失敗例から学ぶ、ダイレクトスカウトメール改善のポイント

ダイレクトスカウトメールを送ってみたものの、なかなか返信率が上がらない…。そんな悩みを抱えた方々に向けて、スカウトメール送信のヒントをお伝えします。前回はターゲット設定の仕方をご紹介しましたが、今回はスカウトメールでよく起こりがちな失敗例と改善のポイントをご紹介します。ハンズオン型採用支援サービスを展開しているInterRace株式会社のVPoS(Vice President of Solutions)である木津和さんに取材し、詳しくお話を伺いました。

木津和 弘祐(きつわ・こうすけ)さん
2007年より約15年リクルート、リクルートキャリアにて、新卒・中途向けメディア、人材斡旋、RPO事業、事業開発に従事し、マネジメント(課長・部長)、プロフェッショナル職を経験。RPO事業を立ち上げ期より参画し、HR領域の戦略フェーズから母集団形成、選考オペレーションまでのプロジェクトマネジメント、プロジェクトリーダー、コンサルティングを経験。世の中に存在するHRサービスに広い知見と人脈を持つ。2022年にInterRace株式会社に参画。株式会社KITSUWAの代表取締役としても活動。

【失敗例①】良いことばかりが書かれている

自社や募集ポジションの魅力を伝えたいと思うあまりに、スカウトメールについつい良いことばかりを書いてしまうというのが、一番多い失敗例です。実際に、それで相手の心が動くかというと決してそんなことはありません。例えば、「業績が好調です。組織を拡大するので、ぜひ当社に来てください」というメッセージを受け取ったら、あなたはどう感じますか?もちろん業績好調な企業は魅力ではあるものの、「いろんな人にメッセージを送っていそう」「なぜ自分に声をかけたのだろう」と感じる人も多いのではないでしょうか。

特に、経験者に送るスカウトメールで大切になるのが、「あなたのどんなところに注目し、それを踏まえた上で、何を任せたいのか」という部分です。事業の現在と未来を考えたときに、何らかの課題やテーマがあり、それが採用とも密接に結びついているケースがほとんどです。「将来はこんなことをやっていきたいけれど、担える人材がいないので、お任せしたい」「こんな課題があるので、ここを強化するために、ぜひ力を貸してほしい」といったメッセージを発信することで、経験者にとっては「ここなら自分の経験が活かせそうだ」という具体的なイメージを持つことができます。

困っていることを正直に言ってしまうと、良い会社に見えないのではないか――そんな不安を感じる担当者の方もいますが、むしろ逆。良いことしか言わない会社より、事業観点から任せたいことを真っ直ぐに伝えてくれる会社の方が、自分を必要としていることが伝わり、会社への信頼度や求人募集への納得度が高まります。

【失敗例②】自社の理念やカルチャーを伝えていない

スカウトメールでは、会社の紹介、募集背景、仕事内容を書くことが多いですが、働く上で重要となるのが、条件や仕事内容だけでなく、会社のカルチャーがマッチするかどうか。文面を作る前に仕事内容や魅力をまとめていくと思いますが、自社の風土やカルチャーにはどのような特徴があるのかも、整理しておきましょう。

よくある疑問として多いのが、「当社にはビジョン・ミッション・バリューがあるが、他社も同じようなことを言っているので、伝えてもあまり意味がないのでは?」というものです。でも、決してそんなことはありません。企業にとってあるべき姿や中長期的な目標、果たすべき役割などが込められた言葉であり、企業のカルチャーを示す重要なキーワードです。ただ、注意すべきなのは、ビジョン・ミッション・バリューは抽象度が高いものが多いため、キーワードだけを伝えてもピンと来ない可能性があるということです。

ビジョン・ミッション・バリューに紐付く、現場のリアルを一緒に伝えることで、よりイメージしやすくなります。「ビジョンは○○○です。実際に仕事においても、ビジョンに従って△△△のような取り組みをしています」など、仕事や社員の働き方、社内の雰囲気などの具体例を書くことが大切です。

カルチャーマッチに関して、スタートアップ企業で陥りやすいのが、社員一人ひとりのカルチャーへの捉え方が異なっているケースです。入社歴の浅い方が集まった企業の場合、前職のカルチャーを引きずっている場合も少なくありません。面接で候補者とのカルチャーマッチを測る場合、社員側の認識がずれていると、面接がスムーズに進まなかったり、ミスマッチが起きたりするリスクがあります。自社のカルチャーを言語化する際に、採用に関わるメンバーが複眼で話し合い、認識を揃えておくことをおすすめします。

【失敗例③】スカウトメール文面とホームページの情報が合っていない

基本的に、スカウトメールだけで応募を決断する方は少なく、その企業のホームページや外部情報を検索して調べる方がほとんどです。採用コンテンツが充実しているに越したことはありませんが、より大切なのは「スカウトメールの情報との整合性」です。よくあるのが、採用ページの情報を更新しておらず、掲げている年収が違う、年間休日が古い、などが挙げられます。スカウトメールとホームページで言っていることがずれていると、疑問や不安につながり、応募に至らないというリスクもあります。

会社全体で採用ブランディングに取り組んでいくために、現場社員からオウンドメディアの推進隊長を決めて、定期的に採用ページを更新している企業もあります。忙しくてなかなか更新できないという企業も、せめて採用ページや求人情報は更新し、スカウトメールとの整合性を取りましょう。

登録したての人材に毎日送信し、PDCAを回すのが理想

今回は、スカウトメールのよくある失敗例をご紹介しましたが、ダイレクトスカウトサービスで効果を出す上で最も重要となるのが送信タイミングです。登録したての人材は転職への意欲も高く、企業との出会いを待っている方が多いため、返信率が高いのが特徴です。そのため、我々のような採用支援企業ではターゲットごとに細分化して複数パターンの文面を作り、登録したての人材に毎日送信を行っています。さらに、送信する曜日や時間帯も細かく管理し、返信率を上げていくために、ターゲット設定や文面についてもPDCAを回しながらチューニングをしていきます。自社でここまで手間をかけるのが難しい場合は、採用支援会社を使うという方法もあります。

近年、採用手法が複雑化し、ダイレクトスカウトサービスも専門特化型のスカウトや副業人材を含めたスカウトなど、バリエーションが増えています。自社に有効なダイレクトスカウトサービスを見つけて、ターゲット設定やメッセージを磨いていきたいという方は、外部の採用支援サービスの力を借りることで、プロのノウハウや知見を学ぶことができるでしょう。

ライター:関口 朗子
カメラマン:刑部 友康

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