履歴書を書いているとき、学歴欄で手が止まってしまう人もいるのではないでしょうか。学歴欄には自分が高校や大学を卒業した年を正確に書かなければならず、そのためには計算が必要です。また、義務教育は記入すべきかなど判断に迷いやすいポイントもあります。そこで、この記事では、学歴や履歴書に関して疑問に思われやすいポイントをQ&A方式でわかりやすく解説します。入学や卒業年度の計算式も紹介するので参考にしてください。


入学・卒業年度の計算式
入学や卒業をした年度の記載方法には西暦と和暦の2種類があります。そこで、ここでは、入学年度や卒業年度の計算方法を「西暦で計算する場合」と「和暦で計算する場合」に分けて解説します。
西暦で計算する場合
西暦表記の入学年度や卒業年度を知りたい場合には、この後に紹介する数字を西暦表記の自分の生まれた年に足すと算出できます。まず、小学校を卒業した年月は、自分の生まれた年に13年度を足した3月です。
一方、中学校を卒業した年月は自分の生まれた年に16年度を足した3月となります。次は、高校に関する年度の計算方法です。入学年度は、自分の生まれた年に16年度を足した4月、卒業年度は自分の生年月日に19年度を足した3月となります。加えて、大学については、入学年度が自分の生年月日に19年度を足した4月、卒業年度は在学年数によって変わります。2年生で卒業する場合は自分の生年月日に21年度を足した3月、4年生で卒業する場合は自分の生年月日に23年度を足した3月です。ただし、生年月日が1月1日〜3月31日である早生まれの人は、上記で計算する年度から1年差し引いた数字が、実際に入学や卒業をした年度となります。
たとえば、1997年生まれの人の場合、小学校の卒業年度は1997年に13年度を足した3月、つまり2010年3月です。中学校の卒業年度は1997年に16年度を足した3月、つまり2013年3月となります。同じように計算していくと、高校の入学年度は2013年4月で、卒業年度は2016年3月です。また、大学は入学年度が2016年4月、2年生で卒業する場合の卒業年度は2018年3月、4年生で卒業する場合の卒業年度は2020年3月となります。早生まれの場合には、それぞれの年度から1年を差し引くので、小学校卒業は2009年3月、中学校卒業は2012年3月、高校入学は2012年4月、高校卒業は2015年3月です。さらに、大学入学は2015年4月、2年生での卒業は2017年3月、4年生での卒業は2019年3月となります。
和暦で計算する場合
和暦で記載するために西暦から和暦に変換する計算方法は、変換したい元号によって変わります。まず、昭和に変換する場合には、西暦表記による入学や卒業の年度から25を引いた数字の下2桁が和暦表記の年度です。1986年であれば、1986-25=1961の下2桁となるため、昭和61年が和暦表記となります。次に、平成に変換する場合、西暦表記の年度に12を足した数字の下2桁が和暦表記の年度です。1997年であれば、1997+12=2009の下2桁となるため、和暦で表記すると平成9年となります。最後に、令和に変換する場合、西暦表記の年度から18を引いた数字の下2桁が和暦表記の年度です。2021年であれば、2021-18=2003の下2桁となるため、和暦で表記すると令和3年となります。


学歴欄に関するFAQ
ここでは、学歴欄に関して迷いやすい8つのポイントについて解説します。
「和暦と西暦のどちらに統一するべき?」
履歴書に書く「年」の表記方法は、学歴欄に限らず、すべてにおいて和暦か西暦のどちらかに統一する必要があります。一般的には日本の企業だと和暦、外資系の企業だと西暦で表記する傾向はありますが、統一さえしていれば、どちらで表記しても問題はありません。
表記方法を統一しなければならない理由は、採用担当者が見たときにいつの出来事であるかを混乱することなくすぐに把握できるようにするためです。表記方法を統一させずに第三者が見てわかりにくい書き方をすると、読み手のことを考えていない履歴書という印象を採用担当者に与えてしまう恐れもあるため注意しましょう。
「『H』や『R』の省略表記は避けるべき?」
元号の省略表記は、履歴書を記載する際に避けなければなりません。日常の生活のなかでは、平成を「H」、令和「R」などと省略して記載する場面も少なくないことでしょう。また、略して表記しても、どの元号を意味しているのかはしっかり採用担当者に伝わります。しかし、履歴書は正式な書類です。正式な書類への記載では省略した表記は使用しないことが基本であるため、履歴書の元号も省略せず正式な書き方をしましょう。
「令和1年と令和元年、どちらが正しい?」
元号の1年目は「1年」と書かず、「元年」と表記するのが正しい書き方です。実際には1年と元年は同年で、どちらで書いても間違いとはいえません。しかし、役所などで作成される公的文書では「元年」を使う書き方が一般的となっているため、公的文書の書き方にそろえて、「令和元年」「平成元年」などと書くことが通常です。ただし、同年度に改元した平成31年と令和元年の書き方には注意が必要となります。令和に元号を改元した5月1日を境にして、平成31年と令和元年を使いわけなければなりません。具体的には、2019年1月1日〜2019年4月30日は平成31年で、2019年5月1日〜2019年12月31日は令和元年に該当します。


「学校名は省略しないほうがいい?」
学校名も履歴書に書く際には原則省略してはなりません。学部や学科などがある場合も同様に省略せず記載したほうがよいでしょう。学校によっては略さず書くと文字数が多くなってしまう場合もありますが、長い名前でも正しく書くことが正式な書類を書く際のマナーです。たとえば、公立の学校の場合は「〇〇市立〇〇中学校」、私立の場合には「私立〇〇高等学校」と書きます。ただし、学校名の前に法人の名前が付いている場合、法人の名前は書く必要はありません。
「学歴は義務教育まで書いたほうがいい?」
履歴書の学歴欄に記載するのは原則、中学校の卒業年度からです。義務教育としては最後の学歴となる情報から記入します。義務教育終了後となる高校以降の学歴は、入学した年と卒業した年をそれぞれ記載することがルールです。ただし、転職で提出する履歴書では、高校を卒業した年から書くケースも少なくありません。また、学歴欄に記載する情報が少ない人は、空欄を少なくするために、あえて義務教育中の学歴も書く場合があります。ただし、そのような場合、義務教育中の学歴については、入学した年は書かず、卒業した年だけを記載することが通常です。
「資格の民間スクールは学歴に記載しますか?」
資格取得のために通っていた学校は学歴欄に記載できません。そのほか、短期で通うような語学学校や海外などに見られる大学併設型の語学学校、浪人中に通っていた予備校、職業訓練校なども一般的に学歴欄への記載が認められていない学歴です。ただし、これらの学校に通って取得した知識やスキルは、転職活動の際に自分の能力の1つとしてアピールできる可能性があります。応募する企業や仕事に関わりのある勉強をしていた経歴がある場合には、利用しないともったいないでしょう。アピールにつながる勉強経験は、学歴欄には書けませんが、一般的に、資格欄や特技欄、特記事項欄になら記載できます。
「学校を中退した場合は何て書けばいい?」
学校を中退した場合は、「中退」と略さず、「中途退学」と正式な言葉で書きます。中退したことを記載すると採用担当者から悪い印象を持たれるのではないかと心配になり、書きたくないと考える人もいることでしょう。しかし、学歴はすべて事実通り正直に記載しなければなりません。中退した理由が病気や家庭の経済的な問題などによるやむを得ない理由だったり、前向きな理由だったりする場合には、マイナスな印象を和らげるためにも、具体的な理由をあわせて記載しておくことが必要です。ただし、病気が理由の場合には、入社後の仕事に影響はないかを心配される恐れがあるため、現在の健康の状況もあわせて記載しておいたほうがよいでしょう。
「高卒認定があれば、最終学歴を高卒と書いてもいい?」
高卒認定があっても、最終学歴に高卒と書いてはなりません。そもそも高卒認定と高卒はまったく別物です。高卒はその名の通り、高校を卒業したことを意味します。一方、高卒認定は、高校は卒業していないものの、高校卒業と同レベルの学力があることを認めたものです。そのため、高卒認定を受けている人は、学歴に記載せず、資格欄に「平成◯年◯月 高等学校卒業認定取得」などと記載しましょう。


履歴書に関するFAQ
履歴書には学歴以外にもさまざまな内容に関する記載が必要です。そこで、ここでは、学歴欄以外の欄への記載や履歴書の作成において迷いやすいポイントについて解説します。
「履歴書に記載する日付はいつが正しい?」
履歴書に記載する日付は、郵送で提出する場合だと郵送日、自分で持参する場合には提出日です。郵送日とは、郵便局の窓口に持ち込む日あるいはポストに投函する日を指します。一方、提出日とは企業の担当者へ履歴書を手渡す日です。つまり、持参する場合には企業への訪問日を記入することになります。
「履歴書の指定がない場合、どれを使ってもいい?」
応募する企業から特に指定がなければ、自分が書きやすいフォーマットを使用して構いません。フォーマットによって、学歴や職歴の欄が大きいものや自己PR欄が大きいものなど、記載するスペースに差があるため、自分のアピールしたい内容や書かなければならない事項の量に応じてフォーマットを選びましょう。ただし、履歴書用のフォーマットには新卒者向けの「一般用」と転職者向けの「転職用」があるため、用途にあわせて使い分けることが必要です。
「学校や企業名などが変わった場合は、どうすればいい?」
変更後の現在の名称と所属していた当時の名称の両方の記載が必要です。先に変更前の名称を書き、その後に、カッコ書きで変更後の現在の名称を書きます。具体的には、「△△私立△△高等学校(現〇〇私立〇〇高等学校)」のような書き方です。現在の学校名の頭に「現」という言葉を入れることで、新旧どちらの名称であるかをよりわかりやすく明記できます。ちなみに、名称が変更されたタイミングが在籍中だった場合には、変更前と現在の名称の記載の仕方を変えなければなりません。変更前の学歴には変更前と現在の両方の名称を併記し、変更後の学歴には変更後の現在の名称だけを書きます。たとえば、入学後卒業前に名称が変わった場合には、「令和〇年4月△△私立△△高等学校入学(現〇〇私立〇〇高等学校)」「令和〇年3月〇〇私立〇〇高等学校卒業」のように書くことが一般的です。


「職歴欄にアルバイトは書いたほうがいい?」
アルバイトもしっかりとした仕事ではありますが、基本的には職歴欄に記載しない経歴です。ただし、応募する職種によって、アルバイトの経験が活かせる可能性がある場合には、アピールポイントとなるため、職歴などの最後に補足として記入しておくとよいでしょう。また、雇用保険に加入していたアルバイトがあった場合にも、そのアルバイトの経歴を補足しておいたほうが安心です。入社することになったときに、雇用保険の手続きで以前の加入履歴を確認されることがあります。雇用保険に加入していた経歴があるのに、該当する職歴の記載がないと経歴詐称を疑われる場合もあるため注意しましょう。
「在職中の転職の場合、職歴には何て書けばいい?」
在職しながら転職活動をしていて退職日が正式に決まっていない場合には、職歴の最後に「在籍中」や「現在に至る」などの記載をします。「在籍中」と書く場合の位置は「〇〇株式会社入社在籍中」のように最後の経歴のすぐ後です。一方、「現在に至る」を使う場合は、「〇〇株式会社入社」と書いた行から1行下げて「現在に至る」と書きます。ちなみに、退職日が決まっている場合には、最後に「〇年〇月〇日退職予定」などと退職日も明記しておきましょう。
「転職の場合、『退職』と『退社』どちらが正しい?」
どちらの書き方でも間違いではありませんが、「退職」のほうが誤解を招かない明確な書き方です。退職の意味はこれまで勤めていた仕事を辞めることのみですが、退社には仕事を辞めること以外にその日の勤務を終えて会社から出るという意味もあります。退社と書いたからといって採用担当者が違う意味で捉えることも、紛らわしいからと不採用にすることもありませんが、どちらを書くか迷ったら明確に意味を伝えられる「退職」を使ったほうがよいでしょう。
「字が下手でも大丈夫ですか?」
字が下手でも読める字であれば問題はありませんが、採用担当者ができるだけ読みやすいように、自分なりに丁寧に書く努力は必要です。字を上手に書けないことが気になるのであれば、パソコンなどを使って作成しても問題はありません。そもそも、マイナス評価を受けるような雑な書き方をしない限り、字の下手さよりも、脱字や誤字がないように注意することのほうが履歴書の作成では重要となります。
学歴から正しく記入し、採用確率を少しでも上げよう
履歴書には正しい情報を書くことが求められていて、学歴の計算も正確に行うことが必要です。今回紹介した計算方法を活用すれば、簡単に正しく学歴の計算ができます。また、学歴だけではなく、ほかの書類の作成でも元号を変換する計算式を利用できる場合はあり、覚えておくと便利です。履歴書の書き方が1カ所間違えていたからといってすぐに選考で落とされることは通常ありません。しかし、学歴を含め、履歴書などの正式な書類を正しく書けるかどうかは基本的なマナーやルールを知っているか、社会人としての姿勢を見る目安の1つにはなります。間違いなく履歴書を書くことが選考におけるマイナス要素を減らし、採用確率を上げることにもつながるため、丁寧に作成しましょう。
