転職活動をしていて、中にはいくつかの業界のディレクターの仕事に憧れる人はいないでしょうか。しかし、一口にディレクターといってもその種類はさまざまです。ディレクターになるための方法も違います。決して簡単になれる職種ではありませんが、段階を踏んでいけばチャンスがないとも限りません。本記事では、ディレクターの概要について紹介し、主な仕事内容や目指すための条件、年収などについて業界別に解説していきます。


目次
プロデューサーとは違う?ディレクターとはそもそもなにか
ディレクター(director)は、そのまま日本語に訳すと「指揮者」や「管理者」といった意味になります。つまり、ディレクターとは制作の現場において総監督という役割を果たす人のことです。制作の仕事を行う他のメンバーに、作業指示を出したり進捗管理を行ったりします。ただし、ディレクターといってもすべての業界で制作に携わる仕事を指すわけではありません。会社によっては、部長や取締役といった役職者をそう呼ぶケースも見られます。
ディレクターと混同されやすいポジションにプロデューサーがあります。プロデューサーも管理を行う点では同じといえますが、権限を持つのは予算や人事などです。これらの権限を握っている制作全体の責任者をプロデューサーといいます。一方、ディレクターは現場を指揮して管理することが主な仕事です。制作物の出来上がりに責任を持つポジションであり、その点がプロデューサーとは違います。また、アシスタントディレクターはディレクターの補佐を行う職種のことで、一般的にはADと略した形で呼ばれます。他にも、IT業界寄りではありますが、ディレクターとプロジェクトマネージャーも混同しやすいので注意が必要です。
代表的な業界をピックアップ!ディレクターの仕事内容や目指し方
ディレクターという肩書は、限られた業界だけではありません。さまざまな業界で使われています。同じディレクターでも、仕事内容や年収、目指し方などは業界ごとで違ってきます。ここでは、代表的なディレクターとして「TVディレクター」「クリエイティブディレクター」「Webディレクター」の3つを紹介していきます。
TVディレクター
ディレクターと聞いて真っ先にイメージするのはTVディレクターではないでしょうか。ここでは、TVディレクターの仕事内容、目指し方、年収などについて解説していきます。
仕事内容
TVディレクターの仕事は、プロデューサーが決めた番組を制作する際に指揮を取ることです。実際の細かい仕事内容については番組や制作会社によって異なりますが、多くの場合に共通する主な仕事をあげてみましょう。まず、番組の企画に必要なスタッフと機材の手配もディレクターの仕事です。他には、それぞれのスタッフの仕事の管理や映像の編集なども行います。あらかじめ予算が限られた中でクオリティの高い映像を作り上げるという大きな役割を持っています。
TVディレクターの場合、演出の指導も行わなければなりません。そのため、現場スタッフと綿密に打ち合わせをする機会が増えてきます。また、制作するうえで重要になってくるのがクライアントとのさまざまな調整です。ディレクターは、クライアントと現場の意見のすり合わせなども重要な仕事にあげられます。ときには、予算や演出などの点で双方に認識のズレが発生することも少なくはありません。そのようなときは、現場側の代表としてプロデューサーに相談することもディレクターの仕事の一つです。
目指し方
TVディレクターになるための段階としては、アシスタントディレクター(AD)から始めるのが一般的です。ADは、ディレクターを補佐する仕事なので、業務を行いながら番組制作に関する基本的な部分を数年間学ぶことができます。そして、実績や能力が認められれば、ディレクターへと昇格するチャンスを掴めることになります。
実際にディレクターに上がれるまでにかかる年数は人それぞれに違います。ただ、目安としてはだいたい5年程度といわれています。この年数は、キー局でも地方局でも違いは見られません。つまり、ADとして5年程度の下積みが必要だということです。TVディレクターを目指すには特に資格は必要ありませんが、豊富な知識と幅広い視野が求められる場面が多くなっています。また、ユニークな性格も武器になるでしょう。テレビ局によっては、大学卒業であることを条件としているケースもあります。アルバイトでADから始めるという手段も可能性はありますが、大学に進学しておくほうが望ましいでしょう。
年収
TVディレクターの年収は、全体で見ると500万円前後といったところです。華やかな業界の割には少ないと感じる人も多いかもしれません。ただ、クリエイティブ系全体の平均年収は380万円前後なので、業界のなかでも年収は高い方といえるのです。また、キー局の場合は年収1000万円を超えることも十分可能です。対して、地方局のTVディレクターとなるとやや年収は低い傾向があります。キー局に比べて2〜3割ほど年収は低めになります。
しかし、これはテレビ局の場合で、下請けになるとさらに年収は下がると考えたほうがいいでしょう。テレビ番組の制作は、下請けの制作会社が行うことも多いものです。そのため、番組制作会社に入社するのもディレクターを目指す一つの手段ですが、年収は低めになります。中には、400万円前後になるケースもあります。


クリエイティブディレクター
クリエイティブディレクターは、広告業界に興味を持つ人にとっては花形的な職業といえます。ここでは、クリエイティブディレクターの仕事内容と目指し方、年収について解説していきます。
仕事内容
クリエイティブ(creative)は、そのまま日本語に訳すと「創造的」という意味になりますが、広告業界の場合でいえば「制作物」のことを指します。クリエイティブディレクターとは、制作物の現場において全体を取り仕切る監督のような存在といっていいでしょう。まず、クリエイティブディレクターの仕事としてあげられるのは、クライアントがどのような物を作りたいのか要望や計画を聞くことです。
そして、コピーライターやデザイナー、カメラマンといった制作に必要なクリエイターを集めて、一つのチームを結成して広告制作に当たります。このとき、ただ必要なメンバーを集めるだけではいけません。メンバーのそれぞれが自分の能力を十分発揮できるよう、良好なチームワークの構築もクリエイティブディレクターの手腕の一つとして求められます。
クリエイティブディレクターと混合されやすい職種にアートディレクターがあります。広告業界で活躍する点では同じですが、アートディレクターは専らビジュアル部門の監修を行うのが仕事です。対して、クリエイティブディレクターは広告制作全体を監修するという点が違っています。
目指し方
クリエイティブディレクターの仕事は、幅広い専門性が求められます。制作に当たるさまざまなクリエイターの仕事を理解していることが必要になるのです。そのため、デザイナーやコピーライター、カメラマンといった主なクリエイターとしての経験を積むことが好ましいといえます。こうしたプロセスを踏まずにいきなりクリエイティブディレクターになるのは非常に困難です。
まったく何も経験がない状態なら、クリエイティブ職の基本であるPhotoshopやIllustratorといったツールを理解することから始めてみるのもいいでしょう。そして、DTPエキスパートやアドビ認定エキスパートなどの資格を取得するのもいいでしょう。ただし、こうしたツールを使いこなせるだけでなく、さまざまなクリエイティブ作品に触れて感性を磨くことも重要です。
クリエイティブディレクターは、まずクライアントの要望を上手に聞き出す能力が求められます。クライアントの中にはクリエイティブなものについてまったく知識を持たない人も多いため、その分十分な知識を身につけておく必要があります。そうすることで、クライアントの要望を上手に形にすることが可能になるでしょう。さらに、チーム全体を引っ張っていく役割も担うため、コミュニケーションスキルも必要です。普段からチームの中で橋渡し的な役割を経験しておくといいでしょう。また、プロジェクトを成功させるには限られた工数と予算の中で行うことも必要なため、マネジメントスキルも重要になってきます。
年収
クリエイティブディレクターの場合、年収の平均はおよそ500万円といったところです。前述したようにクリエイティブ系全体の平均年収が380万円前後なので、業界の中でもクリエイティブディレクターの年収はかなり高いほうといっていいでしょう。もちろん、実際には会社や経験によって年収に差が生じます。例えば、大手広告代理店勤務で、さらに十分な実績を残しているクリエイティブディレクターなら、年収は1000万円を超えるケースも珍しくありません。


Webディレクター
Webディレクターは、Webサイトの構築や運用を行うときに中心的な役割を担う人のことです。ここでは、Webディレクターの仕事内容や目指し方、年収について解説していきます。
仕事内容
Webディレクターの主な仕事の一つにあげられるのは、Webコンテンツの制作にともなう企画の提案です。そして、そのために立ち上げるプロジェクト全体の責任を持つことも重要な仕事になります。もちろん、プロジェクトを遂行するためのメンバー選定もWebディレクターの重要な仕事の一つです。Webデザイナーやプログラマー、コピーライターといったスタッフと連携をとりながら、クライアントの要望を実現するためのWebサイトを構築していきます。
実際には、作業日程の計画と管理、メンバーの進捗管理なども行いながら、納期までに完了できるよう調整を行う役もこなさなければなりません。つまり、Webコンテンツの制作に関するすべての管理と責任を担うのがWebディレクターなのです。制作だけにとどまらず、その後の運用や更新にもWebディレクターが携わる必要があります。具体的には、Webサイトが目標とする売上や集客数に向けてPDCAを回し、サイトを適切に改善していくという内容です。
Webディレクターは、一つのサイトを制作から管理まで担当するため大きな責任をともないます。しかし、年々デジタル化が進むという流れから、今後も需要が見込める職種といっていいでしょう。Webコンテンツによって企業の業績を左右することも考えると、やりがいのある仕事といえます。
目指し方
Webディレクターを目指すには、まずWebサイト制作のためのプログラミング、さらにUIなどについて幅広い知識を持つことが望ましいでしょう。もちろん、Webディレクターは指示する側であり、実際に自分でプログラミングをすること自体が仕事ではありません。実際にプログラミングを行うのはプログラマーの仕事です。しかし、基本的な技術と知識がなければ、メンバーに向けて適切なディレクションを行うことは難しいといえます。
必要な専門知識を持たない人がディレクターでは、何を指示していいかも判断できないでしょう。それでは、プロジェクトのメンバーが困ることになります。メンバーをまとめることができないと、クライアントの要望に沿ったコンテンツを作るのも無理な話です。さらに、Webディレクターにはマーケティングの知識も求められます。これは、ユーザーを効果的に集めるためのサイト設計の依頼も多いためです。Webディレクターとして高い評価を得たいなら、マーケティングの知識も習得しておきましょう。
他のディレクターでも説明してきましたが、Webディレクターもクライアントとの交渉やチームをまとまる場面が多くなります。そのために必要なコミュニケーションスキルを磨いておいて損はありません。ただ、未経験からWebディレクターになるのは難しいことです。決して簡単とはいえませんが、Web業界以外でプロジェクトリーダーやマネジメントといった経験を活かし、それからWebディレクターとして仕事に就いた事例もあります。
年収
年収は、Webディレクター全体の平均としては、450万円前後といったところです。もちろん、あくまでこれは平均であり、実際にはスキルや経験にともなって年収には差が出ます。大規模なWebコンテンツを手がけるWebディレクターになると、年収は1000万円を超えることも夢ではありません。
ただし、未経験となると年収は低めになります。未経験からWebディレクターを目指す場合は、年収が350万円程度になるケースもあります。未経験といっても、先述したようにまったく知識を持たずにできる職種ではありません。必要な知識を身につけたうえで未経験から始める場合と考えておけばいいでしょう。
仕事に大きなやりがいを求めるならディレクター職に挑戦しよう
ディレクターは、どの業界であっても未経験者がいきなりできるほど甘い仕事ではありません。しかし、プロジェクト規模によっては多くの人を巻き込み、世間を驚かすようなアウトプットを生み出すことができるのは大きなやりがいです。挑戦したいときは、簡単にできる仕事とは思わず、必要な技術を身に付け経験を積んで、マネジメント能力やコミュニケーション能力を磨くことから始めましょう。
