転職活動で肝となるのが「自己PR」です。なぜなら、応募書類や面接で必ず聞かれる項目だからです。特に中途採用の場合、即戦力となることが求められるため、自分の強みや能力を上手に自己PRに盛り込む必要があるでしょう。そこで、この記事では自己PRの基本的な作成手順をはじめ、採用担当者に好印象を持たれやすいポイントについて解説します。


目次
自己PRとはどのようなもの?
まずは自己PRの目的や採用担当者がチェックしている要素などの基本的なことを解説します。
自己PRの目的
自己PRの目的は「自分を売り込むこと」です。そのため、企業に自分の能力やスキル、仕事で貢献できることなどをアピールして興味を持ってもらうことが大切です。アピールの仕方が上手であれば、企業は応募者を採用するメリットを感じ、採用につながりやすくなるでしょう。ただし、転職希望者の場合、新卒者と同じような自己PRをしてはいけません。新卒者の場合は主に性格や素養などを伝えますが、転職希望者は主に社会人として培ってきた実績やスキルをアピールするようにしましょう。
ちなみに、自己PRというと自己紹介と勘違いしやすいものですが、両者は別物です。自己紹介はこれまでの人生経験や価値観などを通して「自分自身がどのような人間なのか」を伝えるものなのです。混合しないようにして自己PRを作成するようにしましょう。
採用担当者が自己PRで見ているポイント
応募者の自己PRをチェックすることで、採用担当者は「自社の求める人材とマッチしているかどうか」を見極めようとします。なぜなら、自社と合わないにも関わらず、応募者を採用してしまうと、のちにさまざまな損失を被ることになってしまうからです。まず、応募者の働きから期待していた利益を得られなくなります。次に、応募者がすぐに退職してしまうと、再び新たな人材を雇うことになり余計な採用・教育コストがかかってしまいます。もちろん、転職した企業に合わないというのは応募者にとってもマイナスです。そのため、採用担当者は両者のミスマッチが起こらないように、応募者の自己PRを通して、自社が求める能力や経験、社風に合う人柄なのかどうかをチェックしているのです。
能力や経験は職歴を見れば、ある程度はどのような人物なのかを推察することはできます。大事なのは、その能力や経験を希望する企業にどのように生かすことができるのかを伝えることです。この点を重点的にアピールできると採用される可能性が高まるでしょう。


自己PRの作成手順
では、自己PRはどのように作成すればよいのでしょうか。自己PRの具体的な作成手順について解説します。
自分の過去のキャリアを書き出す
まずは自己PRの材料となる自分の強みを把握します。そのためには「自己分析」をすることが大切です。自己分析では「転職することで何を実現したいのか」や自分自身の性格を踏まえて、「どのような企業や仕事に応募するのか」を考えることに役立てます。それにはまず、社会人として働き始めてからの成功体験や失敗体験、キャリアを紙に書き出すことから始めましょう。「そのとき自分がどのように行動したのか」「どのような気持ちになったのか」「印象に残っていることは何なのか」「何を学んだのか」ということも一緒に書き出します。言語化することで、頭の中で漠然としていた考えを整理することができます。
とはいえ、自分だけの分析では見落としてしまうこともあります。できれば家族や友人に意見をもらって、他己分析してもらうのがよいでしょう。自己分析の甘さを修正することができたり、自分では気付かなかった強みに気付いたりします。
応募先企業が求める人物像を研究する
採用担当者は応募者の自己PRから「自社の求める人材とマッチしているかどうか」を見極めようとしています。ミスマッチは自社の損失につながるからです。そのため、応募者側は企業が求める人材がどのようなものなのかを分析し、自分を合わせることが大切になってきます。たとえば、営業職の場合はコミュニケーション能力や積極性、マーケティングの場合はリサーチ力や洞察力、事務職の場合はパソコンスキルや集中力といった具合に求められる能力があるのです。
企業が求める人物像については、募集要項を見ればわかります。また、経営理念や社長のメッセージ、社員インタビュー、仕事内容などから分析することも可能です。経営理念や社長のメッセージ、社員インタビューは、応募先のホームページにアクセスすれば読むことができます。特に重要なのは、社員インタビューです。実際にどのような人物が働いているのかを見れば、企業がどのような人物を求めているかがわかります。1社だけでなく何社か応募する場合、自己PRを使い回しする応募者もいます。しかし、企業それぞれ求める人物像が異なるものです。企業に合わせた自己PRの内容に書き換えるようにしましょう。
自分の強みと根拠となる具体的なエピソードを挙げる
自己PRの際は、根拠となる具体的なエピソードが必要です。もろちん、どのようなエピソードでもよいわけではありません。応募先の企業が求める人物像にマッチした自分の強みをアピールできるエピソードが求められます。そして、エピソードも数字や成果があるほうが、より自分の強みを企業側にイメージしてもらいやすくなります。また、客観性が生まれるので、信頼性や説得力も高まるでしょう。成功したエピソードでなく、失敗したエピソードでもかまいません。失敗した後の対策をはじめ、失敗をいかに自分の成長につなげたかをアピールすることで、採用担当者にやる気や課題解決力を伝えることができるでしょう。
ただし、応募する企業が求める人物像がどういうものなのかによって、アピールの仕方も変わります。どの企業にも同じ自己PR文を送るのではなく、応募する企業に合わせて複数のパターンを作っておくことをおすすめします。
自分の強みを仕事にどう生かせるのかまとめる
企業が新たな人材を雇うのは、自社に利益をもたらし貢献してほしいからです。そのため、自分を採用すれば企業にプラスになることを伝えなくてはなりません。ただ単に自分の強みを伝えても、応募先の企業の利益につながらないのであれば、採用担当者は「この人物を雇えば自社にプラスになる」とは感じにくいものです。採用担当者がメリットをイメージすることができるように「強みがどう仕事に生かさせるか」「強みをどう貢献するか」を伝えるようにします。これらの準備を終えたら「アピールポイント→具体的なエピソード→それを仕事にどう生かすか」という順で自己PRを作りましょう。


好印象を与える自己PRテクニック
次から、採用担当者に好印象を持ってもらいやすい自己PRのテクニックを解説します。
簡潔かつわかりやすい内容にする
採用担当者に自分のことをわかってもらいたいあまり、つい長々とアピールしてしまうことがあります。しかし、アピールポイントが多すぎたり、文章が冗長になったりすると、読みにくくかえって自分の良さが伝わりにくくなってしまうものです。採用担当者の元には数多くの応募書類が届きます。そのため、簡潔でわかりやすくすることが大切なのです。履歴書の中には自己PRを記載する欄があります。しかし、記入欄の幅が狭いため、アピールポイントは1つに絞り200字程度書くのがよいでしょう。一方、職務経歴書の記入欄は幅が比較的広いため、アピールポイントは2つ程度書くことができます。1つの場合は400文字程度、2つの場合はそれぞれ200字程度が目安です。
実は、文字数は重要なポイントになります。というのも、文字数が少なすぎると、仕事へのやる気があまり感じられないとみなされることがあるからです。だからといって、文字数が多すぎると読みにくくなってしまうため、気配りが足りない応募者とみなされてしまう可能性もあります。これらのことを踏まえると、自己PRは記入欄の7割程度を埋めるのが目安です。また、文字の大きさも小さすぎると読みづらいので気をつけましょう。
結論から書き始める
採用担当者に好印象を与える自己PRテクニックとして「PREP法」を使うことをおすすめします。まず、結論から書き、その理由を述べ、具体例を出し、それからまとめるという文章構成方法です。この方法で書くと、質の高い自己PR内容になります。結論=自分の強みから書くことには理由があります。心理学に「初頭効果」という用語があります。これは最初に与えられた情報や印象が、後々まで影響を及ぼすというものです。最初に自分の強みから打ち出すと、全体の印象もよくなるという効果も得られます。
採用担当者に一番アピールしたい過去の経験から得た強みを冒頭に書くようにしましょう。そうすれば、「どのような人物なのだろう」と興味を持ってもらえ、採用担当者に印象を残すことができます。逆に、冒頭から長々とエピソードを書き連ねてしまうと、何を伝えたいのかぼやけてしまい、採用担当者の印象に残りません。最悪の場合、最後まで読んでもらえないこともあるのです。
誤字・脱字に注意する
採用担当者が応募書類の記載項目の中で最も注目しているのが自己PR欄です。そのため、自己PRの文章に誤字脱字があると、「大雑把な人」「ミスが多そうだから、安心して仕事を任せられない」「ビジネスマナーが守れなさそう」などとマイナス評価につながりかねません。応募者が多い大手企業の場合、誤字脱字があるかどうかで足切りしてしまう可能性もあります。自己PRを記載した後は、誤字脱字がないか慎重に見直すようにしましょう。可能であれば、友人や家族など第三者にもチェックしてもらうとよいでしょう。
誤字脱字が見つかった場合、修正する必要があります。ただし、手書きの場合、修正液を使ったり二重線を引き訂正したりするのはよくありません。イチから書き直すようにしましょう。その点、パソコンで作成していれば修正もラクです。また、パソコンのワードには校閲機能があるため、誤字脱字をすぐに見つけることができます。
独自性を持たせる
Web上には自動的に自己PRを作成してくれるツールがあります。また、幅広く活用できるテンプレートなども公開されています。これらを使って自己PRを作成するのは楽なのですが、どうしても抽象的で、ありきたりの文章になってしまいます。採用担当者の印象に残りにくいばかりか、浅い経験しかない人物だと思われる可能性があります。場合によっては、転用したと気付かれる可能性もあるでしょう。そうなると、仕事に対する意識が低いと思われかねません。自己PRのテンプレートなどは参考に見る程度で、そのまま使わないほうがよいでしょう。
採用担当者は数多くの応募書類を読んでいます。そのような中、ライバルに差をつけるためには、オリジナリティのある自己PRを書くことです。ポイントは自分固有の経験を書くことです。例えば、自分が経験したことから生まれたキャッチフレーズや強みを使えば、他の応募者の一歩先を行くアピールができるでしょう。


どうしても書類選考に通過しない場合の対処法
一般的に就職活動の書類選考通過率は30%程度と言われています。もちろん、企業規模や応募者の能力やスキルなどに左右されます。たとえば、未経験の業界や職種に挑戦する場合、経験者と比べて不利になるでしょう。もし複数社応募しても全く書類選考を通らない場合は、応募先の企業が自分とマッチしていない、または自分のスキルや強みを上手にアピールできていない可能性があります。このようなケースの場合、自分で企業を探して応募するのではなく、企業に自分を見つけてもらってスカウトしてもらう方法がよいでしょう。
転職サイトには検索型とオファー型(スカウト型)があります。検索型は転職サイトで自分に合う企業や職種を自ら探して応募するというものです。一方で、オファー型(スカウト型)とは企業のほうから自分にアプローチしてもらうというものです。オファー型(スカウト型)の場合、まず、スキルや自己PRを登録します。すると、それを見て興味を持った企業が登録者に連絡を取ってくれるのです。企業が自己PRを読んで打診してくれるため、自分が持っている能力とマッチする企業と出会える確率が高まります。また、自分が検索では見つけられなかった企業や知らなかった企業と出会えるというメリットがあります。さらに、求人サイトをあれこれ見比べることなく効率よく就職活動ができるのです。
手順を意識して企業にマッチした自己PRを考えよう!
手順やポイントを押さえれば、自己PRを作成することは難しいことではありません。ただし、企業のニーズを正しく分析して効果的な内容にすることが大切です。とはいえ、工夫してもなかなか書類選考に通らない場合もあるでしょう。そのようなときは、オファー型の転職サイトを利用するのも一つの手です。活用を検討してみてはいかがでしょうか。
