転職を検討するようになったものの、転職成功者の平均年齢や傾向と比べて、タイミングが早すぎるのではないか/遅すぎるのではないかと不安を覚える方も多いのではないでしょうか。本記事では、何歳くらいにまで転職すると成功しやすいのか転職の適齢期の紹介から始め、20代、30代における転職活動のコツを解説します。


目次
転職の年齢に適齢期はある?
転職者の数は、年代別に違いがあります。詳しくは後述しますが、基本的には40代以降に比べて、20代、30代の年齢層のほうが転職に成功しやすい傾向にあります。以下では、転職に成功しやすい適齢期について解説します。
35歳の壁とは?
転職市場には「35歳の壁」という言葉があります。転職先を探すとき、35歳までならそれなりの求人数が見込めるものの、35歳を過ぎると途端に応募できる求人が減ってしまうことを表した言葉です。
もちろん、どの年齢でも転職に成功している人は一定数存在します。しかし、全体の傾向としては、年齢が若いほど転職しやすいのが現状です。そして、その判断基準となるのが、「35歳以下であるか否か」です。このような傾向が生まれるのは、「即戦力がほしい」「高い年齢層の中途採用者はマネジメントしづらい」といった企業側の事情が関係しています。
転職に成功したと感じる平均年齢
「35歳の壁」の存在を裏付けるような統計調査も実際に存在します。例えば、Job総研が2022年に実施した調査によると、転職に成功したと感じた平均年齢は32.1歳、最多回答は28歳という結果でした。初めて転職した平均年齢も、男性が28.9歳、女性が27歳なので、やはり30歳前後までに転職を考え、実際に成功させている人が多いようです。
転職の成功に年齢的なリミットがあると思うかという質問に対しても、76.2%の人が「ある」または「どちらかというとある」と回答しています。具体的な年齢リミットとしては全体平均が41.4歳で、最多回答が35歳であることから、やはり35歳を超えてくると転職に難しさを感じる人が多くなるという結果でした。
今後、少子高齢化などに伴ってこうした状況が改善されてくる可能性もありますが、現状では35歳までに転職を決断したほうが成功の確率は高いと考えられます。
Job総研「2022年 転職年齢に関する意識調査」を実施 | JobQ


年齢が若いうちに転職をするほうがいい理由
上記の統計調査から見ても年齢が若いほうが転職に成功しやすいことが分かりますが、それはなぜでしょうか。この理由としては、以下で紹介するように、転職者側と企業側双方の都合が関わっています。
自分自身の制約が少ないから
第一の理由は、転職者側の都合として若いほうが転職に挑戦しやすい状況であるからです。厚生労働省の「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」では、平均初婚年齢は夫が31.0歳、妻が29.5歳と報告されています。
(参照元:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf)
今の職場環境から離れることには、一定のリスクが付き物です。結婚して家族ができたり、ローンで家を購入したりすると、転職は自分だけの問題ではなくなるため、給与面や福利厚生など求める条件も増え、転職のハードルは上がります。特に新しい業界へのチャレンジなどリスクの高い転職は、家族から反対を受けることもあるかもしれません。そのため、こうした制約がまだない若いうちのほうが自由に転職しやすく、成功の可能性も高まります。
年齢が上がるほど即戦力を求められるから
企業側としては、新卒に近い若い年齢層であれば、1から育てる手間やコストも許容しやすくなります。しかし、年齢の高い人材を雇用するならば、やはりその人物には即戦力としての能力を期待しがちです。
特に「35歳の壁」を超えた年齢層の人に対しては、その傾向が顕著になります。年齢層が高くなるほど、転職先の企業が応募者に求める知識やスキルなども高度なものになり、それらに適合する人は少なくなります。逆に言えば、貴重な知識やスキル、資格や経験などの持ち主であれば、年齢が高くても一定の需要が見込めるでしょう。
未経験の職種でもキャリアチェンジしやすいから
上記で述べたとおり、35歳以下の年齢層であれば、まだ若さゆえのポテンシャルや意欲も転職先に評価されるので、転職がしやすくなります。特に20代なら若さを買ってもらえるので、未経験の職種にも挑戦できる可能性は高いです。
反対に35歳以上の年齢層は、即戦力になれることをアピールするために、今の業種・職種内での転職に選択肢が限られてしまう傾向があります。そのため、思い切ったキャリアチェンジもできる分、若い年齢層のほうが転職先の選択肢が幅広く、自分の希望を転職で実現しやすいでしょう。


転職で求められる要素とは?
ここまでにも触れたように、企業や業界が転職者に求める役割は年代によって異なります。したがって、転職活動をスムーズに進めるためには、企業が各年代の転職者に求めている要素を把握しておくことが重要です。
20代の転職者に求められる要素
20代はまだ若さやポテンシャルが評価される年齢層なので、他の年齢層に比べれば即戦力として求められる実務的能力は低くて済みます。そのため、未経験の業界や業種にキャリアチェンジするなら、20代のうちにできるだけ早くしておくのがおすすめです。
ただし、「転職先の企業に育ててもらう」という受け身の姿勢が透けて見えてしまうと、企業としては本当に意欲があるのか疑問視してしまい、採用しにくくなります。また、転職は早いほうがいいとは言っても、前職をあまりに早く退職していると、採用担当者から「根気がなくて、ここに就職してもすぐに辞めてしまうのでは」と疑われてしまうかもしれません。
そのため、前職を退職した理由や、次の仕事にかける熱意などについて相手を納得させるだけの説明を準備しておくことが大切です。例えば、資格の勉強をしているなど、次のキャリアプランで成功するための具体的な行動をしていると、相手を納得させやすくなります。
また、いくらまだ若い20代とはいえ、既に社会人として一定の経験は積んでいる以上、基本的なビジネススキルやマナーを身につけている必要があります。特に20代後半の人には、どの環境でも最低限の対応ができるだけの基本的なスキル(ポータブルスキル)や適応能力が求められます。
30代の転職者に求められる要素
30代は企業において主戦力として会社をけん引することが求められるようになってくる年齢です。この年代になると、実務面での中心的な役割だけでなく、若手の育成や組織風土づくりへの貢献など、マネジメント能力も評価に加わってきます。
そのため、転職活動においても20代と比べて、即戦力としての能力を強くアピールすることが必要です。具体的には、前職でどのような業務やポストを務めており、そこでどのようなスキルを身につけ、成果を残してきたかなどを整理しておくようにしましょう。同僚や後輩などに対してリーダーシップを発揮した経験なども重要です。
こうした具体的なスキルや経験を例に挙げ、それらを活かして次の会社でどのような貢献ができると考えているか説明することで、採用担当者に好印象を与えやすくなります。なお、この説明をするにあたっては、応募先企業の業務内容の特性なども十分にリサーチして、前職との類似点や差異をできるだけ正確に把握しておくことが重要です。


20代が転職を成功させるコツ
20代で転職を成功させるには、企業が自分に求めている要素を十分に把握したうえで、次のように対策を練ることが重要です。
自分の魅力や強みを言語化しておく
まず重要なのは、採用担当者に「この人を採用したい」と思ってもらえるように、自分の強みや魅力を説明できるようにすることです。まだ、アピールできるほどの専門スキルや実績がなくても、コミュニケーション能力や適応能力、仕事への熱意など、相手に評価してもらえそうなポイントを探してみましょう。
年代別に見たら転職しやすいとはいえ、同年代のライバルも応募してくるだろうことを考えれば、自分とそのほかの応募者との間に何らかの差別化ポイントを見つけておくことが重要です。前職で得たスキルや経験の中に、次の仕事で活かせそうなものがないか考えてみましょう。特に20代前半であれば、最初の就職活動で自分がアピールした強みを思い返してみることも役に立つかもしれません。
前向きな転職理由を考えておく
上記でも触れましたが、なぜ前職を辞めて転職する決断に至ったのか、採用担当者が納得できるだけの理由を準備しておくことも重要です。いくらやる気や意欲があっても、転職理由を相手に納得してもらえないと転職は成功しません。
その際に重要なのは、転職理由を前向きに説明することです。転職を決めるにあたっては、前職に対する何らかの不満が背景にあることが多いでしょう。しかし、「今の会社が嫌だから転職することにした」という後ろ向きな志望理由では、採用担当者としては「別に応募先は自社でなくてもいいのでは」「採用してもすぐに辞めてしまうのでは」と不安に思ってしまいます。
そのため、退職の理由と転職の理由は分けて考え、なぜ数多く存在する企業の中からそこを選んだのか前向きな理由を説明できるように準備しておきましょう。退職理由や転職理由を改めて考え直してみることは、企業選びをする際にどのような条件を重視すべきか明確にするためにも大切です。


30代が転職を成功させるコツ
30代の人が転職活動をする場合は、自分の市場価値や転職市場で業界・企業がどのような人材が求められているのか傾向を押さえることが成功の鍵になります。具体的な対策は下記のとおりです。
即戦力となるスキルをアピールする
30代の中途採用者に企業が求めているのは、多くの場合、即戦力としての価値です。したがって、自分が転職先の企業や業界にとって、即戦力になることをアピールできるかが30代の転職では重要になります。
30代になると、同じ業界や職種におけるプレイヤーとしてのスキルや経験はもちろん、部下や後輩への指導力やリーダーシップなどマネージャーとしての能力の有無も注目されるポイントです。説得力を増すために、前職での具体的な経験や成果などを洗い出しておきましょう。次の会社で使える資格なども当然大きなアピールポイントになります。
未経験業種への転職は慎重に検討する
特に30代後半になると、即戦力になりにくい未経験業界や業種への転職は非常に厳しくなってきます。仮に転職できたとしても、上司が自分よりも年下になる可能性が高いため、お互いにやりづらさを覚えて会社にうまく馴染めないリスクがあることに留意しましょう。
年収や待遇などに関しても、現職から下がってしまう可能性は十分にあるでしょう。30代で新しい業界や業種にチャレンジしたいなら、上記のようなリスクも考慮したうえで慎重に検討することが必要です。既に結婚していて家族がいる場合は、住宅の購入費用や子どもの学費など、将来のライフイベントで必要となるだろう出費も考慮しておいたほうがよいでしょう。とりわけ転職によって生活レベルに悪影響が出る場合は、事前に家族へ相談しておくようにします。
なお、30代でもIT業界などの比較的歴史が浅く、しかも将来的にますます需要が増すことが予想される業界であれば、未経験でも転職のハードルは比較的低くなります。こうした新興の業界は経験者自体がまだ少ないので、未経験者も募集対象にしている求人を見つけられるかもしれません。


どの年齢にも共通する転職を成功させるコツ
ここまで紹介してきた年代別のコツとは別に、どの年齢層にも共通する基本的なコツもあります。以下では、そのコツを3つ紹介します。
まずは自己分析で自分を見つめ直す
会社選びを始める前に、まずは自己分析をかけて自分自身を見つめ直すことが大切です。今の職場の何が不満なのか、転職先に何を優先的に求めたいのかを事前に明確にしておかないと、企業選びの段階で方向性を誤ってしまう可能性が高まります。そうなれば、せっかく採用されても結局はその企業ともミスマッチを起こして、すぐに転職活動をしたくなるかもしれません。
また、キャリアの棚卸しをして、自分が何をできるのかを改めて把握することも重要です。そうすることで、転職活動で自分を効果的にアピールしやすくなります。場合によっては、もう少し現職を続けて経験やスキルを積んでから転職をしたほうが、自分の市場価値が高まることもあるかもしれません。
希望する企業をしっかりと分析する
最初の就職活動にも同じことが言えますが、希望する企業や業界について深く研究することも重要です。特に未経験の業界や業種にチャレンジするならば、なおのこと慎重にその業界の実情や将来性について把握する必要があります。
希望する企業を見つけたら、事業内容や業務内容などをよく確認しましょう。たとえ同じ業界や業種でも、扱っている商品やサービスが違えば、これまでのノウハウが通じない部分も出てくることが予想されます。この点に無自覚でいると、面接などで応募先の企業では役に立たない部分をアピールしてしまうかもしれません。
企業の分析が不十分だと、たとえ転職できたとしても、前の会社のやり方や慣例を引きずってしまい、ミスマッチを起こしてしまう恐れもあります。できれば、企業や業界が公表している情報だけでなく、知人や口コミサイトなどをあたって、その企業・業界で実際に働いている人の率直な意見も調べてみるのがおすすめです。
キャリアアドバイザーに相談する
年齢的な問題も含めて、転職に対する不安は多くの人が抱えています。たとえ年齢的にまだ若く、経験やスキルを持っていても、その強みをどのように企業にアピールすればいいのか分からない方も多いでしょう。
また、特に未経験の業界や業種の情報などは、やはり自分だけで調べるのは難しい部分が多々あります。特に今の仕事を続けるのと同時進行で転職先を探している方は、時間や労力的な意味でも転職活動に割けるリソースに限りがあるのが実情です。
転職活動に際してこのような悩みを抱えている方は、転職のプロであるキャリアアドバイザーに相談することをおすすめします。転職先の業界における求人動向についてや、企業選びや面接などのコツ、転職のタイミングやキャリアプランについてアドバイスを得たりすることで、効率的に転職活動を進めることが可能です。転職活動を始める際は、まず信頼できるキャリアアドバイザーを探して相談してみるのもよいでしょう。
転職に適齢期はないが、若いほうが成功しやすい
40代以上でも転職成功者はいますが、キャリアチェンジなども含めて若い人のほうが転職しやすいのは事実です。「35歳の壁」を超えると応募できる求人が減りがちなので、特に大胆なキャリアチェンジを検討している方は、若いうちにキャリアプランを設計することをおすすめします。
