転職活動で面接を受けた後、担当者に対してお礼メールを送るという慣習があります。ただ、お礼メールを送ったとしても、基本的に選考には影響しないといわれています。そのため、実際に送るべきかどうか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、面接後にお礼メールを送る必要性や、送る際の注意点、また書き方やすぐに使える例文など、お礼メールの基礎知識について詳しく解説します。


目次
面接のお礼メールは送るべき?採用確率が上がるって本当?
新卒者の就職活動において、面接後にお礼メールを送ることは一般的です。これに対して、転職活動でお礼メールを送ることは、あくまで慣習的な礼儀に過ぎず、必ずしも一般的とはいえません。まだあらゆる能力に乏しい新卒者に比べて、中途採用の応募者はスキルや経験重視で合否が決められます。そのため、あくまで面接担当者の印象に残りやすいというサブ的な意味で送られるお礼メールは、転職活動においてはそこまで重要視されない傾向があるのです。
ただし、結論からいえば、転職活動であってもお礼メールは送っておいたほうが良いといえます。なぜなら、上に挙げた理由によって、中途採用の現場ではお礼メールを送らない人が多いからです。中小企業やベンチャー企業などでは、そもそも中途採用の応募者自体が少ない傾向があります。そのように応募者が少ない企業の面接では、一人ひとりの印象が強く残りやすいので、丁寧な対応をしておくことが選考にも良い影響を与えることが多いのです。
例えば、同じ能力・スキルの人と比較されていて、どちらか一人しか採用されないといった状況があったとしたら、やはり印象の良かったほうを選びたいというのが担当者の心情としてあります。その際、お礼メールを送っていれば、そのことが良い印象につながって、選考に残れる可能性も高まります。このように、転職活動では何が採用のきっかけになるかわかりません。少しでも可能性を高めるためにも、お礼メールはできれば送っておいたほうが良いでしょう。
お礼メールの注意点とは?内容次第では失礼にあたることも
お礼メールを送っておけば、少なくともマイナスの評価を受けることはありません。ただし、それは送ったお礼メールが正しい形式で書かれている場合です。もし、ビジネス上のマナーを逸脱した、失礼なお礼メールを送ってしまっていたとしたら、むしろマイナスな印象を与えてしまうこともあるので注意が必要です。では、お礼メールを送る際には、どのような点に注意したら良いのでしょうか。以下、お礼メールの注意点について解説します。
ビジネスメールのマナーは守る
お礼メールは面接後に送るものですが、面接が終わっても応募者と採用担当者という関係性に変わりはありません。そのため、お礼メールは面接の延長線上にあるものと考えて送る必要があります。面接後に担当者との関係が近くなっていたとしても、フランクな文章や、絵文字や強調・色文字など、ビジネスメールのマナーに反するような書き方でお礼メールを送ってはいけません。マナーに反するお礼メールはかえってマイナス評価につながります。ビジネスメールの体裁を守り、丁寧な文章で作成することが大切です。
非常識な送信時刻・日時に送らない
お礼メールを送るタイミングは、面接が終わった当日か、遅くとも翌日までには送るものです。面接から日数が経ってからでは、担当者にかえって不信感を持たれてしまう場合もあるので、送るならなるべく早く送るようにしましょう。ただ、送信する時刻には一定の配慮が必要です。深夜や早朝など非常識な時刻のメール送信は失礼にあたるので、日中に送るなど時間帯を考えて送信することを心がけましょう。


必ず、私用のメールアドレスから送る
転職活動時は、まだ現職を続けていることも多く、会社のアドレスを使ってお礼メールを送ることも可能です。しかし、お礼メールは必ず個人で保有しているメールアドレスから送る必要があります。現在の職場のアドレスで転職先企業にメール送信すれば、無神経な人間だと評価されかねません。お礼メール自体が私的なメールとなるので、基本的なマナーとして、送信する際は私用のメールアドレスを使いましょう。
ネットからのコピペ文をそのまま送信しない
お礼メールの内容は、面接で感じたことなどを簡潔に記すのが一般的です。もちろん、ここでも紹介する例文などを参考にするのは良いですが、明らかにネット上のテンプレートをコピーペーストしただけのような内容でメールを作成することは避けなければなりません。お礼メールは義務ではなく、あくまで礼儀として送るものです。にもかかわらず、定型的な文章で書かれたお礼メールでは、採用担当者に「なぜわざわざ送ってきたのか」と疑問に思われてしまうでしょう。例文を参考にしたとしても、面接当日にやりとりした内容を随所に盛り込むなど、工夫しながら作成することが大切です。
面接後に送るお礼メールの書き方
お礼メールを送ると決めたら、相手に対して失礼に当たらないよう、マナーを守りながら丁寧に作成していく必要があります。では、お礼メールは具体的にどのような手順で書いていけばいいのでしょうか。ここでは、面接後に送るお礼メールの基本的な書き方について解説します。
件名はどんな目的か分かるように明確に書く
お礼メールの作成でまず注意したいのは、件名の書き方です。お礼メールの件名は、そのメールが誰からどのような目的で送られてきたのか一目で分かるように書くことが大切です。企業の担当者によっては、毎日大量のメールを受け取って対応しています。そのため、件名で何のメールかわからなければ、せっかくお礼メールを送信しても、担当者に見過ごされてしまうことがあります。
また、件名を明確に書くことはビジネスメールのマナーでもあるため、件名がわかりにくいお礼メールを送ってしまうと、担当者からマイナスな評価を受けることにもなりかねません。「本日はありがとうございました」などのような何が伝えたいかわからない件名ではなく、「【本日の面接のお礼】〇〇〇〇(氏名)」といったように、面接のお礼メールだということが一目で分かるような件名にしましょう。
宛先を必ず記載する
件名を作成したら、次は本文に入りますが、本文の最初はいきなり文章から始めるのではなく、まずは宛先を必ず記載しましょう。最初に相手の会社名、次に担当者の所属部署、それから担当者の氏名の順番に記入します。担当者の部署名など、わからない情報がある場合は「採用ご担当者様」と記載します。以下に書き方の例を示すので参考にしてください。
「〇〇株式会社
〇〇部〇〇課
〇〇様(氏名または採用担当者様)」
会社名は正式名称で書き、株式会社を「(株)」などと省略することはマナー違反に当たることも覚えておきましょう。面接官が複数いた場合などは、宛先を連名で記載して一通のお礼メールとして送信してもOKです。


挨拶とお礼・お詫びも忘れずに
本文の冒頭で宛先を書いたら、次は挨拶やお礼などの文章を丁寧な言葉遣いで添えます。面接では自分をアピールすることもありますが、お礼メールはあくまで感想やお礼を伝えるためのメールです。そのため、自己紹介するにしても、余計な自己アピールは控え、面接の感想や会社の印象などを中心に文章を構成していくのが基本です。
また、面接の日程を調整・変更していた場合は、その旨に関するお礼とお詫びの文言を入れることも忘れてはなりません。以下の例文を参考に、本文の冒頭を考えてみましょう。
「いつもお世話になっております。本日、面接をしていただきました田中太郎と申します。本日はお忙しい中、面接の機会をいただきまして誠にありがとうございました。」
お礼本文の書き方。面接の感想を前向きに伝える
挨拶やお礼、お詫びを冒頭に添えたら、一番のメインとなるお礼本文を作成していきます。お礼本文の書き方としては、まず面接の感想を前向きに伝えることを意識しながら文章を構成することがポイントです。そして、面接の感想をなるべく自分の言葉で伝えます。「○○様のお話をうかがい、貴社で仕事をしたい気持ちが一層強くなりました。」「○○様の○○○という話が強く印象に残っています。」など、面接で実際にあった出来事などを交えながら文章を考えていくと、コピーペーストのようにならずに感想を述べることができます。
ただし、感謝の気持ちや感想を伝えようとするあまり、長々とした文章を差し出すのは避けたほうが良いでしょう。お礼メールの本文は、あくまで簡潔に仕上げることが基本です。面接官も多忙であることを忘れず、短い文章の中で自分の思いを伝えましょう。
文末には結びの言葉と差出人を記載する
お礼メールの文末には結びの言葉を挿し込みます。この部分は定型文でも構いません。「取り急ぎ、面接のお礼を申し上げます。」や「末筆ながら、貴社の益々の発展をお祈り申し上げます。」など、文章の最後に一言添えるだけで配慮の行き届いた常識的なお礼メールとなります。また「返信には及びません」といったような一文を添えてみても良いでしょう。
結びの言葉の後には差出人の情報を記載することも忘れてはなりません。冒頭で軽く自己紹介をしている場合でも、文章の末尾には差出人の詳しい情報を記載するのが基本です。氏名はもちろん、郵便番号や住所、電話番号、それからメールアドレスも合わせて記載しましょう。
〇〇〇〇(氏名)
〒〇〇〇-〇〇〇〇
東京都杉並区△△△1-1-1
電話:080-□□□□-□□□□
メールアドレス:△△△△@××××.co.jp


状況別に紹介!お礼メールの例文集
これまで示してきたように、お礼メールは、まず件名を記載し、次いで宛先、挨拶、お礼、そして本文、最後に結びの言葉と差出人情報で構成するのが基本です。この段落では、実際のお礼メールの例文集を紹介するので、コピーペーストにならないように気を付けながら、お礼メールを作成する際の参考にしてみましょう。また、お礼メールは面接後だけではなく、選考通過時や内定通知の連絡後などにも送ることがあるので、その場合のお礼メールの例文も合わせて紹介します。
面接後に送るお礼メールの例文
件名:○月○日 中途採用面接のお礼(自分の氏名)
株式会社 ○○○
人事部 ○○様
お世話になっております。
本日(昨日)○時より中途採用面接をしていただきました○○○○と申します。
本日(昨日)は、お忙しいところ面接の機会を設けていただきまして、誠にありがとうございました。
○○様から、貴社の事業内容やプロジェクト、今後の展望などをお伺いし、より一層貴社への入社意欲が高まりました。
取り急ぎ、面接のお礼を申し上げたく、メールをお送りいたしました。
末筆ながら、貴社のますますのご発展とご活躍をお祈り申し上げます。
選考通過の連絡に送るお礼メールの例文
件名:選考通過のお礼(自分の名前)
株式会社 ○○○
人事部 ○○様
お世話になっております。
貴社の採用をご選考いただいております○○○○です。
この度は、選考通過のご連絡をいただきまして、誠にありがとうございます。
次の機会をいただけたことを大変うれしく思っております。
ご多忙中のこととは存じますので、返信には及びません。次回の選考でもどうぞよろしくお願いいたします。
末筆ながら、貴社のますますのご発展とご活躍をお祈り申し上げます。
内定通知の連絡に送るお礼メールの例文
件名:内定のお礼(自分の名前)
株式会社 ○○○
人事部 ○○様
お世話になっております。
貴社の採用をご選考いただいておりました○○○○です。
この度は、採用のご連絡をいただきまして心から嬉しい気持ちで溢れております。
それと同時に、これからの勤務に向けて一層気を引き締めていかなければと思っております。
これから、貴社のご発展に尽力するために何ができるかを常に考え、日々研鑽しながら業務にまい進していく所存です。
今後ともご指導のほど何卒よろしくお願いいたします。
末筆ながら、貴社のますますのご発展とご活躍をお祈り申し上げます。


面接のお礼メールに関するFAQ
転職活動のお礼メールは、そもそも送らない人も多いため、周囲から情報を集められず困惑している人も多いのではないでしょうか。例えば、面接官の宛先が分からなかった場合や、面接官から返信メールが届いた場合など、対応の仕方に困ってしまっても仕方ありません。そこでこの段落では、面接のお礼メールに関するよくある疑問をFAQの形で紹介します。
「面接官の宛先がわからない場合は、どのようにお礼メールを送ればいいでしょうか?」
面接官の宛先がわからない場合は、「採用ご担当者様」「面接ご担当者様」などのような表現を使って宛先を作成しましょう。また、面接官は必ずしも一人とは限りません。お礼メールの場合は連名でも何ら失礼には当たらないので、複数の面接官にお礼メールを送りたい場合は連名で送りましょう。
「面接官からお礼メールに対しての返信が届きました。返信した方がいいでしょうか?」
面接官からお礼メールの返信が来た場合は、すぐにでもメールを返しましょう。目上の人から届いたメールに返信しないのは失礼に当たります。特に面接官からの返信メールには、次回の面接のお知らせなどが記載されていることがあるので、返信メールが届いたらなるべく早く返すのがマナーです。ただし、お礼のメールは今後不要だと記されていた場合に限っては、次回以降の面接後のメールは避けたほうが良いでしょう。
「メールではなく電話でお礼を伝えたいです。電話でのお礼は失礼にあたりますか?」
メールではなく電話での面接のお礼は、方法としては考えられます。ただし、基本的に電話で伝えるのは避けたほうが無難です。採用担当者にも都合があるので、わざわざ電話で時間を取らせるのはビジネス上の儀礼を欠きます。担当者の時間を奪ってしまうことにもなるので、お礼の気持ちは電話ではなくメールで送ることが基本です。
形式上のお礼メールは逆効果。面接官に感謝が伝わる内容を送ろう
面接後のお礼メールは採用結果に関係ありませんが、送れるならばなるべく送っておきましょう。心を込めて作成した文章なら、面接官の心に響き、もしかしたら選考にも良い影響を与えてくれるかもしれません。ただし、送ったメールが形式的なものだと、かえって逆効果になる場合がある点には注意が必要です。せっかく送るなら、相手に感謝が伝わるような丁寧なお礼メールを作成しましょう。
