転職先を探す際は、ある程度業種を絞ったうえで労働条件など企業を絞っていくことが一般的です。とはいえ、どのような業種があるのか、自分にはどの業種が向いているのかよく分からない人もいるでしょう。業種と似た言葉も多く、それぞれの意味や違いを正しく理解しておくことも大切です。そこで、本記事では、業種の概要や似た言葉の意味、転職しやすい業種や自分に合う業種・転職先の選び方について詳しく説明します。


目次
そもそも業種とは?
業種とは、企業が行っている事業や商売などを大まかなジャンル別にカテゴライズしたもの、事業の種類のことです。たとえば、製造業や金融業などがあります。実は、業種には明確な法的定義はありません。ただし、総務省では「日本標準産業分類」で、20種類の業種を定めています。以下はその20種類の業種です。
1.農業・林業
2.漁業
3.工業・採石業・砂利採取業
4.建設業
5.製造業
6.電気・ガス・熱供給・水道業
7.情報通信業
8.運輸業・郵便業
9.卸売業・小売業
10.金融業・保険業
11.不動産業・物品賃貸業
12.学術研究・専門技術サービス
13.宿泊業・飲食サービス業
14.生活関連サービス業・娯楽業
15.教育・学習支援業
16.医療・福祉
17.複合サービス事業
18.サービス業(ほかに分類されないもの)
19.公務(ほかに分類されるものを除く)
20.分類不能の産業
上記20業種は大分類であり、さらにその下に中分類・小分類が細かに設定されています。
なお、転職サイトや転職エージェントなどは、独自の基準で分類した業種名を用いることも多いです。気になる場合は各サイトに掲載されている業種一覧を確認すると良いでしょう。


業種と職種・業界・業態の違い
転職活動を進めていると、職種や業界、業態など、業種とよく似た言葉を聞くことがあります。これらの言葉はビジネスシーンでもしばしば使われるため、意味や違いを正しく理解しておくことが大切です。
業種と「職種」の違い
職種とは、個人が実際に行う業務の種類を表したものです。その業務を遂行するにあたって必要なスキルが職種名となっているケースもあります。たとえば、営業職や事務職、販売職、企画職などといえば分かりやすいでしょう。実際のビジネスシーンでは、これらの職種名はさらに細分化されています。たとえば、事務職は一般事務や営業事務、経理事務などに分かれ、それぞれの業務の内容は同じではありません。業種と職種では、前者は企業全体で行う事業の内容、後者は従業員が個別に行う仕事の内容を表している点で異なります。
一般に、転職のしやすさは業種と職種の組み合わせで大きく変わります。たとえば、今と同業種かつ同職種を選ぶのであれば、経験や培ってきたスキルが活かせるため、比較的転職に成功しやすいでしょう。一方、今とまったく異なる業種で異なる職種を選ぶと、経験もスキルも活かせないため、転職の難易度が高くなります。
業種と「業界」の違い
業界とは、企業が扱う「モノやサービス」を基準として分類されたものです。たとえば、モノを製造する企業はメーカー、モノを売る企業は小売業、金融商品を扱う企業であれば金融業に分類されます。業界は、以下の8つに区分されることが多いです。
・メーカー
・商社
・小売
・金融
・サービス
・ソフトウェア、通信
・マスコミ
・官公庁、公社、団体
業界と業種とでは、前者は産業の大まかなジャンルを、後者は細かく企業の事業内容を表している点で異なります。ただし、業種と同様、業界にも明確な法的定義はありません。業種は異なっていても、同じモノやサービスを扱っている企業なら同じ業界としてくくることも可能です。
業種と「業態」の違い
業態とは、モノやサービスをどのように売っているかを表す言葉です。主に、流通・小売業界で使われます。たとえば、同じ小売業界でもスーパー・コンビニ・通信販売で営業形態や売り方は同じではありません。同じようにモノやサービスを売っていても売り方が大きく異なるため、業態として区分されているのです。業種と業態では、前者が企業の扱う事業の内容を表すのに対して、後者は販売スタイルを表す点で異なります。


未経験でも転職しやすい業種3選
業種によって特徴はさまざまです。給与水準や働きやすさなどが大きく異なり、転職の難易度にも違いがあります。たとえば、専門性の高い業種に未経験で転職することはかなり難しいでしょう。ここでは、未経験でも比較的転職しやすい業種を3つ取り上げ、紹介します。
医療・福祉業
医療・福祉業とは、医療・保健衛生・社会保険・社会福祉及び介護にかかわるサービスを提供する事業のことです。具体的には、病院やクリニック、保健所、社会保険事務所、介護施設などがあります。病院の医師や看護師などは国家資格を取得していない限り転職できませんが、医療事務や介護職であれば、経験や資格がない人でも転職しやすい状況です。特に、介護職は慢性的な人手不足の状態にあり、転職しやすいといえます。実際、厚生労働省による「職業別一般職業紹介状況」(令和4年1月分)では、介護サービスの職業は有効求人倍率(パートを含む)が3.68倍と高い数値を示しています。
有効求人倍率とは、求職者1人に対して何人分の求人があるかを示す数値です。1より高いほど求職者に対して求人がたくさんあることを意味します。医療・福祉関連でも特に介護職の需要が高まっているのは、日本で著しく少子高齢化が進み、高齢者が増加していることが大きな要因となっています。
運送業
運送業とは、商品や人の流れを扱う業界のことです。大きく、荷物を運ぶ貨物輸送と人を運ぶ旅客輸送の2種類があります。特に転職しやすいのは、荷物を運ぶトラックドライバーです。トラック運送業界は、1990年に規制緩和を行ったことで新規参入業者が一気に増えました。さらに、インターネットの普及によってECサイトやフリマアプリの利用者が急激に増加したことも加わり、物流量は拡大を続けています。このような状況から、トラックドライバーが慢性的に不足している状況です。
トラックドライバーとして働くのに大切なのは運転技術や体力であり、学歴やビジネススキルはあまり重視されません。まったくの未経験であっても、きちんと交通ルールを守って運転できる人であれば、採用される可能性が高いです。年齢制限もほとんどなく、ドライバー全体が高齢化していることもあり、一般には転職が難しいとされる40代後半以降でも年齢が理由で断られることはほとんどありません。
小型トラックなど、車両によっては普通自動車運転免許のみでドライバーとして働けます。中型トラック以上になると中型免許や大型免許が必要ですが、転職前に自力で取得しなくても入社後に会社が費用を出してサポートしてくれるケースが多いです。
宿泊業・飲食サービス業
宿泊業・飲食サービス業とは、宿泊場所を提供する事業と料理や飲食物を提供する事業のことです。宿泊業は旅館やホテル、ペンションなどが、飲食サービス業はレストランやフランス料理などの専門料理店、カフェなどが該当します。宿泊業・飲食サービス業は、スタッフの入れ替わりが激しい業種です。厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」でも、入職率・離職率ともに全業種中でトップの数値を示しています。入れ替わりが激しいため、業種全体で慢性的な人手不足の状態です。さらに、仕事に就くのに学歴や特別な資格が不要なこともあり、未経験でも採用されやすい傾向があります。
お客様と接する機会が多いため、接客やコミュニケーションを取ることが好きな人に特に向いているでしょう。シフト制を採用しているところが多く、不規則な生活になりがちな点に注意が必要です。


転職先選びで注意したいポイント
転職を決める理由は、人によりさまざまです。したい仕事やキャリアビジョンが明確にあり、今の職場では実現が難しいからと転職する場合は問題ありません。一方、今の職場の待遇や人間関係などが悪く、不満が溜まって辞めたくなっている場合は注意する必要があります。このようなケースでは「今の会社でなければ、どんなところでもかまわない」「内定さえもらえればどこでもいい」と思ってしまいがちです。しかし、どこでもいいと思いながら転職活動をすると、自分に合わない会社に入ってしまう可能性があります。実際に働き始めてから「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。働くモチベーションの低下や早期離職につながる可能性もあります。
やむを得ない理由もなく、離職や転職を何度も繰り返すのは望ましくありません。なぜなら、転職の難易度がどんどん上がるからです。転職回数が1、2回程度であれば、企業の採用担当者もあまり気にしないでしょう。しかし、3回以上となると「この人はどこに行っても長続きしないのではないか」「本人に何か問題があるのかもしれない」などと判断され、落とされてしまう可能性が高いです。早期に離職してしまわないためにも、転職先は自分にマッチした企業を選ぶことが大切です。
ミスマッチを防ぐためには、徹底した自己分析や業界・企業研究を行い、自分に向いている業種や職種、企業を知る必要があります。
自分に合う業種・転職先を見つける方法
自分に合う業種や企業を見つけることの大切さは理解していても、どうすれば良いか分からない人も多いでしょう。ここでは、自分にマッチした転職先を探す方法を3ステップに分けて詳しく紹介します。
手順1.自己分析をする
自分に合う職場を見つけ、転職を成功させるには、丁寧な自己分析が欠かせません。これは、まず自分自身の仕事に対する考え方や価値観、希望を理解しなければ、合うかどうかも正しく判断できないからです。わざわざ自己分析をしなくても、自分のことは自分が一番よく知っていると思う人もいるでしょう。ところが、自分自身のことは意外と正しく把握できていないものです。新卒の入社時に自己分析を経験した人も、新卒時と今とでは状況が変わっています。社会人として業務経験を積んだことで、仕事に対する価値観やビジョンが違っているでしょう。そのため、新たに自己分析を行って自身を客観視する必要があります。
自己分析の方法はいろいろありますが、オーソドックスな方法は、これまでの経験を振り返り特に印象に残った出来事をどんどん書きだしていくというものです。出来事の横には、状況やその行動を行った理由、結果に対して感じたことなどについて書きます。すると、共通点が見つかるでしょう。共通点を見れば、自分の得意なことや興味あること、強みなどが浮き彫りになります。「自分は個人プレーが得意だと思っていたが、意外と人をまとめるのが上手いようだ」など意外な発見をすることもあるでしょう。
特に興味のある分野や得意とすること、強みが把握できたら、それらが活かせる業種や企業を選ぶと良いでしょう。また、つらかった経験や投げ出したくなったことなどを書きだし、自分が苦手なことやしたくないことを明確にしておくのもおすすめです。自分と仕事のミスマッチが防げます。
手順2.業界研究で業種を絞り込む
次に、徹底した業界研究を行います。業界研究とは、志望企業を選ぶまえに業界や業種ごとの特徴・傾向を分析することです。分析して詳しく知ることで、自分に合う業界や業種を探せるようになります。『会社四季報』や業界紙などを活用し、各業界のトップ企業を3社程度調べ、市場規模や事業内容、将来性、業界独特の慣習などを把握しましょう。ひととおり調べれば、自己分析で分かった自分が得意なことや興味のある分野とマッチする業界・業種が絞り込めるようになります。
ただし、あまりに業種を絞り込まないように注意しましょう。なぜなら、選択肢を狭めすぎてしまうと、実は自分に合っている・成長できる業種を見逃す恐れがあるからです。
手順3.企業研究をする
業種・業界をある程度絞れたら、転職サイトなどに目を通して応募企業の候補をいくつか選びます。次に、それぞれの企業の研究を行いましょう。企業研究とは、その企業の社風や理念、事業内容や求める人物像などを調べることです。自分に合っているか、強みが活かせる職場か、希望にマッチしているかなどを確かめます。企業のコーポレートサイトや転職サイト、新聞、志望企業が発信するSNSなどを確認すると良いでしょう。また、転職活動で企業研究を行うなら3C分析が適しています。3C分析とは、Company(会社)・ Competitors(競合)・ Customer(顧客)の3つの観点を深堀りする手法です。
企業研究をしっかりと行うと、その企業の独自性や競合他社との違いが分かり、説得力ある志望動機や自己PRの作成にも役立ちます。


自分に合う業種がわからない場合の転職先の見つけ方
自分なりに自己分析はしたものの、興味の持てる分野や得意なことが見つからない場合もあります。そのような場合は、オファー型の転職サイトを利用すると良いでしょう。オファー型とは、転職希望者が経歴やスキル、希望条件などを登録しておくと、それを見て興味を持った企業からスカウトメールが届くシステムの転職サイトのことです。スカウトメールを送ってきた企業のなかから好きな企業を選んで応募でき、自分で求人を探す必要がありません。
企業は登録したプロフィールを見たうえで求める人材にオファーを出しているため、ミスマッチが起こりにくく、内定獲得率が高いことが大きな特徴です。
自分に合う業種を見つけて転職を成功させよう!
転職先を探す際、給料や福利厚生ばかり気になる人もいるでしょう。働ければどこでも良いと考えている人もいるかもしれません。しかし、ミスマッチを防ぐためにはまず自分に合った業種を見つけることが大切です。そのためには、自己分析や業界研究、企業研究を徹底的に行いましょう。それでも自分に合う業種が分からないときは、オファー型転職サイトを利用するのがおすすめです。企業からのスカウトを受け、じっくり検討できます。
