求人情報にはさまざまな情報が記載されていますが、その一つに「年間休日」があります。転職活動で求人情報をみていると、年間休日の欄に書かれている日数は企業によって異なりますが、実際に何日以上あると労働条件として理想的なのでしょうか。この記事では、年間休日として適法となる日数や適当とされる日数について詳しく解説します。


目次
年間休日とはどのような休みの日数?
年間休日とは、1年間に企業が労働者に与える休日の合計日数です。法律で休日にすることが規定されている「法定休日」と企業ごとに定めている「法定外休日」が含まれます。年間休日にカウントされる法定外休日は企業によって異なるため、年間休日の日数は企業によって変わります。
また、年間休日は社員全員が対象となっている労働義務のない日です。そして、休日は就業規則で必ず記載が必要な事項となっていますので、自社の就業規則を見ることで確認ができます。なお、給与を控除されずに休める年次有給休暇や雇用者の調整や親族の不幸等の場合に休める慶弔休暇、生産調整のために行う臨時の休業などは年間休日にカウントされません。
労働者に与えられる休日の種類
ここでは、企業から労働者に与えられる2種類の休日について詳しく解説します。
法定休日
法定休日は、すべての労働者が適切に雇用されるためのルールを定めた労働基準法という法律の第35条第1項に規定されている休日です。
第35条第1項には、労働者を使用する立場にある使用者は、毎週最低でも1回の休日を労働者に与えなければならないことが明記されています。これは、労働者を雇う使用者であれば、事業規模や業種を問わず必ず守らなければならないルールです。
具体的に何日の休日を与えるかはそれぞれの企業で自由に決められますが、労働基準法で定められたこの日数を下回ることは許されていません。
さらに、労働基準法で本来休みとされている法定休日に労働者が出勤した場合には割増賃金を支払うことも法律で決められているルールです。ちなみに、休日について就業規則に記載することは労働基準法第89条に定められている使用者の義務であり、日曜を法定休日とする、といったように法定休日を特定しているケースもあれば、1週1回を法定休日とするとだけ規定しているケースもあります。
また、労働者が休日に働いた場合に、それぞれの労働者に対して個別に日が異なる法定休日を与えることは可能です。労働基準法に違反していなければ、休日の振替をすることも認められています。
法定外休日
法定外休日とは、労働基準法に規定されている休日以外に企業が独自で定めている休日です。労働基準法では労働時間についての細かな規定もあり、労働時間が1日に8時間、1週間に40時間を上回ると法律違反です。
つまり、1日の労働時間が8時間の企業では、1週間に5日までしか労働者を働かせられないことになります。例えば、月曜日から金曜日の週5日で1日8時間働いている場合、そこで週40時間に達してしまうため、土日を休日とすることが必要となります。
そして、土日の2日間の休日のうち、1日は法定休日、もう1日は法定外休日の扱いになります。


休日と休暇とでは何が違う?
「休日」と似た言葉に「休暇」がありますが、2つの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。休日も休暇も「休むとき」を意味する言葉ですが、労働の義務の有無に大きな違いがあります。休日はもともと労働者に労働する義務がない日を意味する言葉です。
一方、休暇は労働者が労働する義務を有する日ではあるものの、企業がその義務を免除しているため休みとなっている日を意味します。
さらに、休暇は、企業に対する設定義務の違いによって2つの種類に分けられます。一つは、法律で労働者に取得が義務づけられている法定休暇です。
例えば、年次有給休暇や、生理休暇、看護休暇・介護休暇などが該当します。もう一つは、企業が任意で設定できる特別休暇です。慶事や弔事があったときに取れる慶弔休暇や心身の疲れを回復するために取得するリフレッシュ休暇などが該当します。
年間休日と関係が深い週休制度
年間休日について考えるうえで併せて知っておきたいのが週休制度です。ここでは、週休制度の制度内容などについて解説します。
週休制度とは?
先でも解説したとおり、労働基準法第35条第1項には、労働者を使用する立場にある使用者は毎週最低でも1回の休日を労働者に与えなければならないことが記載されています。ただし、「毎週」が意味している意味は日曜日から土曜日までの暦週ではありません。
規定で意味しているのは、1週間の日数である7日間ごとに1回以上の休日を与える義務があるということです。そのため、7日間の始点についても具体的な指定はされておらず、企業が就業規則などで定めていればその規定に従い、特に定めがなければ暦週に従います。
休日については可能な限り明確に定めておくように指導することが行政監督上の方針です。しかし、労働基準法では週休日をいつに設定するかについて具体的な決まりはありません。そのため、週休日を日曜日以外にすることもできます。また、国民の休日などを休日にしても問題にはされません。
さらに、変形週休制を採用することも労働基準法第35条第2項で認められています。変形週休制とは週休制度を取ることが難しい業種などが採用できる制度です。使用者が労働者に与える義務がある休日は特定の4週間において4日とされています。
ちなみに、1ヶ月のなかのどの4週間を区切っても4日以上の休日が与えられていれば法律違反になりません。なお4週4日制を利用する場合でも、就業規則などで4日以上の休日を与える4週間の起算日を定めておかなければなりません。
完全週休2日制と週休2日制の違い
求人票などをみると休日についての欄に「完全週休2日制」や「週休2日制」と書かれている場合があります。完全週休2日制も週休2日制も、1週間に2日の休みがある制度です。しかし、2つの制度ではその2日の休みをどのように取るかの意味が異なっています。
完全週休2日制は1年間を通してすべての週で必ず2日の休日をもらえる制度です。ただし、その2日は連続した日で与えられるとは限りません。
一方、週休2日制とは、休日を1週間に2日与えられるときもあるものの、毎週2日の休日がもらえる確約はされていない制度です。例えば、1カ月のうち週休2日が2回ある場合や、3日働いて1日休みとなる3勤1休のような勤務制度は週休2日制に該当します。


年間休日は何日が適当?
ここでは、年間休日として適した日数について解説します。
年間休日の最低ラインは105日
労働基準法で定められている労働時間の上限は1日あたり8時間かつ週40時間です。1年間には365日÷7日=約52.1週あるため、1年間の総労働時間の上限は40時間×52.1週=2084時間になります。そして、1日あたり8時間までしか労働できないことから2084時間÷8時間=260.5日と計算すると、1年間で労働できる日数の最大は260日です。
1年間の日数が365日で、労働できる最大日数が260日のため、365日-260=105日が年間休日の最低ラインとなります。サービス業を始めとした土日祝日も営業するような企業の場合、年間休日を105日で設定しているケースは多い傾向です。
完全週休2日制の場合は120日
毎週2日の休日と暦通りの祝祭日を休日として付与する完全週休2日制の場合、お盆休みや年末年始休暇、ゴールデンウィーク、そのほか国民の祝日などの連休を利用して休日数を調整するケースが多くみられます。
また、企業同士で取引を行っているBtoBの企業では、1年間の休日を120日で設定しているところが多い傾向です。取引先の企業が休みであると、自社を出勤日にしても業務をスムーズに進められず効率が悪くなるため、多くの場合、休日を取引先の企業に合わせて設定します。
そのため、BtoBの企業では必然的に、取引先同士の休日の数が近くなります。大企業においても多い休日数は120日です。1年は約52週あり週に2日休みとなるため、1週間に2日休めば104日休むことになります。さらに、1年間に祝日は16日あるため、104日+16日=120日が完全週休2日制の一般的な休日数です。大手企業でも年間休日の基準は120日程度となっていることが多いです。
平均的な年間休日は110日
厚生労働省が公開している「令和3年就労条件総合調査」の結果によると、2020年の1年間における1企業あたりの年間休日数は110.5日が平均です。ただし、年間休日数の分布をみると、企業によって違いがあり69日以下のところもあれば130日以上のところもあります。
最も多くの企業が設定している休日数が全体の32.2%を占める100~109日で、2番目に多いのが30.4%を占める120~129日、続く3番目が18.7%を占める110~119日です。
一方、従業員数別にみると、休日数が最も多いのは従業員が1000人以上いる大企業で116.8日、最も少ないのは従業員数が30~99人の企業で平均を下回った109.0日です。全体的に従業員数が多いほど平均の年間休日数は多い傾向にあります。


年間休日が105日未満でも違法でない場合がある
先程、年間休日の最低ラインは105日と解説しましたが、105日未満でも違法とならないケースもあります。ここでは、違法とならない3つのケースを具体的に紹介します。
労働時間が短い場合
もともと1日あたりの労働時間が短い場合には年間休日が105日未満になっても問題はありません。そもそも105日という日数は「1日8時間、週40時間」を前提に計算した日数です。
1日の労働時間が6時間の場合には1週間に6日働いたとしても、1週間の総労働時間は6時間×6日=36時間です。1日6時間労働で1週間の総労働時間が36時間であれば、1日の上限時間である8時間も1週間の上限時間である40時間もクリアしています。
「1日6時間、週6日」の勤務の場合には、1週間の総労働時間が36時間で1年間の週数は52.1週のため、1年間に働ける時間は36時間×52.1週=1875.6時間です。そして、1日6時間で1年間で働ける日数は1875.6時間÷6時間=312.6日となり、365日-312.6日=52.4日の計算により年間休日数は52日前後となります。
「1日8時間、週40時間」の場合の105日と比べると日数がだいぶ少なくなるように感じますが、52日でも労働基準法にさしさわることはなく、法律違反にはなりません。
36協定を結んでいる場合
使用者と労働者との間で36協定を結んでいる場合は、年間休日が105日未満であっても原則法律違反となりません。36協定は法定労働時間を超えた時間外労働について取り決めたもので、「時間外・休日労働に関する協定届」が正式名称です。労働基準法第36条に基づいて作られていることから36協定と呼ばれています。
法定労働時間を超える労働を労働者に求める場合には、社員の過半数で構成された労働組合、あるいは社員の過半数を代表する人と36協定を交わし、所轄労働基準監督署に届けを出すことが必須です。ただし、36協定が締結されたからといって、労働時間の上限がなくなるわけではありません。
36協定で取り決められている時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間です。なお36協定の中でも特別条項付きの36協定を締結している場合には、月45時間を超える月が年間6回まであっても違法となりません。
また、36協定による時間外労働や休日労働を行った労働者には通常の賃金に上乗せした所定の割増賃金を支給することが使用者に求められています。
特殊な労働形態を採用している場合
企業によっては労働時間を月単位や年単位などで調整する変形労働時間制を採用しているところもあります。変形労働時間制を採用すると一時的に労働時間が長い日があっても全体として適切な労働時間であれば不適切な働き方とされません。
1ヶ月や、1年間における仕事の忙しさに波がある企業に適した労働形態で、お客さんが増える繁忙期に集中的に働き、利用者が減って人手に余裕ができる閑散期に休日を設定するようなタクシー業界やホテル業界などで多く採用されています。そのほか、フレックスタイム制や裁量労働制も労働時間が長い日があったとしても直ちに不適切な働き方にはなりません。
ちなみに、フレックスタイム制とは日々の始業時刻と終業時刻を労働者が調整できる制度、裁量労働制とは労働時間を実際に働いた時間ではなくあらかじめ労使協定で定めた時間にみなす制度をいいます。


年間休日は多ければ多いほどいいの?
労働者を保護するために労働基準法では休日についての最低ラインが定められていますが、反対に年間休日を多くする分には問題ないのでしょうか。労働者にとって、年間休日は多ければ多いほどリフレッシュする時間を確保でき、心身をしっかり休められるようになります。休日が多くあり、仕事とプライベートの時間のバランスが取れれば生活も充実することでしょう。
しかし、一方で、休日が多くなると収入が減ってしまうリスクがある点はデメリットです。年間休日が多すぎて収入が減ってしまった場合には、減った収入分を穴埋めするために副業をしなければならなくなる可能性もあり、結果として総労働時間が増え生活に余裕がなくなる恐れもあります。
また、週休3日制の場合、週休2日制と比べると休める日が多くなって労働が楽になる印象を持つ人もいますが、1日あたりの労働時間が増えた場合にはかえって大きな負担となる可能性もあるため注意しなければなりません。出勤日は少なくなっても、出勤日の労働時間は長くなるからです。
1日に拘束される時間が増加すればストレスが増える恐れもあります。そのため、必ずしも休日は多ければ多いほどよいというものではありません。休日数が少ないほうが、労働日数が多くなるため、1日の拘束時間も減らせます。
しっかり心身を休ませることができる範囲で、生活を不安なく送れる収入を確保できる程度の日数で働くことが休日の取り方としては理想です。人によって適した休日数は異なりますが、一般的にみると完全週休2日に祝日が加わった120日の休みに、年末年始やお盆休みに充てられる5日の休みをプラスした120~125日くらいの休日を1年間に取れると理想的と考えられます。
求人情報から読み取れない部分は面接で質問しよう
求人情報には各企業のさまざまな情報が記載されていて、休日や休暇についても具体的に明記されています。休日や休暇の付与状況がわかれば、その企業の体質や労働環境をうかがい知ることも可能です。
大事な休日や休暇についてわかりやすく記載されていなかった場合には、うやむやな状態のままにせず、面接時に質問などをしてしっかり確認しておくようにしましょう。

この記事の監修者
寺島 有紀
寺島戦略社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士。1987年生まれ、一橋大学商学部卒業。ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行なっている。
