これからダイレクトスカウトサービスを始めたいけれど、どのようなことに注意して、何から始めたらいいかわからない。そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。候補者からの返信の確率を高めるためには、ターゲット設定の仕方やスカウト文面の書き方など、いくつかの重要なポイントがあります。そこで今回は、ハンズオン型採用支援サービスを展開しているInterRace株式会社のVPoS(Vice President of Solutions)である木津和さんに、ダイレクトスカウトを送る際のターゲット設定のポイントについて伺いました。

ダイレクトスカウトサービスで重要な3つのポイント
企業から採用候補者に直接スカウトメールを送ることができる、ダイレクトスカウトサービス。「始めたいけれど、効果的なターゲット設定の仕方がわからない」「いざ送信してみたものの、候補者からの返信がなかなか来ない」そんな悩みを抱える採用担当者の方もいるのではないでしょうか。木津和さんが数多くのダイレクトスカウトサービスを支援する中で見えてきた「効果を出すポイント」は、以下の3つだそうです。
- ターゲット設定
- スカウト文面
- ホームページの求人情報
どれも基本的で当たり前のことですが、この3つをきちんと行うことが大切です。
今回は、「1.ターゲット設定」にポイントを絞ってお伝えします。
ペルソナを設定しよう
マーケティング活動でよく使われる、ペルソナという言葉をご存じでしょうか? 商品やサービスを利用するユーザー像を具体的に描くことを、ペルソナと呼んでいます。採用においてもこのペルソナが重要になりますが、特に1to1でメッセージを送るダイレクトスカウトサービスでは、相手のことをどれだけ想い描けるかが、ターゲット設定やメッセージ作成に大きく関わってきます。
そこで、まずはターゲット設定をする前に、「自社が採用したい方=ダイレクトスカウトメールを送信したい方」のペルソナを具体的に描いてみましょう。年齢、性別、居住地、家族構成、これまでの経歴や現在の仕事、ポジション、性格、ライフスタイル、趣味などはもちろんのこと、「今どんなことにやりがいを感じているのか」「現在どんな悩みや不満を抱えているのか」まで描けると、より相手の心を動かすコミュニケーションが取りやすくなります。ペルソナで大切なのは、幅のあるターゲット設定とは違って、極限まで噛み砕いて「架空の一人の人物」にまで落とし込んでいくこと。
誰もが知る有名企業を別として、ダイレクトスカウトメールでは、受け取った相手が自社のことを知らないケースがほとんどです。だからこそ、より精度高く「あなたの情報を見させていただき、このメッセージを届けました」とアプローチするために、ペルソナが重要になってきます。
「ペルソナの設定が難しい」という場合は、今いる従業員の中で、採用ターゲットに近しい人がいれば、その方をベンチマークするのがおすすめ。前職でどんなことをしてきたのか、何が不満で何をしたくて転職したのか、転職活動ではどのような軸で会社を探したのか、などをヒアリングしてみることで、ペルソナの具体的なイメージが湧いてくるはずです。もし新規事業などで、社内にターゲットに近い人材が全くいない場合は、スカウトサービスの会社に相談してみるという方法もあります。
採用における3Cフレームを書いてみよう

事業における「3C(Customer、Company、Competitor)」は書いたことがあるという方もいると思いますが、ぜひ採用における3Cも書いてみてください。採用マーケットや採用ターゲットの相場を知り、採用競合を設定し、その中での自社の強み・弱みを分析していきましょう。
ただ、採用競合は、事業上の競合とは異なりますので、なかなかイメージしにくいという方も多いようです。例えばスタートアップのエンジニア募集であれば、SIerやSaaS系企業が競合になるケースもあれば、DX推進を進める大手メーカーが競合になるケースもあります。どの企業が競合になるのか、相手を知らなければ、戦略も考えられません。また、自社の強み・弱みを客観的に知るために、他社との比較が重要になりますので、事業における3Cで整理する必要があるでしょう。
採用マーケットを俯瞰して捉えて、他社の採用状況を把握することは難しいという場合もあるかもしれません。そのような時は、採用支援サービスや人材紹介サービスなどの専門企業にまずは相談して、一緒に考えてもらうというのも一つの方法です。
そのターゲット、「スーパーマン」になっていませんか?
3Cフレームによって、自社が求めるターゲットのペルソナが固まってきたら、実際のターゲット設定に入ります。スペックの部分は、各スカウトサービスによって項目が異なるので、採用する部門のメンバーにも相談をしながら設定項目を整理していくことをおすすめします。特にエンジニア採用の場合は、どんな言語やツールを使うのか、他に転用できるスキルはないかなど、より専門的な知識が必要になるため、現場のスペシャリストを交えながら細かく設定していきましょう。
なお、ターゲット設定でやりがちな失敗は、あれもこれも求めて、「スーパーマン」になってしまうこと。送信できる人数が限られてしまうだけでなく、どの企業も求めるような人であれば、数多くのスカウトメールを受け取っているので、必然と返信率やお会いできる確率が下がってしまいます。
リファラル採用を中心に行ってきた会社が、いざダイレクトスカウトサービスを始めると、「会いたい人に送っても、なかなか会えない」という声をよく聞きます。それは、ある程度信頼関係のある人から紹介を受けるリファラル採用と、見ず知らずの人から送られてくるダイレクトスカウトメールの性質の違いによるものです。ダイレクトスカウトサービスを始めるのであれば、リファラル採用の基準のままでは難しい可能性があります。
もし、ターゲットが「スーパーマン」になってしまった場合は、送信条件を「MUST」と「WANT」で整理し直してみましょう。例えば「経験年数5年以上」としていた条件を見直して、「経験5年欲しいけれど、3年あれば何とかなる」と判断し、MUST「3年以上」、WANT「5年以上」と切り分けてみる。他にも社内コミュニケーションツールでSlackやTeamsの使用経験をMUSTにしていたものを、入社後に学べれば問題ないのであればWANTにしてみるなど。
すべてをMUSTにせず、WANTを増やしていければ、送信できるターゲットも自ずと増えていきます。それでも人数が増えない、返信率が厳しいという場合は、採用マーケットや相場とのバランスをチェックする必要があります。ダイレクトスカウトサービスや人材紹介サービスの企業とコミュニケーションを取りながら条件を調整していくことで、採用成功に近づくでしょう。
また、MUST・WANTの切り分けによって、ターゲットゾーンを複数に分けることができるため、スカウト文面の工夫もしやすくなります。例えば、MUSTを満たす、理想的なターゲット「A」に対しては手厚くカスタマイズした文面を送る、WANTの条件からターゲット「B」「C」を作り、ここにはある程度フォーマット化した文面を送るといったことも可能になるでしょう。