IT系のさまざまな職種のなかでも、社内SEは人気があります。適切なシステムを導入・改修して企業が抱える課題を解決に導く、やりがいのある仕事です。
社内SEに興味があり、具体的な仕事内容や待遇について知りたい人も多いのではないでしょうか。そこで、ここでは社内SEが担当する業務や必要なスキル、あると良い資格、適性などを解説します。年収や転職者データなども紹介するので、参考にしてください。


目次
社内SEとは
社内SEとは、文字どおり社内システムにかかわるエンジニアを指します。社内システムにかかわる業務は多岐にわたります。会社によって担当範囲が異なることも珍しくありません。
ここでは、社内SEが担当する主な業務内容や一般的なSEとの違いについて解説します。
社内SEの業務内容
社内SEが担当するのは、主に自社の課題やニーズにマッチした社内システムを開発・運用したり、社内ネットワークを管理したりすることです。
社員が使用するパソコンで発生したトラブルに対応することもあります。ここでは、社内SEの仕事について詳しくみていきましょう。
予算の作成や管理
社内システムの導入や改修にかかる予算を立案し、管理するのも、社内SEの大切な仕事の1つです。自社でシステムを開発する場合は、年間や期末ごとの予算を作成します。人的リソースが不足しているなどの理由から、外部に開発を委託したり製品を導入したりするケースも少なくありません。
その場合は、外部の開発会社やベンダーから提示された見積もりをもとに予算を立てます。導入にかかる費用だけでなく、ランニングコストも考慮することが必要です。作成した予算案と実際にかかる費用を比べ、超過が見込まれる場合は適切な措置を講じるなど、システムに関する予算管理も行います。
システムの企画・開発・導入
高度なIT化が進み、会社を取り巻く環境は大きく変容しています。うまく対応するためには、適切な社内システムを構築することが不可欠です。
社内SEは、自社の経営戦略やIT戦略を踏まえ、業務の効率化や業績の向上、コストの削減などを実現するシステムを検討し決裁者に稟議を上げます。
システムそのものは自社で開発する場合も外注する場合もあり、会社によってさまざまです。部門の規模が大きい会社であれば、社内SE自らが開発することもあるでしょう。その場合は、システムの設計、開発、テストと各工程を手掛けます。
規模の小さなところでは、システム開発を外注したりパッケージシステムを導入したりするケースも珍しくありません。その場合は、ベンダーを選定し、導入の進捗を確認するなど適切に管理する必要があります。


システムの運用・保守
導入した社内システムは、安定して稼働しなければ意味がありません。問題なく使えるように継続して運用・保守を行うことも、社内SEの大切な仕事です。サーバーやネットワークは常に監視し、トラブル発生時は速やかに対処します。
また、導入した社内システムが使いづらかったり業務の実態に合っていなかったりすることもあるものです。そのような場合は、社員の要望も踏まえ、システムを改善したり修正したりすることもあります。
システムのセキュリティ対策
社内SEが担う仕事には、自社の情報資産を守るために適切なセキュリティ対策を講じることも含まれます。企業のシステムには、業務上の機密情報や社員・顧客の個人情報、取引先企業の重要な情報などが保存されているものです。顧客や取引先企業の情報が流出してしまうと、企業イメージが大きく損なわれます。流出内容によっては、莫大な損害賠償を請求されることもあるでしょう。
そのため、社内SEは不正アクセスや情報漏洩などのさまざまなリスクを想定し、万全のセキュリティ対策を講じなければなりません。たとえば、セキュリティソフトやファイアウォールの導入・更新、パスワードやユーザー権限の設定・管理などの対策です。
社内SEだけがセキュリティ対策を意識していても、リスクは残ります。全社員に対して情報セキュリティに関する教育を実施し、意識を高めてもらうことも大切です。
社内のITサポート
社内SEは、会社におけるヘルプデスクとしての役割も担います。導入したシステムやアプリケーションソフトによっては、全社員がすぐに使い方を理解できるとは限りません。また、ITスキルの低い社員の不適切な使用によってトラブルが発生することもあるでしょう。社内SEは、社員からの問い合わせやトラブルの発生に対応し、速やかに問題解決を図ります。
社内SEが対応するのは、導入したシステムやソフトウェアに関する問い合わせだけではありません。メールの設定やパソコンのパスワードが分からなくなったなど、ITに関するあらゆる質問やトラブルに応じます。こうしたことが、社内SEが「なんでも屋」と呼ばれる所以です。
一般的なSEとの違い
社内SEと顧客の要望に従ってシステムを開発する一般的なSEとでは、業務内容や求められるスキルが異なります。違いを整理しておきましょう。
一般的なSEが所属するのは、SIerやSESです。SIerはシステムインテグレーターの略称で、エスアイヤーと読みます。クライアントの要望に応じ、システムの設計・開発、運用、保守などを請け負う事業者のことです。SEは、基本的に自社で仕事をします。
SESはSystem Engineering Serviceの略称で、クライアントのもとにエンジニアを手配し派遣するITサービスのことです。クライアントが望むシステムを開発するために必要なエンジニアを、時間単位で提供します。派遣されたエンジニアは、客先常駐が基本です。通常、派遣先企業で仕事をします。
社内SEは、社内システムの企画や導入、運用・保守などを行うことが仕事です。システムに関する予算管理やヘルプデスク業務を担当することもある一方、システム開発業務を行う会社もあれば行わない会社もあります。仕事をする場所はもちろん自社内です。
一般的なSEと社内SEとでは、業務の範囲はもちろん、携わる期間にも大きな違いがあります。社内SEであれば、開発あるいは導入したシステムには長期にわたって一貫してかかわることが可能です。
一般的なSEは、開発が無事に終れば次のクライアントの案件へと移ります。数カ月程度で開発したシステムから離れることも珍しくありません。


社内SEの業務に必要なスキル
社内SEと一般的なSEとでは、業務の内容に違いがあります。そのため、求められるスキルは同じではありません。社内SEは開発や運用だけでなく、社内外のさまざまな人とかかわりながら業務を行います。
プログラミングスキルが必要なことはいうまでもありませんが、社内外の人と円滑にコミュニケーションを図りながらプロジェクトを遂行する能力も必須です。ここでは、社内SEに必要なスキルを具体的に解説します。
業界知識と業務知識
適切な社内システムを導入するには、企業が抱える課題を適切に把握し、どのような方向で解決を図るのか判断できる力が必要です。そのため、自社の基幹業務についての知識や深い理解が欠かせません。
また、ビジネスの仕組みや構造は業界ごとに大きく変わるため、所属する業界の知識も必要です。幅広い業界知識と深い業務知識を踏まえたうえで、的確に現状の調査や分析を行う能力も欠かせません。さらに、調査や分析によって得られた結果を社内システムにうまく落とし込んで企画し、開発につなげる能力も必要です。
マネジメント能力
システム開発や導入は、プロジェクトとして実施されます。プロジェクトがうまく進行するように、社内SEは進捗を管理するプロジェクトマネージャーとしてのマネジメントスキルも欠かせません。
自社で開発する場合はもちろん、外注する場合もスケジュールどおりに進んでいるか確認し、問題があれば関係各所と調整を行う必要があります。適切な人員配置も社内SEの担当業務です。社内SEのなかでもリーダー職以上になれば、システムに関する予算管理のスキルも必要になります。
問い合わせに対応するスキル
社内SEは、ヘルプデスクとしての役割も担います。自社の社員からIT関連の質問や問い合わせ、ヘルプの要請があれば、速やかに対応しなければなりません。社内システムだけでなく、ソフトウェアや情報機器、ネットワークなどITに関係する幅広いスキルが必要です。
ITに関する知識があまりない社員は、トラブルを正確に伝えられないことも珍しくありません。粘り強く必要な情報を聞き出しトラブルの状況をきちんと把握するためには、高いコミュニケーションスキルが不可欠です。トラブルのなかには緊急性の高いものもあるので、即応できる能力も必要になります。
社員から問い合わせが合った内容やフィードバックをもとに社内システムを的確に改善できるスキルも求められます。頼りになる人材として、社内で重宝される存在です。


社内SEの業務に役立つ資格
社内SEとして活躍するのに必要な公的資格はありません。とはいえ、社内SEとしてのスキルアップに役立つ資格はあります。
取得しておけば、社内SEとして転職する際にもアピールでき、有利になるでしょう。この段落では、社内SEの業務に役立つ資格を紹介します。
経営戦略に関する資格
経営戦略に関する知識やスキルを底上げするなら、「ITストラテジスト試験」「ITコーディネータ試験」がおすすめです。
ITストラテジスト試験は情報処理推進機構(IPA)が実施する情報処理技術者試験のひとつで、難易度は最高レベルとされています。職種名としてITストラテジストが使われることはほとんどないので、聞いたことがない人も多いでしょう。
試験を実施するIPAによると、ITストラテジストとは「高度な知識を活用して経営戦略を立て、実現する能力がある人材」という意味です。取得すると、ITに関する高度な専門知識やプロジェクトマネジメントスキル、優れた経営視点を有することの証明になります。
ITコーディネータ試験は、特定非営利活動法人ITコーディネータ協会が実施する試験です。ケース研修を受講し、試験に合格することでITコーディネータ資格が取得できます。
ITコーディネータとは経営のIT化を支援するプロフェッショナルのことで、2001年に当時の通商産業省(現・経済産業省)によって資格制度が設定されました。取得することで、ITにも経営にも深い知識があることの証明になります。
IT技術に関する資格
IT技術に関する資格であれば、「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」を押さえておくと良いでしょう。どちらも、情報処理推進機構(IPA)が実施する情報処理技術者試験に含まれます。
基本情報技術者試験は、IT関連資格のなかではもっともベーシックといえる試験です。取得すると、エンジニアとしての基礎があることの証明になります。
「応用情報技術者試験」は、基本情報技術者試験の次のステップです。エンジニアとしての基礎的な知識は十分に身につき、応用力があることの証明になります。
システム開発関連の資格としては、同じ情報処理技術者試験のひとつである「システムアーキテクト試験」の取得がおすすめです。ネットワーク関連では情報処理技術者試験の「ネットワークスペシャリスト試験」があります。
関連記事:IT業界って具体的にどのような仕事?業界別に徹底解説
マネジメントに関する資格
マネジメント能力の証明になる資格としておすすめなのが、情報処理推進機構(IPA)が実施する情報処理技術者試験のひとつである「プロジェクトマネージャ試験」です。
そのほか、米国PMI協会が認定する「PMP」、日本PMO協会が実施する「PJM-A」「PMOスペシャリスト認定資格」などもあります。
プロジェクトマネージャ試験は、プロジェクトマネジメント業務全般にかかわる知識やスキルが問われるものです。PMPは国際資格で、公的資格ではないものの、プロジェクトマネジメントに関する資格として広く知られています。
PJM-Aは基本的なプロジェクトマネジメントに関する知識やスキルを問う内容です。プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格とも呼ばれます。PMOスペシャリスト認定資格は、PJM-Aより実践的な内容の試験です。


社内SEはどんな人に適性がある?
社内SEは、一般的なSEとは業務内容が異なります。そのため、求められる適性も同じではありません。ここでは、どのような人が社内SEに向いているかについて解説します。
社内SEに向いている人
社内SEは社内外の多くの人とかかわる機会がある仕事です。そのため、コミュニケーション能力に優れ、人あたりが良い人が向いています。
また、社内SEが担当する業務は範囲が広く、同時進行でさまざまな仕事を進めることも珍しくありません。オールラウンドに業務をこなせ、マルチタスクが苦にならないことも大切な要素です。必要となればすぐに行動に移せるフットワークの軽さも求められます。
SIerのSEなどとは異なり、社内SEは職場が変わることはありません。出向や出張もほとんどないので、同じ場所で腰を据えて働きたい人に適しています。
社内SEに向いていない人
社内SEは、SEといえども開発に専念することはありません。システムの企画や導入、予算管理、ヘルプデスクなど広範囲な業務に携わる一方で、自社での開発はしていないこともあります。
そのため、システム開発だけしたい、プログラミング業務をメインにしたいという人には向いていません。また、社内SEはさまざまな立場の人とかかわって、ときには折衝や交渉することもある仕事です。
コミュニケーションを取るのが苦手だったり社内外の調整にストレスを感じたりする人も、向いていないと考えたほうが良いでしょう。


社内SEに転職する際に知っておきたいこと
社内SEは未経験でも採用される可能性があります。社内SEに興味があり、転職を検討しているのであれば、年収や転職志望者にまつわるデータについて知っておくと良いでしょう。
社内SEの年収
300万件以上の転職に関する口コミ情報を掲載する「転職会議」によると、社内SEの年収は全世代平均で485万円となっています。20代後半では412万円ですが、30代になると527万円、40代以上で618万円となっています。
ただし、これは平均値です。なかには、20代後半で1000万円以上の年収を得ている人もいるため、一概には高い・安いということはできません。企業規模による差も大きく、大手ほど高くなる傾向がありますが、それだけ採用難易度も上がります。
社内SEの業務内容と求められるスキル・資格を知っておこう
一般的なSEとは異なり、社内SEは企業のIT部門にてさまざまな業務に従事する職種です。プログラミングスキルやIT関連の知識だけでなく、マネジメントスキルやコミュニケーションスキルも求められます。
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