身近な職業として、「店長」は多くの人が耳にしたことがある職種かもしれません。たとえば、身近なスーパーやコンビニ、ファミレスなどにも店長がいますし、接客業の仕事をしたことがある人は実際に接したことがある人もいるでしょう。
そこで、店長とはどのような仕事内容なのか、マネージャーとの違いや年収など基本的な情報についてまとめました。


目次
店長とは?
店長とは飲食店やコンビニ、アパレルなどの店舗にそれぞれ配置されている責任者を指します。次の項目で紹介しますが、店長の役割としてはスタッフの教育やシフト管理、商品の在庫・売上の管理を主に行うことです。学生時代から長くその店で勤めていた場合、経験や知識が蓄積されているので、卒業後にそのまま店長を任せられるケースもあります。
そのため、若い頃から店舗経営について学ぶことが可能です。ちなみに、経営者が店長もこなしている場合のオーナー店長、オーナーから店長を任される雇われ店長の2種類があります。
店長の主な仕事(役割)
こちらでは、店長の仕事内容について細かく見てみましょう。
スタッフの教育
店舗の責任者である店長の重要な仕事のひとつがスタッフ教育です。店舗で働くスタッフは正社員もいますが、アルバイトやパートも多いので非常に重要な仕事といえます。スタッフはそれぞれ性格、仕事の向き・不向き、どのように教えるのが良いのかなどが異なるので、その人ごとに対応できる教育スキルが必要です。
スタッフの教育方法はまずは必要な知識を頭で覚えてもらい、次に頭で覚えたマニュアルや技術などは実践しながら体で覚えてもらいます。
また、職場の人間関係が悪くなってしまうと離職する原因になりかねません。そのため、スタッフ同士の関係を観察したり、場合によっては相談にのったりと人間関係がうまくいくようにサポートをするのも大切です。職場環境が悪いとストレスや体調不良につながり、仕事のミスにつながる可能性も高くなってしまいます。
シフト管理
スタッフのシフト管理も店長の重要な仕事です。忙しい時間帯にはスタッフ数を増やし、客数が少ない時間は減らすなど売上を最大化するための工夫をしなければなりません。天候や休日、客層などによって1週間の客数の流れは変化するため、適正にシフト管理をする必要があります。
注意しなければならないのは、客数が少ない時間帯だからとスタッフの人数を減らしすぎないことです。多すぎず、少なすぎない、ほどよい人数を配置するのが大事なので、その点の見極めは難しいところといえます。
また、接客が得意なスタッフ、裏方が得意なスタッフがそれぞれ必要なので、スムーズな接客ができるように適切に役割分担を行うことが必要です。実際のところ、シフトの作成は難しく、スタッフの希望と来客数など状況を予想しつつ、各仕事内容別に必要人数の確保をしなければなりません。
苦労して作成したシフト表も、急に欠員が出たときにはほかのスタッフに出勤してもらえないか連絡をとらなければならず、調整が大変です。


在庫管理(商品の発注)
飲食店の場合は食材の廃棄が出ないように、曜日に合わせて適切に食品を仕入れることが大切です。店によっては商品の発注はそれぞれの担当者に任せているところもありますが、店長が行っているところもあります。売上アップにつながるようにどのような商品の売れ行きがよいのかチェックし、常に在庫の状態も正確に把握していなければなりません。
商品の売れ行きから発注をする数量や種類などを決めます。アパレルなどでは客が注目する人気商品を察知し、仕入れるスキルも必要です。店内に展示するディスプレイを在庫商品でどのように行うのかが入店数にかかわってくるため、在庫にどのような商品があるのかは重要ポイントになります。
在庫管理システムを導入してリアルタイムの在庫数や種類がチェックできるようになっている店もあり、そういったシステムに任せることができればより管理しやすいです。ただ、それはあくまでも管理しやすいというだけであり、実際に必要に応じて商品の発注をするのは店長の仕事になります。
売上の管理
売上管理は店長として最も重要なスキルで、客単価や家賃、光熱費など必要経費を把握したうえで利益を出さなければなりません。売上目標を日、月、年とそれぞれの単位で決め、それを実現するためにどのように対策をすればよいのかを考える必要があります。繁忙期と閑散期、休日なども考慮して予算をきちんと立てた管理をします。
雇われ店長の場合は月の目標額も決められているので、そちらも達成しなければなりません。接客業の場合はときにはクレームを受けることもありますが、その対応をきちんと行って店の印象が悪くならないようにすることも売上アップという意味では大切な仕事です。
売上が今一つの日が続く場合にはキャンペーンやセール、広告を出すといった対策が必要になるケースもあります。オーナー店長であれば自分の意思次第で実行することも可能ですが、雇われ店長の場合はオーナーやマネージャーに相談しなければなりません。その際には店の売上状況を正確に説明し、複数の対策案を提案できる状態が望ましいです。
対策案を1つのみ提案してもそれが必ず通るとは限りません。そのため、A案が却下された場合はB案というように、あらかじめ考えておく必要があります。


店長とマネージャーの違い
店長とマネージャーは、役職という意味ではマネージャーのほうが立場が上です。一般的には、チーフから副店長になり、副店長から店長、マネージャーになるという流れで出世していきます。
店長の役割は前述したような仕事内容がメインです。店舗運営にかかわる売上管理や人材採用から店舗での接客、クレーム対応まで行います。小規模な店であれば、新人教育も店長の仕事のひとつです。
一方、マネージャーは店長が運営する店舗のコンサルティング、大規模な企業であれば複数の店舗のマネジメントをするのが役割です。本社と各店舗を行き来する機会が多く、頻繁に各店舗の店長や副店長とのミーティングをしたり、ときにはスタッフと面談をして問題がないか聞き取り調査をしたりします。
ちなみに、複数の店舗を管理している場合はエリアマネージャーという役職です。本社からの指示を各店舗の店長に伝えたり、スタッフとの面談では現場の意見を経営に活かすために本社に伝えたりします。
店長に向いている人・向いていない人の特徴
接客業の経験があるからといって全員が店長に向いているわけではありません。さまざまな仕事と同じで、店長という職種にも向いている人・向いていない人がいます。そこで、こちらでは向いている人・向いていない人それぞれの特徴を紹介します。
店長に向いている人
店長に向いている人は売上を優先し、現場の人間として動きすぎないほうがよいという店長としての役割が理解できる人です。店長が現場の人間として動きすぎるとスタッフが頼りきりになってしまい、成長できません。店長が率先して動いていれば、スタッフもそれを見習って一生懸命仕事に励んでくれるかもしれないと期待してしまいがちです。
確かに店長を見習って仕事を頑張ろうという気持ちになるスタッフもいるかもしれませんが、なかにはこれ幸いと仕事をいつまでも覚えない、指示がなければ何もできないスタッフになってしまう可能性もあります。そのため、現場の仕事はできるだけスタッフに任せられる人が向いているといえるでしょう。
また、主体性のある人も店長に向いている人の特徴です。たとえば、スタッフが接客中に何かミスをしたとします。ミスをしたスタッフに原因があるとはいえ、店長として、そのスタッフとともに相手に謝罪をするなどのフォローが必要です。「スタッフのミスは自分のミス」といえるほどの懐の深さがある人が向いています。
必要なときにスタッフを叱ることも大切ですが、仕事以外の時間はコミュニケーションをとるなど仕事とプライベートのメリハリを大切にできる人は店長向きです。
店長に向いてない人
何かあった際、ほかの人のせいにする人は店長には不向きなタイプといえます。たとえば、売上が上がらない、労働環境が悪いといった理由をほかの人や上司のせいにする人です。こういった発言は雇われている立場のアルバイトであれば許されますが、責任者である店長が発言する言葉ではありません。
人のせいにするのではなく、売上にしても労働環境にしても改善するために対策をするのが店長としての役割です。他責思考の店長がいる店舗では利益が出にくいですし、職場環境も悪くなってしまいます。
また、売上の管理をしなければならない店長は、数字に強い人が向いています。逆に、数字が弱い人は売上、達成率、客単価などの数字を理解し、常に意識をしながら店舗経営をすることも苦手です。
利益を得るためには店長自身だけではなく、スタッフにも意識してもらう必要があります。自分自身が理解できていなければ、スタッフに正しく指導することもできません。


店長が周りから評価されるためにやるべきこと
店舗の責任者である店長は、職場の雰囲気をよくするためにも慕われる存在であることも大切です。周囲の人間から評価してもらうためには、的確で具体的な指示を出せることが重要になります。
あいまいな指示を出されても現場にいるスタッフは混乱してしまうからです。ミスもしやすくなりますし、それが続けば不満も溜まりやすくなります。
また、部下のモチベーションをコントロールできるようにすることも重要です。スタッフの収入は一生懸命働いてもさぼっても変化しません。そのため、必要以上に頑張らない人もいます。そのような状況になるのを避けるためには、アメとムチの使い分けがポイントです。頭ごなしに悪かったことを叱るのではなく、なぜ叱っているのかと伝えたうえでどのように改善していけばよいのかというアドバイスをしましょう。
「叱るときはほかの人がいないところ、褒めるときはほかの人もいるところで」を実践することが大切です。特に、人前で褒めることはスタッフのモチベーションアップにつながります。
店長に必要な資格・スキルはある?
店長になるための資格はありませんが、取得していると就職時や転職時に有利になる資格はあります。たとえば、食品関連の店舗の店長になりたいのであれば食品衛生責任者、飲食店や物品販売店で働きたいならば防火管理者、流通業界や小売業界で働きたいならば販売士の資格です。
企業にもよりますが、店長になるためには独自の試験に合格しなければならないというところもあります。
必要なスキルはコミュニケーション能力やマネジメント能力、リーダーシップなどです。コミュニケーション能力はスタッフと良好な関係を築くためにも必須スキルといえます。スタッフの育成にはマネジメント能力が必要ですし、強いチームワークを持つ店を作るためには店長のリーダーシップは欠かせません。
店長になるにはプログラミングスキルのような専門的なスキルは不要です。専門的なスキルは必要に応じて習得するのもよいでしょう。


店長の年収
25~34歳が半数を占めていますが、全世代の店長の平均年収は約400万円で、担当するエリアの広さや店舗数によっても異なります。
日本の企業に勤めている30~34歳の平均年収が約396万円、同年代の店長の平均年収が約354万円なので、店長の平均年収は全国の平均年収と比較すると低めです。多くの人ができる職種ではありますが、年齢を重ねても平均年収はほぼ変化がありません。
また、年間休日は110日で、店長の男女比は7:3となっています。圧倒的に男性の店長が多いですが、女性が少ない職業であることを考えれば、女性ならではのアイディアを出すなど、挑戦しがいがあるといえるでしょう。
賞与については義務ではないため、勤務する企業によって異なるのであらかじめ確認しておくほうが無難です。同じく、昇給の有無も企業によって異なることから、こちらも前もって確認をするようにしましょう。
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店長は大変なことも多いが、やりがいも多い
店長になるには特別な資格は必要ありませんが、スキルとしてコミュニケーション能力やマネジメント能力などは必要です。店舗の運営にかかわる責任者として、ヒト・モノ・カネの管理ができることは非常に重要といえます。
また、店長は店舗のスタッフの育成も行っており、店長次第でその店の職場環境が変わるといっても過言ではありません。そういう意味ではやりがいもあります。しかも、転職しやすい職種ですので、興味があれば一度選択肢として検討してみるのもよいでしょう。
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