経験者・未経験者ともに、人事・労務部署への転職を成功させる鍵は、自身が調整力や視野の広さ、コミュニケーション能力といった資質を備えていることを印象づける「自己PR」の作成です。この記事では、人事・労務への転職を考えている方のため、自己PRのポイントや例文を紹介します。


目次
自己PRはなぜ必要なのか
転職を考えている人にとって、採用面接時の「自己PR」は新卒で就活するときよりはるかに大切といっても過言ではありません。
希望する企業に自分の「強み」を印象づけ、売り込むことが第一ですが、その際は「マニュアル通り」でなく、自分のことばで熱意をもって伝えることが肝要です。すでに人事、労務として働いた経験がある人は、リアルな体験談を随所に交え、実績や成果を効果的にアピールしましょう。未経験者の場合は、これまでの職務経験を伝えつつ、必ず人事や労務の事柄に結びつける結論になるよう心がけたいものです。
経験者、未経験者問わず、採用面接官に「ぜひ、この人と一緒に働いてみたい」と印象づけることができれば、同様に面接を受けているライバルとの差をつけることができます。
未経験や中途でも人事・労務の仕事に就ける?
未経験者の場合、一般に名の知られた会社、大手企業を狙うのはかなり厳しいでしょう。ただし、中小企業やベンチャー企業など、採用を強化している企業は増えている一方、人事分野における優秀な人材は慢性的に不足しています。そのため、未経験者にも採用されるチャンスがないわけではありません。
現在、組織拡大をはかっているような成長過程の企業はとくに狙い目です。大規模な求人を実施する際、人事担当者の求人を増やすことも十分考えられるからです。
もっとも、中途採用の場合は即戦力であることを求められるため、人事を経験していたほうが明らかに有利です。未経験者がそこに踏み込むためには、ありがちな「志望動機」を語ることでなく、ライバルや経験者と差がつく、印象的な自己PRをしなければなりません。たとえば、これまで築いてきたキャリアの中で気づいた人事・労務の重要さを、実体験を交えつつ真摯に伝えることを意識しましょう。


人事・労務の仕事に転職するための自己PRのポイント
転職の際は、希望する職種についての情報を入手、把握し、そこで実際に働いたときの自分なりの理想図、将来図をあらかじめ描いておくことが大切です。
人事・労務分野において「これだけははずせない」ポイントを押さえておけば、自身も納得でき、面接官に好印象をもってもらえる自己PRができるでしょう。
仕事に活かせる実績や経験を記載する
自分の強みについて伝えるときは、ただの自慢話にならないように、あくまで客観的なアピールを心がけましょう。具体的な数字を盛り込む「定量的な自己PRポイント」があれば、さらに心強くなります。
人事経験者は、人材育成による利益上昇率や研修の日程、人数など具体的な数字をあげます。
労務経験者なら、就業規則の導入、業務改善にともなう生産性の向上を示す具体的な数字、労務管理の対象社員数などを盛り込むことで、実際に働いていた様子がリアルに伝わるでしょう。
採用の担当者は、実際に自分が面談して採用した人数や、採用計画に対する目標達成率などを具体的な数字であげることによって、この分野を任せても信頼できる人物だと印象づけられます。
なぜ人事・労務を志望するのかを伝える
志望動機を尋ねられたら、人事・労務の仕事のどこに魅力を感じているのかを具体的にアピールできるとよいでしょう。
経験者の場合は、同じ職務を転職先に選んだ理由や、とくにやりがいを感じているところなどを、これまでの経験を踏まえて具体的に伝えることで、人事・労務の職業への理解度、その分野においての適性があることをアピールできます。
経営戦略にどのように貢献できるのか伝える
さらに大事なのは、入社後、その企業に貢献できるかどうかです。人事や労務は、経営戦略の実現に向けて組織の改革や人材育成をおこなう、いわば企業の要に当たる職務です。
そうした重要な部門への転職を目指すのであれば、就職を希望する企業についてあらゆる角度からリサーチし、経営方針をしっかり理解しておく必要があります。その上で自分ならどのように経営に貢献できるかを具体的に伝えると、採用に繋がる可能性があります。
自己PRには、入社後にチャレンジしたいことや取り組みたいことを記載すると、仕事への意欲や熱意のみならず、企業に貢献することへの意気込みも伝えられます。
他社にはない魅力を感じたポイントを伝える
数ある同業者の中から、その企業を選んだ理由がしっかりと伝わると、採用担当者に好印象をもたれやすくなります。他社では感じることのなかった、その企業の特色、個性などを自分のことばで具体的に伝えられたらいいですね。
そのためには、希望する企業だけでなく、同業他社のリサーチもしっかりとおこなうことが重要です。どの企業にもあてはまるような、当たり障りのない抽象的な話では真実味に欠けるので、避けましょう。


例文で見る人事・労務の自己PR
ここでは、経験者・未経験者、希望する職種のパターン別自己PR文を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
【経験あり】人事経験者の自己PR|その1
「○社の人事部において5年の職務経験があります。おもに中途採用の面接に関わってまいりました。
○社では○年度からの事業拡大にともない、即戦力となりうる人材の確保が課題でした。能力の高い中途採用者はよりよい待遇をめざして転職をくりかえす傾向にあります。社員全体の離職率も12%と高かったので、社員の不満や要望を詳しく聞き取る必要がありました。
それまでも頻繁におこなっていた社内面談では本音は出にくいと提言し、経営陣と協力しあい、春夏秋冬を通じての社内イベントを企画しました。社員同士の積極的なコミュニケーション構築に励んだところ、先輩や上司に対しても意見を伝えやすくなったためか、ここ2年は離職率が5%を達成しております。
御社の人事部では、これまでの経験を活かして、よりよい人材の確保、社員同士の潤滑なコミュニケーションをはかり、はたらきやすい環境づくりのサポートをしていきたいと思っています」
【経験あり】人事経験者の自己PR|その2
「新卒入社したアパレルメーカーの人事部で2年間勤務してまいりました。業務の傍ら、社内外の研修や通信講座を通して人材育成や人事評価について学び、昨年度からは新卒の採用担当として各大学を訪問し、説明会の日程調整や場所の決定を任されました。
100人が参加する新人研修では、今後のモチベーションアップにつながり、社員同士のコミュニケーションを深められる魅力的なプログラム作成を心がけました。
SNSを通じて、同業だけでなく異業種との交流も積極的におこない、業務以外の学びを推奨して、社員に幅広い知見と多様な価値観をもたらそうとする、貴社の懐の広い社風に心を惹かれます。
人事部で培ってきた今までの経験を活かし、さらなる成長を目指しながら、貴社の利益に貢献していきたいと考えます」
【未経験】営業経験者の自己PR
「私が御社の人事に応募した理由は、5年間、出版業界の営業職として多くの人と接し、多様な価値観に触れてきた経験を活かせると感じたからです。
企業セミナーや異業種交流会などで他社の人事の方と話す機会があり、社員の話に耳を傾け、人と人をつなぐ役割に営業職との類似点を見出しました。それ以上に、必要があれば、上司や経営陣にも堂々と提言し、積極的に会社運営に関わっていく人事の役割に、営業職では得られない魅力を感じ、自分も人事の業務に携わりたいという思いが強く芽生えました。
社員ひとりひとりの個性を大切にし、本来の力を発揮できるよう、営業職で培ったスキルを御社の人事の仕事で役立てたいと考えています。」


【未経験】メーカー経験者の自己PR
「化粧品メーカーの広報担当として3年勤務しています。労務の仕事にはもともと興味があり、このたび、御社の労務での求人を知り、応募しました。
御社の発信するスタイリッシュで力強い求人情報は、他社にはない魅力に溢れています。自社製品を売り込むためのプレゼン資料作成に携わった経験から、参考資料として多くのホームページを見てきましたが、その中でもひときわ目を惹いたのが御社の求人情報です。
広報の仕事を通じ、編集者、デザイナー、芸能人などと関わってきましたが、その中でとくに重要と感じたのは個性的な人々をまとめあげる「調整役」の存在とコミュニケーション能力です。スケジュール管理を任されることも多く、ここでも労務の役割との共通性を見出しました。
資格取得のために現在学んでいる知識と、広報担当として今までに身につけたスキルで御社の労務としての役割に貢献したいと思います。
【未経験】小売経験者の自己PR
大学卒業後、7年間家業の小売業を手伝いましたが、両親の高齢化にともない、廃業を考えています。それにあわせて、企業への就職を考え、貴社に応募しました。人事としての経験はないですが、もともと人材育成やマネジメント業務に興味があります。
小売業者として、顧客のニーズを的確に把握する必要があり、さまざまな属性をもつ人との対話を重ねてきました。相手の事情、境遇について推察し、考慮するとその人自身がことばに表さずとも必要なものが見えてきます。
また、アルバイト希望者の面談、苦情の傾聴、出荷先との調整・発注、勤怠管理、各種保険の手続きなど、ひとりで担ってきた経験があり、これらのスキルを人事の仕事に活かしたいと考えます。
御社で開発されている商品は、顧客からの人気も高く、私も使用したことがあります。多くの人を魅了する商品を生み出す現場で働く方々が、ストレスなく働けるような環境づくりの一助になれたら嬉しいです。


人事・労務への転職に活かせるスキル
以下にあげる4つの要素はいずれも人事・労務の転職に欠かすことのできないスキルです。
・コミュニケーション能力
・問題解決力・分析能力
・スケジュール管理
・コンプライアンスへの理解
それぞれ詳しく説明していきます。
「コミュニケーション能力」「問題解決力・分析能力」
相手が打ち解け、心を開き「この人と話したい」と思ってもらえるような雰囲気づくりも大切ですが、実際に話していることだけでなく、相手の態度、表情から感情を推し量ったり、相手からの信頼を得て本音を聞き取ったりすることが重要です。
人事担当者に必要な資質として「問題解決力・分析能力」があげられます。面接相手から周囲の人には知られたくない情報を得たとき、そのこと自体は守秘しながらも問題の解決の糸口を見つけるなど、より高度なテクニックが必要な場合もあります。
「スケジュール管理」
年間のスケジュール計画を立てることも人事担当者としての大事な役割。社員の勤怠にともなう給与計算、各種保険の手続きも人事担当者がおこなっているケースが多くあります。
「コンプライアンスへの理解」
近年、社会的モラルに違反した人をSNSなどで厳しく批判する風潮があります。これは「人」だけでなく「企業」においても同様で「コンプライアンス違反」で一度でもマイナスイメージがつくと、取り返しのつかない損失を被ることがあります。
人事担当者は、企業の利益を守るため、コンプライアンスについて熟知しておかなければなりません。社内へのアナウンスを徹底することはもとより、上司、経営陣であってもコンプライアンス違反になりそうだと感じたときは、はっきりと意見する、つよい意志をもつ必要があるでしょう。
人事・労務への転職は自己PRをしっかりと作ることで可能
人事・労務への転職を希望する際は、自己PRに盛り込むべき、以下のポイントを押さえておきましょう。
・仕事に活かせる実績や経験
・人事・労務の志望動機
・経営戦略に貢献できる具体的な強み
・採用を希望する企業の他社にはない魅力
たとえ未経験者であっても希望の部門での採用を狙うために、本記事でしょうかいしたポイントを踏まえ自己PRを作成しましょう。
