転職活動を行う上で、第一志望以外の企業選考にも応募する方は多いのではないでしょうか。第一志望より先に内定を獲得した場合、「この内定は保留できるのか?」「連絡しづらいし、なるべく返答は先延ばしにしたほうがいいのか?」などと迷うかもしれません。今回はそんな方に向けて、内定保留の伝え方や注意点を解説します。


目次
転職で内定が出たけど保留したい!できる?いつまで?
内定をもらった企業へ「入社する・しない」の返答を少しだけ待ってもらうことを内定保留と呼びます。結論としては、転職活動では内定保留ができる可能性は高いといえます。内定を出してくれた企業も、内定者を評価し、共に仕事がしたいと思っているはずです。すぐに返事をしないからといって、内定取り消しになるとは限りません。
ただし、保留できる期間は1週間程度と考えましょう。なぜなら、内定を出した企業側にも採用計画があり、内定を出した時点で教育計画を詳細に詰めていくケースが大半であるためです。内定者が返答を遅らせると、企業側の計画にも大きな支障が生じます。後述する内定留保する際の伝え方や注意点を意識し、転職活動をより良いものにしていきましょう。
内定を保留にする主な理由
転職活動のゴールは「内定をもらうこと」ではなく、「自分が納得できる企業へ入社すること」です。「他の内定が取れるか不明だから早く決めてしまいたい」という気持ちもあるでしょうが、初めに内定を出してくれた企業に急いで決める必要はありません。人生の重要なターニングポイントになる可能性もあるため、後悔しないよう幅広い選択肢を持つことが大事です。以下では、内定保留を行うか悩む場合の代表的な理由や対応策を紹介します。
志望度の高い企業が選考中である
第一志望の企業、もしくは志望度の高い企業が選考中で、内定は出ていないが「どうしても気になる」「手ごたえを感じている」といった状況において、先に出た内定を承諾するか悩む方は多いでしょう。同時に、もし他の企業から内定がもらえなかったら就職先がなくなってしまうのでは、との不安に苛まれる方もいます。その場合は、志望度の高い企業の採用スケジュールを再度確認することで心に余裕が生まれ、判断がしやすくなります。
たくさんの企業と迷って判断できない
転職活動がうまくいき、複数の企業から内定をもらったものの、魅力的な企業がたくさんあるため迷って判断できなくなるケースです。また、同タイミングで内定をもらうほど迷いやすくなります。まずは状況を整理し、内定をもらった企業の情報の洗い出しをするとよいでしょう。業種がバラバラな場合は、まず業種ごとに分けて整理することも方法のひとつです。この際には、会社規模や売上だけで判断するのではなく、企業理念や自分が本当にやりたい仕事なのかといった観点から考えることも重要です。
内定をもらった企業に決める勇気がない
選考中は「ここから内定が出たら迷わず入社する!」と思っていたのに、いざ内定をもらうと「この企業で大丈夫かな?」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。特に同時に複数の企業を受けている場合、他の企業からも内定が出るのではという期待から、内定保留を考える方が少なくありません。転職先の決定は人生の大きな分岐点になる可能性が高いため、企業の規模やブランド、給与といった部分だけでなく、理念や社長・創業者の思いなどにも目を向けてみるのがおすすめです。
じっくり時間をかけて検討したい
家族や友人、先輩や知人などに相談してじっくり決めたいという方も、内定保留を行いたがる傾向にあります。企業調査を再度行い、勢いだけで選んでいないか慎重に検討するケースです。慎重になること自体は悪くありません。ただ、考えるほどに迷ってしまい、決断を下せなくなることもあります。自分がいつまでに判断しないといけないのか、改めてスケジュールを確認することで、決意が固まりやすくなります。


内定を保留にするメリットは?
選択肢をなるべく多く確保する上で、内定保留は有効な手段です。ここでは内定保留を行うメリットを紹介します。現状を客観的にみながら、内定を保留すべきかを決めましょう。
志望度の高い企業からの内定を待てる
転職の場合でも選考は同時期に行われることが多いので、1週間程度あれば志望度が高い企業からの選考結果を待つことも可能です。また、他に内定をもらった企業があればじっくり比較・検討できることも大きなメリットでしょう。ただし、いつまでに決めないといけないのかを把握しておかないと「時間がない!」とあわてて判断することになってしまいかねません。時間に余裕をもって行動できるよう心掛けることも重要です。
じっくりと冷静に考える時間が作れる
企業側の情報を精査するだけでなく、自分のキャリアプランを冷静に考える時間も作れます。すぐさま判断しなければならない状況下で、冷静に物事を考えられる方は少ないでしょう。時間の余裕は大切です。また、内定をもらった企業が、本当に自分が入社したい会社なのか再度分析する時間も確保できます。資料や企業のホームページを見直してみることで、新たな発見があるかもしれません。
家族や友人に相談する時間を作れる
状況によっては自分自身だけで判断できないことや、判断しにくいケースも出てきます。その際に内定保留を行えば、信頼している家族や友人に客観的な判断をしてもらったり、アドバイスを得られたりできます。とりわけ、自分にはない視点からの意見が得られると、考えの幅も広がるでしょう。ただし、アドバイスに振り回されないようには注意しなければなりません。特に自身で物事を決めることが苦手な方は、自分の意見は持ちつつ、あくまで補助的な意見として聞き入れることで判断をしやすくなります。
内定を保留にするリスクは?
内定保留にはリスクも存在します。安易に内定保留を行うと、自身の選択肢を広げるどころか狭めてしまったり、入社前にマイナス印象を与えてしまったりすることになりかねません。「メリットがあるからいいや」ではなく、リスクに関しても把握することで、より良い選択ができる可能性は高まります。ここでは代表的なリスクを紹介します。
内定を取り消されてしまう可能性がある。
通常、内定を出す側の企業としては、少しでも早く人材を確保したいと考えます。内定保留をした場合、「うちは第一志望ではないのだな」と判断されて内定取り消しになる可能性も0ではありません。また、企業が一定数の内定保留や辞退をあらかじめ見越して、他の転職者にも内定を出していた場合、他の転職者が承諾することにより自分の内定が取り消されるケースもありえます。いずれにせよ、保留を打診した段階で内定取り消しになるケースもあると想定した上で判断するのがよいでしょう。
内定企業からの第一印象が悪くなる
企業の採用担当者も人であることから、内定保留自体によいイメージを持っていない担当者もいるかもしれません。内定保留を行う理由が別にあったとしても「第一志望が他にあるのだろうか」と判断されてしまう可能性もあります。あるいは、入社意欲が低いと思われてしまい、入社後にも内定を保留にしたとの事実を引きずられるリスクがあることも否定できません。少しでもマイナスのイメージを払拭するため、後述するマナーや注意点を参考にしてみてください。
オワハラを受けて嫌な思いをする可能性がある
オワハラとは「就活終われハラスメント」の略称です。企業が新卒採用において内定を出した学生などへ、他社の選考を辞退するように勧めるなどして、以後の就職活動を終わらせるように働きかけることであり、2015年ころから一般的に知れ渡った言葉とされています。元々は新卒が対象の言葉でしたが、企業が採用難に陥るにつれ、転職者へも上記のような行動を取る企業が増えてきました。こうした経緯から、企業による囲い込みの一環で、採用担当者からオワハラを受けてしまうこともありえます。例としては、「今は不景気だからなるべく早く決めたほうがいいよ」や「他の企業を受けるなら内定は取り消しにするね」などと言われるケースです。


内定を保留にする際の流れと注意点
ここからは実際に内定保留を行う場合、どのようなことに注意するべきかを紹介します。重要なポイントは早く、正直に、相手の都合も考えて動くことです。
1. まずは電話で連絡をする
社会人としてのマナーの一つに、重要な連絡は口頭か電話で行うことが挙げられます。メールを用いることも可能ではありますが、基本は電話です。また、内定保留のような重要性の高い連絡では、SNSや通信アプリの利用は避けたほうがよいでしょう。これは内定保留を行う際も例外ではありません。企業側は内定を出した時点で入社準備や育成計画の準備を進めている可能性があります。メリットやリスクを承知の上で内定保留を行う場合は、とにかく早めに企業や採用担当者へ直接電話連絡することが重要です。どう伝えたらいいかわからないという方は下記の例を参考にしてみてください。
大事なのは、内定をもらったのに返事を待っていただくことへの謝罪と、自分の思いをしっかり伝えることです。
【電話で内定保留を伝える場合の例】
あなた)私先日内定を頂戴しました●●(必ずフルネームで)と申します。採用担当の●●様はいらっしゃいますでしょうか?
担当者)ご連絡ありがとうございます、●●です。本日はどうされましたでしょうか。
あなた)この度は内定をくださりありがとうございました。貴社からご評価いただけたことは大変うれしく思っております。その中で大変恐縮なのですが、一点ご相談がございます。内定のお返事を●日程お待ちいただくことは可能でしょうか。●という理由がありまして、私自身今後の人生の重要な分岐点になると考えております。大変失礼な事だとは重々承知ですが、お時間を頂戴できないでしょうか?
担当者)承知いたしました。それでは●日間お待ちしますので、お手数ですがまたご連絡いただけますでしょうか?
あなた)はい、ありがとうございます。わがままを言ってしまい申し訳ございません。ご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
担当者)はい。良いお返事をお待ちしております。よろしくお願いいたします。
あなた)それでは失礼いたします。
※担当者が電話を切るまで、5秒ほど待った後に切るよう心掛けましょう。
自分の気持ちを伝えることはもちろん重要ですが、気を使いすぎて回りくどくならないようにも注意しましょう。言い訳を並べすぎるとさらにマイナスなイメージになりかねません。また、内定保留を行うことで企業から「それでしたら今回のお話はなかったことに」と切り返されてしまうかもしれませんし、「保留されるのであればご辞退いただきたい」と決断を迫られる可能性もあります。「とりあえず内定保留をする」という軽い気持ちではなく、「待てない」と言われた際にどうするかも含めて、事前に考えておきましょう。
電話が通じない場合は、取り急ぎメールを送ることも重要です。
送る内容がわからない場合は、下記を参考にしてみてください。
【メールで内定保留を伝える場合の例】
件名
頂戴した内定につきまして ●●(フルネーム)
●●株式会社
●●様
お世話になっております。
先日内定を頂戴しました●●(フルネーム)と申します。
この度は内定のご連絡を頂戴し誠にありがとうございます。
先程、会社宛てにお電話をさせていただきましたが、お出になりませんでしたので取り急ぎメールにて失礼いたします。
本日は一点ご相談したいことがあり、ご連絡を差し上げました。頂戴しました内定のお返事を●日程お待ちいただくことは可能でしょうか。●という理由がありまして、私自身今後の人生の重要な分岐点になると考えております。大変失礼な事だとは重々承知ですが、お時間を頂戴できないでしょうか。
また後程ご連絡させていただきます。
何卒宜しくお願いいたします。
●●(フルネーム)
電話とメールのどちらで連絡する場合でも、簡潔に要点から伝えることを心掛けるとよいでしょう。また、電話がつながらずメールを送っても返事がない場合は、必ずこちらから再度電話連絡をすることにも注意が必要です。担当者が連絡に気づかず、無駄なトラブルに発展してしまう可能性は0ではありません。電話で連絡が取れるよう心掛けることが重要です。
2. 保留する理由をごまかさず伝える
誠意を示す為、内定保留する理由は正直に伝えたほうがよいといえます。相手も人事のプロなので、回りくどすぎたり言い訳がましく聞こえてしまったりすると、入社するしないにかかわらずマイナスに受け取られてしまう可能性が高いでしょう。ただし、他の企業が第一志望であると伝えてしまうと印象が悪くなるケースもあります。すべての状況において「これがベスト」という伝え方はありません。自身の状況や内定数、猶予に応じて、ベターな方法を考えてみてください。
3. 返事は1週間以内にする
内定を保留できる期間に決まりはありません。ただ、内定を出した企業の側にも都合があるはずです。待たされすぎると印象が悪くなるだけでなく、急ぎの人員計画の場合は、他の内定者を採用するかどうかの判断もしなければなりません。長くとも1週間以内に返答することを目安にスケジュールを組むのが、企業に応募した側としての誠意でしょう。また、内定保留の期限については、相手に決めさせるのではなく、こちらから指定するほうがベターです。


保留にした内定を辞退する際の対応方法
辞退すると決めた場合、速やかに採用担当者へ電話で連絡するようにしましょう。直接言いにくいからといってメールだけで連絡するなど、「電話してもしなくても一緒だ」と一切の連絡をしないことはお勧めしません。内定を出してくれた人へのマナーは最低限守るようにしましょう。また、どう伝えたらよいかわからない方は下記を参考にしてみてください。
【保留した後で内定を辞退する場合の例】
あなた)私先日内定を頂戴しました●●(必ずフルネームで)と申します。採用担当の●●様はいらっしゃいますでしょうか?
担当者)ご連絡頂きましてありがとうございます。●●です。
あなた)お世話になっております。我儘でお時間を頂戴したのですが、今回内定を辞退させていただきたくご連絡を差し上げました。こちらの都合ばかりで大変申し訳ございません。
担当者)そうでしたか、残念ですが承知しました。●●さんのご活躍をお祈りいたします。
あなた)重ね重ね申し訳ございません。貴社に内定いただいたことを自信にし、今後も精進いたします。
担当者)それでは失礼いたします。
あなた)失礼いたします。
上記のようにスムーズに進むケースだけでなく、辞退する理由を聞かれるケースもあります。自分から進んで理由を話す必要はないですが、当たり障りのない範囲で回答できるようにしておいたほうがよいでしょう。
内定の保留はできるが取り消しのリスクもある
内定の保留は可能であり、自身の選択肢を広げるためにも内定保留は有効です。しかし、内定取り消しや印象の悪化といったリスクもあります。安易に「1週間くらい内定保留しておこう」と考えず、自身の状況に応じて、より良い選択を目指しましょう。
