履歴書や職務経歴書の自己PR欄を埋める際、忍耐力について触れながらアピールしようと考える人もいるでしょう。同時に「我慢と意味が似ているためネガティブにとらえられるのではないか」と心配になる人もいるのではないでしょうか。
今回は「忍耐力」について説明し、応募書類に自己PRとして記載する際のメリット・デメリット、アピールにつなげるためのポイントや言い換え表現を紹介します。


目次
忍耐力とは?ただ我慢するだけの能力ではない
忍耐力とは、文字どおり「忍んで耐える力」を指す言葉です。「忍ぶ」と「耐える」は、どちらも「苦しいことや嫌なことを我慢する」といった意味を持っています。ここで注意したいのは「辛い仕事をひたすら我慢できる能力」のみを指す言葉ではない点です。
単に受動的であり続けるだけではなく、例えば目標達成のために長期間にわたり努力し続ける能力や、逆境でも諦めずに乗り越える能力も含まれます。仕事がいつでも思い通りに進むとは限りません。
忍耐力は社会人として必要な能力の一つです。これらの意味合いから、転職活動において自身の忍耐力のアピールは有効であるといえるでしょう。
忍耐力がある人の特徴
企業の採用担当者は「忍耐力のある人」について、どのようなイメージを持っているのでしょうか。採用する側の立場を想像しながらの転職準備も重要です。
自己PRに「忍耐力」と記載する前に、自分が本当に忍耐力のある人物像に当てはまるか確認しましょう。ここでは、具体的に忍耐力を持っている人の特徴を解説します。
辛いことがあっても立ち向かえる
忍耐力のある人は負けん気の強さがあり、目の前のトラブルやリスクから安易に逃げ出しません。あるいは、強い責任感を持っているため、困難や苦労、恐怖を正面から受け止められます。これまでの経験から「必ず乗り越えられる」と、強い自信を持っている人も多いでしょう。
困難を乗り越えることによって得られる成長や達成感の大きさも理解しています。能動的に苦労へと向かう人も珍しくありません。楽な道を選ぶことをよしとせず自分自身をコントロールし、逃げたいという一時的な感情や甘えを理性的に抑えられる能力を持っている点も大きな特徴です。
任された仕事を最後までやり抜く
忍耐力のある人は、そもそも自分が仕事をやり遂げる意味を理解しています。上司や先輩から指示されたからやっているわけではありません。たとえば、会社の業績アップや自己のスキルアップに努力や継続力が重要であると認識しています。また、任された仕事を中途半端に投げ出せば周囲に迷惑がかかることも理解しているはずです。自分の置かれている状況も客観的に見られるでしょう。
そのため、与えられた環境や役割の中で自分がどう動き振る舞うべきかを冷静に判断する能力に長けています。こうした深い理解や多角的な視点が強いモチベーションの維持にも役立ち、結果的に忍耐力を持って最後まで仕事をやり遂げられるわけです。


忍耐力を自己PRに書くメリット
自己PR欄への「忍耐力」の記載が、採用担当者にプラスの印象を与える可能性は十分に考えられます。では、担当者は応募者の忍耐力の記載をどのように評価し採用へと前向きになるのでしょうか。
ここでは、自己PR欄に忍耐力と記載するメリットを紹介します。
会社に長く貢献してくれる人材だとアピールできる
採用のためにお金や時間などのコストをかけていることから、すぐに辞めてしまいそうな人をできる限り採用したくないのが多くの企業の本音です。
一方で、働く側は業界や職種を問わず仕事をするうえでの不満やストレスをゼロにはできないでしょう。特に、転職直後は職場環境や業務に慣れておらず、仕事の面白さや達成感を得られない人も少なくありません。
だからといって「自分には、この仕事や職場が向いていないのではないか」と、早々に再転職を検討されては企業も困ってしまいます。
企業や職場の上司・先輩が、新たに入社してきた人に対して優しく接し働きやすくするために気を遣うケースもあります。しかし、それよりも最初から忍耐力のある人を雇った方がよいといった思惑を多くの企業が抱いているはずです。多少の困難や苦労があっても乗り越えられる可能性が高いからです。
応募書類の自己PR欄に「忍耐力がある」と記載し、さらに面接でも長く仕事を続けられる人材だとアピールできれば、採用担当者からの印象はよくなるでしょう。過去に忍耐力がなく辞めてしまった人のいる企業の採用担当者であれば、なおさらよいイメージを持ってもらいやすくなります。
安心して仕事を任せられる人材だとアピールできる
職種や役職によっては目標やノルマ、納期などを設けられます。必ず達成しなければならないとき、忍耐力の有無は重要になるでしょう。「自分には無理だ」と途中で投げ出してしまえば、周囲に迷惑がかかります。転職直後に不慣れや能力不足から目標を達成できないのは致し方ないと受け入れるとしても、途中で投げ出すような人の採用を積極的に検討する企業はまずありません。
難しい仕事にも我慢強く取り組み、必要であれば自分から上司や同僚にアドバイスやサポートを求める前向きな姿勢は評価されます。最初は能力が足りなくても、状況に応じて努力や工夫をし最後までやり通せる人材の獲得を多くの企業が望むでしょう。
自己PR欄で忍耐力について触れ、企業に安心して仕事を任せられる人物であるとみなされれば採用される可能性も高まるはずです。


忍耐力を自己PRに書くデメリット
自己PRの書き方にもよりますが、忍耐力があることをネガティブにとらえる採用担当者もいます。「苦痛に耐える我慢強さ」のみのアピールでは受動的な印象を与え、それが仕事にあまりよくない影響を及ぼすといった誤解を招きかねないため注意が必要です。
ここでは、忍耐力を自己PR欄に書くデメリットについて解説します。
主体性があるのか疑問を持たれる可能性がある
困難や苦労に耐えられるのはとても重要な資質です。一方で、多くの企業の採用担当者は現状を変えていこうとする主体性も求めます。ただ我慢が得意なだけで、自ら課題を見つけようとしない人を採用対象とはしません。課題や問題が把握できているにもかかわらず、解決するための行動をとらない人も同様です。
このようなことから「忍耐力がある」だけでは消極的な印象を与えてしまう可能性があります。企業が好むのは、受け身に終始せず自ら率先して課題をみつけ、その解決のために動き出せる人材です。忍耐力をアピールポイントとする際には、同時に物事に前向きに取り組む姿勢があることを伝えましょう。
ほかに特筆すべき長所がないように思われる
多くの採用担当者がポジティブにとらえる資質・能力は、主体性や行動力、課題解決能力です。ほかにも、コミュニケーション能力や協調性を重視する企業も多いでしょう。転職希望者は通常、これらをアピールポイントとして応募書類に記載します。にもかかわらず、なぜ忍耐力をわざわざ自己PR欄に記載したのか理解できない採用担当者もいるはずです。
担当者によっては「ほかに特筆すべき長所がないからではないか」と結論づける可能性もあります。応募者にとって、それほど損な解釈のされ方はありません。
忍耐力について記載するのであれば、採用担当者がうなるような、もしくは納得するような強烈なエピソードが必要です。単に「忍耐力がある」とだけ記載しても自己PRとしては弱く、ほかの応募者にも埋もれてしまいます。
応募書類に書くだけなら誰にでもできます。忍耐力をわざわざ選んで記載した理由が伝わるよう説得力のある書き方をしなければ、むしろネガティブな印象を与える可能性があると認識しておきましょう。


忍耐力を自己PRに書くときのポイント
採用担当者にネガティブなイメージを与えず「忍耐力があり、有能である」といった印象を持ってもらうためには、自己PRの書き方が重要です。
自身の忍耐力が応募先企業にとって役立つことを、応募書類でアピールしなければいけません。ここでは、自己PRとして忍耐力に触れる際のポイントを解説します。
成果や実績につながったエピソードを盛り込む
説明したように、忍耐力という言葉を受動的であり主体性がないとネガティブにとらえる人も少なくありません。企業の採用担当者がそのような思考を持っている場合、単に「忍耐力がある」とだけ書いてもアピールできないでしょう。主体性や行動力をイメージさせるエピソードを盛り込むと、忍耐力をポジティブにとらえてもらいやすくなります。
例えば「ある課題に5年間にわたって取り組み続け、最終的には解決できました」といった内容です。特定の課題解決のために5年もの歳月を費やすことはなかなかできません。目的意識を持ちつつ、課題解決のためなら努力を惜しまず継続できる忍耐力も備えているとアピールできます。
「困難な状況に耐えながらチャンスを待ち、絶好のタイミングで成果を出せました」といった内容もよいでしょう。重要なのは単に耐え忍んだわけではなく、成果を出すために不可欠な我慢であったとアピールする点です。
成果を出すために忍耐力を発揮しつつ成長もしながら、いざというときにそれを発揮できる能力の持ち主であると伝えられるでしょう。実際に記載する際には、困難な状況や成果についてさらに具体的なエピソードの記載が求められます。
「忍耐力」という言葉を使わずに伝える
「忍耐力」の言葉そのものにネガティブなイメージを抱く採用担当者もいます。そのようなケースでは「忍耐力」と記載しただけでも印象を悪くしかねません。伝えたい内容はそのままで、別の表現で記載するなど工夫するとよいでしょう。
例えば「忍耐力を発揮して最後まで取り組めました」を「困難を乗り越えながら最後まで取り組めました」と言い換えると、実績や成果を問題なく伝えられます。その際、企業が「求める人物像」を汲み取ることも重要です。募集要項や企業のホームページをチェックし、求める人物像に合わせて自己PRを記載しましょう。
忍耐力と意味・用法の似ている言葉や表現を上手に使い分け応募書類を埋めると、採用担当者によい印象を与えたまま面接に臨めるはずです。


自己PRで使える! 忍耐力よりポジティブな言葉とは
忍耐力に近い意味を持ち、忍耐力よりもポジティブなイメージを抱いてもらいやすい言葉には、どのようなものがあるのでしょうか。
自己PRの内容にもよりますが、言い換えの候補となる言葉は複数あります。ここでは、自己PRで忍耐力の代わりに活用できる言葉をいくつか紹介します。
継続力
忍耐力の言葉でイメージされるのは「困難なことに対して努力や工夫を続けられる」「長期にわたってコツコツと物事に取り組める」といった能力です。他にも「どのような仕事でも最後までやり遂げられる」能力をイメージする人も多いでしょう。
これらの意味を含んだ言葉に「継続力」があります。多くの企業は、継続力のある人を求めるはずです。上記の能力を備えているだけではなく、長く働いてくれることを期待する採用担当者もいるためです。
実際に自己PRとして記載する際は、趣味や習いごと、学生時代のアルバイトや自分のライフワークなど実際に長く続けたことに触れましょう。具体的なエピソードの記載は、継続力を備えていることに信ぴょう性を持たせます。より強いアピールへとつながるはずです。
柔軟性
「柔軟性」という言葉も候補の一つです。この言葉は「状況に合わせて臨機応変に対応できる」能力のアピールに活用できます。忍耐力という言葉のみでは受動的なイメージを抱かれかねません。
しかし、柔軟性という言葉を使うことで能動的なイメージも生まれます。能力を備えていることの説得力を増すには、やはり具体的なエピソードの記載が重要です。
「困難に直面したが、視点や取り組み方を変えることで克服できた」などと記載すると、忍耐力と柔軟性を両立している人材であると伝えられるでしょう。
協調性
「協調性」も、自己PRの記載に適した言葉の一つです。組織の一員として長く仕事を続けるためには、上司や同僚とのよい関係性の構築が欠かせません。成果を出すためにも、人間関係やチームワークは不可欠です。「協調性」という言葉を用いることで意思疎通の重要性への理解と、チームで目標達成までやり抜く意志の強さを持っているとアピールできます。
「自分と考えの合わない人とも根気よく話し合って仕事を進められる」と、チーム団結のために率先して動ける人材でもあると伝えられるでしょう。単に我慢をして和を乱さないだけの印象を与える忍耐力という言葉のみよりも、採用担当者にはポジティブに映ります。組織に重要なコミュニケーション能力の高さもアピール可能です。
忍耐力があることを自己PRで上手に伝えよう
忍耐力は仕事で成果を出すための重要な能力の一つです。しかし、自己PRとして応募書類に記載する際には、メリットとデメリットのどちらも無視はできません。忍耐力が成果へとつながった具体的なエピソードも添えるなど、ポジティブな印象を与える工夫が重要です。
単に我慢強いだけの人と認識されないよう、忍耐力以外の言葉に言い換えるなどしながら採用担当者へとアピールしましょう。
