転職面接で「キャリアプランを教えてください」と尋ねられることは珍しくありません。聞きなれない言葉に焦って、うまく話せないケースも見受けられます。このリスクを回避するには、頻出の質問だと認識したうえで、意味や答え方を十分に理解しておくことが重要です。今回はキャリアプランがどのようなものかを紹介するほか、よく聞かれる理由も説明します。作成方法や好印象を与える方法も解説するので確認しておきましょう。


目次
キャリアプランとは?キャリアビジョン・キャリアパスとの違い
キャリアプランとは「Career Plan」のカタカナ表記で、職歴の計画を意味しています。将来的に手掛けたい仕事や就きたいポジションなど、ビジネスパーソンの目標を叶えるには、そこに向けて継続的な努力や取り組みが必要です。その行動計画の具体的な内容こそがキャリアプランに他なりません。最初に行うのは理想的な自分をイメージし、目指す将来像を明らかにすることです。そして、そうなるために必要なスキルや経験、実績などを逆算し、今後の職歴をプランニングしていきます。
なお、よく似た用語として「キャリアビジョン」「キャリアパス」が挙げられます。意味がそれぞれ異なるため、面接で的確な受け答えをするには、何を指すのか正しく把握しておくことが大事です。キャリアビジョンとは、自分が思い描いている将来の理想像です。つまり、キャリアプランの内容を実行してたどり着くゴールといえます。一方、キャリアパスとは、所属している企業で昇格していくためのモデルケースです。特定の職務や職位に就きたい人が歩んでいく経路を示しています。
転職面接でキャリアプランを聞かれる理由
転職面接で、なぜキャリアプランについて質問されるのかが分からない人もいるでしょう。効果的に答えるには、その意図を知っておくことが大事です。企業がキャリアプランを尋ねる理由について詳しく説明していきます。
応募者の希望と企業のニーズのミスマッチを防ぐため
一般的に、面接官は自社に長く貢献できる人材を獲得したいと考えています。そのためには、応募者の希望をしっかり確認し、自社のニーズにマッチしているのか検討しなければなりません。言い換えると、ミスマッチの予防が重要で、この判断材料を得ることがキャリアプランを聞く大きな理由です。入社後にミスマッチが発覚すると労働のモチベーションが下がってしまい、早期退職をする可能性もあります。それが部門の生産性ダウンにつながり、採用や教育のコストが増えるなど、双方にとってリスクが大きいです。応募者のキャリアプランを知っていると、このようなリスクを避けやすくなります。
なぜなら、キャリアプランは応募者が求める将来像なので、本人の希望や価値観が色濃く表れるからです。面接官は自社が提供できる事柄と照らし合わせ、企業のニーズと合致しているのかチェックできます。
応募者の熱意や自主性を確認するため
人材が長く活躍できる条件として、本人の熱意や主体性も挙げられます。そういった資質が応募者に備わっているのか調べることも、キャリアプランを尋ねる重要な理由です。企業の目的はあくまでも利益を上げることであり、これを効率的に実現するには、指示を待たなくても動ける従業員たちが必要になります。明確なキャリアプランを的確に設定できているなら、そのような従業員になってくれる可能性が高いです。応募先企業に入社する意欲が強く、自主的に働こうとする人材だと判断できます。目標に向けた実行力が十分だと見なせますし、長期的な貢献に関する期待度も大きいです。
また、意欲や自主性、実行力を持っている従業員は、能動的なスタンスによって、部門を成長させるエンジンになることも見込めます。応募者にキャリアプランを聞けば、入社後にその役割を果たせそうか確認することも可能です。


キャリアプランの作成方法
将来の自分を漠然とイメージしているだけでは、説得力があるキャリアプランを作れません。ここからは具体的な作成方法を3つのステップに分けて説明します。
手順1.自己分析で現状を明確にする
理想の将来像をゴールとするなら、それに近づくための道標になるのがキャリアプランです。目的地に向かうにあたり、最初に自分の現在地を把握することが欠かせません。行動計画を立てるために、そもそも何を理想と考えるのか明らかにしましょう。その視点を持ったうえで、どのように働きたいのかなど、自分自身について細かく理解することが重要になります。過去から現在にいたるキャリアや経験を時系列で振り返る作業が必要です。普段は意識していない価値観を見極め、今後に役立つスキルや知識などを明確にしていきます。
キャリアの棚卸しをするつもりで、先入観を持たずに情報を洗い出すことが大切です。具体的には、やりがいを感じた仕事も含まれますし、自分が得てきた技術や人脈も対象になります。また、すでに持っているものだけでなく、興味や関心がある事柄も自己分析に欠かせない材料です。
手順2.理想の将来像を考える
キャリアのゴール、すなわち理想的な将来像を考えることが次のステップです。的確に自己分析を済ませていれば、自分の価値観や経験などが整理されています。それらの情報を踏まえ、理想と思える将来像をしっかり言語化することが大事です。単なるイメージに留めておくと、どれくらい理想と離れているのかよく分かりません。言葉で明確に定義することで、その距離感やこれから目指す方向を把握しやすくなります。とはいえ、最終的なゴールしか定めていないと、途中で現在地を見失うケースもあるでしょう。このリスクを減らすため、理想を一気に叶えようとするのではなく、いくつかの段階に分けて将来像を掲げておきます。
例えば、今後30年働く予定の場合、10年後や5年後、1年後など、小刻みな中間目標も設定します。そこから逆算すると、簡単に現状や方向性を再確認でき、最終的なゴールにたどり着ける可能性も高まるのです。また、キャリアを生活と切り離して考えるのは良くありません。両者は深く関係しているので、結婚や育児といった人生設計も考慮して検討しましょう。
手順3.理想の将来像を実現するための手段を考える
最後のステップとして、理想の将来像の実現に向け、ここまでの情報をもとに手段を考えます。現在の自分を将来像と照らし合わせ、強みやスキルなどを比べましょう。両者に大きな差があっても落ち込む必要はありません。この作業の目的は、現時点で何が足りていないのか明らかにすることだからです。大切なのは差を正確に求める慎重さであり、特に注意しなければならない点もあります。自分を主観的に見すぎて、強みやスキルをつい過大評価してしまう人が多いのです。そうなるとキャリアプランの完成度が下がるため、友人や家族といった周囲の人に尋ねるなど、客観的に判断しようとする姿勢が求められます。
以上の作業によって、不足している要素が判明したら、どのような努力や方法で補うのか具体的に定めましょう。手順2と同様に、理想の将来像に合わせて段階的に検討していきます。つまり、10年後や5年後、1年後のように細分化したほうが正確に設定しやすいです。
転職面接でキャリアプランを聞かれたときの答え方
キャリアプランが壮大でも、転職面接で聞かれたときは端的に伝える必要があります。あくまでも目安にすぎませんが、文字数を300字程度、時間を1分ほどに収めると冗長な印象を与えずに済むでしょう。その場で短縮するのは難しいので、答えを事前にまとめておくことが大切です。そのためのコツとして、「5年後に本社で部門長になる」「商品開発のチームを導く立場になる」など、明確な目標を冒頭で掲げることが挙げられます。そのうえで、目標の達成に向けた道筋を話すと、初めて聞く面接官でも理解が容易です。
例えば、どこの部署に所属し、どのような経験や学習をしたいのかを説明します。取得を目指している資格など、できるだけ具体的な情報を盛り込まなければなりません。また、キャリアプランの作成時と同じように、やはり段階的に行うこともポイントになります。「5年後までに」「1年後には」など、細かいスパンで区切って面接官に伝えると、入社後の成長に合わせた活躍をイメージしてもらいやすいです。


好印象を与えるキャリアプランの回答ポイント
キャリアプランを聞かれた時の答え方を心がければ、キャリアプランを分かりやすく話せます。ただし、面接官に好印象を与えたいなら、それだけで満足するのではなく、以下に解説する回答ポイントも実践しましょう。
応募先企業にマッチした内容にする
伝えるキャリアプランが応募先企業にマッチしていると、好印象を与えやすくなります。一方、自社のニーズや提供できる事柄に対し、キャリアプランがほど遠いと感じた場合、面接官はミスマッチと見なして不採用の判断を下しやすいです。したがって、リスクを小さくしたいなら、自分の価値観や希望だけを重視するのは避けましょう。これらを含めつつ、応募先企業との整合性も考慮することが重要です。求められている人物像や、その企業で達成が可能な目標も踏まえ、妥当性のあるキャリアプランを伝える必要があります。
好印象を受けやすいキャリアプランを設定するには、企業研究を綿密に行わなければなりません。公式のWebサイトや募集要項などを十分にリサーチし、得られた情報から企業の特徴やニーズを汲み取ります。それらを回答にしっかり反映させると、面接官はミスマッチと見なさず、安心して採用しやすくなるのです。
具体的なエピソードやポジションを盛り込む
やる気を伝えることは大切ですが、精神面のアピールだけに終始するのは良くありません。キャリアプランを話すときは、そのような抽象的な内容はできるだけ控えるのが望ましいです。説得力を強めるために、具体的なエピソードやポジションを盛り込みましょう。また、そのような要素が多いほど、「企業研究や目標設定に抜かりがない」という印象を与えやすいです。これにより、業務を主体的かつ正確に行える人材と判断される可能性もあります。
なお、具体性があるほど説得力は増しますが、あくまでもリアリティのある範囲に限られます。例えば、「1年で社長に昇進する」「1000個のプロジェクトを成功させる」のように突拍子もない内容は自分の評価を下げかねません。逆効果を防ぐため、実現の見込みがある目標を定め、それに向けたキャリアプランを計画することが大事です。
志望動機や退職理由との矛盾を避ける
転職面接で聞かれる定番の内容として、志望動機や退職理由も挙げられます。他にも自己PRなど、さまざまなことを尋ねられるので、いずれも適切に答えなければなりません。そして、キャリアプランを伝えるときは、そのような他の回答と矛盾しないように注意する必要があります。例えば、「昇進したくない」という理由で退職したにもかかわらず、「1年で課長に昇進する」などとキャリアプランを話すと、面接官は違和感を覚えるでしょう。どれが本心なのか判断できず、信憑性のない話をする人物として印象が悪くなってしまいます。そのような事態を避けるには、回答に一貫性を持たせることが不可欠です。
前職が国内限定の仕事で、応募先企業が世界進出していれば、「海外で働きたい」のように、キャリアプランの実現に向けて転職したという流れが理想です。この場合、志望動機などの回答と矛盾は生じません。論理的にスマートなので、面接官は応募者の選択について納得してくれる可能性が高いです。
現在取り組んでいることをアピールする
設定した将来像を伝えるだけでなく、実際に取り組んでいる内容も話しましょう。「語学学校でビジネス英会話を習得中」「簿記2級の取得に向けて勉強している」など、キャリプランの実現に向けた活動も効果的なアピールになります。自分に足りない要素を把握している証明になるため、客観的な分析力を印象づけることも可能です。さらに、目標を達成しようとする積極性なども示せるので、いろいろな観点で評価が高くなることを期待できます。いずれにせよ、すでに行動に移しているという点が目標に対する熱意のアピールにつながります。キャリアプランの本気度を伝える手段となり、面接官への説得力が高まるというわけです。
プライベートを優先しすぎない
ワークライフバランスを重視する企業が増えています。その風潮を感じとり、プライベートを充実させるために転職したいと考える人もいるでしょう。しかし、一般的な企業が求めているのは、あくまでも自社に貢献してくれる人材です。そのため、キャリアプランが仕事よりプライベートを優先する内容だと、自社のニーズに合わないという理由で敬遠されやすくなります。個人的なライフプランやスキルアップに関心があっても、キャリアプランで設定するメインの目標は、あくまでも仕事に関する事柄でなければなりません。
応募者が女性の場合、面接官は結婚や出産をイメージし、特に早期退職を警戒する可能性があります。したがって、結婚や出産をキャリアプランに組み込んでいたとしても、その部分に関しては自分から触れないほうが無難といえるでしょう。
企業に合うキャリアプランを考えて転職成功を目指そう!
キャリアプランは転職面接における頻出の質問です。回答の良し悪しが、採用や不採用に直結するケースも十分にありえます。よって、なぜ企業が尋ねるのか把握したうえで、答え方のポイントも理解しておくことが重要です。応募先企業のニーズや特徴を踏まえ、そこにマッチするキャリアプランを作成し、好印象を与えられるように工夫しましょう。
