〜業界研究〜「SaaS」業界の特徴を徹底解説

コロナ禍やリモートワークが広まったことにより、SaaS業界の市場規模が拡大し、注目も集めるようになりました。
特にカスタマーサクセスでSaaS業界を目指す方へ、SaaS業界で特にカスタマーサクセスが注目される理由、SaaS業界でのカスタマーサクセスの役割などについて説明します。SaaS業界のカスタマーサクセスへの転職に興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
SaaSのビジネスモデル
SaaSとはSoftware as a Serviceの略で、「サービスとしてのソフトウェア」という意味です。読み方は、「サース」が多いですが、「サーズ」とも呼ばれています。クラウドサーバー上のソフトウェアをインターネット経由で利用するサービスを指し、Gmailを運営するGoogle社やSlackを運営するSlack Technologies社などがSaaSビジネスの代表です。これまでのパッケージ型ビジネスでは、ソフトウェアが入っているCD-ROMなどを購入してからPCにインストールして利用するため、ソフトウェアを購入してもすぐに使用できないことがデメリットでしたが、SaaSでは契約をすればすぐに使用でき、利用料金は月額や年額で支払うことが一般的です。
SaaSの特徴は、契約したアカウントにソフトウェアの使用が認められるため、PCやスマートフォンなど異なるデバイスでもインターネット経由でどこからでも利用することができることです。また、ドキュメントの編集機能やストレージ機能のあるSaaSの場合、複数のユーザーがファイルを閲覧したり編集作業を同時にでき、クラウド上に保存できるので、いつでも最新ファイルを共有することが可能です。
SaaSの市場動向
SaaS市場は月額課金のサブスクリプション方式を採用しているケースが多いため、顧客がサービスを使い続ける限りは収益は少しずつ増加していきます。総務省の「令和3年通信利用動向調査の結果」を確認すると、企業の約7割がSaaSを利用してるという結果が出ています。
また、SaaSを利用している企業のうち約9割が「SaaSを導入してから効果があった」と回答しているので、これからも成長していくと予測されます。海外では、GoogleやAmazon、Uberなどの大企業がサブスクリプションビジネスを次々に展開しており、SsaS業界に参入してきています。多くのスタートアップ企業が参入しているので、SaaSの市場規模は世界的に拡大していることが分かります。


SaaS業界でカスタマーサクセスが注目される理由
カスタマーサクセスとは「顧客の成功」を意味します。製品やサービスの利用を通して改題を解決したり、収益を増加させたりするような成功体験を実現するために能動的に働きかける営業手法のことです。SaaSではサブスクリプションビジネスが採用されていることが多いため契約ができれば終了ではなく、継続して長く利用してもらうことが重要となります。顧客が製品やサービスを活用してビジネスに成功することで、製品やサービスに価値を感じて継続的に利用してもらうためにカスタマーサクセスのサポートが重要となるのです。
顧客にとって製品やサービスが必要不可欠のものになれば、解約するという選択にはなりません。顧客ロイヤルティを高めて、顧客との信頼関係を築いていく役割ができるカスタマーサクセスはサブスクリプションビジネスをメインとするSaaS業界で注目されているのです。
SaaS業界での「カスタマーサクセス」の役割
SaaS業界でのカスタマーサクセスの役割は、LTV向上、チャーン(解約)抑制、ネガティブチャーン創出、プロダクトへのフィードバック収集などがあります。こちらでは、SaaS業界でのカスタマーサクセスの役割について説明します。
LTV向上
カスタマーサクセスが目指すゴールは、LTV(ライフタイムバリュー)の向上です。LTVは顧客が生涯を通して企業にもたらす利益のことを指し、次の式で計算することができます。
LTV=ARPU(ユーザー平均月次単価)×粗利益÷チャーンレート
LTV=購入1回あたりの平均購入額×年間平均購入回数×平均継続年数
チャーンを減らして継続年数をあげることで、LTVの向上につながります。カスタマーサクセスは顧客の課題が解決できるようにさまざまな提案をして製品やサービスの継続的な利用を促し、さらに信頼関係を築いた上で上位モデルや関連商品・サービスの購入を促して顧客単価を上げることも重要な役割です。
チャーン(解約)抑制
SaaSビジネスではチャーン(解約が収益に直結してしまうため、チャーンを抑制することがカスタマーサクセスに求められます。解約率が高くなると企業として成長することができないため、製品やサービスの必要性を顧客に感じてもらえるように働きかけることが重要なのです。
ネガティブチャーンの創出
ネガティブチャーンは、アップセルやクロスセルでの追加受注で増加する収益化解約によって減少する収益を上回ることを指します。既存顧客向けの営業(ポストセールス)が担当していた役割ではありますが、カスタマーサクセスが行うケースが増えています。顧客が抱える課題や悩みをしっかりと把握しているのがカスタマーサクセスなので、顧客にとって必要なタイミングで必要な追加契約を受注することができるのです。
プロダクトへのフィードバック収集
カスタマーサクセスは顧客から直接製品やサービスのフィードバックを聞くことができるポジションです。開発側が顧客の声を直接聞くことがないので、何を改善すればいいのか分からないことが一般的です。
そのため、カスタマーサクセスがプロダクトへのフィードバックを収集して開発側に共有することが非常に重要となっています。フィードバックの収集方法には、顧客へのアンケート実施やオンラインコミュニティ上で改善点を募集する、サポートに来た課題や問題を共有するなどがあります。


SaaS業界での「カスタマーサクセス」の仕事内容
SaaS業界でのカスタマーサクセスの仕事内容には、オンボーディングや活用支援、契約更新フォロー、アップセル・クロスセル提案などがあります。それぞれの仕事内容についてみていきましょう。
オンボーディング
オンボーディングは製品やサービスの導入支援のことで、スムーズに導入してもらうために教育や育成プログラム、活用方法をレクチャーします。オンボーディングをしっかり行っていないと、顧客の解約率が高くなってしまう原因となります。使い方が分からなければうまく活用することができずに解約につながるのはSaaSでよくあるケースです。オンボーディングの時に、顧客にとっての成功を定義づけ、成功に向けてサポートをしていくことが重要となります。
活用支援
顧客が製品やサービスの使用を開始した後は、活用できるようにサポートをしていきます。具体的な支援には、活用度チェック、活用事例共有、ユーザー会開催、コミュニティ運営、定例MTG実施、フィードバック収集、テクニカルサポートなどがあります。解約にならないように顧客がどの程度製品やサービスを活用できているのかを「活用度チェック」で確認することが非常に重要です。また顧客の活用度に応じて、機能をレクチャーしたり、活用事例を共有したり、テクニカルサポートを行います。
契約更新フォロー
契約更新のタイミングで解約を検討する顧客は多いため、契約更新のタイミングに能動的に契約更新のフォローをします。何の問題もなく使用していたとしても突然解約連絡がくることはあるので、契約更新の1ヶ月~3ヶ月前から顧客に活用状況を確認することが大事です。ヒアリングで新たな課題や問題点が見つかれば、解決策を分析して顧客に提案し、解約を防止できるようにします。
アップセルやクロスセル提案
顧客が製品やサービス利用が定着して、上手く活用できる期間に入った後はネガティブチャーン創出をするためにアップセルやクロスセル提案を行います。アップセルは購入検討商品より上位の製品やサービスをすすめる手法で、クロスセルは購入検討商品に関連する製品やサービスをセット販売として進める手法です。新規顧客を増やすことも大事ですが、既存顧客の単価を上げることもカスタマーサクセスの大切な業務です。
「カスタマーサクセス」転職でSaaS業界が人気な理由
SaaSのようなサービスを取り扱うIT企業は、業界未経験可の求人を多く出している傾向があります。カスタマーサクセスは営業職の1つですが、人手不足が続いているIT企業では経験やスキルは転職であまり重視されません。営業で扱う製品やサービスについても入社後に研修で学ぶことができるので人柄が重視されます。
SaaSサービスが増えたことで、顧客の継続的な契約を維持するために必要なカスタマーサクセスの需要が高くなっています。Saas分野でのカスタマーサクセスの求人が増えており、新しいことにチャレンジしやすいのでSaaS業界が人気となっているのです。
SaaS業界でカスタマーサクセスに必要なスキル
SaaS業界でカスタマーサクセスに必要なスキルには、ヒアリングスキルや分析力、プロダクト理解力などがあります。こちらでは、SaaS業界でカスタマーサクセスに必要なスキルについて説明します。
ヒアリングスキル
カスタマーサクセスは顧客が気づいていない潜在的な課題や悩みをヒアリングで聞き出すことが重要です。聞き出した悩みを解決する製品やサービスを提案して、顧客の成功体験をサポートします。顧客が悩んでいることをくみ取れなければ顧客の不満は解消されず製品やサービスの解約につながってしまうため、ヒアリングスキルは非常に大切です。悩みを聞き出して、解決のために適切な製品やサービスの使い方を伝えることで顧客との信頼関係を築くことができ、長期的な利用につながっていくのです。
分析力
解約が増えてしまった時に「なぜ解約が増えたのか」についてさまざまな情報を調査して分析する能力が求められます。なんとなくの直感ではなく、データなどから数字で分析をして、「これからどうすればいいか」を考えることが大切です。
プロダクト理解力
カスタマーサクセスは自社の製品やサービスについて理解を深めることが非常に大切です。単純に知識としてプロダクトのことを知るだけでなく、プロダクトに積極的に興味を持ってプロダクトの使用方法やメリット・デメリットなどを研究するスキルが求められます。実際に自分でも使用してみることで顧客から質問をされた時や顧客の悩みに向き合った時に、より実践的な提案ができるので顧客からも信頼されるようになるでしょう。
SaaS業界のカスタマーサクセスに転職しよう
SaaSの市場は成長を続けており、サブスクリプションサービスが主流となっているSaaS業界ではカスタマーサクセスの活躍が欠かせません。カスタマーサクセスは営業職の1つで、新規顧客獲得よりは既存顧客に寄り添って成功体験に導くことが業務となります。
顧客の潜在的な悩みに気づき、解決となるように製品やサービスの使い方を提案することで顧客の解約を防止することが大切な役割です。顧客と直接やりとりをして顧客の悩み解決に役立てることができるので、大きなやりがいを感じやすいでしょう。
