履歴書や職務経歴書では、「志望動機」が必須です。しかし、どのように書けばよいかわからず、頭を抱えている転職希望者も多いのではないでしょうか。今回は、転職活動を行っている方に向けて、志望動機の書き方について解説します。文章構成の考え方や志望動機を効果的に書くコツ、書くときの注意点もお伝えします。


目次
志望動機とは何か
志望動機は「なぜ応募先の企業で働きたいと思ったか」「なぜ応募先企業を選んだのか」「入社して何をかなえたいのか」などの思いを採用担当者に伝えるものです。志望動機は、職務経歴に次いで採用担当者が重視する項目です。応募先企業の採用ニーズを満たす人材であることを志望動機でしっかりとアピールしましょう。職歴には書き方の工夫をする余地がほとんどないため、志望動機を上手に書くことが採用への近道になり得ます。
特に、応募者が多数集まるような求人では、面接に進めるかどうかは、志望動機次第といっても過言ではありません。相手の印象に残る、内容の濃い志望動機を用意することが大切です。複数の転職先を検討している場合でも、志望動機を使いまわすことはやめましょう。どの企業にもあてはまるものでは内容が薄くなってしまい、説得力に欠けます。忙しくても、必ず応募先に合わせた内容にアレンジしましょう。
志望動機の書き方
志望動機は1分前後で読める200~300字を目安にまとめましょう。ダラダラと書かれた志望動機は好まれません。限られた文字数の中で、採用担当者が求める内容を理解しやすいように盛り込むのがポイントです。ここでは、志望動機に何を書くべきか、どのような文章構成にするとよいのかを解説します。
志望動機に書くべき要素
志望動機に求められる要素は、大別すると「転職で実現したいこと」「自分のこと」「応募企業のこと」の3つです。それぞれで伝えるべき内容について順番に説明します。
転職で実現したいこと
まずは、転職先の企業で何を実現したいのかを明確にしましょう。自身のキャリアビジョンを説明するのです。それによって、その企業で働くことへの本気度と長く勤めたいという意思の2つを応募先にアピールできます。例えば、「新商品の開発に取り組みたい」「業務の効率化に貢献したい」「受注数を伸ばしたい」などが挙げられます。転職先企業のメリットになる内容であることが前提です。そのうえで、志望動機の結論になる要素であるため、転職先企業の採用ニーズに合致する内容が好まれます。求人情報をよく読んで、募集の背景や応募先の課題などを理解・分析しておきましょう。
ニーズに合致していても、「今のスキルや能力でどうやって実現するつもりだ」と思われてしまうものでは、計画性がないと思われかえって逆効果です。説得力を持たせるためには、「自分のこと」「応募企業のこと」の両方をよく理解してリンクさせること、またどうやって成し遂げるつもりなのかを自身の言葉で説明できなくてはなりません。


自分のこと
次に、自分について述べましょう。具体的には自分の持つ経験やスキル、現職でどんな業務をしてきたか、といった内容です。応募先のニーズに合致しているものを選びましょう。さらに、オリジナリティーのあるものや専門性の高いもののほうが有利です。実績について述べる場合には、数字を交えて具体的に書くほうが伝わりやすいでしょう。例えば、「○○人規模のプロジェクトに携わった」「目標を○○カ月で達成した」という実績は、簡潔でありながら非常に具体的です。自分のことには、転職するに至った経緯や思考の説明も含みます。流れが自然であり、理由に合理性があれば、応募先は安心して採用を検討できるはずです。
採用では、能力やスキルだけでなく、人間性もチェックされます。自分が持つ「志(こころざし:何を成したいか)」も書けると、信念と向上心がある人だとして高評価につながります。行動力や忍耐力、継続力など、希望する業務にプラスに働く自身の性格・特性を盛り込むのもよいでしょう。
応募企業のこと
採用担当者は、志望動機から自社について理解しているかも確認しています。商品・サービスを知っているだけでは不十分です。企業理念や企業精神を理解するほか、競合他社にはない独自性や強みについても知っておく必要があります。これらは企業の公式サイトやパンフレットなどで訴求されているはずなので、しっかり目を通しておきましょう。特に応募企業の魅力と感じる点は、志望動機の核になるものです。他社ではなく、この会社でなければならない理由につながる要素を書き、それを自分の転職理由と結びつけることで内容の濃い志望動機になり、説得力が増します。
志望動機に間違った情報を書かないのは最低限のマナーです。人物名や商品名、数値などを記載する際には、必ず応募先の公式情報と照らし合わせて、内容に誤りがないか確認しましょう。
志望動機の文章構成
志望動機の文章は、前段・中段・後段の3部構成にすると書きやすくなります。また大きく、結論を最初に持ってくるか、あるいは最後に持ってくるかの2パターンがあります。結論部分は「転職で実現したいこと」に「貴社を志望する」と添えた文章です。例えば、「~を活かして売上アップに貢献したいと考え、貴社を志望しております」のような文となります。結論の位置の違いによる構成例を紹介します。
結論を前段に書く場合
文章の書き出しとなる前段は第一印象を決めるため、アピール性の強い結論を先に持ってくるのは効果的です。この場合、中段に「自分のこと」、後段に「応募先企業のこと」を書くと自然な流れになります。結論を述べたうえで、自分のことを書いて根拠を明確にし、その企業でないと実現できないという必然性を語って締めくくるというイメージです。結論部分から始まる文例を紹介しますので、自分用にアレンジしてみてください。
「営業のプロとして、現場で能力を発揮したいと考えます。5年間の実務経験で習得した税金や保険、不動産などの知識を活かし、顧客獲得と顧客満足度の向上に貢献したいと考え、貴社を志望しました。現在の会社では電話営業が中心で商談機会が少なく、自身の強みを活かせないと感じ、転職を決意しました。「顧客視点を第一に考える」という理念があり、さらに商談が多い体制を持つ貴社なら、お客様のご要望に添ったきめ細かい提案ができると確信しています。」
結論を後段に書く場合
志望動機の内容によっては、結論を後段に書くほうが伝わりやすいこともあります。この場合は、前段に「自分のこと」、中段に「応募先企業のこと」、後段に「転職で実現したいこと」の順で書きますが、文章の流れが不自然でないかを確認しましょう。また、冒頭でネガティブな印象を与えないように書き方を工夫することが大切です。結論部分で結ぶ文例は以下のとおりです。
「よりお客様に役立つ提案をしたいとの思いから、1年前にファイナンシャルプランナーの資格を取得しました。しかし、現在の会社では電話営業が中心で商談機会が少なく、税金や保険、不動産に詳しい自身の強みを活かせないと感じ、転職を決意しました。商談が多い体制を持つ貴社なら、お客様のご要望に添ったきめ細かい提案ができると確信しています。専門知識とこれまでの経験を活かし、貴社のさらなる顧客獲得や顧客満足に貢献したいと考えております。」


志望動機を効果的に書くコツ
志望動機を書くのが難しいと感じるのは、文章の材料が不足しているためです。転職で実現したいことと、自分のこと、応募先企業のことがリンクした志望動機にするには、書く材料を豊富に用意し、マッチするものを取捨選択するとよいでしょう。そのためには、自己分析と情報収集が不可欠です。
自己分析
「自分のこと」を書くためには、自己分析が必須です。自己分析とは、自分のキャリアやスキルの棚卸しをすることです。これまでに携わった業務を時系列順に並べ、どんな経験や知見を得たかを書き出し、応募先に生かせるものをピックアップしましょう。目標達成のために行った努力や工夫も併せて記載しましょう。また、仕事をするうえで何を重視するのか、自分の仕事への価値観を言語化することも大切です。例えば、「仕事を通じてスキルアップしたい」「ワークライフバランスを実現したい」など、自分の仕事への志向性を言語化し、優先順位をつけておきましょう。
自己分析をしっかりと行うことで、他の人にはない自分の強みを客観的に整理できるほか、転職活動におけるミスマッチも避けられます。さらに、「転職して実現したいこと」も見えてきますので、主張に一貫性を持たせられます。
情報収集
採用担当者は、志望動機から情報収集・企業研究ができているかどうかもチェックしています。逆に言えば、応募者がしっかりとリサーチしたうえで志望動機を書けば、説得力が増します。求人情報や採用ページはもちろん、企業の公式サイトも読み込んでおきましょう。企業理念やビジョン、社長メッセージを読めば、その企業の方向性がわかりますし、ニュースリリースでは直近の活動や力を入れている分野を把握できます。
インターネット以外の情報源も活用しましょう。例えば、書籍を読んだり、OB・OG訪問を行ったりすることで、インターネットでは得られない深い知識や生きた情報を得られます。可能であれば、その企業の商品・サービスを実際に使用するのもよいでしょう。競合他社とも比較することで、応募先企業の強みや独自性も見つけやすくなります。さらに、業界を取り巻く環境や社会状況についても知識を深めておくと、「こんな課題を解決したい」という考えのヒントになります。


志望動機を書くときの注意点
志望動機では、採用担当者からマイナスに捉えられる内容を書くことは避けましょう。企業や採用担当者によって異なる部分もありますが、代表的な注意点を3つ紹介します。
待遇・条件をメインにしない
まず、待遇や条件に言及することはできるだけ控えましょう。「給料が前職より高いから」「休日が多いから」「福利厚生が充実しているから」「家から近くて通勤時間が短いから」といった内容は避けるべきです。志望動機に嘘を書くことは厳禁です。しかし、なんでも正直に書けばよいかというとそうではなく、たとえ本音であっても、待遇や条件をメインに挙げるのは得策ではありません。待遇や条件ばかりを伝えると、応募先企業での仕事の意欲に疑問を持たれます。また、より良い条件の企業が見つかったら転職するのではないかとも思われてしまうでしょう。待遇や条件は転職する際の重要なポイントですが、志望動機には書かないようにしましょう。
具体性のない内容を避ける
「理念に共感した」という表現は、志望動機では使われがちですが、それだけでは具体性に欠けます。理念に共感したことで志望するという流れには問題ありません。しかし、どこに共感したのか、なぜそう思ったのかまで説明できないと、かえって薄っぺらく見えてしまいます。「貴社の理念の○○が自分の志と共通している」など、明確な説明ができないなら書かないほうがよいでしょう。
「商品・サービスが使いやすかった」なども、ただの感想にすぎません。なぜ使いやすいのか、他社製品にはないどのような魅力があるのか、開発時の工夫や苦労の過程に感銘を受けたなどまで、述べられているなら好印象です。「一生懸命頑張ります」のような漠然とした思いも、志望動機には不必要です。どのように能力を発揮して貢献したいのか、まで書かないと読み手にやる気は伝わりません。
受け身的な姿勢を強調しない
受け身的な姿勢では、相手に自分を選ぶメリットを訴求できません。「学ばせていただきたい」「成長させてもらいたい」といった文章は、一見すると謙虚で意欲があるように見えます。しかし、即戦力として活躍しようという態度が見えなければマイナスです。「させていただく」「させてもらう」は相手の許可を得て行動し、恩恵を受ける表現です。企業によっては、受け身的な意味合いに取ることもあるため、避けたほうが無難です。
「スキルをさらに高めたい」「新しい挑戦をしたい」といった前向きな言葉を使い、主体性や積極性を見せましょう。未経験の職種に応募する場合も、今の仕事で活かせる要素を少なくとも一つは見つけておくことです。また、未経験でも仕事で活かせる資格を取得したなど、短期間で戦力になるために行った努力も伝え、本気度をアピールするとさらに効果的です。
志望動機の書き方をマスターして転職活動を成功させよう
いくら能力や意欲があっても、志望動機でうまくアピールできなければ、採用面で不利になります。自己分析や情報収集を十分に行い、「転職して実現したいこと」「自分のこと」「応募先企業のこと」に一貫性のある志望動機を作り上げましょう。条件も含めて、自分と企業とのマッチ度も重要です。初めての転職でも、登録しておくだけで自分の条件に合う企業からオファーがもらえる「PaceBox」を検討するのもおすすめです。
