使用する履歴書によっては、健康状態に関して記載する欄がある場合があります。本記事では、履歴書の健康状態欄の必要性、状態に応じた書き方やどの程度選考に影響するのかを紹介します。よくある質問も含め、実際の仕事探しで活用できるように確認しておきましょう。


履歴書の健康状態欄はなぜ必要か?

履歴書のなかには、自分の健康状態を記載する欄が用意されているものがあります。履歴書の健康状態欄が必要な理由は、大きく分けると以下のとおりです。
・長く勤務できるか確認するため
・持病や既往症がある場合は業務に支障がないか確認するため
・勤務地や配属先などの配慮を要するか知るため
健康状態を知らせる理由について、詳しくチェックしていきましょう。
長く勤務できるか確認するため
人材を募集している企業の多くは、長く勤務できる人を採用したいと考えています。履歴書に健康状態を知らせる欄があるのは、応募者が長く勤務できる健康状態であることを企業側に伝えるためです。
ただし、厚生労働省が発表した「公正な採用選考の基本」によると、「応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しない」と定められています。職務を遂行できるかどうかを基準に採用する人材を選ぶことになっているため、業務の遂行に支障がないようであれば基本的に応募者の適性や能力にもとづいて採用の可否が決定されます。健康状態で申告する内容は、採用判定に影響が出る可能性はあるものの、過度に心配し過ぎないようにしましょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
持病や既往症がある場合は業務に支障がないか確認するため
応募者によっては、持病や既往症がある場合があります。企業側としては、応募者の健康状態が任せたい業務の遂行に支障がないものかどうかを確認しておきたいものです。そのため、履歴書などで健康状態をチェックしています。
持病や既往症があっても、即不採用だと判断されるわけではありません。スキルや能力、人柄などが採用基準を満たしており、業務に支障がないと総合的に判断される場合は、採用されるケースが多いでしょう。
勤務地や配属先などの配慮を要するか知るため
応募者の健康状態によっては、採用後に配慮が必要となるケースがあります。配慮されるのは以下のようなことです。
・勤務地
・配属先
・業務の分担
健康状態による採用選考への影響を心配するあまり、偽った健康状態を申告するのはおすすめできません。持病を抱えているにもかかわらず、体調面への配慮なしで新しい職場で働くのは大変な負担がかかります。健康状態を考慮したうえで活躍しやすい職種を提案してもらえることもあるため、正直に伝えるようにしましょう。


履歴書の健康状態欄の書き方・表現・例文

実際に履歴書の健康状態欄にどのように書けばいいのか、書き方や表現、例文を解説します。以下の6つの健康状態別に、書き方を解説します。
・健康状態に問題がない場合
・持病・既往症・通院の必要性がある場合
・うつ病などの精神疾患がある場合
・アトピーなどの皮膚疾患がある場合
・てんかんがある場合
・前職の退職理由が健康状態によるものであった場合
それぞれの書き方について、詳しくチェックしていきましょう。
健康状態に問題がない場合
特に問題がない健康状態であれば、過度な記載は必要ありません。履歴書の健康状態欄には「良好」と端的に書きましょう。
体力に自信がある場合であれば、さらに表現を強めて「極めて良好」と記載しても良いです。「しっかり働いてくれそうだ」と、採用担当者に良い印象を与えることにつながりやすいでしょう。例えば、以下のように記載できます。
________________________________________
極めて良好
(前職では、これまでの5年間、無遅刻・無欠勤です)
________________________________________
履歴書を書いているときに体調を崩していたとしても、ただの風邪など、数日中に回復するようなものであれば「良好」と書いても問題ないでしょう。骨折などの一時的な怪我についても同様です。
持病・既往症・通院の必要性がある場合
持病や既往症があるなど、通院の必要性がある場合には、「業務に支障があるかどうか」によって履歴書の健康状態欄への書き方が変わります。採用担当者が気になるのは、応募者の健康状態の違いによる業務や休みへの影響がどの程度発生するかです。通院が必要な場合には、業務や休みへの影響がどの程度ありそうなのかなどを記載すると良いでしょう。
持病や既往症などによって通院の必要性がある場合、履歴書の健康状態欄にどのように記載すると良いのか、詳しく説明します。
業務に支障はない場合
持病や既往症などがあり、通院が必要な状態でも、業務に支障がないケースもあります。業務に支障がないようであれば、健康状態に問題がない場合と同様に、「良好」とだけ記載しておいても問題ありません。
以前大きな病気やケガをしたものの現在は治っている場合や、定期的な通院があっても通常の休みの日だけで対応可能な場合などが当てはまります。
また先述のとおり、現在治療中であるものの、入社するころには治る見込みのケガも、「良好」とだけ記載できます。ただし、面接の際に見て分かるような怪我であれば、以下のように記載しておくと良いでしょう。
________________________________________
良好
(現在、捻挫の治療中ですが、1週間後には完治する見込みです)
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業務に支障のある場合
持病や既往症などによって業務に支障のある場合には、業務内容への配慮が必要なのか、休みへの影響がどの程度ありそうなのかを記載します。「長時間のデスクワークに対応できない」「1週間に1回通院のための休みが必要」など、配慮が必要な情報を事前に伝えておきましょう。
履歴書や面接で持病や既往症があることを伝えたほうが、配属先や業務内容の調整をしてもらえるなど周りの協力や理解を得やすいため、仕事がしやすくなる可能性が高まります。
例えば、以下のように記載しましょう。
________________________________________
業務に支障はありませんが、持病の定期検診で1ヶ月に1回の休暇取得を希望いたします。
________________________________________
万が一、業務に支障があるにもかかわらず、健康状態欄に「良好」と記載した場合には、虚偽の申告となってしまいます。業務に支障があるような持病や既往症、ケガがある場合には、正しく申告しましょう。


うつ病などの精神疾患がある場合
身体の病気や怪我だけでなく、うつ病などの精神疾患がある場合もあります。うつ病のような精神疾患がある場合にも、すでに治療が終了しているのか、それとも治療中や経過観察中なのかによって、記載する表現が異なるため注意が必要です。
精神疾患の病歴があることは、採用担当者に伝えにくいかもしれません。しかし、精神疾患も病気や怪我と同じく、治療中であるならば偽らずに伝えましょう。
それでは、治療が終了している場合と治療中・経過観察中の場合とで、どのように記載するのかについて説明します。
治療が終了している場合
うつ病などの精神疾患があった場合でも、すでに治療が終了しているようであれば、履歴書の健康状態欄には「良好」だと記載できます。治療が終了している場合には、医師の診断を受けたことや以前の症状などは健康状態欄に書かなくても良いため、併記もなく「良好」のみの記載で問題ありません。
治療中・経過観察中の場合
精神疾患の病歴があり、まだ治療中や経過観察中の段階であれば、履歴書の健康状態欄にその内容を記載します。精神疾患の病歴を伝えるのは抵抗があるものです。しかし、万が一の場合に企業側がフォローできる体制を作っておくためにも、治療中や経過観察中の精神疾患があるならば記載しておきましょう。
業務に支障が出ないと思ったとしても、精神疾患を治療中や経過観察中の場合には、現状を伝えておくことが大切です。あまり業務に支障がない場合には、以下の例のように記載すると良いでしょう。
________________________________________
良好
(業務に支障はありませんが、1ヶ月に1度精神疾患の定期検診を受けています)
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アトピーなどの皮膚疾患がある場合
アトピーなどの皮膚疾患がある場合、業務に支障がないようであれば健康な人と同じく「良症状や好」と記載していれば問題ありません。アトピーについて補足しなくても良いでしょう。
ただし、アトピーなどの皮膚疾患によって重い症状がある場合には、念のため企業側に知っておいてもらったほうが良いかもしれません。以下のように、補足情報として皮膚疾患の病状を記載すると良いでしょう。
________________________________________
良好
(アトピー性皮膚炎の持病がありますが、業務に支障はありません)
________________________________________
てんかんがある場合
てんかんの場合は、現在の状態や症状、対処方法を具体的に伝えることが重要です。「自己管理しながら十分業務をこなしてもらえそうだ」と感じてもらえるよう、分かりやすく伝えましょう。
例えば、以下のように記載します。
________________________________________
現在てんかんの治療中です。
前職では月に2回程度休暇をいただくことがありましたが、
〇年〇月以降、症状はなく、主治医からもフルタイムの就業許可が出ています。
〇時間以上の残業をした場合、発作を誘発する可能性があります。
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前職の退職理由が健康状態によるものであった場合
前職を退職した理由が健康状態によるものであった場合には、その内容を記載しておきましょう。今後の業務に支障がない場合であれば、採用担当者にそのことも伝えます。履歴書の健康状態欄には、以下のように記載します。
________________________________________
良好
(病気療養のために前職を退職しましたが、現在は完治しており業務に支障はありません)
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履歴書の健康状態欄はどの程度選考に影響するか?

健康状態欄の記載内容が選考に与える影響の程度は、状況によって異なります。業務を遂行できないと判断された場合は不採用となることもあるかもしません。しかし、応募した業務で問題なく働けるのであれば、健康状態を理由に不採用となることは少ないでしょう。
なぜなら、先述のとおり、公正な採用選考について厚生労働省が定めたルールがあり、原則として業務遂行に影響のない病気や怪我であれば、健康状態を理由として不採用にするのは望ましくないとされているからです。
とはいえ、企業側は採用後の日常業務への支障については気にせざるを得ません。「突然休まないか」「任せたい業務に適応できるか」などを現在の健康状態で判断するため、日常業務に明らかな困難が発生し、業務が任せられない状態ならば、不採用となる場合もあるでしょう。
反対に、持病があっても採用予定の職種で問題なく業務できる場合、スキルや能力、人柄などが基準を満たすならば採用してもらえる可能性が高いです。
履歴書の健康状態欄に関するよくある質問

履歴書の健康状態欄に関してよくある疑問についてもチェックしていきましょう。ここでは、以下の疑問に解答します。
・健康状態が悪くて書きたくないならどうしたら良い?
・過去に大きな病気をしていたらどうなる?
また、現在の健康状態だけでなく、過去の状態まで申告すべきかどうかを気にする人も多いです。それぞれについて対処方法を解説します。
健康状態が悪くて書きたくないならどうしたら良い?
健康状態が悪いことを書きたくない場合、以下2つの選択肢があります。
・健康状態欄のない履歴書を使用する
・健康状態を回復させて業務に支障のない状態にする
健康状態欄のない履歴書を使えば、書類上で申告する必要はありません。しかし、面接などで直接確認される可能性はあります。面接で聞かれたらどのような回答をするのか、あらかじめ考えておきましょう。
業務に支障が出そうな健康状態であるならば、回復させることを優先するのも選択肢の1つです。業務に影響のない状態まで回復できれば、健康状態欄に「良好」と記載できます。
持病などを健康状態欄に記載しておくことで、企業側が配属部署や業務の振り分けなどを配慮してくれる可能性もあります。いずれにせよ、誠実な対応をすることが重要です。
過去に大きな病気をしていたらどうなる?
過去に大きな病気をしていた場合であっても、すでに完治していて日常生活や業務に支障がないようであれば、原則的に記入の必要がありません。しかし、その病気が再発のリスクが高いものならば、入社後にすぐ再発してしまう可能性があります。
「うそをついていたのだろうか?」と感じられないように、再発のリスクが高い病気について記載するかどうかは医師に相談すると良いかもしれません。例えば、「完治していますが、経過観察のために定期的に通院しています」などと記載しましょう。


履歴書の健康状態欄は正直に書こう!

履歴書の健康状態欄は正直に書くことが重要です。応募者としては、履歴書の健康状態欄にあまり悪い印象を与える内容は書きたくないと感じるかもしれません。しかし、企業側が気にしているのは「採用後の日常業務に支障がないかどうか」などです。
厚生労働省が定めたルールにより、応募者の能力や業務の適正以外の情報を採用の基準にしてはいけないとされています。そのため、日常業務に支障がない病状で、能力などが採用基準を満たすならば採用してもらえるでしょう。
また、健康状態を伝えておけば、配属後に企業側が配慮してくれる可能性もあります。自分自身のためにも、履歴書の健康状態欄は正直に記載するようにしましょう。
