転職や就職の際、住民票記載事項証明書の提出を求められることは多いものです。期日までに提出しなければならないのに、正しい用意の仕方がわからずに困ることはないでしょうか。必要なときに慌てることのないよう、この記事では、住民票記載事項証明書とは何か、取得場所や申請の際の書き方、発行費用の目安など、発行までに必要な情報について紹介します。


目次
住民票記載事項証明書とは?
住民票記載事項証明書とは「住民票」の項目の中で申請者が求める項目を記載したもので、かつそれを証明してもらうための書類です。住民票の内容に相違がないことを証明するときに必要となる書類のことで、転職や就職など新たに会社へ入社するときに求められる傾向が見られます。正規雇用に限らず、パートやアルバイトといった勤務形態のときにも提出を求められることが多い書類です。
雇用側が住民票記載事項証明書提出を求めるのは理由があります。それは、雇用者の氏名や住所、生年月日、性別といった情報を正確に知るためです。雇用側としては、雇用する際にはその人の基本情報を正しく把握して管理しなければなりません。もしも、偽名を使っているなど提出書類に虚偽があると、何らかのトラブルにつながることも出てきます。極端なケースでいえば、罪を犯して逃げている人物であることも懸念されます。そういったトラブルを回避するためにも、雇用者の基本情報を確認する手段として住民票記載事項証明書が必要になるのです。
住民票と住民票記載事項証明書は何が違う?
皆さんの中には、住民票を提出するだけで十分ではないかと疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。そこで、住民票と住民票記載事項証明書とはどのように違うのか解説していきます。
住民票の写しの提出が必要な時と記載内容
住民票は、居住地の役所で管理されており、原本そのものを請求することはできません。そのため、住民票が必要なときは「住民票の写し」を役所で発行してもらいます。つまり、新たに入社する企業などで住民票の提出を求められたときは「住民票の写し」を提出すると認識しておけばいいのです。就職時以外の場面で住民票を求められたときも、同じく「住民票の写し」を役所で発行してもらえば問題ありません。
例えば、就職の他には運転免許証やパスポートの発行・更新、不動産登記、賃貸契約などのときにも「住民票の写し」は必要になります。住民票の写しに記載されている内容は、氏名、生年月日、性別、住所、当該市区町村の住民となった日、前住所、世帯主名と続柄、本籍地と在留資格等の他、住民票コード、マイナンバーなどです。また、当該市区町村内で住所を変更したときは現住所を定めた日についても記載されています。このうち、世帯主名と続柄、本籍地と在留資格等、住民票コード、マイナンバー等は必ず記載されているわけではなく、自由に選択したうえで「住民票の写し」を発行してもらうことが可能です。
なお「住民票の写し」を提出するときは、最新の内容になっているよう注意しておく必要があります。例えば、引っ越しなどで実際の居所が変わっているときは、早めに住民票を新しい居住地に異動させておきましょう。住民票の異動が完了していないと「住民票の写し」が必要になるたびに前の居住地の役所まで取りに行かなければなりません。就職の際は、会社の提出書類と住民票に記載された住所が異なることのないよう、事前に必ず住民票を移しておきましょう。
住民票記載事項証明書の提出が必要になる時と記載内容
住民票記載事項証明書とは、住民票の記載事項のうち一部を抜粋し、その事項が住民票記載のものと相違がないことを証明するものです。一般的に住民票記載事項のうち氏名・住所・生年月日・性別の4項目が証明され、申請者が希望する場合は世帯主・続柄・本籍などもが記載されます。そのため、実際の記載内容は申請者ごとで変わってきます。どこまでの内容を必要とするかも、提出先によって違ってくるでしょう。入社時の提出書類として用意する場合、住民票記載事項証明書の記載内容については、会社から指定された項目にもとづいて記載を求めれば基本的に問題ありません。
住民票記載事項証明書が必要になるのは、冒頭でも伝えたように就職や転職で会社から提出を求められたときです。会社によって提出期限は異なりますが、入社が決まった時点でさまざまな手続きを進めることになります。そのうえでも正しい情報を早めに確認しておくことが重要になってきます。提出を求められたときは早めに対応できるようにしておきましょう。住民票の項目でも説明したように、引っ越しをしたときは早めに住民票を新たな居住地に移しておくことです。住民票の異動ができていないと、住民票記載事項証明書にも古い住所が記載されることになります。


住民票記載事項証明書の取得方法、取得に必要なものとは?
会社から住民票記載事項証明書を求められたら、速やかに準備して提出しなければなりません。そこで、ここでは住民票記載事項証明書の取得場所とその際に必要になるものを紹介していきます。基本的に全国どこでも同じ方法で取得できます。
会社から所定の用紙をもらった場合
はじめに、会社から所定の用紙をもらった場合の流れを紹介していきます。入社のタイミングで会社から住民票記載事項証明書の提出を求められるとき、会社から書類が渡されることがよくあります。住民票記載事項証明書を申請するときは、会社からもらった書類に必要事項を記入し、さらに本人確認書類を持っていけば証明してもらえます。会社から受け取った書類に記載する内容は、氏名や住所など基本的な自分の情報です。また、このときに必要な本人確認書類とは「運転免許証」「マイナンバーカード」「パスポート」「健康保険証」などを指します。
ここまで用意できたら、自分が住んでいる市役所もしくは行政サービスで申請します。発行費用は市区町村によって異なりますが、200〜500円程度といったところです。なお、会社によっては指定の用紙がない場合もあります。渡されないときは、一度会社に確認したほうがいいかもしれません。担当者によっては渡すのを忘れている場合もあるからです。もしも用紙がない会社であった場合は、次に紹介する方法で住民票記載事項証明書を発行してもらうことができます。
会社から指定の用紙をもらわなかった場合
説明したように、どの会社も必ず住民票記載事証明書の申請に関する書類を用意しているとは限りません。会社によっては指定された書類がない場合もあります。そのときは、特に用紙を持参しなくても、本人確認書類だけで居住地の役所もしくは行政サービスで住民票記載事項証明書を発行してもらうことができます。役所や行政サービスの窓口が開いている時間帯に行き、住民票記載事項証明書の発行申請を行いましょう。
通常は、どこの役所でも必要な書類を発行してもらうための請求書が置かれています。その請求書に必要事項を記入し、窓口に提出します。その際に必要になるのが本人確認書類です。もしくは、郵送での取り寄せが可能な場合もあります。その場合も発行にともなう請求書や本人確認書類の写しは必要です。さらに、返信用封筒と手数料分の定額小為替も同封します。手数料分の定額小為替については、最寄りの郵便局で購入できます。郵送に対応しているかどうかは、居住地の役所の公式サイトで確認してみましょう。可能な場合の詳細も公式サイトで確認できます。
また、マイナンバーカードを持っている場合は住民票の写しについて「コンビニ交付」の利用も可能です。マイナンバーカードを利用してマルチコピー端末が設置されているどこのコンビニでも即時発行してもらうことができます。ただし、居住地の市区町村がコンビニ交付に対応している場合に限ります。


住民票記載事項証明書の書き方・記入項目
次に、住民票記載事項証明書の書き方と注意点について解説していきます。まず念頭に置いておきたいのは、住民票記載事項証明書とは「住民票に記載された内容と相違がない」ことを証明するための書類であるということです。そのため、記載内容が住民票と一致していなくてはいけません。記入ミスをしたときは新たに書き直すことになります。会社で指定の書類を受け取っているときは、間違えないよう確認したうえで記入するようにしましょう。
基本的な記入項目は「住所」「氏名」「生年月日」「続柄」ですが、まず間違えやすいのは「住所」です。住所は普段はハイフン(ー)を使っていることが多いため、省略せずに「○丁目」「○番地」と正しく書きます。都道府県から記入し、地番まで丁寧に記入します。集合住宅の場合は建物名と部屋番号まで書かなければいけません。建物によっては棟などが入っていることもあるので、きちんと記入しましょう。
氏名は、戸籍上で記載されている文字を使います。住民票に旧字体が使われているときは、必ず旧字体にします。例えば、沢は澤、辺は邊といった具合です。もちろん、旧字体を使用していないときは気にする必要はありません。
生年月日ですが、通常は西暦ではなく、和暦を使います。昭和、平成、令和で記入し、「昭」「平」「令」「S」「H」「R」といった略記はNGです。ただし、役所で用意されている請求書にあらかじめ印刷されているときは、請求書に従って選択する形になります。
最後に続柄ですが、これは世帯主から見たときの申請者の続柄のことです。自分が世帯主本人である場合は「世帯主」とし、世帯主の妻に当たるときは「妻」、世帯主の夫なら「夫」と記入します。世帯主の子にあたる場合は「長男」や「次女」とは書きません。その場合は「子」で統一して記入します。
住民票記載事項証明書の発行費用
前述の通り、住民票記載事項証明書の発行手数料は市区町村によって異なります。多くの場合、200〜500円程度といったところです。例えば、栃木県・壬生町の場合は200円、北海道・夕張市の場合は500円の手数料となっています。役所で発行してもらう場合、通常は窓口での現金払いになります。コンビニ交付は窓口発行の手数料より安く設定されており、100円引きとなっているのが一般的です。マイナンバーカードを持っていて、かつ市区町村が対応しているときはコンビニ交付を選択すると手数料を抑えられます。窓口の営業時間外でも発行を受けられるので、役所まで出かける時間がないときもコンビニ交付を利用するといいでしょう。


住民票記載事項証明書に関するよくある質問
最後に、会社から住民票記載事項証明書を求められた際、用意するうえでよくある質問を紹介していきます。
「住民票記載事項証明書ではなく、住民票の写しを求められました。住民票の写しでも問題ないのですか?」
会社によっては、住民票の写しを求められることがあるかもしれません。しかし、住民票の写しは個人情報がそのまま記載されています。プライバシー保護の観点から考えても、個人情報は厳重に取り扱わなければなりません。
会社側にとっても、不要な個人情報の保持はそれだけリスクになります。もしも、住民票の写しを求められた場合、会社の担当者に話して住民票記載事項証明書の提出で足りるかを確認するとよいかもしれません。
ですが、住民票の写しではなく住民票記載事項証明書の提出でOKとなっている企業がほとんどです。
「企業から住民票記載証明書の提出を求められませんでした。提出しなくても問題ないのですか?」
基本的に、勤務先へ住民票記載事項証明書を提出することは法律で義務付けられているわけではありません。あくまで、会社側が個人の氏名や住所など基本的な情報を確認したいときに使うのが主な目的です。会社側が必要としないときは、提出しなくても問題はないでしょう。ただ、住民票記載事項証明書は、正確な雇用管理をするうえで必要になるものです。
雇用形態に関係なく、提出を求められないときは自分から理由を聞いておくのもいいかもしれません。応募先企業の繁忙期などに転職した場合、中には忘れている担当者がいる場合もあります。提出を求められないときもそのままにせず、確認しておくほうが後でトラブルになる可能性を回避できます。
「住民票記載事項証明書を申請しに行く時間がありません。代理人請求はできますか?」
結論からいえば、住民票記載事項証明書の代理人請求は可能です。コンビニ交付の利用ができないときや時間が取れないときは、家族など近しい人に代わりに請求してもらうことができます。郵送に対応している市区町村でも、返送用封筒なども用意して発送しなければなりません。返送にも時間がかかる場合があります。それなら、代理人請求を利用したほうが早く住民票記載事項証明書を入手できる場合もあります。
代理人が請求するときは、委任状と代理人の本人確認書類が必要です。(ただし、本人と同一世帯の方の場合は委任状を省略できます。)これらの書類を役所もしくは行政サービスに持って行きます。ただし、市区町村によっては必要な書類が異なるケースがあるので、必ず事前に居住地の役所の公式サイトで確認しておきましょう。委任状なども、公式サイトからダウンロードできる場合があります。


住民票記載事項証明書の発行は簡単!各自、最適な方法で用意しよう
転職や就職で新しい会社に勤務するとき、住民票記載事項証明書の提出を求められることは多いものです。あらかじめ住民票記載事項証明書の取得方法を知っておけば、簡単に用意することができます。どのような書類かが理解できていれば、慌てることもないでしょう。就職・転職時の必要書類などに時間を取られることのないよう、本記事で紹介した中から自分に最適な取得方法を選択することが大切です。

この記事の監修者
寺島 有紀
寺島戦略社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士。1987年生まれ、一橋大学商学部卒業。ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行なっている。
