出勤最終日に退職の挨拶をすることは、社会人として常識といえます。とはいえ、お世話になった人たちにどう感謝を示せば良いのか、悩む人もいるのではないでしょうか。適切な退職挨拶ができず最後に悪い印象を与えないためにも、マナーをきちんと押さえておくことが大切です。そこで、この記事では退職挨拶のタイミングや方法、出勤最終日や退職挨拶以外にしなくてはならないことについて解説します。


目次
上司との相談も必要!退職挨拶をするタイミング
退職にあたり、多くの人の頭を悩ませるのが挨拶をするタイミングでしょう。結論からいうと、退職挨拶は「勤務最終日」のタイミングで行うことが一般的です。周りの人が忙しくないタイミングを見計らい、退職の挨拶をスマートに済ませましょう。なお、退職の挨拶をメールで送る場合は、おおむね「就業時間の1時間前」が一つの目安となります。ただし、備品のパソコンを返却するタイミングによっては、1時間前よりも早くにメールを送っても問題ありません。状況に合わせて判断しましょう。
退職挨拶としてスピーチをする場合は、基本的に就業時間の適切なタイミングで場を設けてもらうケースが多くみられます。とはいえ、決まったタイミングがあるわけではないため、不安な場合はあらかじめ確認しておくと安心でしょう。全体への挨拶を済ませたら就業時間後、特にお世話になった上司や同僚に挨拶回りをしていきます。なかには、勤務最終日よりも早い段階で退職挨拶をしたい人もいるかもしれません。しかし、退職挨拶は会社全体に知らせるべき情報であり、自分の判断だけで動くことは避けたほうが無難です。具体的にどのようなタイミングで退職の情報開示をするか、あらかじめ上司とよく相談しておきましょう。
長々と話すのはダメ?退職挨拶をスピーチでするときのポイント
退職挨拶としてスピーチをする場合、内容がよく聞き取れるようにゆっくりと話すことが大切です。なお、内容は事前によく整理しておき、気分良くお互いに別れを迎えられるようなエピソードを選ぶ必要があります。そこで、ここでは退職挨拶をスピーチでするときのポイントをいくつか紹介します。
ゆっくりなペースで話す
退職挨拶のスピーチでまず注意したいのが「話し方」です。多くの人の前に立って退職の挨拶をするのは、非常に緊張するシチュエーションといえるでしょう。緊張から思わず早口になってしまいがちですが、意識してゆっくりと話すようにすることがポイントとなります。また、改まった場の雰囲気に圧倒されて小声になってしまうこともよくある失敗の一つです。感謝の気持ちをしっかりと伝えるためにも、大きな声でハキハキと話すよう心がけましょう。話すときの視線は、できるだけまんべんなく全体を見渡すようにすることが理想です。このとき、うつむいたり照れ笑いを浮かべたりしないようにしましょう。
具体的なエピソードを交える
退職挨拶は「具体的なエピソードを交える」ことで、より良い内容になります。退職挨拶でただ相手に「お世話になりました」と伝えても、具体性がなくあまり心には響きません。そこで、在職中の具体的なエピソードを交えて挨拶をすることで、印象深い内容になります。たとえば、入社時のことや会社における業務などを盛り込むと良いでしょう。「入社して間もないときにフォローしてもらった」「仕事で大変だったときにかけてもらった言葉」などは具体性があり、印象に残りやすくなります。
なお、スピーチで長々と話すのは避けたほうが無難です。最後に色々と思い出話をしたくなる人もいるかもしれませんが、あまりに時間が長いと聞く側が疲れたり業務に支障が出たりするおそれがあります。5分程度を目安に話し終えられるよう、内容をうまくまとめましょう。
今後の活躍を祈る言葉で締める
退職のスピーチの最後は「今後の活躍を祈る言葉で締める」のがセオリーです。挨拶の最後は今までの感謝を述べるとともに「皆様の今後の活躍を祈念しております」といった表現で締めるようにしましょう。ほかの従業員や会社の発展を願う言葉で締めることで、お互いに気持ちの良い退職挨拶となります。お世話になった気持ちを込め、印象が良くなるような終わり方を意識しましょう。


社内と社外で対応が異なる!退職挨拶をメール送信する際の注意点
退職挨拶はできる限り対面で行うことがベストです。しかし、会社の社員数が多かったり顧客をたくさん抱えたりしている場合、どうしてもすべての人に対面で挨拶することが難しくなります。状況によってはメールで退職挨拶をする方法もありますが、社内と社外とで対応が変わる点に注意が必要です。そこで、ここでは退職挨拶をメールで送信するときの注意点を解説します。
社内の場合
社内に退職挨拶のメールを送る場合、報告というよりも最後の挨拶というイメージで送ると良いでしょう。社内に退職挨拶メールを送る人が大勢いる場合は、必ずしも個別ではなく一斉送信しても問題ありません。ただし、誰にメールを送ったのかわからないように、宛先をBCCに入れることがマナーとなります。送信前に宛先がBCCになっているかどうか、よく確認しましょう。退職挨拶メールの内容はスピーチのときと同様、できる限り現職中の具体的なエピソードを盛り込むことがポイントです。
単に「ありがとうございました」「お世話になりました」といった端的なメッセージではなく、きちんと感謝の気持ちが伝わるような言葉を選ぶ必要があります。「何をしてもらってどう嬉しかったのか」「自分にどのような影響があったのか」を盛り込むと具体性のある文章に仕上がります。また、メールに連絡先を盛り込む場合は、退職後も連絡がつく個人のアドレスなどを記載しましょう。社内で退職挨拶メールを送る際、気を付けたいのが「特にお世話になった人への対応」です。直属の上司や先輩など、特に関わりが深かった相手には全体発信ではなく、個別でメールを送ることが基本的なマナーといえます。全体発信で簡単に済ませないようにしましょう。
なお、人によっては退職挨拶をメール送付で済ませる行為自体が「失礼だ」「マナーがなっていない」と捉えてしまうこともあります。相手に不快感を与えないためにも、直接挨拶ができなかったときはお詫びの一文を入れておきましょう。具体的には「本来なら直接ご挨拶に伺うところ、メールにて失礼いたします」などと盛り込めば問題ありません。加えて、注意したいのが「退職挨拶メールに返信があった場合の対応」です。なかにはメールを返信してくれる律儀な人もいます。
もしも返信が届いた場合は「ご返信ありがとうございます。頂戴した言葉を胸に新天地でも精進してまいります」などとお礼の一言を添えて返信することがマナーです。退職間近になるとバタバタと忙しくなりがちですが、返信を忘れないようにしましょう。
社外の場合
社外に退職挨拶のメールを送る場合、最も注意したいのが「タイミング」です。退職挨拶のメールを送る場合は、後任への引継ぎを考慮しなければなりません。目安として、退職の2~3週間前にはメールを送るように心がけましょう。当然、上司の許可も事前に取っておく必要があります。加えて、ほかのメールに埋もれてしまわないように、件名を工夫するようにしましょう。毎日大量のビジネスメールを受け取る人の場合、ほかの連絡に混ざって開封されないおそれがあります。
相手が「読んでいなかった」という事態を避けるためにも「退職の挨拶」などとはっきりと記載し、一目で内容がわかるような件名にしましょう。なお、件名には会社名と自分の氏名をあわせて記載しておくと親切です。メールの内容としては、冒頭で相手の会社名と氏名を記載しますが、本文中のなかでも再度相手の名前を入れるようにしましょう。名前を繰り返し記載することで、気持ちが伝わりやすくなります。その相手との個別エピソードがあれば記載するのもおすすめです。ただし、長文になりすぎないよう、あくまでも簡潔にまとめることが重要になります。
後任の担当者と改めて挨拶に伺う予定がある場合は、その旨もメールに盛り込んでおきます。後任者の名前や連絡先まで記載しておくと丁寧です。どうしても都合がつかずメールのみの挨拶となる場合は、お詫びの一文を忘れずに入れましょう。


批判や愚痴は避ける!退職挨拶をする際にやってはいけないこと
退職の挨拶をする際は、やってはいけないことがいくつかあります。まず「具体的な退職理由を述べる」ことです。なぜなら、細かい退職理由を伝えると会社に対するネガティブな意見を述べてしまう可能性があるためです。誤解を受けたりトラブルに発展したりするおそれがあるため、注意しましょう。基本的には深く理由を掘り下げず、ビジネスライクに「一身上の都合」とだけ伝えるとスマートです。次は「転職先の話をする」ことです。仮に転職先が決まっていたとしても、口にすることは避けましょう。
特に同業他社への転職などは、今後のライバルと捉えられて心象を悪くしてしまうおそれがあります。転職先を聞かれた場合は「後日こちらから連絡します」などと説明すれば、うまく切り抜けられるでしょう。それ以外にも、退職挨拶では「批判的な内容や愚痴を口にする」行為は避けることが基本です。会社への批判や愚痴は雰囲気が悪くなるだけではなく、転職先で前職の業界と接点が発生した場合に不利益を生むリスクが高まります。このような点を踏まえ、職場に対する不満がたまっている場合でも批判は避けることが大切なのです。
お菓子を配るのも有り?退職挨拶の他にやるべきこと
出社最後の日にやることは退職挨拶だけではありません。備品の返却から身の回りの片付けまで、やることは多岐にわたります。また、感謝の気持ちとしてお菓子を配るのも良い印象につながりやすいためおすすめです。具体的に出社最後の日は何をすればいいのか、ここでは退職挨拶以外にやるべきことを説明します。
備品の返却
出社最後の日に忘れずにやるべきことの一つが「備品の返却」です。会社の経費で貸与されているものは、すべて勤務最終日に返却しなければなりません。具体例としては社員証や制服、スマホやパソコンなどが挙げられます。特に、機密情報に該当する書類やデバイスは忘れずに返却する必要があります。万が一、誤って転職先の会社に持ち込んでしまうと、情報漏えいとなるおそれがあるため注意が必要です。最悪の場合、裁判沙汰になる危険性もあるでしょう。あらぬ疑いをかけられないためにも、返すべき備品をチェックしておくことが大切です。
身の回りの掃除
立つ鳥跡を濁さずという言葉があるように、今までお世話になった感謝の気持ちとして隅々まで「身の回りの掃除」を行いましょう。ロッカーやデスクなど、自分が使った身の回りのものを綺麗にすることは社会人としてのマナーです。退職したあと次に入社する従業員への配慮として、私物はすべて持ち帰り不用品は処分します。ロッカーやデスクなどにゴミが残っていると悪い印象につながるため、気を付けましょう。


お菓子を配る
退職の際は必須ではないものの「お菓子を配る」のも悪くないアイデアです。今までの感謝の気持ちを示す一つの手段として、お菓子を配るという行為は検討の余地があるでしょう。というのも、手ぶらよりもお菓子を用意したほうが挨拶のきっかけを作りやすいためです。お菓子を配ることで多少印象も良くなり、次の仕事で何らかの接点ができたときにも関係性がスムーズになる可能性があります。なお、お菓子は高額なものでなくても構いません。配るお菓子は万人受けするチョコレートやクッキーなどを選ぶことが無難でしょう。
また、個包装ではないお菓子の場合、その場で食べる必要があり人によっては不便さを感じてしまいます。受け取る側への配慮として、個包装されているお菓子を選ぶことがおすすめです。お菓子を渡すときの順番は、基本的に職位が高い人から先に配っていきます。離席しているときは机にお菓子を置いておきましょう。感謝の気持ちを込めたメッセージカードを残すとなお良いでしょう。
引継ぎの最終確認
最後の出社日は「業務の引継ぎの最終確認」を行うことも大切です。業務の引継ぎは退職日が決定した段階で逆算し、少しずつ進めていくことが基本です。つまり、勤務最終日を迎えるまでにはほぼ引継ぎは終わっていることになります。とはいえ、伝え忘れがあると今後の業務に支障が出てしまう可能性があります。きちんと引継ぎができているか、最終確認をしておくと安心です。その際、後任者と一緒にチェックをすることがおすすめです。伝え忘れや渡し忘れている資料がないか、確認しておきましょう。
退職の挨拶を綺麗に決めて気持ちよく新しいスタートを切ろう
退職の挨拶は会社を円満に辞めるために欠かせないものです。もしも職場に不満がある場合でも、退職の挨拶で口にすることは避けるようにしましょう。状況によってスピーチやメールなど退職の挨拶方法は異なりますが、いずれにしてもマナーを守り、今までの感謝の気持ちを伝えることが大切です。丁寧さを心がけ、気持ち良く新しい門出を迎えられるようにしましょう。
