、「怒られるのが嫌だ」「申し訳ない」という感情が湧いてきたとしても、トラブルへの発展を防ぐために連絡は必ず入れましょう。


内定を辞退する際に心がけたいマナー
内定を辞退するのであれば、迷惑をかけないためにも企業に対して誠意ある態度で伝えなければいけません。ここでは、内定を辞退する際に心がけたい基本的なマナーを解説します。
可能な限り早く連絡する
内定辞退の連絡は早めに行いましょう。先延ばしにすればするほど企業に迷惑をかけるだけではなく、自分の中のネガティブな感情も大きくなってしまいます。他の企業からも内定の連絡を受けている場合は、どの企業を選ぶべきか悩んでしまう人もいるはずです。転職先は慎重に検討すべきではありますが、内定辞退の可能性がある場合は内定通知を受け取ってから1週間以内には決断を出さなければいけません。内定を受け取る前に、面接を受けた企業から内定を得られた場合の対応について検討しておくと、結果が出揃った際にすぐに行動に出やすくなるでしょう。
早めに連絡を入れなければいけない理由は、企業の採用計画を乱してしまう恐れがあるためです。企業は内定者数をあらかじめ決めています。内定辞退者が出れば他の候補者へと連絡しなければなりません。自分の内定辞退の連絡が遅れるほどに他の候補者も別の企業への入社を決めるケースが出てきてしまい、企業が欲しい人材が確保できない可能性が高まるのです。場合によっては、採用活動を再度行う必要も生じます。時間もコストもかかるため、企業は内定を出した人に早く決断してもらいたいと考えているのです。内定者が自分以外にいたとしても、辞退の連絡が遅れてよい理由にはなりません。このような事情から、自分の内定辞退の連絡が遅れることが企業や他の候補者にも悪影響を及ぼしてしまう可能性に繋がると心得ておきましょう。
角が立たない理由を考えておく
内定辞退を連絡する際には、角が立たない理由を伝える必要があります。電話を入れた際に辞退理由を聞かれることを想定し、あらかじめ用意しておくとよいでしょう。他の企業からも内定を受け取っていることを隠す必要はありません。ただし「他の企業の方が、給与が良かったから」や「他の企業の方が、知名度が高かったので」などの理由を伝えることはNGです。転職先の企業を選ぶ際には、待遇や知名度を重視することは珍しくありません。しかし、本当の理由をわざわざ伝える必要はなく、選考に時間や労力を割いてくれた企業に対しての辞退理由としても不適切なので注意しましょう。「第一希望の企業から内定をもらえたので」といった理由も面接での発言と矛盾が出てくる可能性があるので避けるのが無難です。
角が立ちづらい内定辞退理由としては「最終的に自分の性格に合った企業を選ばせてもらった」「転職活動を行う中で他の業界にも興味が湧いたので」などがあります。内定を辞退する企業が決して悪かったわけではないものの、転職活動でさまざまな業界や企業に接することで気持ちやキャリアプランにも変化があったと暗に伝えられる理由を用意しておくことが重要です。面接での発言との矛盾を避けることができ、相手企業に対するネガティブな感情を持っていないことも示せます。場合によっては本心ではなく、建前の理由を伝えることをマナーの1つとして覚えておきましょう。
謝罪の気持ちとお礼をしっかり伝える
内定の辞退は、何よりも謝罪と感謝を伝えることが大切です。内定辞退は法律で認められているため、応募者にとっては正当な権利となります。しかし、開き直った態度はマナー違反となるため、社会人として必ず謝罪も含めて内定の辞退を伝えることを心がけなければいけません。中には、内定辞退に対して厳しい言葉を投げかけてくる企業もあるでしょう。そのようなときには、反論することは避ける必要があります。入社しないからと感情的に反論してしまえばトラブルの元にもなりかねません。精神的にもよくはないため、企業側がどのような態度で対応してこようとも、自分だけは最後まで誠意を込めて内定辞退を伝えることが重要です。
謝罪とともに、感謝も必ず伝えましょう。企業は自分を採用するために、時間や労力などのコストを選考に費やしています。他の応募者を採用したからそれでよしなどとは解釈せず、素直に感謝を伝えることも重要なマナーの1つです。家庭の事情などにより内定を辞退するのであれば、その事情も説明しましょう。「機会があれば再度応募させてもらいたい」と前向きな姿勢を見せておくことで、改めて募集がかけられた際にも応募しやすくなり、選考も通りやすくなる可能性が高まります。それが嘘であってはいけませんが、止むを得ない事情があれば謝罪と感謝とともに伝えておくことが求められます。


内定辞退を電話で伝えるときのポイント
特段の事情がない限り、内定辞退は電話で伝えましょう。電話であれば必要な情報を確実かつ早急に伝えることができ、謝罪の気持ちも示しやすいメリットがあります。ここでは、内定辞退を電話で伝える際のポイントを解説します。
相手の都合を配慮した時間に連絡する
電話で内定辞退を申し出る場合は、時間帯に注意しなければいけません。企業の営業時間内に電話をかけるのがマナーです。事前に営業時間を調べたうえで電話をかけましょう。営業時間内であっても、電話を控えるべき時間帯もあります。企業や業界、職種などによって忙しい時間帯は異なりますが、始業直後は朝礼や会議、メールや業務の確認等で忙しいケースが多いため電話は控えます。午前中に連絡を入れる場合は、一般的な企業であれば10〜11時頃がよいでしょう。12時前後は昼休憩に入っている企業や職種が多いため、電話をかけるのは控えなければいけません。昼休憩も企業や職種によって異なるため、13時過ぎでも不在のケースがあります。午後に連絡を入れるのであれば、多くの企業で担当者が対応しやすい14〜17時を目安に電話をかけることを心がけましょう。
17時を過ぎても会社内に残っている人がいる可能性はあるものの、マナーの観点からも17時過ぎに電話をかけることは避けるべきです。夕方に他の企業から内定通知を受け取り、すぐに内定辞退の連絡を入れた方がよいと判断した場合でも17時を過ぎているのであれば翌営業日まで待った方がよいでしょう。内定辞退の連絡は早めに入れるべきではありますが、時間帯によっては翌日などに持ち越すこともマナーの1つであると頭に入れておく必要があります。何よりも企業に迷惑をかけないことを一番に考えなければいけません。内定を辞退することに「申し訳ない」という感情があるのであれば、なおさら連絡する時間帯には配慮が求められます。
早口にならないよう落ち着いて話す
内定辞退を電話で伝える際に緊張してしまうことは仕方がありません。申し訳ないという感情を強く持っている人ほど緊張してしまうでしょう。その結果、早口になってしまったり適切な言葉がスムーズに出てこなかったりする可能性もあります。電話をかける前に、深呼吸をしてみましょう。緊張しやすい人は、慌てずにゆっくりと話すことを事前に意識しておくことが重要です。言葉がうまく出てくるかどうかが心配であれば、伝えたい内容をあらかじめまとめておき、実際に声に出しながら練習しておきます。人事担当者がどのような反応をするのかは分かりませんが、辞退理由や他の企業への応募に関することを聞かれた場合に備え、担当者のさまざまな反応に対する回答を用意しておくのもよいでしょう。
電話を実際にかけた際は、まず担当者を呼び出してもらわなければいけません。受付に対して内定辞退を伝えても状況を把握できない可能性があるため、必ず人事や採用の担当者に繋いでもらいます。担当者が電話対応できる状況であることが確認できたら、内定辞退を伝えましょう。余計な前置きは必要ありませんが「先日はお時間をいただき、ありがとうございました」などの挨拶は重要です。こうした文言も事前に練習しておくとスムーズに伝えられます。
担当者が不在の場合はかけ直す
人事担当者が不在の場合は、改めてこちらからかけ直します。特に理由がないにもかかわらず企業の担当者に折り返してもらうのはマナーとしては正しくありません。担当者が何時頃戻るのかを確認し、その時間に電話をかけ直す旨を伝えましょう。その際、電話対応してくれた人の名前も確認しておきます。行き違いや伝言ミスを防ぎやすくするためです。もし企業側からかけ直すと伝えられたのであれば、それに従います。また、すぐに内定辞退を伝える必要がある場合には、担当者に折り返してもらうようお願いするのも仕方がありません。事情も伝え、折り返してもらいましょう。
電話の後に手紙でもお詫びしておく
電話で連絡したあとにメールでもお詫びを入れておきます。その際もビジネスマナーを守ることが大切です。


電話ではなくメールで内定辞退を連絡する場合の注意点
電話で内定辞退を伝えることに抵抗がある、あるいは事情によって難しいのであればメールで伝えましょう。電話をかけたけれども繋がらなかったなどの場合もメールで伝えて構いません。その際には、事前に電話をかけた旨をメール内に記載しておきます。メールで内定辞退を伝えるメリットは、緊張しなくてもよい点です。また、内定辞退を伝えた事実を内容とともに履歴として残すことができます。しかし、メールは一方的な内容になりがちなため注意が必要です。解釈の違いにより誤解が生じる可能性もあるでしょう。
メールシステムのトラブルやインターネット回線の障害などにより、メールが相手に届かないケースもゼロではありません。メールではなく、直接話したいと考える企業や担当者もいます。内定辞退をメールで伝えたら、それですべて終わりとは考えず、メールの送信後に担当者から電話がある可能性も想定しておきましょう。あわせて、内定を辞退した理由などを適切に伝えられるよう準備しておくことも忘れてはいけません。
内定辞退でトラブルが起きたときの対処法
通常、内定辞退を申し出ることでトラブルになるケースは多くはありません。ほとんどの企業が受け入れてくれるでしょう。しかし、企業から呼び出されるなどのトラブルに発展しまうケースも考えられます。その場合は企業へと足を運び、素直に謝罪するのが無難です。ただ、内定は正式な雇用契約とは異なるため、呼び出しに対して必ず応じなければならない義務はありません。呼び出しに応じるのは、あくまでもトラブルの深刻化を防ぐための対応の一例です。内定承諾に関わる書類をすでに交わしている場合、それを理由に内定辞退を認めてもらえないケースもあります。しかし、入社の2週間前であれば内定辞退に法的には問題が生じないため、入社することは義務とはなりません。
人事担当者は内定辞退者への対応に慣れています。中には、内定辞退者を説得し、入社を決意させる術を身につけている人事担当者もいるでしょう。内定辞退に迷っていたり、辞退理由が曖昧だったりすると、説得されてしまいかねません。話がこじれて不要なトラブルへと発展しないためにも、内定を辞退する決意が変わらないか自分自身の気持ちやキャリアと丁寧に向き合っておくことが重要です。
内定辞退の決心がついたらすぐに電話連絡するのが鉄則
内定辞退の申し出は、抵抗感を抱く行為でしょう。しかし、決意が変わらないのであれば早めに内定辞退の連絡を企業へと入れる必要があります。メールでの連絡も手段の1つではあるものの、誠意を示しつつ、確実に内定辞退を受け入れてもらうためには電話での連絡を選ぶべきです。内定に法的な拘束力はありませんが、失礼な対応は避けましょう。採用してくれた企業に対する謝罪と感謝の気持ちを忘れてはいけません。
