副業・兼業は、自らが希望する働き方を選び、多様な働き方を実現する選択肢のひとつとされています。また、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備としても有効です。副業・兼業を認める企業が増え、社会的に注目を集めていますが、実際に副業・兼業を行っている人はどのくらいいるのでしょうか。また、どのような目的で副業・兼業を行っているのでしょうか。そこで、副業・兼業に関するアンケート調査を行い、副業・兼業の実態を探ってみました。
【調査概要】
調査名:「転職者に関する調査」
調査機関:マクロミル
調査対象者:「正社員1年以内に転職経験あり」と回答した333名
調査期間:2022年6月20~6月30日

18%が副業・兼業を実施!さらに32%の人が検討中
副業・兼業はどのくらいの人が実施しているのでしょうか。2022年6月に実施した転職経験者へのアンケート調査で、副業・兼業の実施状況も聞いてみたところ、18%が「現在、副業・兼業をしている」と回答しました。「現在は副業・兼業をしていないが、今後検討/予定している」の32%を含めると、ちょうど半数が副業・兼業に前向きであるということが分かりました。

なお、厚生労働省が作成した「副業・兼業の現状①(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01614.html)」によると、副業を希望している人や、実際に副業をしている人は年々増加しており、1992年には雇用者に占める副業を希望している人の割合は4.5%ほどだったのに対して、2017年には6.5%と2ポイント上昇しています。実際に副業を行っている人の割合についても、1992年は1.4%ほどだったのに対して2.2%まで増加するなど、副業を希望する人も、実際に副業をする人も増えていることが分かります。

副業・兼業理由のダントツ1位は「収入を増やすため」
では、副業・兼業はどのような理由で始めるのでしょうか。副業・兼業の理由を複数回答で聞いてみたところ、ダントツの1位は「収入を増やすため(60%)」でした。他には、「気分転換・リフレッシュのため(29%)」「時間の有効活用のため(27%)」「新しいことに挑戦するため(25%)」などが続きます。
近年、特定の領域の専門知識を持ちながらも、幅広い領域の見識を持っている「T型人材」が注目されています。副業・兼業によって社外で得た経験・スキルを、自社に還元してもらえるチャンスがあるかもしれません。

世帯年収と副業・兼業への意向の相関性
「収入を増やすため」が副業・兼業を始める大きな理由ですが、世帯年収による傾向はあるのでしょうか。世帯年収別に副業・兼業への意向を見てみると、800万円以上の世帯からぐんと副業・兼業に前向きな層が増えていることが分かります。特に年収1200万円以上の世帯では、44%もの人が「現在、副業・兼業をしている」と回答。もちろん、副業・兼業の収入が世帯年収に反映しているため、世帯年収が高くなると副業・兼業者の率も増加する可能性は高くなりますが、世帯年収が800万円を超えたあたりから、副業・兼業に前向きな層の割合が増えるようです。
世帯年収200万円未満では、副業・兼業を検討する層が多くなっていますが、200~400万円未満、600~800万円未満の世帯では、およそ40%の人が「これまでに副業・兼業をしたことはなく、今後も検討/予定していない」と回答。世帯年収800万円未満の層では、副業・兼業に興味関心が低い人の割合が増える傾向があるようです。

副業・兼業は、どのくらい稼いでいる?
続いて、副業・兼業をしている人の月間の収入を聞いてみたところ、約半数は1~5万円未満と回答。実際の仕事内容を聞いてみたところ、動画制作やホームページ制作、翻訳や撮影など、特定のスキルを活かして収入を得ている人が多いようです。一方で、20~50万円以上と、正社員の月給と同等かそれ以上に副業・兼業で稼ぐ人も12%程度いるようです。仕事内容を見てみると、ITや医療などの本業の経験・スキルを活かして、コンサルタントやサービス開発、専門職として働いていることが分かりました。

現在は、クラウド上で仕事を探せるクラウドソーシングや、自分の経験・スキルに値段をつけて売り出すスキルマーケットなど、副業・兼業のチャンスは広がっています。転職で年収アップを実現する場合は、転職後の慣れない環境で成果を出すことが求められますが、副業であれば現在の待遇や環境は維持しながら、年収アップや専門知識・スキルを身につけることができます。特に本業で得た経験・スキルを活かした副業・兼業は、リスクが低い年収アップ・スキルアップの手段と言えるでしょう。
副業・兼業のデメリットは「時間に余裕がなくなる」が1位
収入アップを実現し、経験・スキルを身につけることができるのが副業・兼業の魅力ですが、一方でデメリットもあります。副業・兼業を行っている人にデメリットを聞いてみたところ、1位となったのが「時間に余裕がなくなる(33%)」でした。続いて「気力や体力が失われる(28%)」「プライベートとの両立が難しい(25%)」「本業との両立(時間管理)が難しい(23%)」など、副業・兼業に時間を取られることによる本業やプライベートへの影響を懸念する声が上位となりました。

なお、人事向けの副業・兼業に対するアンケートでも、副業・兼業の課題は「本業への支障が出る懸念(51%)」と回答しています。働き手にとってメリットの多い副業・兼業ですが、本業やプライベート、心身の健康に影響を出さないように、自律的な働き方が求められると言えるでしょう。

なお、本業で得た経験・スキルを活かして働く場合は、「競業避止義務」に反していないか注意が必要です。本業で知り得た情報やノウハウなどを副業・兼業先で伝えたり、本業で培った人脈を使って取引先を紹介したりすることは、競業避止義務違反に該当する可能性があります。副業・兼業を認めるにあたって、禁止事項を洗い出して定めておき、従業員に周知する必要があるでしょう。
副業・兼業の1カ月あたりの労働時間
実際に、副業・兼業にはどの程度の時間を費やしているのでしょうか。1カ月あたりの労働時間を聞いてみたところ、5時間未満:22%、5~10時間未満:22%、10~20時間未満:20%、20~30時間未満:22%、30時間以上が15%という結果に。

1カ月に5~10時間程度なら本業への差し障りは軽微と言えそうですが、20時間では週当たり5時間、30時間では週当たり7.5時間、40時間にもなると週当たり10時間を副業・兼業に費やすことになります。副業・兼業を認める企業が増えていますが、副業・兼業に熱心になりすぎて、本業やプライベート、心身の健康に影響を及ぼしては本末転倒です。あくまで本業がメインであることを理解してもらい、場合によっては定期的にヒアリングを行うなどして状況確認を行うことが大切です。