公務員は安定した仕事のため、転職を考えていてもなかなか踏み切れないという人は少なくないでしょう。しかし、公務員から民間企業に転職することで、得られるメリットも多くあります。本記事では、公務員からの転職を考えている人に向けて、公務員が転職でアピールできるスキルやおすすめの転職先、転職を成功させるためのポイントを解説します。


目次
「公務員からの転職は難しい」と言われる理由は?
「公務員からの転職は難しい」と言われる理由は主に次の2つです。
公務員より条件の良い転職先が少ないから
まず、公務員より条件の良い転職先が少ないからという理由です。公務員の給与水準は中小企業よりも高く、年功序列で昇給、賞与もあります。退職金の金額も多めです。リストラの可能性も低いでしょう。
一方、民間企業での給与は、企業の業績や個人の成績などによって変動します。このように公務員と民間企業では、給与制度などに大きな違いがあるため、公務員と同じくらいの待遇で転職先を探そうと思うと、企業選びに苦労することになります。
公務員と民間企業では求められるスキルや考え方が違うから
公務員と民間企業では、そもそもの活動目的が違うため、仕事で必要とされるスキルや考え方も異なります。公務員では、社会に貢献して市民により良いサービスを提供することが求められますが、民間企業では自社の利益が重視されます。民間企業では、利益を上げる方法を自分で考えて行動できる人が求められているといえるでしょう。具体的には、主体性や提案力、判断力などのスキルが必要です。また、民間企業では外部環境の変化に合わせて柔軟に対応しなくてはならないことも多いため、最新情報やトレンドにキャッチアップするための情報収集力も大事です。


公務員から民間企業へ転職するメリット
公務員から民間企業への転職は難しいと言われますが、転職することで期待できるメリットも多くあります。ここでは主な4つのメリットについて解説します。
自分がやりたい仕事ができる
まず、自分の興味や適性に合った、やりたい仕事ができる可能性があります。公務員は、配属や異動の希望提出は形式的なケースが多く、個人が担当する業務の範囲も限られているため、自分が本当にやりたい仕事を選ぶことは難しいのが現状です。その点、民間企業では希望する職種に応募できます。また、年齢よりも成果で評価される傾向にあるため、能力次第では裁量の大きな仕事を任せられるケースもあり、仕事の幅が広がります。仕事を楽しんだり、やりがいを持って働いたりすることにもつながるでしょう。
年収が上がる可能性がある
転職先によっては、年収アップを目指せます。年功序列の慣習が根強い公務員では、給与は勤続年数によって決まることが多く、職種にもよりますが、若手のうちから高い給与を得ることは基本的には難しいでしょう。
民間企業の場合では、個人の実績や評価に連動して給与が上がる成果主義を導入している会社が多く、頑張り次第では公務員時代よりも年収が上がる可能性があります。特に、成果主義の社風が強いベンチャー企業では、成果を上げることで年齢に関係なく年収が上がる傾向にあるため、大幅な収入アップも期待できます。
ワークライフバランスを実現できる
民間企業に転職したことで、ワークライフバランスが改善され、理想とするライフスタイルを手に入れられる場合もあるでしょう。公務員では、残業や休日のイベント参加などもあります。残業の少ない会社や年間休日が多い会社、有給休暇を取得しやすい会社を選べば、自分の時間が増えてワークライフバランスを実現させやすくなります。また、夏季休暇や年末年始休暇が長い会社ならば、定期的にリフレッシュしやすいでしょう。ただし、残業の多さや休みの取りやすさは業界や会社、部署によって大きく異なるため、事前によく調べておくことが大事です。
キャリアの選択肢が増える
業務を通じてスキルアップでき、キャリアアップのチャンスが広がることも、公務員から民間企業への転職によって期待できるメリットです。民間企業では、年齢の割に難しい仕事にも挑戦できるため、自己成長する機会を多く持てます。
また、公務員と比べて、業種や職種も多様です。今後、再度転職することになっても、民間企業を経験していれば公務員からの転職よりも選択肢が増えるでしょう。


公務員から民間企業へ転職するデメリット
続いて、公務員から民間企業へ転職するデメリットを紹介します。公務員から民間企業への転職には次のようなデメリットがあるため、自分の適性も含めて慎重に判断することが肝心です。
成果を出さなければ収入が上がりにくい
民間企業は、年功序列の公務員とは昇給の仕方が異なります。成果主義が採用されているところが多く、民間企業では成果を出さなければ、昇給や昇進はしにくいでしょう。特に中小企業やベンチャー企業ではその傾向が強く見られます。一般的に、中小企業の給与水準は公務員より低いため、結果を出せないと公務員時代よりも収入が下がってしまうかもしれません。
公務員の仕事は評価されにくい
公務員の仕事は評価されにくいというデメリットもあります。まず、公務員は利益に対する考えが甘く、ビジネス視点で業務効率を追求する姿勢も弱い、と見られがちです。職業の特性上、法律や規則に従うことも多いため、自発的な提案や行動に慣れていない人も少なくないでしょう。
しかし、民間企業の中途採用では基本的に即戦力が求められますので、業務に慣れるのに時間がかかりそうな公務員は敬遠される場合があります。加えて、公務員という仕事へのイメージも人それぞれです。面接官の中には、仕事内容をよく知らずに先入観だけで、「利益を求めない分、民間企業よりも楽そう」と捉えている人もいるかもしれません。
遠方に転勤になるケースもある
民間企業では、遠方に転勤になる可能性も生じます。公務員は、一般的に勤務エリアが限られています。国家公務員の場合は全国転勤の可能性がありますが、地方公務員では原則として採用された自治体がそのまま勤務地となるため、遠方への転勤はありません。
えしかし、全国展開している民間企業では、他県の支店などに転勤を命じられるケースも想定されます。グローバル企業となれば、若いうちからの海外出向も珍しくありません。特別な事情などがない限り、基本的には、社員は会社の転勤命令には従わなければならないとされています。
公務員よりも安定感は低い
民間企業は、公務員よりも安定感は低めです。民間企業では、倒産のリスクがあります。経営不振によって、リストラされたり、賞与を減額されたりするケースも考えられます。外部環境の急激な変化によって、特定の業界全体が勢いを失うこともあるでしょう。公務員の民間企業への転職が家族から反対されやすいのは、主に「安定感を失う」という理由からと言われています。また、雇用が安定しなくなることで、公務員時代よりも社会的信用が低下する可能性も否定できません。ローンやクレジットカードの審査に通りにくくなると、自動車や住宅の購入にも支障が出ます。


公務員が転職でアピールできるスキル
公務員をやっていた人ならば、長けていそうと思われるスキルもあります。求められるスキルは希望する業界や職種によっても異なりますが、次の2つのスキルは幅広い業務で役立つ可能性が高いでしょう。公務員が民間企業に転職するときには、次の2つのスキルをアピールしましょう。
事務処理スキル
まず、アピールできるのは、事務処理スキルです。公務員では、普段の業務で書類や資料を作成したり、データを入力したりすることが多くあります。また、公的な書類も数多く取り扱います。こうした業務の特性から、事務処理の正確さやスピードの速さなどをアピールできるといえるでしょう。事務処理スキルが高いと、業務の生産性もアップします。ビジネスの効率性を追求する民間企業では、事務処理スキルの高い人材は、特に重宝されます。
コミュニケーションスキル
次に、コミュニケーションスキルもアピールできるでしょう。公務員には窓口業務や電話対応もあり、住民と円滑にコミュニケーションを取ることが求められます。窓口にやってくるさまざまな住民に対して、手続きの内容をわかりやすく説明したり、ヒアリングを行ったりしなくてはなりません。中には、クレーム処理に近いものもあるでしょう。こうした対応業務を通じて培われた説明力や傾聴力、折衝力などをアピールすることも有効です。
公務員からの転職でおすすめの転職先は?
公務員からの転職では、自分の経験やスキルに合った転職先を選ぶことが大事です。ここでは、公務員からの転職でおすすめの職種や業界について解説します。
営業職
まず、検討できるのは営業職です。営業職は、経理や人事などの職種ほど、専門知識が求められない場合が多く、公務員からでも比較的転職しやすいといえます。転職先の選択肢も豊富なため、土日休みで働きやすい会社も見つけやすいでしょう。
また、未経験からでもキャリアアップしやすいのも特徴です。営業は、顧客のニーズを満たす商品やサービスを提供したり、契約を結んだりする仕事であり、対人関係の業務が多めです。窓口業務などで市民対応をしていた人は、コミュニケーション能力を生かして、相手の悩みを引き出しつつ的確な提案ができるのではないでしょうか。公務員として培った、話し方や対応、身だしなみなどの接客マナーも営業の現場では大いに役立つでしょう。
事務職
事務職では、事務処理能力を生かして働けます。繁忙期でも、冷静にミスなく働ける人材は重宝されます。高く評価されれば、よりハイレベルの仕事やポジションを任されるようになる可能性も増すでしょう。
事務処理能力に加えて、簿記の知識などがあれば、さらに転職しやすくなります。事務職への転職での注意点は、女性のみの採用や派遣での採用が多く、収入が下がるリスクがあることです。派遣から正社員になるのは難しいケースが少なくないため、できるだけ正社員で採用してくれるところを選びましょう。


専門職
公務員の業務に専門職として取り組んでいた場合は、そこでの資格を生かして転職する道も開けます。例えば、司法書士や行政書士、税理士、教師などへの転職です。一般的に、公務員の仕事には「堅い」というイメージがあるため、法律や教育関係の業界への転職の際にも、信頼されやすいでしょう。
また、公務員として税務署に勤務して、長く国税に関わる業務を行ってきた人は、税理士試験で免除制度を利用できるかもしれません。専門職に転職することで、将来的に高収入を得られる可能性も期待できます。
コンサルタント
コンサルタントとは、主にクライアントが抱えるさまざまな経営課題について、その解決に向けた助言などの支援を行う専門家です。コンサルタント領域では、公務員で培った資料作成スキルや学習能力の高さを生かせるでしょう。
特に、国家公務員として働いてきた人は、行政関係の専門知識を持っていることが多いはずです。取引先の一部が行政関係であれば、得意分野であるため、満足のいくサービスを提供しやすいといえます。クライアントにあたる企業から信頼されることが前提であるため、国家公務員という社会的信用度の高い身分もアピール要素になり得ます。
団体職員
団体職員への転職もおすすめです。団体職員は、公務員と組織風土が似ているところが多く、勤務体系も近いため、民間企業よりもなじみやすいかもしれません。例えば、独立行政法人や財団法人、国公立大学法人、農協、NPO法人など選択肢があります。公務員が担う公共サービスと同様に、営利目的で運営されていないため、休みが取りやすく残業も少ない傾向も見られます。
独立・起業
公務員時代の経歴を生かして、独立・起業する方法もあります。民間企業で働いた経験がなくても、やる気とアイデアがあれば起業は可能です。公務員として働くうちに、違う角度から社会や地域に貢献したいと考えるようになり、起業を考える人もいるようです。国家公務員法で定められている通り、公務員をしながらの起業は原則できませんので、仮に独立したいのであれば、公務員を退職する必要があります。
ただし、独立や企業は、民間企業への転職以上にリスクが高いため、辞める前に成功事例をよく調べたり、ビジネスプランを明確にしたりしておくことが肝心です。


公務員から公務員へ転職する方法もある!
公務員から公務員へ転職することも可能です。その場合、大きく分けて、次の2つの方法があります。
民間経験者採用枠
1つ目は、民間経験者採用枠への応募です。民間企業などの職務経験を有する人が対象です。「社会人採用試験」とも言われます。公務員の前に、民間企業で一定の社会人経験を積んだ人は、受験資格を得られる可能性が高いでしょう。自治体によっては、公務員としての職歴も認められるケースもあるようです。応募する自治体の受験資格について、よく確認しておきましょう。募集される試験区分や人数は限定的です。また、年齢制限についても自治体によりますが、29~30歳を上限としていることが多いでしょう。一部、59歳が上限の場合もあります。
大卒程度一般枠
2つ目は、大卒程度一般枠への応募です。大卒程度枠では、対象年齢は撤廃されていることが多いようですが、「〇年〇月〇日までに生まれた人」など下限がある点には注意が必要です。社会人経験は数年あれば良く、その点では民間経験者採用枠よりもハードルは低いでしょう。民間経験者採用枠よりも採用者数は多めですが、倍率も高めです。倍率は、自治体によっても異なります。
公務員からの転職で注意したいこと
公務員からの転職で後悔しないためには、まず本当に公務員を辞めていいのかどうかよく考えることです。民間企業では、倒産やリストラのリスクが生じます。公務員としての好待遇や安定感を捨ててでも、転職したいのか熟考する必要があります。家族がいるなら、同意を得ておくべきでしょう。
また、公務員と民間企業では活動目的が違うため、仕事での評価基準も異なります。民間企業では、ビジネス視点や成果が強く求められます。公務員時代とは、仕事に対する考え方や方法を大きく変えなくてはならないでしょう。
仕事へのスタンスの違いなどから、「元公務員は扱いにくい」と先入観を持たれて、上司や同僚などから敬遠される場合もあります。こうした理由から、転職後にはストレスやプレッシャーを感じやすい環境になるといえます。公務員からの転職が、自分にとってメリットとデメリットのどちらが多いのか、冷静に比較したうえで、結論を出しましょう。


公務員からの転職を成功させる方法!
最後に、公務員からの転職を成功させる方法を紹介します。公務員からの転職は、簡単ではありません。成功させるためには、次の4つの行動を実践して、転職への意欲や応募する仕事への適性をアピールすることが大事です。
転職理由をポジティブにする
まず、転職理由をできるだけポジティブなものにすることで、応募先に納得してもらえる可能性が高まります。一般的に、公務員は民間よりも待遇が良いため、多くの採用担当者がまず、「なぜこの人はわざわざ公務員を辞めてまで、転職活動をしているのだろう」と疑問を持つことでしょう。
転職理由として公務員の不満を挙げると、「自社に転職したいのではなく、単に公務員が嫌になっただけでは」「またすぐに辞めてしまうのでは」と、面接官にマイナスのイメージを持たれてしまいます。面接官に好印象を持たれるためには、「公務員として培った経験やスキル、人脈を御社の○○の業務に生かしたい」などと、ポジティブな理由に変換し、かつ具体的に話すことが大事です。
資格を取得するなどスキルを身につける
資格を取得すれば転職先の選択肢が広がります。また、転職のために資格を取得していれば、やる気や向上心、行動力などをアピールできます。特に、技術系の仕事や事務系の仕事では、それに関係する資格を取っておくことで、能力を客観的に証明でき、応募先にも適性があると評価されるでしょう。
例えば、IT系の職種であれば、プログラミングなどのパソコンスキルがあると転職を有利に進められます。簿記の資格は、企業の経理や税理士としての仕事に役立つでしょう。英語の資格を取っていれば、グローバル企業への応募の道も開けます。
公務員の場合、職場によっては定時に帰れることも多いでしょう。時間に余裕があるならば、帰宅後に資格の勉強に取り組むなど、転職に向けて準備を始めておきましょう。
若いうちに行動する
転職の成功率を高めるには、若いうちに行動することも大事です。公務員からの転職の難易度は年齢によっても異なり、一般的に40歳を超えると公務員からの転職はさらに難しくなります。
40歳以上の中途採用では、マネジメント能力が求められます。しかし、公務員としての管理職の経験は、競合他社との競争や利益追求を前提とした民間企業では、評価されにくいでしょう。また、年齢が上がるほど、専門的なスキルも求められがちです。
加えて、若いほうが柔軟性や適応力が高く、新しい社風にもなじみやすいと思われる傾向にもあります。これらの理由から、若いほうが公務員からの転職のハードルは低いといえます。20~30代のうちなら、公務員試験を突破した優秀な若手という印象も持ってもらえるでしょう。
転職サイトでやりたい仕事を探してみる
自分に合う適切な就職先を見つけることも、成功の必須条件です。転職サイトにはさまざまな求人が数多く掲載されているため、効率良く求人を探せます。求人情報の量だけでなく、質が高いサイトを選ぶのもポイントです。年収や休日、職種など、条件を絞って自分に合いそうな仕事を探してみましょう。
今すぐ転職したいわけではなくても、サイトへの登録は可能です。オファー型転職サイトPaceBoxなら、企業からのオファーを待つだけで良いため、求人を探す手間を省けます。また、自分のペースで転職活動を進められるでしょう。さらに、キャリアアドバイザーなど転職のプロにも、転職活動について相談できます。
公務員から転職して新しい仕事に挑戦してみよう!
公務員からの転職は、これまでの安定や好待遇を手放さなければならないなどの理由から、ハードルが高いと言われることも少なくありません。しかし、一歩踏み出すことで、より幅広い分野でさらに充実した仕事ができる可能性が期待できます。
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