今の会社をやめようかと思っているときに、知り合いから引き抜きの話が来たらどうしますか?その転職は正しい選択なのか迷ってしまう方が多いと思います。
また、知り合いからの誘いは詳しく話を聞いてしまうと、断りづらいかもと悩む方もいるでしょう。
そのような方に向けて、引き抜き転職のメリットとリスク、断り方などを解説します。


目次
引き抜きとヘッドハンティングとの違い
「引き抜き」と「ヘッドハンティング」はどちらも転職に関わる言葉ですが、使われ方には違いがあります。
まずヘッドハンティングとは、経営者や役員などその企業で優秀な人材として働いている人を、他社からスカウトして迎え入れることを指します。一般的に受け入れ企業の代理として人材コンサルタントが経営者や役職者を勧誘し、成功報酬として手数料を受け取る仕組みです。
一方で引き抜きは、仲介業者を挟まずに直接企業が個人に対して働きかけを行います。引き抜きの場合は役職を持っているかどうかは影響しません。
引き抜きで転職する3つのメリット
自分で転職先を探す場合と引き抜きで転職する場合の違いは何でしょうか。引き抜きで転職するメリットには、以下の3つがあります。
より良い条件で入社できる
引き抜きは企業の求人に応募するのではなく、企業側から勧誘されて入社する方法です。採用企業側は、引き抜きの対象となる人物の能力や業務内容に魅力を感じているため、当然給与や役職など、現在の勤務条件よりも良い条件を提示してくることが一般的です。そのため、給与交渉を行いやすいです。
転職にかける時間の短縮
転職先を自分で探すとなると、転職サイトに登録して条件を検索して応募し、書類選考を通過したら面接を受ける、という一連の手間がかかります。また膨大な数の求人のなかから適切な会社を何社か選び、その業績や業務内容、給与や休日、勤務地などを調査しなければならず、現職の仕事の合間にかなりの時間を割く必要があります。
しかし引き抜きの場合は、採用企業側または推薦者が引き抜かれる人を知っている場合が多く、書類選考や面接といった過程は省略されることもあります。時間や手間をかけずに転職できることは、忙しい社会人にとって大きなメリットです。
キャリアップが狙える
引き抜きの場合は引き抜く側の企業が転職者の能力を評価しているので、最初から高い評価を受けています。そのため、入社後すぐに重要な仕事を任されたり、現職よりも高いポジションで迎え入れられたりすることがあります。
現職よりも重要な仕事を任せてもらえることで、その分野についての専門知識や経験が増え、さらに責任のある立場を目指せます。このように、引き抜きはキャリアアップにつながる可能性が高いと考えられます。


引き抜きによる転職のリスク
引き抜きによる転職はメリットばかりではありません。たとえ現在より良い条件を提示されたとしても、実際に転職してみて、「こんなはずではなかった」と感じる場合もあります。引き抜き転職のリスクを知って、対策を講じましょう。
期待値が大きい
引き抜きをした側の企業は、引き抜いた人の能力を評価すると同時に成果を出すことも期待しているため、期待に応えなければならないというプレッシャーが常にかかります。期待に応えられなかったときには、社内での居心地が悪くなるだけでなく、給与や待遇面でも入社前に提示されたものと異なってくる可能性があります。
期待どおりの成果が出ない原因は、求められるレベルに自分の能力が至っていなかった場合だけではありません。転職先企業の業務内容がイメージしていたものよりも複雑だった、職場の人間関係でつまずいて思ったように業務がはかどらない、などの要因も考えられます。
転職を決意する前に、転職先企業で求められるスキルや業務内容についてよくリサーチしましょう。自分の能力や適性などと照らし合わせ、転職先企業の職場環境を深く調べる慎重さが必要です。
条件の認識に相違が発生する可能性あり
条件が想定していたものと違うというトラブルは、引き抜きによる転職時に起こりやすいものです。
例として、次のような相違が発生する可能性があります。
- 給与が採用時の条件よりも低い(実は時間外手当を含む給与だった)
- 業務内容が説明と異なっている
- 役職者として迎え入れると言われていたが役職なしの平社員だった
- 休日の希望を出していたが希望が通らなかった
- 予定されていた部署と異なる部署に配属された
口頭で相談したり説明を受けたりした条件は変更になっていることがあります。このようなトラブルを防ぐためには転職を決める前に、しっかりと待遇・条件を書面で作成してもらい確認するようにしましょう。
入社後の人間関係
引き抜きで転職してきた人を周りの同僚は、「引き抜かれてきた優秀な人」という期待の目で見る可能性があります。つまり、最初から能力を発揮して高い成果を出すと考えて仕事を任せられるため、少しのミスでも期待が裏切られたと思われてしまうかもしれません。
人間関係を円滑に保つためにも、入社時は謙虚な姿勢を持ち、新たな仕事に真摯に取り組む姿勢を見せて、きちんとした成果を出す努力を惜しまないことを心がけましょう。


引き抜きによる転職の注意点と断り方
ここでは、先に述べた転職のリスクを踏まえ、入社前の交渉時に注意したいこと、誘いを断りたいときの注意点を解説します。
入社前の交渉や条件提示は念入りにする
引き抜きによる転職のリスクを回避するには、オファーを受諾する前に条件を書面で確認すること、企業調査をしっかりすることが大切です。せっかく声をかけてもらったのにあまり細かいことを言いたくないなどと遠慮してしまうと、後悔することになりかねません。
企業調査をおこなうときは、企業規模、仕事の内容、勤務地、給与、労働時間、福利厚生、休みの取りやすさなどをリサーチすると、入社してから「こんなはずではなかった」という事態を防げます。
また給与、休日、勤務地、役職、育児休暇の有無、正確な業務内容などの労働条件は聞きづらくても明確にしてもらい、書面での提示を依頼してください。
転職する場合は現在勤務している職場への報告の時期も重要です。早すぎても遅すぎても問題があります。転職先の勤務開始日なども、書面にて納得できる日を設定してもらいましょう。
引き抜きによる転職は断ることも可能
引き抜きのオファーを断ることは失礼なことではありません。知り合いを通じての誘いや取引先関係者のオファーであっても、相手の企業に転職してきちんと貢献できるかどうかは別問題です。
ただし、連絡が遅くなると先方に迷惑をかけるだけでなく、申し訳なさから断りづらい状況を生んでしまいます。
相手企業が自分の転職先に適しているかどうかのリサーチを短期間でおこない、迷う期間を短くすることがポイントです。断る際の連絡はできるだけ早く、対面または電話で伝えましょう。
【例文】引き抜きによる転職の断り方
引き抜きを断る場合は、辞退する理由によって伝える内容を変えましょう。迷った末に断る場合と、はっきりと断る場合の2パターンについて、例文を交えて紹介します。
迷った末に断る場合
引き抜きの話に対してまんざらではなかったものの、今の会社でもう少し経験を積みたい、今はその時ではないと考えて転職を断る場合は次のように伝えましょう。
【例文】
お誘いいただき大変光栄に感じております。ただ今の会社でもう少しやりたいことがあるため、非常にもったいないお話ではございますが、今回は見送らせていただきます。お受けできず誠に申し訳ございません。
「今回は」と添えて次回以降の可能性を残しつつ、「見送らせていただきます」という丁寧な表現を用いることで、相手に柔らかな印象を与えられます。
はっきりと断る場合
これから先も相手企業に転職する意思がなく、はっきりと断る場合の例文は次のとおりです。
【例文】
高く評価していただいて光栄でございます。しかし転職の意思はありませんので、誠に申し訳ございませんがお断りさせていただきたく存じます。〇〇様とのご縁は大切にしていきたいので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
このとき、たとえ断る理由が給与などの待遇面や勤務地、業務内容だったとしても、その理由をあえて伝えて波風を立てる必要はありません。現職が充実していて転職の意思がないことを伝えるだけで十分です。
どちらの断り方も対面・電話どちらでも使える文章なのでぜひ活用してみてください。


転職先に引き抜かれる人の特徴
他社から引き抜かれる人とはどのような人でしょうか。引き抜きの打診を受けやすい人の特徴を知って、キャリアアップに役立ててください。
相手のことを考えて行動ができる
引き抜きの誘いを受ける人の多くはコミュニケーション力が高く、相手の気持ちを察し、周りのことを考えながら行動できる人です。
相手、周囲の人、会社のことを考えて行動できる人は、上司から言われなくても自ら考えて発案・行動することができます。また、臨機応変に対応できるため、仕事の能力も高いことも特徴です。
周囲の人とコミュニケーションをうまく取り、同僚からも好かれて職場の雰囲気も改善してくれる人柄が魅力となって、ぜひうちにと声がかかることが多いです。
仕事ができ、重要な役職についている
現在優秀で社内で役職にある、もしくはリーダーを任されるなど、ある程度の責任ある立場についている人は引き抜きにあう可能性が高いです。他社の人から見ても重要なポジションにいる人は、優秀な人材と認識され、即戦力として活躍することを期待されるためです。社外にも通用するような人材としての価値を向上させるためにも、現在の職場で意欲的に仕事に取り組むことが重要でしょう。
スキルや資格を持っている
希少性のあるスキルや資格を保有している人も、引き抜きを受ける傾向にあります。周りから貴重な人材と思われて他社の担当者に関心を持たれるためです。
例えば医療系などの専門分野に精通している、TOEICで高得点を取得している、英語以外の言語が話せる、建築士や技術系の資格を持っているなどが挙げられます。
引き抜き転職を希望するならば、少数しか持っていないスキルや複数の資格などを持つと、他企業の担当者の目に留まるかもしれません。
周りをよく見て論理的に仕事をしている
広い視野を持って全体を見て仕事をしている人は、会社のための改善策を提案し、実行する能力が高いです。
また、ものごとを整理して分析するときに冷静に判断でき、説得力のある説明をする人は重宝されます。そのような人が入社すれば生産性が飛躍的に改善すると考えられるため、引き抜きの声がかかる確率が高くなります。
失敗も糧として学ぶ姿勢がある
向上心やチャレンジ精神があり、業務で忙しくても学ぶ姿勢を持ち続けている人は、引き抜きの対象になりやすい傾向があります。そのような人は、一度何かで失敗しても落ち込むのではなく、気持ちをすぐに切り替え、また粘り強く努力して結果を出してくれます。
失敗も糧として改善へと活かせる人は、企業にも成長が期待される有力な人材として見られるでしょう。
柔軟な対応ができ変化を恐れない
柔軟な対応ができることも引き抜かれやすい人の特徴です。
仕事をしていくうえで求められる柔軟さとはどのようなことでしょうか。
まずは、業務内容の変更などに速やかに対応できることです。新しい業務に慣れるまでに時間がかかり、戦力となるまでにタイムロスがあるような人は即戦力になるとはみなされません。
次に、他者の意見を素直に聞いて受け入れられることです。たとえ優秀な人材であっても上司や同僚のアドバイスを受け入れられず、かたくなに自分のやり方を曲げない人は成長が難しいでしょう。
また状況に応じて自分からやり方を変えてみるなど、その時々の判断ができる人も柔軟性が高いといえます。より良い方法があるかもしれないと常に模索することも必要です。
転職を希望するなら、変化を恐れず柔軟な発想をすることは必須かもしれません。
周りから頼りにされて人脈がある
人脈とはただの友人関係のことを指すのではありません。自分と同様のキャリアを持つ人と連絡を取り合い、その業界や業務に関する情報を交換し合う関係のことをいいます。人脈作りの目的には次のようなものが挙げられます。
- 将来的に取引ができるような関係を築くこと
- 自分の職業の業界に関して、今までより深い知識を広げること
- 転職を考えている場合は、転職先になりうる企業の情報を得ること
このとき、自分だけが情報を得るのではなく、差し支えない範囲でお互いに情報交換をしていくと、人脈が広がっていきます。社内、取引先、ビジネス上のオンライングループ、ボランティア関係、友人関係、商工会議所、スポーツなどでも人脈作りが可能です。
コミュニケーション力に長け対人関係をうまく築ける人は、人が寄ってくるので、人脈が広がります。広い人脈の持ち主は周囲から頼りにされているため、転職後もそのスキルを活かして会社の利益に貢献することを期待されます。
不安がある場合は入社前にすべて確認する
引き抜き転職には多数のメリットがありますが、いくつかのリスクも抱えています。引き抜きを受けて転職を迷ったときには転職先企業についてよく調査し、就業条件を書面で提示してもらい、あとで悔いることのないように入社前に漏れなく確認しておくことが大切です。
