会社を退職する時には辞表を提出するイメージがありますが、正確には、会社員が提出するのは辞表ではなく、退職願・退職届です。この記事では、退職願・退職届・辞表のそれぞれの違い、退職までスムーズに進めるためのポイント、書き方の見本を紹介します。それぞれの違いを知って、退職までの手続きをスムーズに進めましょう。


目次
「退職願」「退職届」「辞表」それぞれの違いとは?
退職に関する書類はなかなか書く機会がないのでそれぞれの違いが分からない方も多いのではないでしょうか。どの書類も退職に関する大切な書類なのでマナーを守った上で丁寧に作成しましょう。ここでは、退職願・退職届・辞表の違いを解説します。それぞれの書類には違う目的や役割があるので、書き始める前に確認しておきましょう。
最初に退職希望を伝える「退職願」
退職願は、退職を会社に願い出るための書類です。退職とは労働契約の解除のことで「退職しようと思っています」という意思を会社に伝えるためのものです。退職の意思は必ずしも書面でする必要はないので、口頭で伝えても構いません。しかし、退職願を提出することで退職の意思をはっきりと示すことができます。書面で提出しておくと退職時期を巡ってトラブルになった場合でも提出日が証拠として残りますし、退職の意志を伝えたつもりが伝わっていなかったなどの誤解を生むこともないので、提出しておくと安心です。特に次の転職先が決まっている場合は、退職までのタイムリミットがあるため準備しておくとスムーズに進みます。退職願の提出先は、直属の上司であることが一般的です。
正式に退職手続きを届け出る「退職届」
退職届は、退職日などが確定したのちに退職することを会社に対して届け出るための正式な書類のことです。退職届は会社側から退職の合意があってはじめて提出できるものなので、こちらから一方的に提出することのないよう注意しましょう。退職届は、会社側の事務的な手続きのために必要な書類となるので、会社によって規定の様式があることや、提出先も上司であったり人事宛であったりと異なるケースがあります。記入し始める前に事前に直属の上司に確認しておきましょう。また、退職届を提出してしまうと、会社側が退職を承認し雇用契約の解除が確定したことになるので基本的に取り下げることはできません。会社側にも撤回に応じる義務はないので、退職届の提出は慎重に判断しましょう。
公務員や役職を辞める時に提出する「辞表」
辞表は、社長や取締役などの雇用関係のない立場の人や公務員が務めている役職を辞める時に提出する書類のことです。内容に関しては退職届と同様の意味合いがあります。退職時には辞表を提出するというイメージがある方もいるでしょうが、会社員など雇用関係にある人の場合は辞表を提出することはないので間違わないよう気をつけてください。退職届と辞表は混合しがちですが、それぞれの役割が違うので把握しておきましょう。


退職までスムーズに進めるための3つのポイント
会社を退職することは、自分自身にとっても大きな決断ですが、職場にも影響を与えることなので周囲への配慮が必要です。立つ鳥あとを濁さずというように、引き際を美しく退職していくことも社会人としてのマナーです。次の仕事が決まっていると退職までの業務がおざなりになりがちですが、残された人が業務に支障をきたさないよう最後までしっかりフォローしましょう。ここでは、退職までをスムーズに進めるためのポイントを3つ紹介します。
就業規則を確認する
退職をスムーズに進める1つ目のポイントは、就業規則で退職に関する事項を確認することです。就業規則とは従業員の労働条件を定めたもので、常時10人以上の労働者を雇用している会社対して作成が義務付けられています。民法627条では退職の申し入れから2週間を経過すれば退職できると規定されていますが、会社や役職によっては就業規則で「退職希望日の○ヶ月前に届け出を行うこと」などと定められている場合があります。転職先が決まっているけれど就業規則で規定があるために辞められないといったトラブルを防ぐためにも、規定内容を把握しておきましょう。
会社を辞める時は、仕事の引き継ぎや新しい人材の確保が必要となります。そのため会社では業務を滞りなく行えるように退職までの日数を確保しているのです。また、退職届の提出先に関しても「直属の上司を経由して会社に提出する」など会社によって提出先が異なる場合があるので併せて確認しておきましょう。
上司と相談してから、周りに退職を伝える
2つ目のポイントは、上司に許可を得てから周囲に退職を伝えることです。退職が決まれば、一緒に働いてきた同僚やお世話になった取引先に伝えたくなってしまいますが、業務上の混乱を招く恐れもあるため勝手に伝えるのはやめておきましょう。退職を伝えるタイミングは上司の判断を待ってからにしてください。
退職の報告は、本人からではなく上司から行うのが一般的です。まずは社内に退職の報告をしてから、取引先などに引き継ぎの挨拶をするという流れになります。正式に退職が決まっていないのに周囲に伝えてしまうと、現職に留まることになった場合や、退職のタイミングが変わった時に混乱させてしまいます。残された人達が気持ちよく働けるように気配りをすることも大切なマナーです。
有給消化のスケジュールを伝えておく
3つ目のポイントは、有給消化のスケジュールをたてて周囲に伝えておくことです。退職する場合でも有給休暇は取ることができます。有給休暇を消化してから退職できるように、残っている日数を確認しておきましょう。有給休暇を消化する時は、最終出社日の後に有給を消化するのか、最終出社日の前に消化するのかを決めて周囲に伝えておくと引き継ぎのスケジュールが立てやすくなります。
最終出社日の後に有給を消化する場合は、最終出社日と退職日が異なる日になります。そのため最終出社日までに引き継ぎを終えるようにスケジュールを立てておきましょう。周囲にも最終出社日と退職日が違うことを伝えておくと丁寧ですね。一方、最終出社日の前に有給を消化する場合は、最終出社日と退職日は同じ日になります。引き継ぎに支障が出ないように周囲と相談しながら有給を消化していきましょう。


退職願と退職届はいつ、どこで、誰に提出するべきか
退職願や退職届は、就業規則に取り決められている期日内に記載された相手へ提出しましょう。退職願は、退職希望日の1~2ヶ月前に直属の上司に提出することが一般的です。引き継ぎや有給消化を考えると2ヶ月前に提出することが理想的です。どんなに遅くても1ヶ月前には提出するようにしましょう。最初から退職願を出すのではなく、まずは口頭で退職したい旨を報告しその後に提出します。退職の相談をする場合は、上司の忙しい時間を避けて周囲に話が聞こえないよう会議室などで行うなど配慮が必要です。退職願を提出するタイミングで、希望する退職日についても相談しておきましょう。
退職届は、退職日が確定した後直属の上司など就業規則で指定された相手に提出することが一般的です。退職日が確定したら速やかに用意して提出しましょう。こちらも退職願と同様に周囲に話が聞こえないように配慮しながら提出するのがマナーです。
退職願と退職届を出すために準備する物
退職願・退職届を出すために準備するものは、白い便箋・白い封筒・黒ボールペンか万年筆・クリアファイルです。退職願・退職届は読みやすいように白色の便箋に記入しましょう。便箋の大きさはB5サイズが一般的ですがA4でも構いません。筆記用具は黒色のボールペンか万年筆を使用してください。不明瞭だと正式に受理されない恐れがあるので摩擦で消えてしまうようなボールペンは避けてください。記入した便箋は白色の無地の封筒に入れましょう。封筒の表面に7桁の郵便番号を記載する四角がプリントされているものもありますが、無地の封筒の方が好ましいとされているので、郵便番号が入っていない封筒を用意するのがベストです。便箋の大きさがA4の場合は長形3号の封筒を、A5の場合は長形4号の封筒を用紙しておきましょう。持ち運ぶ際に折れ曲がらないようにクリアファイルに入れて持ち運ぶと丁寧です。
また、郵送で会社宛に送る場合は、白色で郵便番号の枠がある一回り大きな封筒も用意しましょう。退職願や退職届は手渡しが基本ですが、病気やケガなどで手渡しが困難な場合は、退職の意志を電話などで伝えた上、会社の指示に従い郵送の手配をしましょう。


退職願と退職届、封筒の書き方をそれぞれ解説
退職願や退職届に記載する事柄は決まっているので、所定の様式通りに記載すれば大丈夫です。では、具体的に退職願・退職届と封筒の書き方をそれぞれ解説します。見本となる例文も紹介するので参考にしてください。
基本は「縦書き」「手書き」で作成する
退職願・退職届を記入する前に、書く時の基本ルールを確認しておきましょう。退職願や退職届は、手書きで作成することが基本になります。パソコンでの作成もマナー違反ではありませんが、手書きのほうが丁寧で誠意が伝わりやすいと考える人が多いようです。ただし、会社からパソコンでの作成を指定された場合や指定フォーマットがある場合はそれに従ってください。パソコンで作成する場合でも、自分自身で書いたことの証明になるよう署名部分は自筆で行いましょう。
退職願・退職届の封筒の表書きは縦書となるため、文章も縦書きが基本となります。特段の理由がなく会社からの指定もない場合は縦書きで記入すればよいでしょう。
退職願の書き方
退職願を書く時は、基本的なフォーマットに従って記入しましょう。構成はタイトル・書き出し・退職理由・退職希望日・提出日・所属・氏名・捺印・宛名の順で記載します。
まずは書面の一番上に「退職願」とタイトルを書き、「私儀」と書き出しを下部に記入します。次に退職理由を書きます。「このたび、一身上の都合により、勝手ながら、〇〇年○月○日をもって退職いたしたくここにお願い申し上げます。」と簡潔に記載しましょう。自己都合による退職の場合、退職理由は一身上の都合と書きますが、会社都合による退職で、会社から退職届の提出を求められた場合は、部門縮小のため、退職勧奨に伴い、など退職の理由を具体的に記入します。退職希望日は西暦でも和暦でも構いませんが、会社の公式書類に使用しているものに合わせるのが良いでしょう。次に「〇〇年○月○日」と提出日を記載し、宛名より下の位置に「第一営業部 山田太郎」と正式な所属部署名と名前を記入し、名前の下に捺印します。最後に「株式会社代表取締役社長 山田二郎様」と会社の最高執行責任者の役職名と名前を、自分の名前より上方に書きます。敬称は殿か様を使用しますが、殿は目下の人に使う言葉という認識を持っている方も多いので様の方が無難です。
退職届の書き方
退職届も退職願と同様の構成で記入します。まずは書面の一番上に「退職届」とタイトルを書き、「私儀」と書き出しを下部に記入します。次に退職理由を書きます。「このたび、一身上の都合により、勝手ながら、〇〇年○月○日をもって退職いたします。」と簡潔に記載しましょう。退職日は上司と合意した日付を記入します。退職理由については退職願いと同様に記載しましょう。提出日・所属・氏名・捺印・宛名の記載方法も退職願と同様、「〇〇年○月○日」「第一営業部 山田太郎」「株式会社代表取締役社長 山田二郎様」と順に記載します。
封筒への入れ方・書き方
退職願・退職届は封筒に入れて提出するのがマナーです。封筒は表面に「退職願」「退職届」の当てはまる方を封筒中央に縦書きでバランスよく記入し、裏面左下に「第一営業部 山田太郎」と自分の所属部署とフルネームを書きます。封筒への入れ方は、巻き三つ折りが基本です。まず書類を正面に置き、長辺を3等分するように下から上に3分の1折り上げます。次に上から下に折り重ねます。軽く折って目印を付けてからきれいに折りましょう。
封筒に入れる時は、書類の右上方(タイトル上)が封筒の裏の上部にくるように入れましょう。こうして入れることで、読み手が封筒から取り出して開いた際にすぐに読むことができます。手渡しをする場合は、封筒にはのり付けはしてもしなくてもどちらでも構いません。読み手である上司や人事担当者が中身を確認しやすいように封なしで手渡ししてもいいですし、のりやシールが付いているタイプの封筒を使用している場合は封をしても問題ありません。封をする場合は未開封であることを示すため必ずボールペンや万年筆で封入口に締めマークを付けましょう
退職マナーは厳守!退職願や辞表の書き方を守り円満退社を目指す
退職願や退職届は会社に提出する大切な書類です。会社の規則に従って速やかに提出することが社会人としてのマナーです。業務の引き継ぎをスムーズに行うことはもちろんですが、お世話になった相手に敬意を持って手続きを進めることも大切です。円満に退職することで、次の転職先でも気持ちのよいスタートを切ることができるので、最後まで誠意を尽くしましょう。
