サービス業と聞くと接客業のイメージが強いかもしれませんが、実際は非常に様々な職種があるのをご存知でしょうか。さらに、価値観や嗜好が多様化している昨今、サービス業のニーズは年々高まっています。転職活動の際は、ぜひサービス業を選択肢の1つに入れてみるとよいでしょう。
本記事では、サービス業の仕事内容や種類、メリット・デメリットのほか、サービス業で活躍できる人の特徴や身に付くスキルについて解説します。


目次
サービス業とはどのような仕事か
まずサービス業とは、顧客の要求に応じて、専門技術や知識などによって形のないサービスを提供する仕事のことです。人になにかを教えたり、サポートが必要な人を助けたりするのもサービス業に含まれます。顧客に対して直接的にサービスを提供し、対価を受け取るのがサービス業の特徴と考えればよいでしょう。
一般的には、第三次産業とほぼ同義の言葉になります。第一次産業(農業・林業・漁業など)と第二次産業(鉱業・建設業・製造業など)を除く、目に見えないものを提供する産業全体が第三次産業です。
また、サービス業と接客業を同じようなものと考えている人が多いですが、調理師、獣医師、弁護士など、サービス業の仕事は多岐に渡ります。接客業はあくまでサービス業の一種であり、顧客と直接コミュニケーションを取る仕事のことをいいます。
日本のサービス業は、伝統的なおもてなしの精神にあふれているのが特徴です。そのため世界的にも評価が高く、しばしばお手本にされるほど。最近では海外へ進出する企業も増えており、日本ならではの丁寧なサービスは大変多くの人に喜びを与えているようです。
サービス業は大きく分けると9種類
サービス業に該当する仕事は、大きく9つの種類に分けることが可能です。それぞれの業務内容について、詳しく紹介していきます。
情報通信業
情報通信業は、情報を提供したり、処理したりする仕事のことです。インターネットに関係する仕事も情報通信業に含まれます。特に、昨今は急速なIT化が進んでいるため、インターネット関連の情報通信業は今後ますます拡大の一途を辿っていくでしょう。
具体的な職種としては、ソフトウェア開発、サーバー運営、webコンテンツ作成、テレビ番組の制作などが挙げられます。
飲食サービス・宿泊業
飲食サービス・宿泊業は、顧客の注文に応じて料理や飲み物を用意したり、宿泊場所を提供したりする仕事のことです。客層や客単価などによって、適切な対応の仕方が大きく異なってくる仕事でもあります。
具体的な職種としてはレストランや居酒屋のホールスタッフ、デリバリースタッフ、ホテルや旅館のフロントなどが挙げられます。
運輸・郵便業
運輸・郵便業は、自動車、鉄道、航空機などで旅客や貨物の運輸を行う仕事のことです。また、倉庫業に関連する仕事も運輸・郵便業の1つです。具体的な職種としてはタクシーの運転手、郵便局職員、航空機のパイロットなどが挙げられます。
なお、鉄道会社などがアミューズメントパークやデパートを経営していることがありますが、これらに関しては運輸業には含まれません。それぞれ別業種扱いになります。


不動産・物品賃貸業
不動産・物品賃貸業は、不動産の売買、管理、仲介などを指す仕事です。アパートやマンションなどの物件だけでなく、駐車場も不動産のうちに入ります。
そのほか、産業用機械器具、自動車、娯楽品などの物品を賃貸する仕事も含まれます。具体的な職種としては、不動産会社の営業、レンタルビデオ店のスタッフ、総合リース業などが挙げられます。
教育・学習支援業
教育・学習支援業とは、教育や学習支援を行い、顧客に能力やスキルを身に付けさせる仕事全般のことです。また学校教育に限らず、教養を提供する場である図書館や博物館なども教育・学習支援業に含まれます。具体的な職種としては、小学校や中学校の教師、語学や音楽といった習い事の講師およびスタッフなどが挙げられます。
ただし、サッカー場などのスポーツ関連施設の運営は教育・学習支援業ではなく、このあと説明する生活関連サービス・娯楽業に該当するので混同しないようにしましょう。
学術・専門技術サービス業
学術・専門技術サービス業は、学術の研究や試験を行ったり、芸術作品を生み出したりする仕事のことです。そのほか、経営戦略などの専門的な知識サービスを提供する仕事も学術・専門技術サービス業に含まれます。
具体的な職種としては、工学研究所の職員、作家、経営コンサルタント、法律事務所の弁護士などが挙げられます。
生活関連サービス業・娯楽業
生活関連サービス業・娯楽業は、生活に必要なサービスや娯楽のためのサービスを提供する仕事のことです。具体的な職種としては、生活関連サービス業だと美容師や理容師、ウェディングプランナーなどで、娯楽業だと遊園地や映画館のスタッフなどが挙げられます。
医療福祉業
医療福祉業は、医療、社会福祉、介護などに関わるサービスを提供し、人の命や健康を守ったり生活のサポートをしたりする仕事のことです。具体的な職種としては、医師、看護師、高齢者施設職員などが挙げられます。
また、保育士も医療福祉業のうちの1つです。対して子どもの対象年齢は同じだとしても、幼稚園の先生は医療福祉業ではなく教育・学習支援業に含まれます。これは、「保護者の代わりとなって子どもを保育する(保育園)」「年齢に応じた教育を子どもたちに行う(幼稚園)」といった目的の違いによるものです。
その他のサービス業
顧客のニーズに応じて業務を行うサービス業はやりがいのある仕事ですが、休日が少ないなどの懸念点もあります。ここでは、サービス業のメリットとデメリットについて解説します。それぞれよく理解したうえで、サービス業の仕事を探すようにしましょう。


サービス業のメリットとデメリット
顧客のニーズに応じて業務を行うサービス業はやりがいのある仕事ですが、休日が少ないなどの懸念点もあります。ここでは、サービス業のメリットとデメリットについて解説します。それぞれよく理解したうえで、サービス業の仕事を探すようにしましょう。
メリット
サービス業の最大のメリットは、顧客からよい反応があったとき、言葉をかけられたり、顧客の笑顔を見られたりすることです。接客を伴うサービス業であれば、顧客の感謝がダイレクトに伝わるので、大きなやりがいやモチベーションにも繋がります。
また、日々たくさんの顧客と接して異なる反応が得られるのもサービス業のメリットです。ルーティンの仕事は徐々に飽きてしまう可能性がありますが、サービス業は顧客が毎日変わるのでいつも新鮮な気持ちで業務に取り組むことができます。
さらに、サービス業が提供するのはモノではなくサービスです。自分の働き方そのものがいわば「商品」となり、顧客満足度を左右することに繋がります。ひいてはそれが企業からの評価にも直結するので、自身の成長を実感しやすいといえるでしょう。
また、サービス業は未経験者でも比較的就職がしやすいといわれています。特に「運輸・交通・物流・倉庫」「流通・小売り・フード」は全業界の中でも未経験者OKの求人が多い業種です。
スムーズに仕事を探したかったり転職活動で行き詰まったりしている場合は、ぜひこのような業種を視野に入れてみるとよいでしょう。
デメリット
サービス業の職種によっては、土日に仕事を休んだり、連休を取ったりするのが難しい場合があります。世間的な休日や祝日は、サービス業にとっては逆に書き入れ時。
例えば、飲食店、アミューズメントパークや映画館、宿泊施設などは24時間体制が必要なこともあるため、土日にスタッフ全員が休んでしまうと仕事が回らなくなってしまいます。よって、こういった職種は一般企業のような土日休みという働き方ではなく、シフト制で休みを取る形態が多いです。
また、サービス業は休日自体もあまり多くない傾向にあります。厚生労働省「平成30年就労条件総合調査の概況」から平成29年度の労働者一人あたりの年間平均休日を見ると、労働者1人あたりの年間平均休日は約114日ですが、飲食・宿泊業の年間休日は約97日、運輸・輸送業の年間休日は約100日となっており、その他にも年間平均休日を下回っているサービス業はいくつかあるのが実情です。プライベートの時間が少なくなり、友人や家族との予定も合わせづらいといった点はデメリットといえます。
さらに、サービス業の年収は全体的に見ると高いとはいえず、やや低い傾向になっていることも覚えておきましょう。役職や手当の有無などによっても変わってはきますが、あまり高い給料は望めない業種が多いです。自分のライフプランや生活水準と照らし合わせたうえで、サービス業での年収でも問題がないかどうかよく検討するとよいでしょう。


サービス業で活躍できる人の特徴
サービス業は、顧客が求めているものを察知し、丁寧で細やかなサポートをしなくてはいけないので、コミュニケーション能力は必須です。察する力や会話のキャッチボールに長けている人はサービス業で大いに活躍できるでしょう。
また、サービス業は顧客と直接関わる機会が多いので、人の世話を焼くのが好きな人や常に相手を喜ばせたいと考えている人も向いています。サービス業における「おもてなしの精神」に直結する能力といえるでしょう。
さらに、サービスの提供によって「顧客に満足してもらうこと」がサービス業にとってはなにより大事なので、個人的な能力で全てを解決するよりも他部門や外部と協調して仕事ができるチームワークがポイントになる職種も多いです。
サービス業は毎日接する顧客が変わるので臨機応変な対応を求められるシーンがよくあります。マニュアル化されていない状況が発生することも少なくないでしょう。予想外の状況になるとすぐに慌ててしまう人はあまり接客業に適していないかもしれません。加えて、人を相手にする仕事は思うようにいかずにストレスがたまり、ときにはきつい言葉でのクレームを受けることもあります。
体力に自信があり、なおかつストレス耐性も強い人がサービス業には向いているといえるでしょう。たとえトラブルが起こったとしてもいつまでも引きずらず、上手く切り替えができるタフさがサービス業を長く続けられる秘訣です。
サービス業で身に付くスキル
サービス業は人の話を上手に聞き出したり、提案や交渉をしたりといった顧客対応を実務で日々繰り返すことになるので、自然とコミュニケーション能力が磨かれていきます。また接客面だけでなく、スタッフ間の連携もサービス業では非常に重要になってくるので、ここでもコミュニケーション能力が向上していくでしょう。
さらに、サービス業は一度に複数の顧客を相手にしたり、メールや電話の対応をしたりするケースも多いので、マルチタスクを並行してこなす能力も身に付きやすいです。最初は慌てたり混乱したりしてしまうこともあるかもしれませんが、仕事に慣れていくにつれて徐々にペースを掴んで手際よくこなせるようになっていくでしょう。
加えて、どのような仕事でも予期せぬトラブルやアクシデントは起きるものですが、顧客対応が含まれるサービス業はその頻度がとても多いという特徴があります。その都度自分ができる最善策を考えなくてはいけないので、臨機応変な判断力も養われるでしょう。
サービス業に対して期待できる将来性とリスク
医療・介護関連のサービス業は少子高齢化の影響もあって、今後も安定して仕事があるといわれています。患者とのコミュニケーションでは繊細な気配りが必要なほか、緻密な手術においても完全な機械化は難しいなど、AIが取って替わりにくい分野といえるでしょう。加えて、エンターテイメントや娯楽など、人の想像力が重要になる分野もAIの代わりがきかないので、需要はますます高くなっていくことが予想されます。
新型コロナウイルスの影響によって消費者の支出はやや控えめになっている状況ではありますが、オンラインサービスやジムなど形のないサービスに対する需要自体は増加しています。
また、製造業でも製品を単に販売して完結するのではなく、購入後の丁寧なアフターサービスも求められるような時代に変わってきています。メンテナンスやアフターケアなどを重要視している顧客が増えれば、サービス業の側面も伸びていくといえます。
一方、IT技術の発達によって、思考力や想像力が必要とされないサービス業の仕事はAIに奪われるリスクが高くなってきています。例えば、セルフレジやタッチパネルの注文式端末など、接客業の一部はすでに自動化されつつあり、この傾向は今後も強くなると予想されます。
多岐に渡るサービス業の中から自分にあった仕事を探してみよう
本記事で紹介したとおり、サービス業には多種多様な仕事があります。サービス業=接客業のみという先入観は捨てるようにしましょう。人が喜ぶことにやりがいを感じたり、コミュニケーションスキルに自信があったりする人はサービス業に向いている可能性が高いです。
職種によっては未経験OKな場合もあるため、自分に合ったサービス業の求人が見つかったら思い切ってチャレンジしてみましょう。
