銀行員は、金融のスペシャリストとして知られています。雇用に安定感があることや高収入のイメージから転職を希望する人も多いのですが、「中途採用はあるのだろうか」「未経験だと門前払いされるのではないだろうか」といった不安を持つ人もいるでしょう。この記事では、仕事内容や年収、必要なスキルなど知っておきたい銀行員の基礎知識を踏まえ、転職の難易度や成功につなげるポイントなどを解説していきます。


目次
まずは銀行員について理解しよう!
せっかく転職を果たすことができても、ミスマッチがあってはいけません。そこで、入行後のミスマッチを防ぐために、銀行員の主な仕事内容や年収など知っておきたい基本的な知識を紹介していきます。
銀行員の就職先
銀行は、メガバンクと地方銀行、信託銀行、そしてネット銀行の4種類に大きく分けることができます。メガバンクとは全国規模で展開している銀行のことです。一般的に知られている銀行をあげると、みずほ銀行と三菱UFJ銀行、三井銀行のそれぞれのグループのことを指します。メガバンクは、国内をはじめとした主要な都市に支店を置く傾向があり、大企業に対して多額の融資を行うケースが多いのが特徴です。また、本店が都内にあることで都市銀行とも呼ばれています。
地方銀行は、本店が各都道府県にある地域密着型の銀行のことです。地元企業を中心に、周辺エリアへの融資を行いながら地域経済へ寄与することを主な目的としています。そして、信託銀行は一般的な銀行業務を行うほかに、法人や個人の財産管理と運用を行うのが主な仕事です。最後のネット銀行は、さまざまなサービスをインターネット上で提供する銀行のことをいいます。個人も法人もサービスの対象で、業務の内容は他の銀行とほとんど変わりません。ネット銀行は、実店舗がないことが大きな特徴です。
銀行員の仕事内容
銀行員の主な仕事内容は「預金業務」「為替業務」「融資業務」に分けることができます。これらは3大業務と呼ばれるもので、銀行の種類に関係なくどれも重要な業務です。「預金業務」は、個人法人に関わらず顧客の預金の管理を行います。「預金業務」は、一般的に窓口で対応をする銀行員の担当です。そのため、銀行では目にすることが多い業務といっていいでしょう。「為替業務」とは、顧客の依頼に沿って送金や振込をしたり、小切手や手形の代金を受け取ったりする仕事です。そのほか、海外通貨の売買を行って差益を得る外国為替なども業務に含まれます。
最後の「融資業務」は、住宅ローンや事業資金として個人や法人に貸付を行う仕事です。融資には、銀行の顧客から預かった預金を活用するため、貸し倒れがあってはいけません。そのようなことがないよう、慎重な審査が求められます。ここで紹介した3大業務以外にも、銀行には金融商品の販売や債券、株式の運用、人事や広報といったさまざまな業務があります。


銀行員の職種
銀行員といっても、担当する業務に応じて職種はさまざまです。ここでは、代表的な3つの職種についてそれぞれの特徴を解説していきます。
1.事務職
銀行での事務職は、主に「窓口事務」と「バックオフィス事務」に大きく分けることができます。「窓口事務」は、預金の入出金や送金をはじめ、納税や口座の開設など各種手続きを行うもので、顧客の対応が主な仕事です。利用者にとってもっとも身近な存在といえる「窓口事務」は、テラーという呼び名もあります。顧客によって用件はさまざまに違うため、状況を判断しながらスピーディーな対応が求められる仕事です。
一方「バックオフィス事務」は、後方で手続きの処理を行ったり各種書類を整理したりするほか、電話の応対などを行います。「窓口事務」が顧客から預かった書類を処理するサポート的な業務や確認作業などもこなします。人事や総務といった組織運営に関する事務処理を行うのも「バックオフィス事務」の仕事の1つです。
2.営業職
銀行での営業職は、個人の顧客を対象とした「顧客営業」と、企業や各種団体を対象とした「法人営業」の2種類に分かれます。個人営業は、一般の家庭を訪問して定期預金や投資、保険といった金融商品や住宅ローンなどを提案するのが主な仕事です。直接訪問する以外に、銀行の窓口を訪れる顧客に向けてもこれらの提案を行います。提案するだけではなく、顧客の相談に乗ったりサポートをしたりするのも「顧客営業」の仕事の1つです。
「法人営業」の仕事は、企業の経営層や団体の代表などが対象になります。主な業務は、事業資金の融資や資産運用のアドバイスなどです。融資については、審査を踏まえて経営状況を把握するのも「法人営業」の仕事の1つであり、追加融資の要望があった際の判断なども行うことがあります。また、事業継承やM&Aでのサポートも重要な仕事に含まれます。
3.専門職
銀行の専門職とは、特定の分野に特化した高度な専門知識を有した職種のことです。例えば、顧客の返済能力を判断する融資審査や、資産運用アドバイザー、ディーラーなどが該当します。融資審査は、返済能力を審査するために顧客の財務状況を分析しなければなりません。そのうえで融資の可否や可能な額を判断する重要な職種です。資産運用アドバイザーは、顧客に合った資産の運用方法の提案やリスク管理に関するアドバイスを行います。そして、ディーラーとは為替や債券、スワップ、コモディティー、株式売買など、自社の資金を活用して利益を生むためのリーディングを行う専門職のことです。いずれも専門知識と手腕が問われる仕事で、銀行の信用や業績も左右される重要な存在といっていいでしょう。
銀行員の平均年収
東京商工リサーチは、国内78銀行の平均年間給与を自社のホームページ上で公表しています。その資料によれば、2021年3月期における平均年収はおよそ606万円という結果が出ています。平均年収については銀行の規模によっても異なり、大手銀行の場合はおよそ767万円、地方銀行はおよそ620万円、第二地銀はおよそ548万円です。では、銀行員は一般的に考えて高収入といえるのかどうかを見ていきましょう。
国税庁がホームページで公開している民間給与実態統計調査によれば、全業種を対象にした2020年の平均年収はおよそ433万円です。東京商工リサーチとは調査した時期や機関は異なるため断言はできませんが、他の業種と比べたとき銀行員は高収入が期待できるといっていいでしょう。実際には銀行によっても年収は異なりますし、勤続年数や役職などでも変わってきます。それでも、安定感があり、高い年収を狙いやすいと考えることができます。


銀行員に求められるスキルとは?
銀行は、顧客の大切なお金を預かり、管理を行うことが主な仕事です。預金として預ける人もいれば、投資信託など金融商品を利用するケースもあります。どのような形にしろ、顧客の大切な資産を預かる以上ミスは許されません。几帳面で誠実であるだけでなく、何かトラブルが起こったときに真摯に対応する責任の強さも求められます。「顧客から預かっている」という気持ちを常に持ちながら、丁寧に仕事をこなせる人が銀行員には向いています。
コミュニケーション能力が高いことも、銀行員に求められる重要なスキルです。担当する業務内容にもよりますが、銀行は顧客と接する機会が多く、対応する相手も幅広い年齢層になります。どのような相手でも信頼関係を構築できる能力は、銀行員にとって重要です。経理や財務に関する知識もあったほうがいいでしょう。銀行員は、顧客の資産運用などコンサルティングを行うこともあります。そのため、財務の知識があることは有利に働きます。また、ノルマを課される可能性がある営業職のことも考えると、ストレス耐性の高い人も向いているでしょう。
銀行員への転職は難しい?
これまでの銀行業界では、新卒採用が主に行われてきました。ところが、少しずつ様相は変わってきており、新卒採用を減らす代わりに中途採用が増えているのが現状です。これはメガバンクを中心に起こっている変化で、即戦力を確保する方向へと採用方針が変わりつつあるのが要因となっています。そのため、未経験から銀行員への転職を考えるのは以前ほど難しいわけではありません。社会人としての経験があり、即戦力とみなされれば採用される可能性は十分あり得るということです。
例えば、三菱UFJ銀行を例にあげてみましょう。中途採用の比率は、2019年度は9.6%、2020年度は16.4%、2021年度は18.1%となっており、年々増加していることがわかります。異業種からの未経験者では難しいですが、銀行業務と共通する経験を持つ人であれば即戦力として前向きに採用されやすいでしょう。例えば証券会社や保険会社での勤務経験者やコンサルティング、アナリストなどは戦力として歓迎されやすいといえます。業務のIT化を進めている銀行も多いことから、一見関連性が低そうなエンジニア系の職種経験者も採用される可能性はあります。


銀行員への転職を成功させる3つのポイント
先述したように、銀行員への転職は決して無理なわけではありません。ただし、転職を果たすには努力や注意は必要です。そこで、銀行員への転職を成功させるポイントを3つ解説していきます。
1.できるだけ若いうちに転職する
まず心掛けておきたいのは、できるだけ若いうちに転職を実現することです。銀行で働くための経験やスキルを気にする人は多いかもしれません。しかし、たとえ十分なスキルを持たない未経験であっても、若いうちであれば銀行員として採用される可能性はあります。若いときの魅力は、将来性です。早い時期に転職をしておけば、入行してからさまざまな経験を積んで知識を吸収できます。新しい環境に順応しながら戦力として成長するとみなされ、ポテンシャル重視で採用を勝ち取れることが期待できるでしょう。
具体的な年齢でいえば20代が理想的ですが、遅くとも30代前半までに転職をすることが求められます。20代〜30代前半までであれば、入行後もより多くのキャリアを積むことは可能です。新しい職場環境にも馴染みやすく、柔軟に対応できる年齢といえます。スキルを気にして迷っているという場合は、転職サイトなどに相談して感触を確かめてみるという方法もあります。
2.業務に役立つ資格を取得する
銀行員は、財務や経理などの知識や資格を有していると有利に働きます。銀行員への転職を成功させたいなら、業務に役立つような資格を取得しておくことも重要なポイントです。銀行員の業務では、さまざまな専門知識が必要になります。銀行で活用できる資格には、例えばファイナンシャルプランナーや簿記、証券外務員などがあげられます。他にも銀行業務検定試験などを受けておくといいでしょう。
これらの資格は銀行の業務に役立つため、転職前の準備として取得しておくと採用の可能性を高められます。たとえ実際の業務は未経験であっても、関連する資格を取得しておけば、それだけで熱意をアピールできます。採用担当者に自主性のある人材として見られやすく、好印象を与えることも可能です。理想の実現に向けて努力を惜しまない姿勢を見せることで、転職後も能力を十分発揮してくれると感じてもらえます。
3.応募先を絞りすぎない
転職を成功させるポイントとしては、応募先を絞りすぎてもいけません。転職する以上は大手を狙いたくなる人もいるでしょう。しかし、知名度が高くなるほどライバルが多くなるのが現実です。その分、転職の難易度が上がることも考えておく必要があります。異業種から銀行への転職を図るには、未経験でも受け入れてくれやすい地方銀行や信用金庫も含めた幅広い選択をすることです。
銀行員への転職は若いほど有利!未経験でも諦めず挑戦しよう
銀行員は専門知識が求められることが多く、それだけ未経験からの転職はハードルが高い傾向があります。しかし、20~30代前半という若いうちなら、中途でもポテンシャルを見込まれて採用される可能性は高いといえます。もちろん、何もせずに採用されるということはまずあり得ません。関連した資格を取得したりしながら、応募先を絞りすぎることなく挑戦してみるといいでしょう。
