ITサービスは私たちの日常にとても身近な存在となっています。そんなIT業界への転職に興味がある人であっても、具体的な仕事内容を想像するのは意外と難しいのではないでしょうか。一口にIT業界といっても、アプリを作ったりインターネットのサービスを提供したりと、その種類は多岐にわたります。
本記事では、IT業界の概要や向いている人物像などに触れつつ、具体的な仕事内容や必要なスキルについて解説していきます。


目次
IT業界の概要
ITとは「Information Technology」の略称で、日本語に訳すと「情報技術」となります。つまりIT業界は、パソコンなどのコンピューターやネットワークに関係する仕事を担っている業界です。
IT業界の規模は非常に大きいです。総務省の調査によると、IT業界を含む情報通信産業の市場規模は全産業のなかでおよそ10%を占めます。これは全産業のなかでもトップクラスの数字といえるでしょう。そのため、IT業界は常に多忙な状態が続いており、2030年には約80万人のエンジニアが不足するというデータもあります。
その対策として、国で教育訓練給付を利用してITエンジニアの新規育成に力を入れる計画を立てたり、企業でのDX促進や行政手続きの電子化などにも予算を組んだりなど、国も力を入れている業界です。そういったことからも、IT業界は今後ますますの発展が期待されているといえます。
IT業界に向いている人の特徴
IT業界の人手不足は深刻で、適正さえあれば未経験であろうと文系であろうと採用のチャンスは十分にあります。やる気と適正さえあれば、IT技術やプログラミング言語などは入社後でも身に付けることができるので、未経験者の採用に力を入れている企業も増えています。
IT業界で活躍するための素養がある、または向いている人の特徴としては、物事を論理的に考えられること、コツコツとした努力が苦にならないこと、協調性がありチームの一員として動くことができる人です。1人でコツコツとパソコンに向かって仕事をするイメージを浮かべる人もいるかと思いますが、IT業界は仕事の規模が大きいため、チームで仕事をすることが多い業界です。
業務経験がなくても、自分で少しプログラミングを体験してみて面白いと感じられるようであればチャレンジしてみるとよいでしょう。


押さえておきたい4つの業界
IT業界の職種や仕事内容は非常に幅広いので、いきなり全容を理解するのは難しいかもしれません。
ここでは、IT業界をさらに細分化し、メインともいえる「ソフトウェア業界」「ハードウェア業界」「インターネット・Web業界」「情報処理業界」の4つの業界について、それらの仕事内容や必要なスキルを解説していきます。
ソフトウェア業界
ソフトウェア業界とは、コンピューター上で動作するアプリやサービスを開発している業界です。ソフトウェア業界の仕事内容や必要なスキルについて解説していきます。
仕事内容
ソフトウェア業界は、パソコンやスマートフォンなどで操作するソフトウェアやアプリケーションを開発することが主な仕事です。ソフトウェア業界のビジネスモデルは多種多様です。インストール型のソフトウェアを開発する企業もあれば、クラウドサービス型のソフトウェアに特化した企業もあります。また営業の仕方もさまざまで、注文を個別に取ったり、自社でパッケージ製品を開発して売り込んだりと企業によって異なります。
ソフトウェア業界ではプログラマーやシステムエンジニアが多く活躍しています。プログラマーとは、プログラミング言語を用いてソフトウェアの動作の元になるプログラムを実際に作っていく仕事です。
一方、システムエンジニアはシステム開発に総合的に携わる仕事です。クライアントの要望をいかにしてシステムに反映させるかを考えたり、クライアントとプログラマーの橋渡しのような役割も担います。
また、ソフトウェアの開発現場にはネットワークエンジニアも関わっています。ネットワークエンジニアとは、社内外のパソコンのネットワークを整備・管理する仕事です。特に大企業になると膨大な数のパソコンをネットワークに接続して構築や運用を行うため、ITのインフラとも言われるネットワークエンジニアの力が必要不可欠となっています。
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必要なスキル
ソフトウェア業界に携わるには、まずは基本的なプログラミングスキルを身に付けるとよいでしょう。入社後にプログラミング研修がある企業ではそこで学ぶことも可能です。プログラミング言語にはさまざまな種類があり、専門で扱えるプログラミング言語によって担当できる案件が変わってきます。
システムエンジニアを目指すのであれば、プログラムの知識に加えてマネジメントスキルやコミュニケーション力も求められます。また、エンドユーザーの視点でもシステムを考えることができる人材が重宝される傾向にあります。
ネットワークエンジニアの仕事に就くには、LANなどの基本的なネットワークの知識をベースとして、複数のOSや各種ハードウェアにも詳しくなる必要があります。


ハードウェア業界
ハードウェア業界とは、パソコン本体やタブレット端末などの物理的に触れることができる電子機器や設備などの開発を担う業界です。ここでは、ハードウェア業界の仕事内容や必要なスキルについて解説していきます。
仕事内容
ハードウェア業界の主な仕事は、電子機器を代表とした機械・装置・設備などの製造や販売です。プリンタ、スキャナーなどのパソコン周りの機器、スマートフォンやタブレットなどの情報端末、テレビや冷蔵庫などの家電製品といったように、その範囲は多岐にわたります。ソフトウェアがコンピューターを動かすプログラム開発なのに対し、ハードウェアは実際に触ることのできるモノを作ると考えると両者の違いは分かりやすいでしょう。
ハードウェア業界では、製品の企画や設計を行うハードウェアエンジニアだけでなく、製品の販売を中心とした営業系の仕事も多い傾向にあります。また、エラーや不具合がないかを検証するテストエンジニアや、機器のトラブルを解決するサービスエンジニアといった業種もあります。周りにある電化製品が私たちの手元に届くまで、企画・開発・検証・販売などさまざまな工程があり、すべてハードウェア業界の仕事内容に含まれています。
また、IoTの普及により、この業界はさらに活発化しています。IoTとは、従来インターネットに接続されていなかったさまざまなモノ(住宅・建物、車、家電製品、電子機器など)が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みです。
この技術の進歩により、リモコンを使わなくても人間が呼びかけるだけでテレビを操作できたり、スマートフォンと連動して外出中でもエアコンのスイッチを入れることができるようになったりします。そういったサービスを提供できる機器の開発もこの業界の大きな仕事内容の1つです。IoTの普及により、新製品の開発が次々に進んでいるためこの業界はさらに進歩していくでしょう。
必要なスキル
ハードウェアエンジニアになるためには、電気工学やソフトウェアの知識に加えて品質管理のスキルが必要です。ただし、ハードウェアの設計は企業によって独自のノウハウが蓄積されているところが多く、入社後に基礎から教えてもらえる可能性が高いです。
ハードウェア業界で必要になる主なプログラミング言語は、C言語やアセンブリ言語です。それらの言語はCPUやメモリなどハードウェアの部分と密接に関わりがあります。また、IoT分野においてはC言語が利用される場面も多く、C言語をマスターすることで大抵のものを作れるようになります。
ハードウェア開発においては、動作チェックや納品などはスケジュール通り進まない状況もあるため、冷静に粘り強く作業を継続・実行できる人材が求められます。また、この業界では自分が携わったことが実際に形となるため、モノづくりに大きなやりがい感じる人は適性があります。加えて、機械をいじるのが好きな人や電化製品にこだわりを持っている人にも向いているといえるでしょう。


インターネット・Web業界
インターネット・Web業界は、ネットワークを利用したサービス開発やWebサイトの構築などを行う業界です。ここではインターネット・Web業界についての仕事内容や必要なスキルについて解説していきます。
仕事内容
インターネット・Web業界の仕事は、Webサイトの制作はもちろん、インターネット広告を活用した集客支援、電子商取引のEC、ソーシャルゲームの開発などバリエーションが豊富です。職種としてはWebデザイナーやWebディレクターが代表的です。
Webデザイナーは、クライアントの要望に合わせてサイトのレイアウトや構成を作成する仕事です。基本的にはクライアントの要望を元にデザインするため、自分の好きなデザインができる仕事ではありませんが、仕事で認められるようになってくればデザインの提案をすることも可能です。
Webディレクターはサイト制作やプロジェクトの監督的な役割を担う仕事です。Webコンテンツの作成は、Webディレクターがプログラマーやデザイナーを指揮して進められていきます。
インターネット・Web業界はフリーランスで活躍している人もたくさんいるため、場所を選ばず独立して働きたい人にも向いています。
必要なスキル
Webデザイナーを目指すのであれば、HTMLやCSSなどWebサイト構築するための基本スキルをまず身に付ける必要があります。HTMLやCSSはタグを使ってサイト上に文字を書いたりレイアウトをデザインすることができる言語です。世の中のほとんどのWebサイトはHTMLやCSSが使用されていて、HTMLとCSSを習得できればホームページの作成もできるようになります。
さらに、マウスのカーソルを合わせるとボタンの色が変わったり、動きのあるWebページを作成するためには、JavaScriptなどのプログラミング言語が併用される場面も多いです。
Webディレクターになるには、Webサイト構築の全般的なスキルに加えてプログラマーやデザイナーなどさまざまなメンバーをまとめるリーダーシップが必要になります。市場を分析してインターネットで課題を解決する業務もよくあるので、マーケティングの知識も求められます。
インターネット・Web業界は比較的新しい業界で、流行がすぐに変わる傾向にあるため、Webサイトの構築が好きでどんどん勉強していける人、自分の考えでしっかり動ける人が適しています。


情報処理サービス業界
IT技術を用いたシステムやサービスで顧客の課題や悩みを解決するのが情報処理サービス業界です。最後に情報処理サービス業界の仕事内容や必要なスキルについて解説していきます。
仕事内容
情報処理サービス業界はシステムインテグレーター(SIer)と呼ばれ、企業が独自のシステムを導入する際の開発・企画・運用などのすべてを請け負うのが仕事です。
代表的な仕事としては、ITコンサルタントやセールスエンジニアなどがあります。ITコンサルタントは企業の経営や業務上の悩みをヒアリングして解決策を検討する仕事です。セールスエンジニアは顧客に対して自社の製品をアピールし、問題解決の提案に繋げる仕事です。
情報処理サービス業界の仕事は個人ではなく企業を相手にして仕事をするため、仕事のスケールが大きくやりがいがあります。その分責任も重いですが、ITコンサルタントの年収は他業種に比べても高めな傾向にあります。やりがいを感じながら収入も増やしていきたい人にはおすすめできる仕事です。
必要なスキル
情報処理サービス業界の仕事は顧客の悩みをいかに上手に聞き出すかが重要になるため、高いヒアリングスキルを含めたコミュニケーション力が必須です。特にITコンサルタントは経験が肝になる仕事なので、未経験の人や駆け出しのエンジニアが務めるのはハードルが高いでしょう。また、問題点を聞くだけではなく解決策を導き出し提案をしなければならないため、分析能力や提案力も求められます。
セールエンジニアに関しては、単なる営業ではなく技術的な話もできるのが売りになるため、エンジニアとしての顔も併せ持つ必要があります。論理的思考と相手に分かりやすく伝える話術が必要な仕事であるといえます。
このように、情報処理サービス業界の仕事は人間的能力や専門的な知識など総合して高いスキルが求められます。また、IT業界のなかでは比較的相手と話す場面が多い職業のため、パソコンに向かって黙々と作業をすることが好きな人よりも人と接することが好きな人に向いているといえるでしょう。
IT業界をしっかり分析して自分にあった仕事に転職しよう
IT業界は人手が慢性的に足りていない業界です。少しでもプログラミングに興味があったり、コツコツ取り組むのが得意だったりする場合は、転職先として視野に入れてみてはいかがでしょうか。
ただし、ITの仕事は業界によって仕事内容が多岐にわたります。自分に合った職種がある会社を探すためにも、やりがいを感じる職種があるかどうか、本記事を参考にしながら、ぜひ考えてみてください。
