転職活動中の人の中には、職務経歴書の内容を少しくらい盛ってもバレないと思っている人もいるのではないでしょうか。実際、自分の経歴を誇張したり事実と異なる記載をしたりする人は、少なからずいるようです。果たして、職務経歴書に書かれた嘘は本当にバレないのでしょうか。今回は職務経歴書で嘘が書かれやすい項目や、実績や職歴、役職を詐称する理由、バレたときのリスクなどを紹介します。


目次
職務経歴書の嘘は結局バレる
結論からいうと、程度にもよりますが、職務経歴書の嘘はいずれバレます。まず、専門知識やスキルがないのに「ある」と書いたところで、実際の業務クオリティーを見れば、一目瞭然です。仮に業務は何とかこなしたとしても、年金手帳や雇用保険被保険者証、源泉徴収票などで過去の履歴と照合すれば簡単にバレてしまいます。職務経歴書で嘘をついて採用されたとしても、入社後にバレれば、社会人としての信用を失うのは必然です。
一度、地に落ちた信用を取り戻すのは至難の業です。職場での居心地が悪くなり、結局また転職せざるを得ないでしょう。会社の不利益が大きい場合には、内定取り消しや解雇の可能性もあります。
「とにかく入社してしまえば何とかなる」と安易に考えるのは大きな間違いです。結果的に、自分で自分の首を絞めることになりますので、職務経歴書で嘘をつくことは絶対にやめましょう。
職務経歴書で嘘がバレやすい項目
職務経歴書に記載する内容は多く、中には嘘といえない程度に盛ることができる項目もありますが、面接での受け答えとの間に矛盾があると、嘘をついているのではと面接官にあやしまれてしまいます。基本的に事実と異なる記載をしないようにしましょう。ここでは、職務経歴書で嘘がバレやすい6つの項目について、そもそもなぜ嘘をつく人が多いのかという理由を踏まえて解説します。
勤続年数・空白期間
勤続年数が2~3カ月など、極端に短い会社があると、短期離職したことが相手にわかってしまいます。短期離職の理由は、さまざまでしょう。しかし、短期間で辞めたという結果だけを見た相手には、「忍耐力がない」「性格に問題があるのでは」などの、ネガティブなイメージを持たれてしまいがちです。採用担当者の印象も基本的に良くないため、選考で不利にならないよう実際の勤続年数より長くするケースが見受けられます。空白期間が長い場合は逆に短くしたり、なくしたりすることもあるでしょう。しかし、退職日などの日付等に関する情報は、前述の公的書類や源泉徴収票との照合で簡単に確認できてしまいます。
転職回数
転職回数が多いと、ひとつの職場に定着できない人物と判断されやすいでしょう。男女による違いもありますが、一般的には転職回数が2回以上になると「多い」と感じられる傾向が見られます。「辞めグセがあるのでは」と思われるだけでなく、業務経験を長く積めていないことから、習熟度への懸念も出やすいといえます。企業側も少なくないコストをかけて採用活動を行っていますので、すぐに辞めそうな人は採用しにくいでしょう。
これらの理由から、転職回数を少なく見せたい心情は理解できますが、これも不自然な空白期間が出るため、やはり人事関係の書類でバレます。転職回数については正直に書きましょう。そのうえで、「家族の病気などのやむを得ない理由であったこと」や「転職によって着実にスキルアップしていること」などのアピールに注力するのが得策です。


実績
前職での実績についても、盛る人は少なからずいます。以前に勤めていた会社での営業実績の数値に関しては、本当かどうか確認しようがないためです。例えば、実際は売上達成率90%のところを120%と嘘をつかれても、追及することは不可能でしょう。
また、実績に挙げている業務の難易度や貢献度についても判定しようがないため、基本的には本人の言うことを信じるしかありません。しかし、実際の仕事ぶりが振るわなければ、上司や同僚に実力を疑われてしまう可能性は高いでしょう。特に、即戦力として期待される中途採用では、入社後のパフォーマンスには注目が集まります。実績を盛って採用されたとしても、期待通りのパフォーマンスが出せなければ、どのみち評価は下がります。
職歴・経験年数
職歴や業務経験の年数を詐称した場合も、前職の会社に確かめるわけにもいかないため、選考の際は真偽不明となるでしょう。例えば、スキルを高く見せようとして、実際には人事部での経験は1年しかないのに、3年などと偽って記載するケースです。
しかし、これに関しても、その人が経験年数に見合うスキルを身に付けているのかは、一緒に働く同僚にはすぐに見透かされてしまうでしょう。特に、経理や労務管理といった専門的な業務に関しては、未経験・経験不足と経験ありでは業務遂行に大きな差が出るため、職場に嘘がバレるのは時間の問題です。職歴や経験年数の嘘は経歴詐称とみなされる恐れがあります。職歴や経験年数は採用の合否判断に大きな影響を及ぼすものだからです。
役職
事実と異なる役職についていたと嘘を書くケースも見受けられます。例えば、マネジメント経験がないのに、管理職であったと記載したり、部下の人数を実際よりも多く書いたりするケースが該当します。職種にもよりますが、役職者になるほど、対外的な仕事は増えていくものです。そのため、本当に役職者であったのなら、前職の取引先会社などに名前が知られていても不思議ではありません。
特に、同じ業界内での転職の場合は、社外に知り合いがいるほうがむしろ自然です。そういったことは、直接相手の会社に確認される可能性もあります。役職やマネジメント経験をごまかす行為も経歴詐称にあたります。


スキル・資格・免許
実際には所持していない資格や免許を記載するケースも少なくないようですが、これもすぐにバレる嘘です。理由は次の2つです。
1.証明書が提出できなくてバレる
資格手当を支給する会社では証明書のコピーの提出を義務付けています。提出できない時点ですぐに嘘がバレるでしょう。すでに失効している資格や免許を記入するのも経歴詐称となります。正式に取得している資格がなく、取得に向けて勉強中のものを記載したい場合には、「取得予定」などと書いておくとよいでしょう。ただし、近いうちに取得できる可能性が高いものに限ります。
2.実務の出来栄えでバレる
PCスキルやプログラミングスキルでは、特に証明書等はないため、提出も求められないでしょう。しかし、専門性が高いため、実務の出来栄えを見ればすぐに嘘がバレます。TOEICのスコアなども盛る人がいるかもしれませんが、語学も実力が露呈しやすい分野です。
有効期間が決まっている資格にも注意
資格の失効にはならないものの、業務を行ううえでの有効期間が決まっており、一定期間ごとに更新が必要な資格がある点にも注意しましょう。例えば、不動産業界などで宅地建物取引士として業務を行う場合には、5年ごとに更新の手続きを行わなくてはなりません。
職務経歴書で嘘をついたり詐称したりする理由
職務経歴書に虚偽の情報を書くことに、長期的に見て応募者のメリットはありません。しかし、バレたときのリスクは大きく、社会的信用を失うと取り返しがつきません。このようにハイリスクであるのにもかかわらず、なぜ嘘をついたり詐称したりしてしまう人がいるのでしょうか。考えられる主な理由を3つ解説します。
なんとしても採用されたい
まずは、なんとしても採用されるために、嘘をついてでも合格の可能性を上げたいという理由です。生活のために是が非でも正社員になりたいという人もいることでしょう。また、応募したい職種では、経験者を条件としたものばかりで、仕方なく職歴を盛ったというケースもあるかもしれません。
今後、日本においてもジョブ型雇用が主流になっていき、未経験者が採用されにくい状況が広まれば、職務経歴書を偽る人が増える可能性が懸念されます。しかし、だからといって嘘が許されるわけではありません。採用担当者の印象を良くするために、担当業務の領域や実績を誇張したり、持っていない資格を取得済みとしたりするのはやめましょう。入社後の実力ですぐにバレます。経験が少ないならば、転職先で役立つ資格やスキル取得に向けて努力している姿勢を見せることで、自分を最大限アピールしましょう。
バレると思っていない
人によっては嘘をつくことにさほど抵抗がなく、バレると思っていないケースも見受けられます。あるいは、選考の時点で嘘をついていても、採用後につじつまを合わせればバレないと考える人も一定数存在します。いずれにしても、モラルが高いとはいえません。
例えば、応募先企業が求めるスキルを持っていないのに持っていると嘘をつき、採用されてから入社までに身につけようとする応募者もこのタイプに該当します。前職での実績など、採用側で確認が難しい情報については、平然と嘘をつく人もいるかもしれません。
しかし、職務経歴書での嘘は、いずれ何らかの形でバレるものです。安易に考えて実行しないようにしましょう。嘘が発覚して周囲から「自分が有利になるためには平気で嘘をつく人」というレッテルを貼られてしまうと、そこからは「いばらの道」です。仕事を頑張って名誉挽回に努めても、責任のある仕事や役職は簡単には任せてもらえないでしょう。
書けることが少ない
職務経歴書を正直に書こうとしても、書くことがないという人もいます。特にアピールポイントがないため、実績や職歴、経験年数などを盛って書いてしまうといったケースがこのタイプです。しかし、自分を有能に見せる嘘を書いて仮に採用されたとしても、実力が伴わなければ結局苦労することになります。実績についてならバレないと高をくくっても、経験者との差は歴然でしょう。
周囲とのレベルに大きな差があると、同僚や上司に迷惑をかけたり、企業に損害を与えたりする恐れがあります。何より、自分自身がチームにいづらくなるでしょう。苦労した挙句、結局辞めることにもなってしまっては本末転倒です。
たとえ書けることが少なくても、職務経歴書を詐称することは厳禁です。実績や職歴が少ない場合は、自己PRを工夫しましょう。企業研究をしっかりと行ったうえで、「どうしても御社に入りたい」「次こそは長く働きたい」と、入社の熱意を伝えましょう。


職務経歴書の嘘がバレたときのリスクとは?
職務経歴書の嘘は基本的にバレるということは理解していただけたことでしょう。職務経歴書での嘘は、謝れば許してもらえるとは限りません。内容次第では、本人が大きなペナルティーを受ける恐れがあります。最後に、嘘がバレたときにはどのようなリスクを負うことになるのかを解説します。
刑法犯として逮捕される可能性は低い
職務経歴書そのものは公的書類ではなく、記載内容に嘘があることで金銭もしくは財産的価値のあるものがだまし取られるわけでもないため、詐欺罪にあたる可能性はほぼないと考えてよいでしょう。他人の名義で偽る私文書偽造にもあたりません。したがって、刑法犯として逮捕されるようなことはまずありませんが、軽犯罪法違反に問われる可能性はあります。
経歴詐称の中で、軽犯罪法違反に問われる可能性が高いのは、学歴詐称です。例えば、高卒なのに大学を卒業していると偽ったり、修士号や博士号を取っていると嘘を書いたりすることは学位の詐称です。学位や資格など、法令で定められた称号を偽って企業をだました場合には、軽犯罪法違反に該当するでしょう。法定刑は、「拘留または科料に処する」と規定されています。
懲戒処分を受け社会的信用を失う
法律では罰せられなくても、就職先の会社が定める服務規程などにより、減給・降格などの罰則や解雇処分を受ける可能性は十分考えられます。選考直後に嘘が発覚すれば内定取り消し、雇用契約後であれば、最悪の場合には懲戒解雇になるかもしれません。
懲戒解雇は、労働者に対する制裁罰として行う解雇のことで、普通解雇とは区別されています。懲戒解雇は、懲戒処分の中では最も重いものであり、それゆえに労働者の立場が守られている日本では滅多に起こり得ないものです。懲戒解雇では、即時解雇される可能性があるだけでなく、就業規則などで定めがある場合には、退職金も不支給となることが多いでしょう。社会的信用を失って、転職活動も不利になるなど、その後のキャリアにも影響が出るのは必然です。もし解雇されなかったとしても、社内の評価は低いままで、昇進や昇給も期待できないでしょう。
職務経歴書の内容に嘘がないようにしよう!
前職のことは分からないだろうと、職務経歴書に嘘を書く人がいますが、さまざまな方法からバレるリスクは高いといえます。嘘がバレた際には、刑法犯となる可能性は低いものの、懲戒解雇を受けたり社会的信用を失ったりするなど、非常に大きな代償を払うことになります。職務経歴書に嘘は書かず、自己啓発に励みながら、正攻法で転職活動を進めましょう。
