転職活動の面接では、最初に自己紹介を求められます。出だしがうまくいかないと、後の質問にも影響を与えてしまうでしょう。そのため、事前に準備しておくことが大切です。そこで、自己紹介の際、何を話したらよいのかをはじめ、面接官によい印象を持ってもらえる話し方、NG例、面接前に自己紹介の練習をするときのポイントを紹介します。


目次
面接での自己紹介とは?自己PRとは違う?
面接での「自己紹介」とは、どのようなものでしょうか。混同してしまいがちな「自己PR」との違いなども含めて解説していきましょう。
自己紹介とは
自己紹介とは、自分自身がいったいどのような人物なのかを相手に知ってもらうために、所属(学生の場合は大学・学部、転職の場合は勤めている会社・部署・職種など)や人柄などを伝えることを言います。転職の面接の場においては必ず面接官から「簡単に自己紹介をしてください」と言われます。
応募者は面接官から自己紹介を促されたら、「本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます」とお礼を言った後、「氏名」をはじめ、「現在(または直近)の職業」「趣味・特技」などを1分程度で伝え、自分自身がどのような人物であるかを明らかにしましょう。自己紹介を終えた後は「本日はどうぞよろしくお願いします」という言葉で結びます。
自己PRとの違い
自己紹介と自己PR、両者は似ているようで異なります。自己PRは、自分の長所や強みを企業に伝えることで、企業側から「採用したい」と思ってもらうためにするものです。具体的に言うと、性格やスキル、経験など自分の魅力を話します。自己PRの場合は、これまでの経験を踏まえながら、どのように長所や強みを生かしたのか、自分自身について掘り下げて話すため、自己紹介よりも話す時間は長くなります。3分程度が目安です。
自己PRの場合、性格の長所を伝えるために「人と話すのが得意です」というようなあいまいな言い方をするのは良くありません。根拠となるエピソードを交えた上で、「コミュニケーションを取ることが上手で、営業部では5年連続売上ナンバー1でした」など、具体的な数字を入れて成果を伝えるようにしましょう。その際、自慢に聞こえないように謙虚な言い方を意識することが大切です。さらに、自身が持っている長所をどのように転職先の会社で活かしていくことができるのか、アピールすることも大切です。


面接で自己紹介を求められる理由
面接で自己紹介を求められる理由は3つあります。1つ目は、会話のきっかけ作りです。面接官は自己紹介で興味を持った話に紐づく質問を投げかけることがあります。自己紹介から話をふくらませていくのです。また、応募者は緊張しているものです。そのため、緊張した状態のままでは、応募者から具体的な話を引き出すことができません。そこで、本格的な面接に入る前に自己紹介をしてもらい、その内容に関する雑談で緊張をほぐそうと考える面接官もいます。
2つ目は、応募者の基本情報を把握するためです。相手との信頼関係を築くためには、どのような人物なのかを知ることから始まります。基本情報を知っておけば、この後の面接での質問に活かすことが可能です。また、大企業には応募者が殺到します。面接官も応募書類の内容をすべて覚えていない可能性があります。そのため、本格的な面接に入る前に、自己紹介という形で基本情報を伝えておくことは大切なのです。
3つ目は、応募者のコミュニケーション能力をチェックするためです。ビジネスマンにおいてコミュニケーション能力は大切な能力の一つと言えます。簡潔に的を射た自己紹介かどうかを見ることで、ビジネスマンとしての力をはかっているのです。面接官から「簡潔に話してください」と言われているにもかかわらず、長々と話をしてしまうと、「人の話を聞いていない」「自分本位だ」と思われてしまいます。また、自己紹介の場であるにもかかわらず、関係のない話をしてしまうことも同様です。
面接の自己紹介では何を含めたらいい?
自己紹介では「氏名などの基本情報」「経歴」「入社への意欲」を話します。次から、どのような内容を話すのか、具体的に解説していきましょう。
氏名などの基本情報
基本情報のなかでも一番先に話すのは名前です。まず、「鈴木太郎と申します」とフルネームを名乗るようにしましょう。緊張すると、どうしても早口になるものです。ゆっくりと聞き取りやすい口調で伝えるようにしましょう。名前を名乗っている間は下を向いたり、きょろきょろと辺りを見回したりしてはいけません。きちんと面接官の目を見て話すようにします。というのも、面接官は応募者の顔写真と応募書類を見て、同一人物かどうかチェックしているからです。また、視線をそらしていては「態度が良くない」「自信がない」など、面接官にマイナスの印象を与えてしまいます。目を合わせるのが苦手な人は、面接官の眉間に視線を合わせるようにしましょう。
経歴
次に、現職または前職について話します。社名や職種、所属部署、勤続年数などを簡単に伝えるとよいでしょう。これらの情報は応募書類にすべて記載していることですが、応募者が多い場合、面接官はじっくり目を通していない可能性があります。さらに、現職または前職で身につけたスキルや経験を、応募先の企業で活かせるのであれば、面接官にしっかりとアピールするようにしましょう。その際、どのように活かすことができるのか、具体的に伝えるようにします。そうすれば、面接官に「ぜひとも我が社の即戦力として欲しい人材だ」と思ってもらえます。
入社への意欲
面接官は入社後活躍してくれる人材かどうか、応募者の意欲を見て判断します。自己紹介の締めに、応募先の企業に関心を持った理由を仕事への意欲と絡めながら、話すとよいでしょう。その際、応募企業に転職したら、自分の強みをどのように活かすことができるのか、話すようにします。身振り手振りを加えながら話すと、より熱意が伝わります。身振り手振りのポイントは、手の位置を顔や胸の高さにまで上げることです。手の位置が下だと、逆効果で「自信がない人」と思われてしまうからです。


自己紹介で面接官に良い印象を持ってもらうには
採用不採用は、面接の印象で左右されます。そこで、次から、自己紹介で面接官に良い印象を持ってもらうためにはどうすればよいのか、そのためにできることを解説しましょう。
明るくにこやかな表情を作る
明るく話すと、面接の雰囲気もよくなるものです。しかし、緊張していると、知らず知らずのうちに表情がこわばってしまいます。そのため、意識してにこやかな表情を作るように心がけましょう。眉毛は下げ、口角は上げるようにすると、明るい表情を作ることができます。また、口角を上げると、自然と声のトーンも上がるため一石二鳥です。もちろん、無理に笑う必要はありません。無理して笑うと、「ぎこちない」「へらへらしている」などといったマイナスの印象を与えてしまうからです。自然な笑顔が大切です。話しているときの視線は面接官の目の高さに合わせましょう。ただし、ずっと目を合わせていると、圧迫感を与えてしまいます。ときどき目線をそらすようにするとよいでしょう。そして、話し終わった後も油断してはいけません。明るい表情をキープします。
このほか、猫背だと暗い印象になってしまうため、まっすぐな姿勢で話すことも大切です。ただし、自分ではまっすぐなつもりでも意外と顎が前に出ていたり、肩が下がりすぎていたりするものです。鏡を見て、どのような姿勢なのか、確認してみるとよいでしょう。
大きな声ではきはきと話す
気持ちが萎縮してしまうと、どうしても声が小さくなってしまいます。しかし、声が小さいと、面接官に話している内容を伝えることができません。さらに、「自信がない」「暗い」といったマイナスの印象も与えてしまいます。そのため、普段の会話よりも大きめの声を出すように心がけましょう。そして、はきはきと話すことも意識するようにします。大きな声ではきはきと話す人は、自信がありそうに見えるからです。話の内容に説得力を持たせることができるでしょう。
早口にならないように気をつける
緊張すると、普段よりも早口になってしまいがちです。早口で話すと、面接官は何を話しているのか聞き取りにくいものです。また、自信がなく、せわしない印象を与えます。面接の場ではゆっくり話すことを意識しましょう。そうすることで、「堂々としていて自信がある」「落ち着いている」などの良い印象を持ってもらえるでしょう。
正しい言葉遣いで話す
面接では、面接官に話す内容を正確に理解してもらうことが大切です。伝わりにくい言葉を使うのはやめるようにしましょう。まずは、敬語を正しく使うようにします。間違いやすいのが二重敬語です。たとえば、「伺わせていただきました」はNGです。「伺いました」と言うようにしましょう。また、自己紹介で所属部署を話すときに「営業部に所属させていただいております」という人が多いものです。しかし、これも間違いで、正しくは「営業部に所属しております」です。気をつけるようにしましょう。また、応募企業に関して「貴社」と言ってはいけません。「貴社」はメールや手紙など文字にして伝えるときに使う言葉です。面接の場では「御社」と言うようにしましょう。
要点を簡潔にまとめる
自己紹介の場では、面接官に自分の良さを知ってもらいたいがあまり、あれもこれもと話してしまいがちです。しかし、自己紹介にたくさんの内容を詰め込むと、長くなりすぎて要点がぼやけてしまうことが多々あります。結果として、面接官に一番伝えたいことを伝えることができなくなってしまうのです。自己紹介の長さの目安は1分程度と心得ましょう。といっても、1分がどのぐらいなのか、わからない人もいるのではないでしょうか。1分を文字数で表すと300文字程度です。あらかじめ話す内容を文章で作っておいて、読む練習をしておくとよいでしょう。また、自己紹介の段階では、転職理由や志望理由などについては詳しく話さないようにしましょう。


失敗を避けよう!こんな自己紹介はNG!
自己紹介で自分をよく見せようとするあまり、逆に失敗してしまうこともあります。次から自己紹介でやりがちなNG例を紹介しましょう。
過剰に自分のことをアピールする
応募企業に採用してもらいたいがあまりに、自分のことを過剰にアピールしてしまう応募者もいます。しかし、面接官から「質問の意図をよくわかっていない」「自慢している」「周りを見下している」などとマイナス評価がつく場合があります。かといって、へりくだり過ぎる表現も、面接官に「おどおどしている」「自信がない」と見られてしまうため、避けるようにしましょう。
社内用語や専門用語を使う
知識や専門性をアピールしようとして、社内用語や専門用語を使う応募者もいます。しかし、面接官に意味が伝わらない可能性があります。特に、異業種に転職する場合は避けるべきです。社内用語や専門用語、面接官が理解できない言葉を使って、自己紹介をしないように気をつけましょう。
面接前に自己紹介の練習をするときのポイント
本番で落ち着いて話すことができるように、面接を受ける前に自己紹介の練習をしておくことをおすすめします。練習のポイントは3つあります。1つ目は、声に出して練習することです。実際に口に出してみることで、声の大きさや話すスピードを確かめることができます。実際に時間をはかってみて、1分以内におさまるかどうか確かめてみましょう。
2つ目は、面接の練習の様子を録画することです。録画を見ることで、客観的に自分自身の姿を確認できます。話しているときの目線や表情、身振り手振りをはじめ、抑揚、話すスピード、姿勢などを見ていきましょう。家族や友人に録画を見てもらい、意見をもらうこともおすすめです。自分とは違う視点でチェックしてくれることでしょう。
3つ目は、家族や友人と模擬面接をすることです。第三者の目から、自分では気づかなかった点を指摘してもらえます。さらに、何度も練習することでイメージトレーニングができ、本番もリラックスして面接に臨むことができます。また、自分自身が面接官役をやってみるのもよいでしょう。面接官の気持ちになってみることで、応募者の立場では気づかなかった点に気づくことができます。
自己紹介で良い第一印象を残せるように準備しておこう!
自己紹介は、自分の人柄やコミュニケーション能力などを面接官にアピールするチャンスです。先に述べた点に注意しながら、しっかりと自己紹介の準備をしておきましょう。万全の準備をしておけば、それが自信につながって、本番にあたふたしなくて済みます。とはいえ、緊張して頭が真っ白になってしまうこともあるでしょう。そのようなときは、深呼吸して気持ちを落ち着かせ、話を続けるようにします。そして、面接官に良い印象を残し、採用を勝ち取りましょう。
