転職活動をしていると「契約社員」としての募集を見かける場合もあります。契約社員は正社員と何が違うのか、気になっている人も多いことでしょう。雇用形態は働き方に大きく関わるため注意が必要です。本記事では契約社員の概要やメリット・デメリットを踏まえ、ほかの雇用形態との違いや契約社員として働く際に確認したいポイントなどを解説します。


目次
契約社員とはどのような雇用形態?
契約社員とは、あらかじめ決まった期間と業務に限定し、企業と雇用契約を結び働く雇用形態のことです。契約期間は基本的に最長で3年間となっており、契約期間が終了すると双方合意のもとで更新するか、そのまま契約終了するかを決めることになります。契約社員が同じ企業で継続して5年以上働いた場合には、次の更新時に本人が希望すると「無期雇用」への転換も可能です。本人からの申し込みによって無期雇用の契約成立となり、企業はそれを拒むことはできません。
また、労働時間など一定の条件を満たせば、契約社員でも健康保険や厚生年金などの社会保険にも加入できます。休日や勤務日は正社員と同条件で付与されるケースが大半ですが、給与は年俸制や時給制を導入する職場も存在します。職場によっては、契約社員のことを準社員や臨時社員などと呼ぶこともあるでしょう。
契約社員で働くメリット
契約社員として働くメリットは主に次の3つです。
さまざまな職場や業種を経験できる
契約社員ならではのメリットとしてまず挙げられるのは、さまざまな職場や業種を経験できることです。正社員よりも人件費が安く雇用期間も短い契約社員は、企業からすると採用しやすい存在です。正社員では選考条件を突破しづらい企業にも、契約社員なら就職できるチャンスがあるでしょう。
また、正社員では基本的にはその企業で長く務めることが前提になっていますが、契約社員の場合は契約期間があらかじめ決まっています。期間の終了のタイミングで職を変えやすく、また辞めたいときにも更新しないという対応だけで済みます。期間の終了に合わせて転職先を見つけておけば、空白の期間もなくすぐに別の企業にも移れるでしょう。このように、働きたい場所ややりたい仕事を自由に選べ、企業を渡り歩くことで多くのスキルや経験を身に付けられるのは契約社員ならではのメリットです。
仕事に対する責任が重くない
業務や責任の範囲が明確であり、自分のスキルや能力以上の仕事を担当させられることがないのも、考え方次第ではメリットといえるでしょう。契約社員は雇用期間が決まっているため、一部の業務に限り任されるケースが大半です。そのため、正社員と比べて任される仕事の量や責任が比較的軽くて済み、プレッシャーやストレスがかかりにくい傾向にあります。職場によってはある程度難易度の高い仕事を任される場合もあるかもしれませんが、基本的には正社員が上司につき、困ったときには相談や指示を仰げる立場です。
また、正社員の副業は禁止している企業が多いものの、契約社員では副業が認められるケースも珍しくありません。イラストやハンドメイドなど、趣味を副業にしてスキルアップしたり、収入を増やしたりすることもできます。収入源を複数持つことは、人生におけるリスクヘッジにもなるはずです。
良好なワークライフバランスを実現しやすい
良好なワークライフバランスを実現しやすいことも重要なメリットです。契約社員は正社員と比べて責任が軽いため、それに伴い残業も少なめです。同調査によると、契約社員の平均勤務時間で最も多かったのは「7~8時間未満」で36%、続いて「8~9時間未満」の22% という結果であり、残業がないか発生しても時間外労働は1時間以内であるケースが多いことが分かります。
これに対して正社員では、最も多かったのは「8~9時間未満」で39%、続いて「9時間以上」が26%という結果でした。すなわち、契約社員のほうが労働時間が短く、プライベートの時間を確保しやすい状況にあるといえます。また、基本的には異動や転勤もなく、家族の都合やライフスタイルに合わせて安定した生活環境を維持できる点も魅力です。


契約社員で働くデメリット
契約社員の働き方には、以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。自分にとって、メリットとデメリットどちらのほうが多いかを慎重に見極めることが大切です。
雇用が安定しない
働く職場や仕事を自由に決められるという利点は、裏を返せば雇用が安定しないということになります。契約社員の雇用期間は数カ月から最長でも3年しかなく、期間終了時に契約を更新できなければ職を失ってしまいます。自分がその職場で引き続き働きたいと思っても、企業のほうで人材が足りていると判断されれば、期待に反して更新してもらえない場合もあるでしょう。職を失うと、また自分で仕事を探さなければならず、その間の収入がなければ生活が不安定になってしまいます。5年以上での「無期雇用」の権利を得られるまでは、企業側の都合で契約を終了されるリスクがあることは念頭に置いておかねばなりません。
また、契約社員の場合は基本的に退職金がなく、ボーナスもないケースが珍しくありません。そのため、月収では正社員とそう変わらなくても、年収で比較すると大きな差がついてしまうことが多いのです。昇給や昇進も難しいため、年齢に見合う十分な収入を得られないこともあります。
ローンなどの審査に通りにくい
契約社員では、ローンなどの審査に通りにくい場合もあります。住宅や車など、まとまった額の買い物をするときには、ローンを組むことが多いでしょう。しかし、住宅ローンやクレジットカード、マイカーローンなどの借入をする際は、返済能力があるかどうかの審査に通る必要があります。前述のように契約社員は雇用が不安定な点、収入が低くなりがちな点などから、返済能力が高くないとみなされて審査に通りにくくなるケースも少なくありません。借入を利用しないなら問題はありませんが、将来的にマイホームの購入などを予定している場合には、契約社員という働き方がネックになりローンを組めない可能性があるため注意が必要です。ただし、正社員と結婚していて配偶者にローンを組んでもらえる場合には、おおむね問題はないでしょう。
福利厚生をすべて利用できないことがある
雇用されている企業の福利厚生をすべて利用できない場合があることも契約社員のデメリットの一つです。企業の中には、従業員の生活の質向上や労働環境の改善のため、給与以外の報酬やサービスといった独自の福利厚生を提供するところも少なくありません。そのため、契約社員では正社員と同じ水準の福利厚生を利用できないことがあるのです。これらの福利厚生の中には通勤手当や住宅手当など収入に影響するものも含まれる場合があるため、事前に詳しく確認することが大切です。福利厚生については雇用契約書に記載されています。福利厚生の内容だけでなく、適用範囲までしっかり確認しておきましょう。


契約社員とほかの雇用形態の違い
ここからは契約社員とほかの代表的な雇用形態の違いについて、各雇用形態の特徴も含めて解説します。
正社員の特徴
正社員とは、特に契約期間を定めずに正規雇用された労働者のことです。一度採用されれば、よほどの事情がない限り定年までその企業で働くことが可能です。労働基準法の定義はありませんが、一般的に企業が就業規則で定めている所定労働時間にフルタイムで従事する労働者のことを正社員と呼びます。決まった曜日に休みを取る週休2日制で給与は月給制であることが多いでしょう。
収入が安定していることや昇給や昇進があること、立場の社会的信用度が高いこと、福利厚生をすべて利用できることなどが主なメリットです。企業ごとの人材育成プランに沿って年齢や経験に応じたステップアップが望めるため、達成感ややりがいを感じやすいでしょう。転職する際にも最も有利に働くとされるのは、正社員としての経験です。ただしその分、責任の重い仕事を任されることや、企業の指示に従って転勤・異動があるなど、働き方の自由度は低めです。残業となった分の仕事も、正社員がカバーするのが一般的です。
派遣社員の特徴
派遣社員とは、インターネットや説明会を通して派遣会社に登録し、自分のスキルや希望にマッチする派遣先企業を紹介してもらって働く労働者のことです。実際の雇用主は派遣会社となり、給与の支払いや福利厚生は派遣先ではなく派遣会社が行います。派遣会社が派遣先を決め、労働条件なども交渉してくれるため就職活動の負担が少ない点が魅力です。未経験の業種や職種でも採用される場合もあるでしょう。ただし、契約社員と同じように雇用が安定しない点に注意が必要です。
派遣社員の働き方は大きく、派遣先ごとに派遣会社と契約する「登録型派遣」と、期間を定めずに派遣会社に雇用される「常用型派遣」の2つに分類されます。一般的に派遣社員というと登録型派遣のほうを指すことが多いでしょう。常用型派遣は専門性を有する人材を対象とするものです。常用型派遣の場合に限り、新たな派遣先が見つからない場合の待機中にも派遣会社から給与が支払われます。
紹介予定派遣の特徴
「登録型派遣」と「常用型派遣」以外に「紹介予定派遣」という選択肢もあります。派遣就業前または開始後に、派遣先企業に直接雇用することを前提としている雇用契約のことをいいます。 派遣先企業と派遣スタッフの双方の合意が得られた場合、派遣スタッフは派遣先企業に直接雇用されます。
紹介予定派遣は派遣期間が最長6ヶ月間と期間が決まっているが、職場の雰囲気や業務内容などを実際に体験することで入社後のミスマッチをなくすことができます。一方で、企業から社風に合わないや求める能力レベルに達しないと判断した場合派遣期間でお断りされるリスクもあります。
パート・アルバイトの特徴
パート・アルバイトは、フルタイムの労働者より短い時間で働く労働者のことです。シフトを組んで特定の曜日や時間帯に働き、給与は時給制のことが多いでしょう。自分に都合の良いタイミングで働けることや仕事の責任が軽く採用されやすいことなどがメリットです。子育てや資格取得の勉強など、ほかに優先すべきことややりたいことがある人にマッチする働き方だといえるでしょう。年末年始の繁忙期など、特定の期間のみ募集をする仕事もあります。パートやアルバイトでも、雇用期間などの一定の条件を満たせば有給休暇を取得できたり社会保険に加入できたりする場合もあります。
ただし、企業側からするとパートやアルバイトはあくまでも臨時の労働力の扱いです。長期歓迎という募集であっても、企業の都合でいつ解雇されるか分からないという不安を抱きながら勤務しなければならない可能性があります。雇用が安定しておらず仕事としての社会的信用度が低いこと、ほかの雇用形態より賃金が安いことなどの点には注意が必要です。また、賃金については地域格差があるほか、業種によって大きく異なる場合もあります。


契約社員へ転職する際に確認したいポイント
契約社員に転職する場合には、最低限以下の2つのポイントについては事前に確認しておきましょう。
正社員への登用制度はあるか?
ゆくゆくは正社員として働きたいと考えているのであれば、応募する企業に正社員への登用制度があるかどうかを確認しておきましょう。正社員への登用制度とは、非正規雇用の労働者が正社員へ雇用形態を転換できる制度のことです。能力や働きぶり次第で契約社員から正社員になれる可能性があります。流れとしては、直属の上司などからの推薦を受けて、正社員登用試験を受けるというケースが一般的です。
ただし、登用制度があっても条件が厳しく、実際にはほとんど正社員になれた者がいないというケースもあるので注意が必要です。制度の有無だけでなく、契約社員から正社員になる条件やこれまでに正社員になった非正規雇用労働者の数などを確認しておくと安心でしょう。仮に契約期間が5年を超えて「無期雇用」への転換ができた場合でも、企業によっては正社員という雇用形態で働けるとは限りません。ただ無期雇用になるだけで、給与などの待遇や職務内容はそのままという可能性もあります。
労働条件はどうなっているか?
応募先の労働条件がどうなっているのかも先に確認しておく必要があります。契約社員の労働条件はそれぞれの企業や契約ごとに異なるためです。事前に詳細を確認してから希望する条件を満たす企業を選ぶようにしましょう。面接の場で口頭で確認しただけでは入社後に「話が違う」となる可能性も否定できません。採用が決まった際に交付される「労働条件通知書」で最終確認することが大事です。
更新に関する項目は雇用に大きく影響するため、更新条件などは特に慎重に確認しておきましょう。例えば、「更新の有無は企業の業績次第」という曖昧な書き方になっている場合には、具体的な更新の条件について必ず応募先に確認しておく必要があります。このほか、ボーナス・退職金の有無や利用できる福利厚生、副業の可否などについて、正社員との差も含めてチェックしておくとよいでしょう。
契約社員の特徴を理解して自分に合う転職先を選ぼう!
契約社員は基本的に有期の雇用契約です。自由度の高い働き方である分、メリットもあればデメリットもあります。転職後に後悔しないように特徴を正しく理解しておきましょう。また、実際に転職する際には正社員への登用制度や労働条件も、きちんと確認して転職先を決めることが大事です。契約社員でも自分にとってメリットのほうが大きければ、マッチする働き方だといえるでしょう。
