履歴書には一般的に設けられている項目があり、本人希望欄もその一つです。文字どおり本人の希望を伝えるために使われますが、好き勝手に記述すると書類選考を通過できる可能性が下がりかねません。そこで今回は、履歴書の本人希望欄に関する基本ルールを詳しく解説します。また、書くべき内容と書かない方がよい内容も紹介するので、作成の際に参考にしてください。


目次
本当に必要な要望だけを書く!履歴書の本人希望欄の基本ルール
履歴書の本人希望欄に、素直な希望をありのまま書いてしまうと、採用担当者に与える印象は悪くなりやすいです。そのような事態を避けるため、本人希望欄の基本ルールを以下に説明します。
絶対条件だけを書く
最初に、絶対条件以外は記述しないという原則を覚えておきましょう。履歴書の本人希望欄に書いた内容は、採用担当者に「この条件がクリアされた場合のみ働ける」という強いインパクトを与えることになります。イメージが湧きにくいなら、こちらから企業に提示する入社条件と捉えれば分かりやすいでしょう。採用担当者もそのような認識を持っており、応募者が軽い気持ちで書いたとしても、対応の可否を真剣に検討します。そして、対応できないと判断された場合は、それが不採用の理由になるケースも珍しくありません。
したがって、本人希望欄に記述する内容は慎重に考える必要があります。思いつきだけで書くのではなく、どうしても妥協できない内容だけに絞ることが大切です。なお、細かい希望は履歴書で伝えるのではなく、面接ですり合わせていきます。一次面接では自分が質問を受けるだけかもしれませんが、二次面接や最終面接に進んでいくと、待遇や勤務条件などを逆に質問できるチャンスもあるでしょう。細かい希望に関しては、その際に確認するという認識を持っておきましょう。
「特になし」という表記はしない
履歴書の本人希望欄に「特になし」と記述することには問題があります。絶対条件がない場合でも、その表記は適切ではないので注意が必要です。空白にすることも同様で、いずれも正しい対応とはいえません。自分が何かを要求するのはおそれ多いと考え、謙虚な気持ちを示すために「特になし」と書こうと考える人もいるでしょう。しかし、本人の意思はどうであれ、やる気がないという印象を与えたり、マナー違反と判断されたりするリスクがあります。だからといって空白にしておくと、記入漏れと見なされてしまい、基本的な能力が社会人の水準に達していないと誤解されかねません。書類選考の通過が難しくなるので気を付けましょう。
もし本人希望欄に書きたいことがなければ、「貴社の規定に従います」と記述するのが正解です。趣旨が同じなら多少は文言が違っていても構いません。これは厳密なルールではありませんが、ビジネスマナーとして一般化しているものです。こう記載しておけば、採用担当者にネガティブな印象を与えずに済みます。


譲れない条件はしっかり伝える!本人希望欄に書くべきこと
履歴書に本人希望欄があるとはいえ、応募者という立場である以上、希望を記述するのは気が引けるかもしれません。しかし、後々のトラブルを回避するためにも、譲れない条件だけは伝えておくことが重要です。ここからは、本人希望欄にどのような内容を書いたらよいのか具体的に紹介していきます。
希望する職種や勤務地
職種と勤務地に関する希望は適切に書いておく必要があります。技術職や営業職、事務職などの複数の職種が、募集要項に記載されているケースは珍しくありません。募集している職種が1種類でなければ、自分がどれに就きたいのか明確にする必要があります。普通の履歴書には応募する職種を書く欄はないため、本人希望欄に記入して伝えることが一般的です。それを怠ると採用担当者は履歴書を見たときに困惑し、選考に支障が生じるリスクもあります。わざわざ職種を尋ねるために連絡してくれる可能性は低いため、自分が希望する職種を記入して提出するようにしましょう。
また、職種名は募集要項の記載どおりに書かなければなりません。「技術職」を「エンジニア」、「営業」を「ルート営業」などと表現するのは不適切です。そのような読み替えを勝手に行わず、企業が使っている正式名称を使用します。勤務地に関しても同様で、募集要項に複数の事業所が挙げられている場合、どこで働きたいのか明記することが必要です。
妥協できない勤務条件や待遇
勤務条件や待遇に関して妥協できない点があるなら、それも本人希望欄を利用して採用担当者に伝えます。たとえば、入社後に転勤や残業を命じられても、従えそうにないことが分かっているケースもあるでしょう。そのような場合は、理由も添えたうえで転勤や残業が不可能な旨を書いておきます。子育てや親の介護など、具体的な理由を記述しておくと、採用担当者は前向きなスタンスで検討しやすいです。また、理由が企業の福利厚生で解決できる問題なら、面接の際に詳しく教えてくれるかもしれません。なお、希望の表記には少し幅を持たせることを意識しましょう。そうした方が交渉の余地が大きくなり、企業側は採用する方向で考えやすくなるからです。
残業に関しても完全に無理と記述するのは得策ではありません。「火曜日と金曜日以外は定時退社したい」というように曜日を限定した方が、戦力になる人材と見なしやすくなります。このように伝え方の工夫は大切ですが、譲れない勤務条件があるなら隠さないことも重要です。双方の労力が無駄になるので、最終選考で食い違いが発覚するような事態は避ける必要があります。
連絡の取れる時間帯
応募種類を提出した後、何らかの事情で企業側が電話などでアプローチしてくる可能性もあります。したがって、連絡の取れる時間帯について書くことも検討しましょう。特に在職中の人は、会議のような業務上の都合により、連絡があっても対応できないタイミングができやすいです。そのため、対応できる時間帯を本人希望欄に記述しておくことがポイントになります。時間を指定することに対し、偉そうな気がして後ろめたく感じる人もいるかもしれません。しかし、採用担当者も日程を調整しやすくなり、双方にとってメリットがあるので、そのような心境にならなくても大丈夫です。むしろ、連絡が可能な時間帯を明確にすることは、現職の業務をないがしろにせず、真面目に取り組んでいる姿勢のアピールにもなるのです。
とはいえ、時間を指定するときに自分の都合だけを優先してはいけません。早朝や深夜のように、採用担当者の負担が大きくなりやすい時間帯はできるだけ避けることが大切です。なお、在職中でない人でも、連絡を取れないことは十分にありえます。たとえば、転職活動と並行して資格取得のために通学したり、ハローワークの職業訓練を受けていたりすると、その間は対応が不可能です。このようなケースも実情を踏まえ、理由を添えたうえで時間を指定しておきましょう。


入社可能日や退職日
いつからでも働けるという場合を除き、基本的には入社可能日も書くようにしましょう。在職中の人は現職の退職日がすでに決定済みなら、その予定を記載しておきます。このようなデータがあると、採用担当者は初出社の日を調整しやすくなるからです。場合によっては、退職手続きがスムーズに進まず、入社が遅れそうになることも珍しくありません。入社可能日を憶測で書いた結果、日程にずれが生じるとトラブルの原因になります。したがって、どうしても先の見通しが明確にならないなら、無理に記入するのは避けた方が無難です。
企業側は採用すればすぐ出社してくれると想定している可能性が高く、一般的には受け入れに向けて準備をいろいろと進めています。応募者としては、企業がそのスケジュールを組むための情報を提供しなければなりません。よって、入社可能日や退職日について、なるべく早い段階で共有することが理想といえます。
通院が必要な健康状態
病気やケガなどで健康状態が悪ければ、入社した後も通院が必要になる場合もあります。それによって業務に影響が出ると予想されるなら、通院する回数や時間帯を本人希望欄に記述しておきましょう。働き始めてから告げると、企業側は仕事の割り当てなどを再調整しなければならないからです。ただし、持病があることを伝えると余計な心配をされやすく、選考でその情報が不利に働くこともありえます。そのようなリスクを小さくするため、「業務には支障が出ないと思いますが」という一言を最初に付け加えることがセオリーです。
健康状態はプライバシーに関わる要素なので、具体的な病名まで書かなくても特に問題はありません。ただし、面接で尋ねられる可能性がある点は十分に理解しておく必要があります。なお、健康状態に関する欄が別に設けられている履歴書も見受けられます。こちらのタイプを使用するなら、本人希望欄ではなく、所定の欄に記述するようにしましょう。
自分勝手な内容はNG?本人希望欄に書かない方がよいこと
自分の要望を押し付けるために、本人希望欄を利用するのは厳禁です。仕事に関係がない内容を記載することも同様で、いずれにしても不採用のリスクが高まります。ここからは、本人希望欄に書かない方がよいことを挙げるので、しっかり把握しておきましょう。
給与や休日に関する要望
企業に応募するにあたり、給与や休日について要望がある人は多いでしょう。とはいえ、それらを本人希望欄に記述するのはよくありません。一般的には、最終面接に近づくに従って、徐々に給与の話もできるようになります。少なくとも書類選考の段階で、年収などの話をするのは時期尚早です。また、休日を重視しているように思われると、マイナスの印象につながりかねません。プライベートを極端に優先するなど、わがままな勤務スタイルを連想させるリスクが生じます。仕事の熱意が伝わりにくくなるので、休日にも触れない方が得策です。
転職先を選ぶときに、年収水準が前職より高いことを目安にする人は少なくありません。このように年収にこだわりがあり、自分にとって妥協できないものなら、本人希望欄に記述することも一つの手です。とはいえ、基本的には書かないことが望ましく、できるだけ面接で交渉していく方がよいでしょう。
自己PRや志望動機
自分を売り込む気持ちが強いあまり、本人希望欄に自己PRや志望動機を書く人もいます。本人希望欄をフリースペースのように解釈した結果、熱意を伝えるために利用してしまうのです。しかし、その解釈は間違っており、本来それらは本人希望欄に記載する内容ではありません。履歴書を高く評価してもらいたいなら、各欄に適切な内容を書いておくことが条件になります。いくら自分をアピールしても、各欄を本来の目的からずれた形で使っていると、逆効果になりやすいので気を付けましょう。
また、希望の職種を記入すること自体は問題ありませんが、自分の能力や資格、経験なども含めて長々と書くのは不適切です。本人希望欄に余計な情報を足す必要はなく、なるべくシンプルに仕上げることが好印象につながります。


できるだけ簡潔に!本人希望欄を上手に書くためのコツ
上手に本人希望欄を使いたいなら、内容を取捨選択することがポイントです。絶対に譲れない条件がいくつも思い浮かんだ場合、それらをすべて書こうとするスタンスは望ましくありません。なぜなら、自己主張が激しくて、調和を乱すようなイメージを与えやすいからです。やむを得ない事情があっても、遠慮せずに希望を書き過ぎると、押し付けがましい印象を持たれてしまいます。事情を伝えたところで、納得して採用してもらえるかどうかは別の話です。懸念材料が多い人物と判断されるのは避けなければなりません。
そのため、希望する内容は本当に不可欠なことだけに絞る必要があります。そして、多くても本人希望欄の8割ほどに収めることを意識して、簡潔な文言を選びましょう。事実を箇条書きで連ねておくと、すっきりして見やすいです。さらに、なるべくポジティブに表現することもポイントになります。たとえば、勤務時間に制限がある人は、そのまま書くとネガティブに捉えられかねません。勤務時間を増やすために体制を調整する旨など、今後の対応について軽く補足しておきましょう。
履歴書の本人希望欄はマナーを守って適切に伝えることが重要
企業に対して特に要望がないなら、履歴書の本人希望欄については「貴社の規定に従います」と書くのが最も簡単です。一方、絶対に譲れない要望がある人は正直に書かなければなりません。入社後のミスマッチを予防する対策として必要です。本記事で紹介した方法も参考にしつつ、失礼だと思われない範囲でうまく希望を伝えるようにしましょう。
