入社して働き始めたものの、業務内容や待遇などに想定と異なる部分があり、試用期間中に退職を検討するケースもあることでしょう。試用期間中という立場での退職には、申し出に納得してもらえるのか、今後のキャリアに影響はないのかといった不安が生じるものです。
そこで本記事では、試用期間中の退職の可否や退職にあたって納得されやすい理由を例文付きで紹介します。


目次
そもそも試用期間とは
試用期間とは、企業が入社後の社員のスキルや適性、勤務態度などを総合的に判断し、本採用するかどうかを決定するためのお試し期間のことです。1~6ヶカ月程度に設定されることが多く、長くても1年までという考え方が一般的です。試用期間の有無や長さは企業の就業規則や労働契約書などに明記されていますので、目を通しておきましょう。
お試し期間ではあっても、契約内容は通常の雇用契約と同じです。企業によっては試用期間中の給与を低めに設定している場合もありますが、社会保険にも加入できますし、残業代も支払われます。試用期間というと不安定な立場に置かれる期間というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、正当な理由なく企業側から一方的に解雇されることは基本的にありません。
正当な理由として認められるのは、試用期間中に重大な経歴詐称が発覚する、無断欠勤が繰り返されるといった、業務への不適格性が明らかなケースです。
試用期間中の退職は可能
結論からいうと、試用期間中の退職は可能です。通常の雇用契約と同様、前もって申し出ることで契約を解除できます。ただし、労働契約が成立している以上、原則として「イヤだから明日から来ません」ということは通りません。
法律上は2週間前の申し出が必要
労働基準法では、通常の雇用契約と同じく2週間前に申し出る必要があります。ただし、企業の就業規則では、引き継ぎなどに考慮してもう少し余裕を持った期日を指定しているケースが多く、規定があるのならばそれに従うのが筋です。
1ヶ月前の申し出を求めている企業が多い
社員からの自己都合退職については、就業規則として1ヶ月前の申し出を求めている企業が多いため、確認が必要です。お試し期間とはいえ一定の仕事を任されている以上、退職によって業務への支障が生じることが想定されます。
引き継ぎや組織内の担当調整には短くても1ヶ月程度は要するものであり、会社にとって必要な期間だといえます。
基本的に即日退職はできない
前述の理由の通り、試用期間中であっても基本的に、すぐ辞めたいからという即日での退職はできません。組織の運営に支障が出ないよう、就業規則で定められた期間に応じて前もって申し出るのが組織の一員としてのマナーです。
ただし、精神的・身体的な不調や会社からの不当な扱いが原因である場合に限り、例外的に即日退職が認められるケースもあります。


試用期間中に退職する場合の「納得されやすい理由」と例文
会社としては長く勤めてもらう前提で採用しており、また採用活動にもそれなりの費用をかけているはずです。突然の、しかも試用期間中の退職は想定外の事態として、会社側から理由を尋ねられる可能性も高いでしょう。
試用期間中に意志を伝える場合でも、比較的納得されやすい退職理由がいくつかあります。ここでは代表的な4つのパターンを例文つきで紹介しますので、上司に伝える際の参考にしてください。
業務内容が合わない
まずは、入社前に想定していた業務内容と違ったケースです。スキルを活かせる専門性の高い仕事だと思って入社したものの、実際にはその他の事務的な業務を任される割合が大きかったということも起こり得ます。
例えば、営業ができると聞いていたのに、資料作成など裏方の業務がメインとなっていて、キャリアアップが見込めないケースなども当てはまるでしょう。
このケースでは、何がどう違っていて、なぜ仕事を続けるのが難しいのかを具体的に伝えたうえで、前向きな理由を添えるのがポイントです。ここでは、経理部の社員が上司に伝える際の例文を紹介します。
「貴重なお時間をいただきありがとうございます。試用期間という立場でこのようなことをお伝えするのは大変心苦しいのですが、自分なりに熟考した結果、実は退職を考えています。主な理由としては、入社前に抱いていた業務のイメージとの乖離が大きいためです。入社当初は、経理の専門的な仕事を任せていただけると聞いていたのですが、実際には簡単な伝票の処理など事務的な業務が多く、やりがいを感じられずにいます。今後のキャリアを考えるうえでも、経理のスペシャリストとして経験を積んでいきたいと考えておりますので、恐れ入りますが退職の方向で進めさせていただけないでしょうか。」
社風・雰囲気が合わない
企業の社風や雰囲気が合わないケースも考えられます。業務内容や待遇についてはすり合わせができても、社風については入社してみないとわからないこともあるものです。しかも、社風や社内の人間関係は、仕事の進めやすさにも大きく影響します。
例えば、伝統を重んじる落ち着いた職場には、積極的に提案をしていきたいタイプの人は浮いてしまう可能性があります。逆に、活気のある職場に黙々と作業するタイプがうまく馴染めない場合もあるでしょう。
また、営業担当として成果の重要性は理解しているものの、担当同士の競争が激しく、常にプレッシャーのかかる状況に耐えられないといった状況も当てはまります。このケースでは、そこで働いている人たちの気持ちにも配慮して、例えば次のような言い方で角を立てないようにするのが望ましいでしょう。
「退職したいと考えているのは、部署の雰囲気にうまく馴染めないと感じているためです。伝統やチームワークを重んじるすばらしい職場であり、皆さんに助けられたことも多くあるのですが、自分は新しい考え方や提案を積極的に発信していきたいタイプであり、その強みをうまく活かせていないと感じています。自分なりに努力をしてきたのですが、どうしても力を発揮することが難しいため、退職させていただきたいと考えております。」
健康面の問題
健康面で問題が生じたケースでは、無理をせずに早めに伝えましょう。肉体労働の負担が想定していた以上に大きく、体の具合が悪くなってしまった、チームメンバーとそりが合わず、ストレスから出社するのがつらいと感じるようになってしまったなどがその一例です。
健康面の問題がある場合は、医師の診断結果などがあると理解を得やすくなります。身体的な負担を理由に上司に退職を申し出る際の例文を紹介します。
「退職させていただきたいのは、身体的な負担が想像以上に大きく、勤務を継続するのが困難なためです。軽い肉体労働であれば問題ないと考えていたのですが、実際には10kg以上の荷物を運搬するケースも多く、2ヶカ月ほど前から強い腰痛を覚えるようになりました。今は痛み止めを飲んで仕事を行っています。医師からも、症状を悪化させないためには過度な肉体労働は避けるようにとの注意を受けており、この先長く働けそうにありません。退職するのであれば早めにお伝えすべきと思い、試用期間中ではありますが本日ご相談をさせていただいた次第です。」
家族の都合
家族の都合で退職が必要になるという理由も比較的理解を得やすいでしょう。わかりやすいのは、親の体調が悪化し、近くに住んで介護する必要が生じた、実家の都合で急遽家業を継ぐことになった、配偶者に海外転勤の辞令が下りた、などのケースです。
親の体調を理由に退職の意向を伝える際には、以下のような言い方があります。
「昨年父が亡くなり、母が1人で暮らしているのですが、この数ヶカ月で急激に体調が悪化してしまい、介護が必要な状況となりました。有料老人ホームへの入居も検討しましたが、本人が拒否しております。一人っ子であり家族のなかでサポートできるのは私しかおりませんので、近所に引っ越して介護をしながらできる仕事を探したいと思っています。試用期間中の立場で退職をお伝えするのは大変恐縮なのですが、先ほどの事情から○月○日までの退職を希望しておりますため、できるだけご迷惑をおかけしないように早めにお伝えさせていただきました。」


試用期間中に退職する場合の伝え方
試用期間中に退職する場合には、理由だけでなく伝え方にも注意すべきです。伝え方が適切でないと、職場に迷惑をかけたり上司の反感を買ってしまったりする恐れがあります。
具体的には次の2つのポイントに配慮し、双方向な対話ができるように気をつけましょう。
なるべく早く報告する
退職を決意したら、できるだけ早く報告することが大切です。なぜならば、社員が一人抜けることで業務上の支障が出るためです。試用期間中の身とはいえ、会社としては本採用を見据えて業務を任せているはずです。一人抜けるとなると、担当の割り振りを見直したり、後任を確保したりといった調整が生じます。業務の引き継ぎにも一定の時間がかかるでしょう。
部署内で人員の調整ができない場合には、他部門から人を引っ張ってきたり、新たに採用したりしなければなりません。早めに退職したい場合は、事前に就業規則を調べたうえで退職可能な日程を検討し、希望日として伝えましょう。職場としてそれで問題がないかも併せて確認するのがマナーです。
落ち着いた場所で上司に伝える
退職の意思は必ず直属の上司に直接伝えましょう。退職しようとしていることが、周囲から上司の耳に入るのは印象が良くありません。上司に伝えるまでは、先輩や同僚にも事実は伏せておくのが賢明です。時間のアポイントはメールでもかまいませんが、退職の意向は口頭で伝えましょう。
試用期間中の退職はおそらく上司にとっては想定外の事態であるはずです。口頭で理由を丁寧に伝えるほうがよいでしょう。自分の言葉で直接伝えることで、説得力や真剣味も持たせられます。
また、会議室や打ち合わせスペースなど周囲が気にならない落ち着いた場所で話すのが基本です。お互いが話しやすいほか、病気や親の事情など、プライベートなことを周囲に知られずに済むメリットもあります。
可能であればあらかじめ適切な部屋を予約しておきましょう。相談ではなく報告というイメージで、すでに意志が固いことを強調するのもポイントです。


試用期間中に退職する場合の注意点
最後に、試用期間中に退職する場合の注意点を2つ紹介します。退職による影響をしっかりと理解したうえで、職場への負担をできるだけ最小限にするための行動が求められます。また、履歴書に記載するべきかどうかも知っておきましょう。
業務の引き継ぎは必要になる
業務を任されている以上、自分しか把握していない領域や状況は必ずあります。退職にあたっては後任者が困らないようにしなくてはなりません。担当業務の進捗状況や関係先などについて引き継ぎ書にまとめ、自分がいなくても問題なく業務が回る状態にして退職することが大切です。
紙の資料はファイルに順番にまとめる、電子データもフォルダごとに名前を付けるなどして、次の人がわかるように整理しておきましょう。職場の生産性を上げるためには、この機会に業務の洗い出しをして、無駄なプロセスや作業を見直すことも大事です。
後任者が決まったら引き継ぎの時間を取ってこれまでの経緯や効率的な進め方、資料の保管場所、困ったときの問い合わせ先などを説明しましょう。引き継ぎ後のフォロー期間も設けられるとより親切です。
退職時の立ち振る舞いはその人の印象として先々まで長く残る可能性が高いものです。「立つ鳥跡を濁さず」の考え方を大事にしましょう。
経歴として記載する必要がある
試用期間中とはいえ雇用契約を結んで労働した以上退職した事実は職歴になり、今後作成する履歴書には経歴として記載する必要があります。短期間で退職しているため、「根気がない」「またすぐ辞めるのでは」とマイナス評価につながる可能性は否定できません。
転職活動をするうえで、短い期間での退職はできるだけ避けたほうが無難、というのが一般的な考え方です。しかし、このまま続けても自分の成長にはつながらないなど長期的に勤めることが難しいことがハッキリしているのならば、早めに行動して時間をムダにしないことも大切です。
年齢次第では、早く結論を出すことで、第二新卒として転職に臨める可能性も高まります。第二新卒とは、新卒での就職後の数年以内に退職した人を指し、試用期間中に退職した人はこの枠での求人応募が可能です。
第二新卒は、社会人経験のない新卒者と比べて一定のビジネススキルを身に付けている、キャリア転職組よりも若い分だけ柔軟性が高い、として転職市場でニーズの高い層です。第二新卒であれば、試用期間中に習得したスキルにも一定の評価を受けられるでしょう。
試用期間中に退職する方法
試用期間中の退職は、就業規則や法律に定められた期間に応じて退職の意思が固まった時点で早めに伝えましょう。ただし、内定を得てからでないと空白期間が生じてしまうため、先に転職活動をするのがおすすめです。
若手向けのオファー型就活サイト「PaceBox」は、新卒オファー型就活サイトとして5年連続学生利用率No.1の「OfferBox」と運営元が同じです。希望に合う企業からのオファーを待つだけなので、自分のペースで理想の転職先を探せます。
また、PaceBoxの魅力はなんでも相談できるキャリアアドバイザーです。求人紹介がなく、転職相談に100%のってもらえます。試用期間中の転職活動という不安な状況も豊富な知識でサポートしてくれますよ。
明確に違う!PaceBoxのキャリアアドバイザー面談が選ばれている理由
