仕事を辞める理由は「ネガティブ」なものが多いのが現状です。本当の理由をそのまま伝えると「反感を買ってしまうのでは?」と悩んでいる方も多いでしょう。
この記事では、自分の本当の気持ちを整理したうえで、納得されやすい「辞める理由」とその伝え方、必要な事前準備を詳しく解説します。転職を決意したけれど、上手な退職・転職の仕方が分からないという方はぜひご覧ください。


目次
仕事を辞める本当の理由は?
「仕事を辞める理由」の伝え方として、必ずしも本音を伝える必要はありません。しかし、自分の気持ちを退職前に整理しておくのは大切です。本当の気持ちを自分自身が理解していないと、転職活動時にブレが生じてしまいやすくなります。
自分にとって、仕事に就くときに「不満を感じやすい状況」や「大切にしておきたい条件」を再確認しておきましょう。
厚生労働省が調査した「令和2年雇用動向調査の概況」によると、以下の3つの退職理由が多くあげられています。
・仕事内容への不満
・給与が低い
・職場の人間関係
このような不満から、転職活動に踏み切る方が多いのが現状のようです。下記ではそれぞれの退職理由について説明しています。あなたの「本当の気持ち」も当てはまるか確認していきましょう。
仕事内容
仕事をしていく中で「自分に合わないのでは?」「思っていたのと違う」と感じるケースは意外と多いものです。そんな気持ちを抱えたまま業務に就いているのは、精神的にも辛いでしょう。特に日本企業の多くは、定期的に職場や職務を変更していく「ジョブローテーション」という制度が盛んに行われています。
しかし、このような制度が性分に合わない方もいます。入社時に希望していた職務に就けない状態がつづくようなら、転職を検討してもよいでしょう。
給与
仕事の内容に対して給与が十分でないと感じたり、残業や休日出勤に対する手当がもらえていなかったりといった理由で退職する方もいます。仕事に対してやりがいは感じていても、給与が見合っていない場合は、将来への不安が生じやすいです。
独身のときは満足していても「結婚」や「子どもの誕生」といったプライベートの変化をきっかけとして、給与に不安を感じる方もいます。
また、給与が上がったとしてもプライベートの時間を犠牲にしなければならない職場環境では、生活の質が下がってしまいます。給与に対する「業務内容」や「費やす時間」が適切であるか見つめ直してみるとよいでしょう。
人間関係
上司や同僚とうまくいかず、ストレスを抱えながら仕事をしていくのは辛いものです。我慢を重ねて、ストレスフルな状態で仕事をつづけるのは精神的なダメージを負いやすいです。人間関係の問題は心身共にダウンしてしまう可能性も高いため、退職を検討する緊急度は高いといえます。
もし、人事部に相談して異動できたとしても、「人間関係でトラブルを抱えていた人」として見られてしまう場合もあります。その後に働きにくくなる可能性もあるため、判断は慎重にしていきましょう。


納得されやすい「仕事を辞める理由」とは
仕事を辞める理由としての「本音」は仕事内容や給与、人間関係が大半を占めますが、そのままストレートに伝えると印象はよくないでしょう。また、本音を伝えることで、そこに理由をつけて引き止められる可能性もあります。
日本には「本音と建前」という言葉があります。本心を隠して遠回しに気持ちを相手に伝えていくスキルです。建前は、決してウソではないということです。相手の気持ちも考えたうえで、建前を提示しながら要求を進めていけるとよいでしょう。
下記では、比較的に納得を得やすい「仕事を辞める理由」を2つ紹介します。建前としてうまく活用しやすいので、参考にしてください。
家庭の事情
家庭の事情はプライベートなこともあり、細かく詮索される可能性は低いといえます。「家庭の事情で退職を考えていますが、詳しくお伝えするのが難しいです」と一言添えておけば深くは聞かれにくいでしょう。
また、家庭の事情となると、会社としても対処が難しいため引き止めにくくなります。家庭の事情での退職理由として考えられるケースは、以下のようなものがあります。
・家族の介護
・家業を継ぐ
・パートナーの転勤
・家庭(子育て)との両立
・家族のために引っ越し
家業を継ぐなどは本当であればよいのですが、まったくのウソをつくとバレやすいので注意しましょう。しかし、置かれている状況が当てはまるようであれば、建前にはなってもウソにはなりません。本音を隠しつつ退職理由として使ってみるのもひとつの手段です。
自己実現
自己実現達成のための転職であれば応援されやすいものです。例えば「資格を活かしてステップアップしたい」「視野を広げるために海外事業に挑戦したい」「より大きなプロジェクトの中で活躍したい」など、実現したい将来像を明確にしておくとよいでしょう。前向きな理由は応援されやすい傾向にあるため、本音の部分と組み合わせて使えるとよいです。
しかし、社内にも自己実現できそうな部署がある場合「異動でよいのでは?」と提案される可能性が高くなるのは注意点です。事前に自社の情報を確認し、対策しておくとよいでしょう。


仕事を辞める理由の伝え方
仕事を辞める理由を明確にしたうえで、どのように伝えるかも重要なポイントです。ここでは、円満退社のために押さえておきたい「伝え方」のポイントを5つ紹介します。
・直属の上司に伝える
・意志の固さを印象づける
・ポジティブな言い方を心がける
・具体的なスケジュールを提示する
・主張を一貫させる
それぞれ下記で詳しく説明していきます。
直属の上司に伝える
まずは、直属の上司に退職の意志を伝えます。もし、直属上司との関係が理由で退職する場合は「本音」は伏せて伝えておきましょう。すでに辞めると決意しているのであれば、波風を立てずに対処したいところです。
ここで避けたい事態は、言いづらいからと先に先輩や同僚に伝えてしまった結果、間接的に上司に話が伝わってしまうことです。例え苦手な上司だとしても円満退社のために「顔を立てる」配慮ができるとよいでしょう。
意志の固さを印象づける
少しでも退職に迷っている様子では、相手も「まだ引き止められる」と感じてしまうものです。伝えるときには「すでに決意が固い」とはっきりと意志を表しましょう。とはいえ、人手不足の業界では人材流出を避けたいと思うものです。
相手の気持ちにも寄り添った雰囲気を演出しながら、すでに自分なりに考え抜き、家族など大切な人にも相談したうえでの最終的な決断であると伝えるとよいでしょう。
ポジティブな言い方を心がける
仕事を辞める理由がネガティブであっても、ポジティブに言い換えることで印象は大きく変わります。退職の意志を伝えてから最終日までは1〜2ヶ月と期間が空くことも多いでしょう。最終日までお互いが気持ち良く仕事ができるようにポジティブな伝え方を心がけてみてください。
【ネガティブな理由をポジティブに言い換えた例】
・業務にやりがいを感じない→自分を高めるために、より多くの人と接することのできる支店の多い会社に転職がしたい。
・仕事が割に合わない→ステップアップしたいと資格を取得した。仕事をしていく中で、さらにこの資格を活かせる実力主義の環境に身を置いて、自分を成長させたいと思った。
・人間関係が合わない→今の仕事を通して、自分でスケジュールを管理して遂行していく業務が合っていると感じた。そのため、個人のペースで仕事を進められる職種への転職がしたい。
このように、言い方の工夫次第では受け取る側も応援する気持ちで送り出せます。「自己のステップアップのために転職したい」とポジティブに変換できる準備をしておきましょう。
具体的なスケジュールを提示する
退職を決意したら、辞めたい日から逆算して余裕をもって伝えるのがベストです。一般的には、引き継ぎや有給消化などを踏まえて退職の2ヶ月前に伝えるとよいでしょう。特に転職先への入社日が決まっている場合は、早急に「具体的な今後のスケジュール」の提示が必要です。
日程がなければ「後任を定める時間がかかる」などと会社に引き止めの口実を与えてしまう可能性も。迷惑をかけない範囲で「〇月中で退職したいので、△月□日頃には引き継ぎを終えたい」などと明確に日程を伝えられるとよいでしょう。
会社も後任の確保や引き継ぎのための期間に時間を要します。これまでお世話になった気持ちとして、今後の社会人マナーとしても配慮をしつつ気持ち良く退職しましょう。
主張を一貫させる
主張のブレは意外と相手に伝わるものです。仕事を辞める理由をポジティブに言い換えるといった工夫は大切ですが、主張がブレてしまうことで「まだ引き止められるのでは?」といった印象をもたれてしまうかもしれません。
このようなケースでは、上司だけでなく、さらに上の役職や役員クラスとの面談を設けられる可能性もあります。その際、当初伝えた理由からブレないよう主張を一貫させることが大切です。
本音を隠してポジティブに言い換える場合は、理由が具体性に欠けないようにしましょう。「〇〇になるため」「〇〇をしたいから」と最初から最後まで退職理由を強く心の中で持ちつづけられるようにしてください。


辞める理由を伝える前の準備
事前準備なしで中途半端な状態で臨むと、引き止めにあったり、何となく流されたりする可能性があります。事前準備をしっかりしておくと、心にも余裕がもてるため安心です。次の2点を準備しておきましょう。
・転職先の内定を得る
・退職までの流れを整理する
それぞれ、下記で順を追って説明します。
転職先の内定を得る
転職先の内定を得てから、退職の意志を伝えるようにしましょう。退職を伝えるときに「転職を検討している」では、引き止めにあう傾向が高くなります。
また、転職活動は思った以上に時間がかかる場合もあるので、先に仕事を辞めてしまうと収入への心配が生まれやすくなるでしょう。収入への不安や焦りから、勢いで就職先を決めてしまい、失敗してしまうケースもあります。
このような状況に陥らないためにも、在職中からコツコツと転職活動をしていきましょう。ただし、周囲に気づかれない配慮も必要です。気づかれることで引き止めにあったり、職場の雰囲気が悪くなったりしてしまう場合も考えられます。職場のパソコンで転職サイトをチェックするなどといった行動は控えましょう。
退職までの流れを整理する
退職までにはさまざまな調整や手続きが必要になります。有給消化や退職の際に必要な手続きは意外と時間がかかるものです。予定を上手に立てられないと新しい職場にも迷惑がかかってしまいます。気持ちよく再出発できるように以下の2点は、チェックしておきましょう。
・スケジュール
・手続き関係
それぞれをひとつずつ説明していますので、ご確認ください。
スケジュール
退職についても記載されている「就業規則」は、会社によってルールが異なりますが、一般的なマナーとして退職まで2ヶ月ほどの余裕があるとよいでしょう。後任の人への引き継ぎ、取引先への挨拶まわり、有給消化などといった手続きを踏まえて、おおむね退職日の2ヶ月前から行動に移しておくるとスケジュール管理もギリギリになりにくいです。
また、最終出社日を把握し、転職先の入社日や入社手続きに支障のないようにスケジュールを調整していきましょう。
手続き
「退職するまで」と「退職後」に行う手続きの流れを把握しておきましょう。事前に把握しておくことで、スケジュールも調整しやすくなります。主な手続きの流れは以下のとおりです。
【退職までにすること】
1.上司に伝え、了承後に「退職届」を提出
2.健康保険証の提出
3.貸与品の返却
退職届は上司に意思を伝えたあと、会社規定の用紙に記入するケースが一般的です。そして、扶養家族がいるなら家族全員分の保険証を提出する必要があるため、家庭内で余裕をもって回収しておくようにしましょう。
また、退職時に健康保険証を返却すると、会社から「社会保険資格喪失証明書」が渡されます。
社会保険資格喪失証明書を転職先に提出することで、新しい健康保険証が発行されます。発行まで1週間ほどかかるため、早めに提出するようにしましょう。また、転職先が決まっていない状態では、自分で役所まで手続きに行く必要があります。
この場合、加入手続き期限が「退職の翌日から14日以内」となっているため、注意してください。
急に通院する場合も考えられるため、会社にはいつ頃に発行してもらえるか確認しておきましょう。
【退職後に会社側から受け取るもの】
1.離職票(転職先が決まっていない場合)
2.源泉徴収票(新しい転職先へ提出)
3.退職証明書
4.雇用保険被保険者証
5.年金手帳
6.厚生年金基金証書
以上の書類などは、受け取り漏れがないようにチェックしておきましょう。離職票は転職先が決まっていない場合、失業給付を受け取るために必要です。また、源泉徴収票は確定申告をするときに必要になります。すぐに会社勤めしない状況のときは、自分で確定申告をします(年内に転職が決まらなかった・個人事業主や専業主婦になるなどのケース)。
転職先が確定・未定といったケースによって、手続き内容が変わってくるため注意しましょう。
「仕事を辞める理由」と伝え方まとめ
今回は、納得されやすい「仕事を辞める理由と伝え方」と「必要な事前準備」を解説してきました。よい転職先が見つかることで、辞める理由もポジティブなものになり、意志を伝えやすくなります。
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