面接では、応募者の素晴らしい実績や成果を見聞きすることが多いでしょう。しかし中には、「どこまで本当だろうか」と思うケースもあるのではないでしょうか。面接で応募者の「ありのまま」を知るためにはどうすればいいのか、組織人事コンサルタントの粟野友樹氏に聞きました。

面接で「大げさに盛っているのでは」と思ってしまうケースは少なくない
「自分をより良く伝えたい」
「優秀な人材だと思われたい」
こうした心理から、面接でこれまでの実績や成果を過大に伝えてしまう人も少なくありません。実際に、これまで多くの転職相談を受けたり、面接をしたりする中で、「少し大げさにアピールしているのでは」と思う方に出会うこともあります。例えば、次のようなケースが挙げられます。
【実績を盛ってしまうケース】
実績や目標達成率が非常に良く、「これほどできるのなら、もっと現職で評価されたり、他社から引く手あまただったりするのでは?」と感じ、詳しく業務プロセスを聞いていくと、具体的な創意工夫ポイントが出てこず、主体的に取り組んだ様子が見えなかった。
【ポジションを盛ってしまうケース】
大手企業の地方支社で責任者をしていると言うが、業務内容を聞くと、曖昧な回答が多く、仕事の流れが伝わってこない。偶然、自社内に応募者と同じ企業出身の社員がいたため確認したところ 、責任者ではなくマネジャー職だった。
【評価を盛ってしまうケース】
数々の大規模案件を「すべて自分が担当した」と言うが、具体的な取り組みの詳細を聞いても言語化できなかった。よくよく聞いてみると、実際は先輩がメイン担当で、ご自身はアシスタントポジションだったことがわかった。
応募者のありのままを知るには?
前述した事例は、ゼロから実績を作るような“捏造”とまでは言えません。実際に、完全な経歴詐称でない限り、強いアピールと誇張には明確な境界はありません。
ただ、応募者の自己PRをそのまま受け取ってしまえば、入社後に「もっと優秀だと思っていたのに!」とミスマッチにつながる可能性もあるでしょう。そこで、応募者の“ありのまま”を正しく知るために、面接でできる工夫を考えていきましょう。
「なぜ」を繰り返し、質問を工夫する
面接では、実績や成果に至ったプロセスを詳細に確認することが大切です。もし自分が実際にやった仕事でなければ、答えられないところが出てくるはずだからです。
プロセスを聞いていくと、その人なりに考え、工夫して動いたことが見えてきます。物事の捉え方が分かることで、「仕事で壁にぶつかったときも、乗り越えていけそう」「うちの仕事では、このようなシーンで役立ちそう」などと、働くイメージを描きやすくなるでしょう。
成果そのもの以上に、プロセスから分かることは多いので、「なぜ、そう考えたのか」「なぜ、そのような行動をとったのか」など、「なぜ」を繰り返し深掘りしていくといいと思います。
詳細を確認する上では、「STAR」の枠組みで聞いていくのもおすすめです。
S:どのような状況で(Situation)
T:どのような課題があり(Task)
A:どのような行動をして(Action)
R:どのような成果が出たのか(Result)
を整理し、成果を上げるに至ったプロジェクト規模や予算感、かかわった人数など数字面の事実も確認していくといいでしょう。
リファレンスチェックや適性検査を導入する
第三者視点の導入という点で「リファレンスチェック」も一つの方法です。
リファレンスチェックとは、採用する企業が、応募者の同意の上で 、応募者の現職や前職の上司や先輩、同僚など数人に問い合わせて、応募者の経歴や人柄、働きぶりを確認する手法のことです。
応募者が話す実績や評価がその通りなのか、リファレンスチェックである程度知ることができるでしょう。
複数の面接官で確認をする
「本当かな?」と引っかかるところがあれば、面接を追加で行いましょう。人事ではなく、その分野の専門家(同職種の現場責任者やメンバー)に面接をしてもらうことで、「年齢、経歴、経験、実績」の相場観がわかります。
「この年齢でこの業務は難しいのでは?次回の面接で確認してみては」など、チェックすべき点が見えてくるかもしれません。
候補者のSNSで人柄をチェック
公開されている情報に限りますが、候補者のSNSでの発信内容をチェックするのも一つです。業務実績の確認は難しいと思いますが、どんな考え方を持った人なのか、人柄の理解に役立つかもしれません。
また、専門職人材は、インターネット上のコミュニティなどで発信情報を見ることで、スキルレベルのチェックも可能です。例えばエンジニアであれば、開発プラットフォーム「GitHub」での発信を見ることも、参考情報の一つになるかもしれません。
ポテンシャルを見ることも大事な視点
架空の実績を作り上げる場合は、入社後の信頼性の点でも許容できません。
ただ、実績や成果を中心に何度も確認してしまうと、応募者も不安になり、実態以上に「盛って」話をしてしまうかもしれません。特に若手の場合は、輝かしい実績、豊富な経験が不足するケースも珍しくないでしょう。
そこで、実績ばかり聞き込むより、想いや挑戦心などを聞いてポテンシャルを判断する必要も出てきます。成果以外の部分で評価できるところを引き出し、見つけていくことも大切です。