相次ぐ物価上昇や近年の社会情勢を背景に、より年収が高い職業への転職を考える方は多いかもしれません。
そんな方に向けて、国税庁の「令和3年民間給与実態統計調査」や厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」のデータを元に、業種・職業別の年収ランキングをご紹介します。
転職のポイントも解説しますので、ぜひご活用ください。


目次
日本の平均年収は?
現代の日本では、どのくらいの年収をもらえれば「高年収」だと思いますか。明確に何百万円以上が高年収、といった定義はありませんので、イメージしにくいかもしれません。そこで、まずは日本の平均年収を知っておきましょう。
日本の平均年収は443万円
日本人の平均年収は、443万円です。これは男女合計の平均年収で、男女別にすると以下のとおりになります。
男性の平均年収は545万円で、内訳は給与460万円、ボーナス86万円です。平均月収はおよそ38.3万円になります。
女性の平均年収は302万円で、うち給与262万円、ボーナス41万円です。平均月収はおよそ21.8万円になります。
年代別の平均年収
日本人の平均年収とは、19歳以下から70歳以上までの男女合計の平均です。自分の年代の平均年収と自分の現在の年収を比べて、それが高いのか、低いのかを知りたいですね。ここでは、年代ごとの男女の平均年収をご紹介します。
就職当時から退職後まで、どの年代であっても、女性よりも男性のほうが給与・ボーナスともに高い傾向にあります。また、男性は定年を迎えるまで年収が上がりますが、女性はあまり上がらず横ばいです。そのため男性の年収のピークは50代、女性の年収のピークは20代と、かなり差が開いています。
年代ごとの傾向を解説します。
19歳以下は、最終学歴が高卒ですので、男女ともに20代よりもかなり低い収入になっています。
一般的に、高卒や専門卒よりも、大卒のほうが年収が高くなるためです。
20代全体の平均は、
男性:345万円
女性:288万円
です。
20代では、男女ともに前半から後半にかけて年収が増加しています。20代後半になると、必要な知識・スキルが身につき、できることも増えていきます。それにつれて、年収も徐々に上がっていくようです。
30代全体の平均は、
男性:502万円
女性:321万円
です。
30代になると、男性の年収はさらに上がります。一般的にこの世代は、勤続年数とともに経験も増え、仕事の役割や量も増えていきます。役職に就くことで手当が増える人もいると思われます。
働き盛りと言われるのが、この年代です。
一方女性は、30代には年収の増加が横ばいになってきます。これは、出産・育児などの生活の変化に伴って、働き方が変わる女性が多いというのが主な原因として考えられます。
男性は着実にキャリアを積んでいきますが、女性は出産での産前産後休暇・育児休暇によって、それまでのキャリアが止まります。また出産後の状況によっては、時短勤務やパートなど、働き方を変更せざるを得ないこともあります。さらに、ときには退職を余儀なくされる場合もあります。子どもの健康状態や預け先の確保など、出産を終えた女性が社会に復帰するには多くのハードルを乗り越えなければなりません。これが、30代以降の女性の年収が横ばいになることにつながるわけです。
40代全体の平均は、
男性:607万円
女性:326万円
です。
40代でも、男性のみ年収が増加していきます。役職がさらに上がったり、管理職などを任されることも増えるころです。女性は、この年代には、子どもが大きくなり働く時間が増える女性もいます。しかし、キャリアのブランクもあり年収を上げることが難しく、30代から50代まで横ばいのままです。
50代後半には、男性の年収がピークを迎えます。20代から着実にキャリアを積んで、役職が上がり切るのがこのころです。
60代には、男女ともに大幅な年収減少になります。定年退職により、働き方が変わるためです。
男性は、50代平均:675万円、60代平均:480万円と、200万円ほどの減少です。人生のピークの年収から、一気に30代前半頃の年収まで下がることになります。これは、定年まで積んできたキャリアがなくなるためです。企業の再雇用などを利用しても、50代までの年収に戻ることはありません。
一方で女性は、50代平均:322万円、60代平均:239万円と、80万円ほどの減少です。年収自体が20代から横ばいであったため、減少幅は少なくなります。それでも、200万円ほど減少をした男性の半分ほどの年収です。
70代以降は、働く時間や日数が短くなることもあり、さらに減少していきます。


業種・職業別の平均年収ランキング
より年収が高い業種や職業への転職を希望するなら、事前にそれぞれの平均年収を把握しておくと、転職の際に役に立ちます。自分の現在の年収に比べてどうか、などの指標となります。
さらに、転職が決まったのに業種の平均年収より低い企業だった…というような失敗も防ぐことができます。ここでは、業種・職業別に平均年収のランキングをご紹介します。
業種別の平均年収ランキングTOP5
まずは、平均年収が高い業種をご紹介します。国税庁の「令和3年民間給与実態統計調査」によると、1年間勤務した1人あたりの平均年収が高いのは、以下のとおりです。
1位:電気・ガス・熱供給・水道業…766万円
2位:金融業、保険業…677万円
3位:情報通信業…624万円
4位:学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業…521万円
5位:製造業…516万円
主に生活に必要不可欠なインフラや、学問に関わる業種の平均年収が高いようです。
職業別の平均年収ランキングTOP30
つぎに、職業別の平均年収ランキングをご紹介します。
平均年収のTOP30はこちらです。
参照:・厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」のデータをもとにPaceboxが作成
・10人以上の事業所の男女が対象
・平均給与額は、残業手当なども含む「きまって支給する現金給与額」から算出
ランキングの上位には医師、航空機操縦士、弁護士、歯科医師など、国家資格と特別な経歴が必要な職業が多く入っています。医師・歯科医師は大学の医学部、弁護士は法科大学院を卒業しないと資格の試験を受験することができません。また、航空機操縦士は、航空科のある高校や航空大学校を卒業するか、航空会社の養成プログラムを利用して訓練を受ける必要があります。航空機操縦士の国家資格試験には、学科試験と実技試験があるためです。
このように取得が難しい国家資格が必要な職業は、年収が高い傾向にあるようです。しかしこういった職業は、業種別のランキングでは上位に入っていませんでした。業種のなかで、突出して年収が高い職業ということですね。
また、業種別平均年収ランキングTOP5にランクインしていた業種は、こちらでも上位に入りました。どちらのランキングでも上位なのは金融業・保険業と学問に関わる業種です。
特に学問に関わるものは、3位:大学教授、6位:大学准教授、10位:研究者、11位:小・中学校教員など、多くの職業が上位になっています。学問に関わる業種は、全体的に平均年収が高いということが分かります。
年収の高い仕事へ転職するコツ
前述したとおり、年収の高い職業にはそれだけの理由があります。人気で倍率が高かったり、スキルが求められたりと、職業によってさまざまです。そのため、ただ漠然と転職活動をするのではなく、準備や計画が必要になります。
年収が高い職業への転職のコツを、3つご紹介します。
資格やスキル・能力を身につける
まずは、希望する業種・職業で求められる資格についてです。業種によっては、必要な資格を所持していることが採用の条件になることがあります。転職活動の際には、資格があるとより有利に活動できます。
ただし、場合によっては必要な資格を得るのに時間がかかることもあります。試験合格率の低い難関資格であったり、実際に業種での実務経験が必要とされることもあるためです。また、医師や弁護士、技術系の専門職などは、大学において特定の学科を卒業していないと、資格試験を受験することもできません。転職を希望する業種・職業があれば、まず必要な資格について調べましょう。
しかし、特別な学歴や資格がなくても挑戦できる職業もあります。例えば、職業別の平均年収ランキングで9位にランクインしたシステム・エンジニアは、取得が必須の資格はありません。スキルや知識を身につければ、未経験からでも高年収が期待できます。
転職活動の際には、こういった職業も候補に入れると、選択の幅が広がりますね。
人材不足の業界・業種を狙う
人材が足りている業種は、なかなか求人が出ないため、倍率が高くなります。反対に人材不足の業種であれば、求人も多くなります。人材不足の業種では好条件のケースが多いため、希望に合った企業を探すこともできます。特にIT業界は、慢性的な人材不足ですので、必要なスキルや知識を身につければ収入面など好条件での転職が目指せます。
語学力を磨く
職業によっては、英語のスキルを必須としているところもあります。例えば航空機操縦士、外資系の金融機関の専門職員、国際部門の公認会計士などです。これらの職業は、職業別平均年収ランキングTOP30にもランクインしています。
また、英語が必須の職業ではなくても、英語のスキルがあると職務の幅が広がることもあります。日本人は英語のスキルを持つ人が少ないため、英語ができるだけで需要が高まるからです。
周りと差をつけたいなら、語学力を磨くのもおすすめです。


年収以外で転職の際に確認すべきポイント
実際に転職するとなったら、やはり高年収の業種・職業に就きたいと思うのは自然なことです。
ですが、年収だけに囚われてしまうと、転職後に問題が発生してしまうことがあります。そこで、転職の際、年収以外に確認すべきポイントを2つご紹介します。
企業の将来性や社風を確認する
収入と同じように、転職する企業についてもよく知ることが大切です。
転職後に後悔しないために、
・企業が安定していて、将来性があるか
・長く働けるか
を軸にして企業の研究をしましょう。
企業の将来性については、
・年間の売上高
・営業所の所在地や拠点数
・企業が属する市場の動向
などを調べることで分かります。
こういった情報をあらかじめ知っておくことで、せっかく転職したのに、倒産してしまった…といったことを防ぐことができます。
また、長く働くには企業の環境が大切です。
・社風が自分とあっているか
・福利厚生は整っているか
・求人と実際の勤務内容に相違はないか
などを確認しましょう。
ただしこういった点は、ネットなどでは情報を得にくい部分ですので、面接の場を活用しましょう。企業との面接は、実際に企業の内部を垣間見る非常にいい機会です。面接で企業の雰囲気に触れ、気になる点は面接官に直接聞いてみましょう。
いくら条件面がよくても、企業の雰囲気が自分に合わないこともあります。また、求人票にはなかった業務をやることになったというのも、残念ながらよくある話です。理想の転職を叶えるためには、求人票だけに頼らず、さまざまな情報を収集することが必要です。
自分に合った労働スタイルかどうか確認する
職業は、大きく肉体労働と頭脳労働に分けられます。肉体労働は、身体を動かして働くことです。
具体的には
・建設業:道路敷設、ビルや家の建築など
・製造業:工場での製造、溶接など
・第一次産業:農業、林業、水産業
などが挙げられます。常に身体を使っての労働になりますが、働く場所はさまざまです。体力に自信がないとできない、ということはありません。しかし、屋外での労働の場合は、夏は暑く冬は寒いなど、労働環境が過酷になることもあります。肉体労働の職業を選択するなら、労働環境をしっかりと確認しましょう。また、自分がどれだけできるのか、自己分析をしておくのも大切です。
頭脳労働は、自分の知識や思考を使って働くことです。
具体的には
・一般企業:企画、管理、事務職(デスクワーク)
・資格の知識で専門的な判断をする職業:医師、弁護士など
・研究職
などが挙げられます。これらは基本的に、一日中机に向かい、パソコンや資料などを活用して働く労働スタイルです。肉体労働のように季節や天候に左右されることはありません。
しかし企業によっては、残業や残務の持ち帰りなどが発生しやすくなります。肉体労働とは異なり、パソコンやデスクがあれば、いつでも、どこでも働ける場合があるためです。頭脳労働の職業を選択するなら、定時や残業の有無などをよく確認しましょう。
このように、肉体労働と頭脳労働では、労働スタイルが全く異なります。そのため自分に合っていない働き方を選択すると、長く続けられない可能性があります。無理をして働いた結果、身体を壊してしまったりしてはせっかくの転職が無駄になってしまいます。
転職には年収などの条件面も大切ですが、自分に合った労働スタイルも非常に重要です。今の自分とは異なる業種への転職の場合は、特に慎重に職業を選択してください。
希望の年収を考えながら理想の転職を
日本人の平均年収と、業種別・職業別の平均年収ランキングをご紹介しました。
今よりも年収を上げたいと思ったら、高年収の業種・職種、業界への転職を検討してみてください。
理想の転職には、自分に合う転職を、自分のペースでできるPaceBoxへの登録をおすすめします。
