会社を辞める際に作成する退職届は、封筒に入れて提出するのが一般常識です。ただ、封筒といっても何でも良いわけではありません。色やサイズ、形など、封筒にも実は細かいマナーがあります。退職届を封筒に入れることは知っていても、どのような封筒を選ぶべきか、封筒には何を書くべきかなど、細かいマナーについては知らない人も多いでしょう。そこで今回は、退職届の封筒の選び方や書き方、注意点などについて解説します。


目次
色やサイズが決まっている?退職届の封筒の選び方とは
退職届を入れる封筒は、色や特徴、大きさなどに気を付けなければなりません。では、具体的に封筒の何を基準にして選べば良いのでしょうか。以下、退職届を入れる際に適切な封筒の選び方について解説します。
色
ビジネス用の封筒には、主に白と茶色の2種類があります。このうち、退職届を入れる封筒は、基本的に白いものを選ぶのがマナーです。同じビジネス用の封筒でも、白い封筒はフォーマルな場面で使われることが多い封筒です。これに対して、茶色の封筒は領収書や請求書など、事務的なやり取りでよく使われます。茶色より白色のほうがコストも高く、また清潔な印象を持たせるので、退職届という大切な書類を入れる封筒としては白色を選ぶのがより適切だといえます。
特徴
病気や怪我で入院している場合などを除いて、退職届は基本的に手渡しで直接提出するものです。封筒には郵便番号の記入枠が用意されているものとされていないものがありますが、手渡しで提出する退職届には郵便番号の記入枠は必要ありません。ですから、退職届を入れる封筒には、郵便番号の記入枠がないものを選びましょう。
また、退職届は機密事項に該当する書類です。みだりに第三者の目に触れさせてはいけない書類なので、封筒も中身が透けない素材になっているものが適切だといえます。もしくは、二重構造になっていて中身が見えない工夫が施されている封筒でも良いでしょう。退職届は正式な文書ですから、カジュアルな柄付きのデザインや、白封筒でも横書き用のものはマナー違反となるので注意が必要です。
大きさ
退職届に決まった規格はありませんが、基本的にはA4サイズかB5サイズが望ましいとされます。A4サイズで作成した場合、封筒は「長形3号(長3)」を選ぶと綺麗に収まります。一方、A5やB5で作成した場合は「長形4号(長4)」が丁度良いサイズの封筒です。このように、封筒の大きさは退職届のサイズに対応して、同じ大きさのものを選ぶのが基本です。
ただし、退職届はなるべく他の社員の目に触れたくない書類でもあります。ですから、会社の規定が特になければ、手帳やポケットに収まりやすいB5の用紙で退職届を作成し、長形4号の封筒に入れて提出するのが理想的だといえるでしょう。


表側と裏側で違う!退職届の封筒の書き方
中身の見えない封筒に入れた場合、封筒に何も書かれていなければそれが何の書類なのか判別することができません。そのため、退職届の封筒に何も書かないで提出するのはマナー違反です。ただ、封筒には何を書けば良いのかわからないという人も多いでしょう。特に、封筒の表側と裏側では書くべき内容も変わってきます。そこで、この段落では退職届の封筒の書き方について詳しく解説します。
表側
退職届の封筒の表側には、中央よりやや上の見やすい位置に「退職届」とだけ記載します。退職届を渡す上司や会社などの名称は書かないのがルールです。字は少しだけ大き目になるように意識しつつ、かといって大きくなり過ぎないようにバランス良く書くことを心がけましょう。
書き損じが発生した場合、修正液や修正テープを使って書き直すのは避けなければなりません。退職届は私的な内容を伝える文書とはいえ、上司に渡す正式な書類です。そのため、書き損じてしまったら、別の封筒に一から書き直しましょう。また、封筒に書く文字は万年筆か黒のボールペンを使用するのがマナーです。これは表面でも裏面でも同じルールです。筆ペンやマジックペンだと、文字が滲んで読みづらくなったり、悪目立ちし過ぎたりしてしまうので、なるべく避けたほうが良いでしょう。
裏側
封筒の裏側には所属部署と氏名を記載しましょう。書く位置は封筒の左下です。封筒からはみ出さないよう、気を付けながら綺麗に書くのがマナーです。所属部署は略さず正式名称で、氏名もフルネームを楷書で書きます。表面の文字は大き目を意識しましたが、裏面の文字は封筒の左半分にしっかり収まる程度の大きさで記入するのが基本です。
所属部署と氏名を記載したら、封筒に封をします。のりやシールが付いている封筒なら、中身が出ないようにしっかり貼り付けましょう。また、封筒の綴じ目には「しめ(〆)」のマークを記載して、第三者によって開封されていない正式な封筒であることを示します。ただし、退職届の封筒は必ず封を綴じなければいけないものではありません。ですから、封筒にのりやシールが付いていない場合は、封をせずに提出してもOKです。その場合は「しめ(〆)」のマークも必要なく、のりしろの部分を折り曲げておくだけで良いでしょう。


美しさにこだわろう!退職届の折り方と封筒への入れ方
退職届は封筒のサイズや文字だけではなく、美しさにもこだわりたいところです。退職届を入れた封筒が美しく見えるためには、入れる向きや折り方などに気を使う必要があります。もう辞めるのだからといい加減にせず、綺麗な退職届を提出すれば次のステップにもスムーズに移行できるものです。ここでは、退職届の折り方と封筒への綺麗な入れ方を解説していきます。
折り方
A4やB5用紙に適応する封筒に退職届を入れるには、用紙を三つ折りにしてから入れるのがマナーです。詳しい折り方はまず、退職届の文章が書いてある面を上にして、その状態で下側の3分の1を上向きに折ります。それから、上側の3分の1も上から下に折れば、三つ折りになります。この折り方でも十分綺麗な三つ折りになりますが、より綺麗に三つ折りしたいのであれば、退職届と同じ大きさの紙をもう1枚用意しましょう。
用意した用紙を横向きにして、退職届の上辺と揃えて置いたら、重なっていない部分を下から上方向に折ります。後は用紙を外し、退職届を上から下に被せるように折り曲げるだけです。この方法なら、普通のやり方より揃った三つ折りになるので、綺麗な形で退職届を折りたたむことができます。
入れ方
退職届を三つ折りにしたら、次は封筒の入れ方にも気を配りましょう。特に、封筒に退職届を入れる際の向きは、忘れがちなポイントなので注意が必要です。まず、退職届を三つ折りにしたあと、文章が書かれている面の右上を起点にして、左回りに90度回転させて縦向きにします。封筒は裏面を上にした状態にしておき、そのまま縦向きにした封筒の中に退職届を入れましょう。
こうすることによって、退職届を封筒に入れたとき、文章が書かれている面の右上の角が封筒の裏の上部にきます。封筒を開くときに用紙が見やすくなるので、封筒に入れる際は以上の方法で入れることを心がけましょう。また、封筒に用紙を入れる際は、用紙が変な風に曲がってしまわないよう、なるべく丁寧に入れることも大切です。
無理に入れようとするとよれてしまう可能性もあるので、封筒に入れる途中で引っかかりを感じたら、無理やり押し込むのではなく一度取り出して再度入れ直しましょう。できれば用紙を入れる前に封筒の中の構造を確認しておくと、用紙が途中で引っかからずにスムーズに入れることができます。


まずは上司に相談を!退職届を封筒に入れて郵送する際のポイント
病気や怪我などで入院し、出社できないまま退職することになった場合など、退職届を上司に直接渡すことは難しいケースもあります。退職届は直接手渡しで提出するのが基本ですが、そのようなやむを得ない事情があるなら、封筒に入れて郵送することも許容されます。体調を理由に退職することは意外と多いので、万が一に備えて、退職届を封筒に入れて郵送する際のマナーとポイントを確認しておきましょう。
事前に上司に確認する
退職届を郵送する場合は、事前に上司に確認を取ることが鉄則です。何も言わずに突然、退職届を会社に送りつけるのはマナー違反と見なされ、タブー視されているので必ず事前に退職する旨や退職届を郵送することなどを上司に連絡しましょう。退職届を郵送することは、基本的には異例の対応です。まずは電話で上司に相談し、どうしても会社に行けないことを伝えたうえで郵送するようにしましょう。できれば対面や電話で連絡を入れるのが理想ですが、どうしても難しい場合はメールでも良いので、事前に郵送する旨の連絡だけは忘れないことが大切です。
郵送用封筒を準備する
郵便番号と住所を書いて所定の切手を貼れば、どのような形式の封筒でも郵送すること自体は可能ですが、退職届の封筒には直接宛名を入れないことがマナーです。ですから、退職届を郵送する場合は、用紙を入れる封筒とは別の郵送用の封筒を準備しなければなりません。用紙を入れた封筒と同じサイズでは、退職届の封筒が折れ曲がってしまう恐れがあるので、郵送用の封筒はひとまわり大きいサイズを用意しましょう。
たとえば、用紙を入れる封筒が長形4号なら、郵送用の封筒は長形3号を、用紙の封筒が長形3号なら、郵送用は角形5号を選ぶと余裕を持って入るはずです。また、郵送用の封筒も退職届の封筒と同じフォーマルな白色を選びましょう。ただし、郵送先の情報を記載しなければならないので、無地ではなく郵便番号入りのものを使用するのが基本です。
郵送用封筒の書き方を守る
郵送用の封筒には郵送先の情報を記載する必要があります。まず、郵送用封筒の表面に宛名と住所を書きます。宛名は部署名と個人名を併せて記載するのが基本的な書き方です。宛先がわからないなら、上司や人事部に連絡して、正式な名称をしっかり確認しましょう。ただ、宛名に上司の名前を書いていても、郵送された退職届を最初に受け取るのは別の人かもしれません。退職届は機密事項ですから、社内に情報が漏れてしまわないよう細心の注意を払う必要があります。
そのため、郵送用封筒の表面の左下には「親展」と赤字で記載し、四角の線で囲んでおきましょう。封筒に書かれた「親展」の文字には「宛名以外の人は開けないでください」という意味があります。「親展」と書いておけば、情報がみだりに漏洩することを防ぐことができるでしょう。郵送用封筒の裏面には、自分の名前と住所を記載するだけでOKです。また、郵送の際は退職届だけではなく添え状も同封しましょう。添え状はこれまでの感謝を伝えるためのものです。退職届の郵送だけではなく、ビジネス上の習慣として一般的なので、ビジネスマナーとして覚えておきましょう。


コンビニでは買えないことも?退職届の封筒を購入する際の注意点
退職届の封筒を購入する際、コンビニや100円均一ショップで済まそうとする人もいるかもしれません。しかし、退職届の封筒の条件である「郵便番号の枠がない白封筒」は意外と見つからないものでもあります。コンビニなどで見つからない場合は、大手の文房具店や事務用品店で探してみましょう。また、インターネットで注文しても問題ありません。ただし、インターネットでは実物を確認できないので、大きさに間違いがないかしっかり確認したうえで購入すると安心です。
オンラインショップでは、退職届専用の便箋と封筒をひとまとめにした「退職届作成セット」のようなものも見つけることができます。セットで購入してしまえば、封筒のサイズなどもいちいち確認しなくても良いので、近くに大手の文房具店などがない人は利用してみましょう。ただ、似たような商品として「退職願」のセットが売られている場合もあります。これは「退職届作成セット」とは別物なので、オンラインショップを利用する際は間違えないように気を付けましょう。
退職届の封筒のマナーを意識して円満退職をかなえよう
退職届の封筒には、選び方や書き方に細かいマナーがたくさんあります。どうせ退職するから構わないと考える人もいますが、立つ鳥跡を濁さずということわざもあるように、去り際は身ぎれいにして次のステップに飛び立つのが、日本人が大切にしてきた美徳でもあります。また、いい加減な対応をしていれば、会社との間で思わぬトラブルに発展してしまうことにもなりかねません。
退職する事情は人それぞれですが、前の会社とトラブルになってしまっては、転職など次のステップに移る際の障壁にもなり得ます。封筒は白色で統一したり、用紙はきめ細かく折りたたんだりなど、最低限のマナーをきちんと守って最後まで礼儀を尽くすことが次にもつながります。やむを得ない事情があって郵送する場合も、事前に必ず上司に連絡することが鉄則です。できるだけ丁寧な対応を心がけ、後顧の憂いなくスムーズに退職できるように心がけましょう。
