職務経歴書の作成における重要なポイントの1つとして、事業内容の書き方が挙げられます。自分が所属していた企業や団体の事業内容を的確に記載することで、自分の経歴をアピールしたり情報伝達能力を示したりすることが可能になるからです。そこで今回は、職務経歴書における事業内容の書き方や注意点、例文を紹介します。


目次
事業内容と職務内容の違い
職務経歴書とは今までの職務内容を書く書類ですが、事業内容も加えることでより完成度が高まります。では、事業内容は職務内容とどう書き分ければよいのでしょうか。本章では、事業内容と職務内容の違いを詳しく解説します。
事業内容とは
事業内容とは、過去に働いた会社がどのような事業を行っているか紹介するものです。「会社のプロフィール」とも言えるでしょう。一般的に、職務経歴書では「会社概要」の欄に事業内容を記載します。特に異なる業界への転職の場合は、職務内容だけでは採用担当者がスキルや経験をイメージしにくいケースがあります。
同業種・同職種だったとしても、会社の規模感などによって事業内容は異なってきます。事業内容の情報からどのような会社で働いてきたのかがわかり、応募先企業にとって有効な判断材料となりうるのです。
職務内容とは
職務内容は、応募者個人が関わった仕事や役割の説明にあたるものです。厳密には販売や営業といった業務内容ではなく、より具体的な日常の仕事内容を意味します。
ただし、個人の役職や業務内容、成果や実績、スキル・資格などを網羅的に記載するのが一般的です。羅列するのではなく、項目別に整理して書くと見やすいでしょう。また、あまり長く書き過ぎず、2000字程度でわかりやすくまとめるのがポイントです。


職務経歴書に事業内容を書く理由
採用担当者に事業内容を伝えることに、どんな意義があるのでしょうか。職務内容だけでは判断材料が不足する場合に、いくつかの点で事業内容の情報が役に立ちます。そこで本章では、職務経歴書に事業内容を書く理由について詳しく解説します。
スキルや経験を把握してもらいやすくなる
職務経歴書に事業内容を記載すると、どのような知識・スキル・経験を培ってきたのか把握してもらいやすくなります。職務要約からキャリアの概要は伝わりますが、それだけでは採用担当者にとって不十分なことが多いです。
事業内容のほか、売上高、従業員数などの情報によって、仕事の規模感や難易度などの具体的なイメージを湧かせることにつながります。働く姿のイメージがリアルに浮かぶことで、求める人材とマッチしているかどうかの判断もしやすくなるのです。
プレゼンテーション能力が伝わる
事業内容を紹介する能力は、どの会社に入っても求められるスキルといえます。調査能力はもちろん、情報を端的にまとめ、相手にわかりやすく伝えるプレゼンテーション能力のレベルが把握できるからです。ミーティングで自分の意見を述べるときや、クライアントに自社製品の説明をするときなど、プレゼンテーション能力を求められる場面は入社後も多々あります。相手の立場に立ったうえで物事を考え、伝えられる人間は、細やかで気配りのできる人材とも言い換えられます。業種や職種を問わず、多くの企業から高い評価を受けるでしょう。
また、事業内容をわかりやすくまとめるのは手間もかかるため、事務作業を怠らない誠実さや丁寧さも好印象に映ります。採用担当者が「知りたい」と思うような事業内容を、ストレートかつ簡潔に伝えられるようにしましょう。
自己PRの内容を裏付けられる
職務経歴書の自己PR欄において実績や経験をアピールする際に、事業内容で前職企業の売上高や従業員数も伝えていると、より状況が具体的にイメージできるため説得力が増します。仮に異なる業界だったとしても、企業規模が同じくらいなら採用担当者もスキルや能力を把握しやすいでしょう。
事業内容をしっかり書くことで、自己PRの内容に確かな根拠を持たせられます。自分にどんなスキルや能力があるのか、つい自己PR欄のみに注力しがちかもしれませんが、事業内容も抜かりなく整えておくようにしましょう。


職務経歴書における事業内容の書き方
職務経歴書において事業内容を書く際、決まった書式があるわけではありません。しかし、何を書くべきなのか、どのように書いた方がいいのかわからないと悩む方もいるでしょう。そこで本章では、スタンダードな職務経歴書の書き方について詳しく解説します。
事業内容は企業名の後に記載する
事業内容の前に、企業名を正式名称で記載しましょう。(株)のような略称を用いず、「株式会社◯◯」「有限会社□□」と記入するのがルールです。また、前株なのか後株なのか、法人格の位置にも注意しましょう。「株式会社」も含めて企業名であるため、前株と後株を間違えて記載することは非常に失礼にあたります。上場企業であれば、その旨も併せて記載すると好印象です。
また、事業内容については「◯◯事業」あるいは「◯◯の開発・製造」「◯◯の販売」のようになるべく簡潔に記載しましょう。企業ホームページの会社概要に「◯◯事業」と記載されているケースが多いため、こちらを参考にするのがおすすめです。なお、取り扱っている商品名やサービス名を付記するのもいいでしょう。企業名は知らなかったとしても、商品やサービスで理解してもらえるといったケースもあります。
事業内容と合わせて書くべき関連情報
企業名と事業内容以外にも、書いておくべき情報がいくつかあります。ここでは主なものを5つピックアップし、それぞれの内容について解説します。また、関連情報は箇条書きで記載するのがベターです。採用担当者にとって見やすい職務経歴書になるよう、常に意識しながら作成を進めていきましょう。なお、関連情報は数字に関わるものが多いため、間違いがないよう十分注意してください。
設立年
意外に思われるかもしれませんが、企業の設立年は重要な情報です。例えば老舗企業に勤めていたことにより、部分的であっても安定経営につながるノウハウを学んだとして評価される場合もあります。
売上高
事業の規模感を示す項目の1つです。企業ホームページなどを参考に、直近の売上高を記載するようにしましょう。上場企業であれば、有価証券報告書でも確認できます。有価証券報告書とは、投資家に適切な投資判断をしてもらうために開示する財務諸表等の企業情報のことです。
企業ホームページのほか、EDINET等の電子開示システムでも有価証券報告書を閲覧できます。職務経歴書に記載する際は「◯◯億円(2023年3月期実績)」といった形で、いつのデータなのか一目見てわかるようにしましょう。
従業員数
従業員数は、企業規模がよりわかりやすくなる項目です。職種や業務内容の記載が同じでも、従業員数が大きく違う会社では事業スケールや業務の担当範囲もかなり異なってきます。自分が実際に行ってきた仕事と採用担当者のイメージとの間にできるだけ乖離がないよう、従業員数も記載するようにしましょう。
資本金
売上高と同様に、事業の規模感に関わる項目です。一般的に資本金は金額が大きければ大きいほど企業としての信頼度が高くなり、安定した経営体力を有していると見なされます。企業ホームページの会社概要などで調べて、「資本金:◯億円」といった形で記載しましょう。
主要取引先
主要取引先の業種や規模から採用担当者が事業イメージをつかみやすくなることがあるため、こちらも関連情報としてできる限り盛り込むといいでしょう。転職しようとしている会社と繋がりがあれば面接で話題にのぼったり、選考で有利になったりする可能性もあります。


職務経歴書に事業内容を書くときの注意点
職務経歴書の事業内容は非常に重要な情報であるため、書き方には注意が必要です。不適切な書き方をすれば、採用担当者の印象を悪くしてしまう恐れがあります。本章では、職務経歴書で事業内容を書く際の注意点を解説します。それぞれを念頭に置いたうえで、わかりやすい職務経歴書を作成するようにしましょう。
簡潔かつ具体的に書く
職務経歴書のメインとなるのはあくまで自身の職務内容やスキル・資格、および自己PRであり、事業内容を長々と書くべきではありません。特に応募者が多い場合、採用担当者はすべての応募書類に目を通すのが難しくなってきます。冗長でポイントがわかりづらい職務経歴書だと、選考を通過しにくくなる恐れがあるでしょう。そのため簡潔に、しかし必要な情報がわかるよう具体的に記載してください。シンプルで見やすいテンプレートがインターネット上では数多く無料提供されているため、これらを利用するのがおすすめです。
なお、転職回数が多い人は、企業情報の項目を絞って見やすくした方がよいケースもあります。ただし、所属していた企業名は省かずにすべて書きましょう。省略すると空白期間が発生するため、面接の場で質問されるケースが多いです。経歴を部分的にでも隠していたと判断されると、採用担当者の心証を悪くしてしまう可能性があります。
専門用語・業界用語の使用は避ける
事業内容に限らず職務経歴書全体に言えることですが、専門用語や業界用語の使用はなるべく避けましょう。特に異業種への転職活動の場合、採用担当者にとって理解しづらくなる恐れがあるからです。自分にとっては使い慣れた言葉だからと多用してしまうと、アピールどころか採用担当者の興味を削いでしまうかもしれません。一般的にわかりやすい言葉に置き換えるか、やむなく使用する場合には注釈などをつけるようにしましょう。採用担当者に必要以上の負荷をかけることのない職務経歴書を作成するよう心がけてください。
守秘義務違反にならないよう注意する
職務経歴書の中では、守秘義務違反にあたる事業内容を書かないようにしてください。一般公開されている情報かどうか、必ず確認しましょう。業務で知り得た社外秘の情報を職務経歴書に記載したことが発覚すると、所属元の企業から訴えられるリスクがあります。加えて採用担当者からも、機密を扱えない人物と判断されてしまうでしょう。
守秘義務により取引先や商品・サービスの名称を明記できない場合は、「大手医療機器メーカー」「アパレルECサイトのシステム開発・保守」といった形で大まかな内容を付記するのがおすすめです。面接の場で質問された際は、守秘義務により正式名称は公にできない旨を伝え、差し支えのない範囲で丁寧に回答すれば問題ありません。
不正確な情報を記載しない
事業内容を始め、従業員数や売上高といった会社情報は正確に記載しなければいけません。しかし、過去に所属した企業が倒産していたりすると情報が得られないケースもあります。その際は、「倒産により正式な情報が得られなかったため、空欄があります」といった趣旨の断りを記載するようにしましょう。
また、企業のホームページがない(あるいはホームページに情報の記載がない)場合、有料の企業情報データベース(帝国データバンク・東京商工リサーチなど)で調べる方法もあります。どうしても職務経歴書に情報を記載したい場合は、こういったデータベースを利用するのもいいでしょう。くれぐれも不確かな情報を記載しないよう気をつけてください。


職務経歴書に記載する事業内容の記載例
最後に、職務経歴書に事業内容と併せて記載する会社情報の書き方について、具体例を業種別に紹介します。架空の内容ではありますが、いずれも汎用性が高いものです。職務経歴書を作成する際の参考にしてみてください。
製造・販売
◯◯株式会社
事業内容:冷凍食品の製造および小売店・卸店への販売
設立:✕✕✕✕年資本金:◯千万円売上高:△△億円(✕✕✕✕年度) 従業員数:✕✕✕✕名
主要取引先:◯◯ホールディングス・株式会社◯◯・◯◯百貨店 など
主力商品:フリーズ◯◯・冷凍△△ など
金融
株式会社◯◯銀行
事業内容:銀行業
設立:✕✕✕✕年 資本金:◯◯億円経常利益(売上高):△△億円(✕✕✕✕年度)従業員数:✕✕✕人
飲食
株式会社◯◯
事業内容:ファミリーレストラン運営、フランチャイズ事業
設立:✕✕✕✕年資本金:○百万円売上高:△千万円(✕✕✕✕年度)従業員数:✕✕✕名
主力サービス:レストラン◯◯、洋食◯◯、△△cafe など
医療
医療法人社団△△会 ◯◯総合病院
事業内容:内科、外科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、皮膚科、小児科、リハビリテーション科
設立:✕✕✕✕年病床数:△△△床従業員数:医師✕名、看護師✕✕名、受付事務✕名
(※病院では、資本金や売上高は記載しない代わりに病床数などを記載します。)
職務経歴書の事業内容から自身のキャリアをイメージしてもらおう
職務経歴書に書く事業内容には、応募者の情報を補完し裏付けする役割があります。事業内容を適切に記載することで、応募者のこれまでのキャリアを採用担当者にイメージしてもらいやすくなるでしょう。不正確な情報を書かないよう、企業ホームページできちんと調べてから記載してください。また、守秘義務違反とならないようくれぐれも情報の取り扱いには注意しましょう。
