30代になると未経験の業界や職種に転職することに、二の足を踏むことも少なくありません。営業職は30代未経験でも需要がある職種であり、どの業界にも不可欠です。この記事では、30代で営業未経験のビジネスパーソンが転職活動に取り組む際に押さえておきたいポイントや注意点を解説します。


目次
未経験の30代でも営業職へ転職できる?
中途採用は即戦力が求められる傾向にありますが、営業職の場合は未経験の30代でも転職できる可能性があります。
どのような分野でも、利益を上げようとするなら営業職の存在が不可欠です。稀に営業をかけなくても製品やサービスが売れる企業も存在しますが、世界中の企業の大半がさまざまな営業活動に取り組んでいます。企業の利益に直結する業務であるため、人材の確保が優先されます。
一方で、離職率の高さも課題として挙げられるのが営業職です。営業職にノルマを課す企業もあり、精神的な負担が重なり離職するケースも少なくありません。どの分野にも必要で利益に直結する職業でありながら離職率が高いため、企業は経験の有無に関係なく、採用の対象年齢を広げて営業職を募集します。
ただし、ノルマは必ずしも悪い制度ではありません。ノルマ達成や営業成績次第ではインセンティブ(販売報奨金)制度を採用している企業もあり、取り組んだ努力が形となって現れるため、モチベーションの維持につながります。
営業未経験の30代は需要がありますが、40代になると営業職の求人は減少傾向にあります。40代になると特定の業界や企業の色に染まっている確率が高くなるため、企業側は柔軟に未経験の業界に対応できるかを懸念する傾向にあるからです。
また、40代は現場で指導する従業員より年齢が1~2回り上になります。上記の懸念材料が現実になった場合、1~2回り年上の指導にあたる現場には大きな負担がかかります。これらの理由から40代では営業職の求人が減少するため、未経験で営業職に転職するなら30代のうちから取り組みましょう。
企業側が営業職に求めていること
営業職に求められるスキルや知識は、以下の6つです。
- 第一印象の良さ
- 行動力
- 結果を出す力
- 製品やサービスの知識
- 聞く力
- 対応力
それぞれのスキルや知識について解説します。
印象・雰囲気の良さ
見た目はコミュニケーションを図るうえで重要な要素であるため、第一印象の良さが営業職に求められます。「メラビアンの法則」によると、コミュニケーションを図る際の影響比率は、表情や姿勢、態度などが55%、声のトーンや大きさが38%、言葉の内容が7%とされています。
コミュニケーションに与える影響の半分以上を占めるのが視覚情報です。そのため、企業側は営業職を採用する際に、応募者の印象や雰囲気を選考の判断材料にします。
また、営業は顧客と直接やり取りするため「企業の顔」にあたる存在です。営業職の印象は企業イメージに直結するため、無愛想だったり、清潔感がなかったりする営業担当では企業イメージを下げるおそれがあります。
結果を残せないばかりか、企業イメージのダウンにも関係するため、企業側は営業職に第一印象を良くする人当たりの柔らかさや清潔感のある身だしなみなどを求めます。


行動力
営業職が成果を上げるには、行動力が必要です。営業をかけて一度断られたとしても、何度も足を運ぶことで契約につながるケースがあるからです。ファーストコンタクトで信頼関係が築けなくても、回数を重ねることで信頼関係が生まれるケースは少なくありません。
接点を増やす間にも、顧客にとって有益な情報にアンテナを張り、提供していくことで信頼関係は深まります。すぐに成果が出なくても前向きに取り組む行動力があれば、契約獲得の可能性を高めることが可能です。
また、断られるケースの方が多い営業にとって、分母を大きくすることは成果に直結します。そのため、行動範囲やアプローチの対象を広げる際にも行動力が必要です。
数字などの結果を出す力
営業職にはノルマが付きものです。そのため、契約数や達成率などの数字の管理能力が求められます。そこで重要になるのがKPIです。KPIは「Key performance indicator」の略語で、中間目標を意味します。
最終的に達成したいゴールに向けた道筋に、中間目標となる数値を設定し、進捗状況を正確に管理・把握するための指標です。
営業職がノルマの達成確率を上げるためには、年間目標を達成するために月間目標を設定し、週間目標、一日の目標と細分化していくことが重要です。企業は営業職に成果を要求するので、KPIなどを用いた数字を管理する能力が求められます。
業界や製品・サービスの知識
30代のビジネスパーソンは基本的なビジネスマナーは身につけているものとして、すぐに現場で活躍してほしいと企業は考えます。顧客に製品やサービスを売り込むためには、その知識が必要です。
専門的な知識は入社してから学ぶことになりますが、事前知識があるほど学習効率が上がります。そのため、選考の段階で業界や応募した企業、製品やサービスに関するある程度の知識が求められます。
また、未経験で挑戦する業種の面接に企業研究をしないで臨む応募者から、強い志望動機は伝わりません。製品やサービスに興味がなければ、積極的に知識の吸収に取り組んだり、魅力が伝わるように顧客へのアプローチ方法を考えたりすることもないでしょう。営業職の経験者、未経験者を問わず、製品やサービスの知識と関心が重要です。
聞く力
企業が営業職に求めているのが「聞く力」です。営業職にとって必須ともいえるコミュニケーション能力。しかし、ただ話し上手なだけだったり、顧客と打ち解けるのが早かったりするだけでは、営業職として成功するとは限りません。
そこで重要になるのが聞く力です。コミュニケーションを図って顧客の懐に入り、不安や悩み、求めているものなどを引き出すために聞く力が必要になります。そこから顧客の不安や悩みの解決に向けたアプローチには話す力が求められますが、基となるのは聞く力です。企業は話す力やコミュニケーション能力だけではなく、聞く力も備わっているかを選考の判断材料にします。
柔軟に対応する力
変化する状況に対応するために、営業職には柔軟な対応力が求められます。例えば、何度かの顧客に対するアプローチの結果、提案するサービス内容が固まっていたとします。しかし顧客の状況によっては、求めるサービスに変化が現れる場合もあり、そこで必要になるのが柔軟な対応力です。
変化する顧客のニーズに柔軟に応える姿勢がなければ、結果につながらないどころか信用を失うおそれもあります。特にトラブル時には柔軟、かつ迅速な対応が求められます。イレギュラーな事案の対処にも思考の柔軟性は力を発揮します。
また、人間的な柔軟性は「未経験の業界にも対応できそう」や「新しい職場に馴染みやすい」といった選考のプラス材料になる可能性があり、未経験で営業職に転職する際には重要なスキルです。


30代で未経験の営業職に転職する際の注意点
未経験の営業職に30代で転職する場合には、「転職活動が長引く可能性」と「ストレス」の2点に注意する必要があります。
転職活動が長引く可能性がある
30代で未経験でも需要がある営業職ですが、自分に合った企業を見つけるのには時間がかかります。また、需要があるといっても20代に比べると、採用のハードルが高くなるのが現実です。
退職してからの転職活動は時間を確保しやすいメリットがありますが、長期化すると経済的な余裕がなくなり、焦りから転職先の判断を誤るおそれもあります。
未経験だからこそ、営業力を早く身につけるために教育カリキュラムが整った企業を選ぶことが重要です。転職活動が長引くことを見越して、仕事を続けながら経済的な余裕がある状態でじっくり取り組むことが推奨されます。
人間関係でストレスが溜まる可能性がある
転職と営業職が原因となり、ストレスが溜まりやすくなるおそれがあります。転職すれば新しい職場の人と人間関係を築く必要があるため、ストレスが溜まりがちです。年下の上司や教育係がいる場合には、自身が未経験であることが分かっていてもストレスに感じてしまうことも少なくありません。
営業職は仕事上、ほかの職種に比べて社外の人との接触が多いこともストレスが溜まりやすくなる要因です。社内外で人との関わりが多く、新しく人間関係を築かなければならないため、営業職に転職する際にはストレスが溜まりやすくなることを覚悟しておきましょう。


営業未経験の30代が転職で成功するためのポイント
未経験でも30代で営業職への転職に成功するためのポイントは四つです。
- 営業に活かせる経験・スキル
- 現職は継続
- 目的を明確化
- 面接練習
それぞれのポイントについて、以下に解説します。
営業職に活かせそうな経験・スキルを見つける
前述した「企業が営業職に求めているもの」を参考に、自身のキャリアを振り返って営業職に活用できそうなスキルや知識を洗い出しましょう。例えば前職が企画や開発でプレゼンを担当したことがあるなら、「プレゼン力」は営業職にも活かせるため応募書類や面接で魅力的なアピールポイントになります。
前職で管理職を務めていた場合は、「スケジュール管理能力」や「チームをまとめる能力」が営業職として活かせるので、面接の際には採用担当者にアピールしましょう。
仕事を続けながら転職活動を行う
在職中であれば、転職活動に必要な期間として3~6ヶ月は見ておきましょう。活動開始から応募や面接、内定、退職交渉、引き継ぎ業務を経て転職することを考慮すると、その期間は6ヶ月が平均的で、早くても3ヶ月です。自分に合う企業が見つからない場合は、さらに期間が延びる可能性があります。
無職の期間が長くなると職歴に空白期間が生まれ、選考の際にマイナス材料になるおそれもあります。経済的な余裕を確保するためにも、仕事を続けながら転職活動を進めましょう。
「なぜ営業職に転職したいのか」目的を明確にする
転職の目的の明確化には2つのメリットがあります。まず、転職の理由が明確になることで、履歴書や面接で説得力のある志望動機を応募先の企業に示せます。
「ただ別の仕事がしたいから」や「心機一転」などの安易な理由では、転職にかける熱意が採用担当者に伝わりません。転職の目的が明確でない場合は、営業職のやりがいや楽しさを感じる前に挫折してしまうおそれもあります。
また、目的が不明確だと前職で抱えた問題が解決せず、離職と転職を繰り返す悪循環に陥るケースも考えられます。何かしらの問題を抱えているから転職を決意するケースが少なくありません。そのため、転職理由が不明確だと、転職先でも同じ問題を抱えてしまうおそれもあります。
転職の目的を明確にすることは、応募先に熱意が伝わりやすくなり採用の可能性が上がることと、離職と転職を繰り返す悪循環を回避するメリットがあります。
応募書類の作成や面接練習も十分に行っておく
営業職未経験の場合は、アピールできる前職の営業実績がありません。そのため、応募書類には経験や強みなどの項目を充実させ、書類審査の通過確率を上げる必要があります。
企業研究から応募先の企業が求めている人材を分析し、経験やスキルの根拠を裏付けしながらアピールすることで、採用の可能性が上がります。
また、あらゆる質問を想定した面接の練習は、転職の成功率を高めるので、ハローワークが実施する面接練習や、面接のロールプレイングができるアプリなどを利用しましょう。
履歴書や職務経歴書の添削、面接の指導を請け負うキャリアアドバイザーのサポートに加え、企業からスカウトが来る逆オファー型の転職サイト「PaceBox」も有力な選択肢です。


営業未経験の30代でも転職に成功しやすいおすすめの業界
さまざまな分野に営業職があり、未経験でも転職しやすい業界と転職しにくい業界があります。30代で未経験の営業職への転職を目指す人に向け、転職に成功しやすい3つの業界を紹介します。
法人向け・無形商材の業界
IT通信や広告、メディア、人材などの法人向けの無形商材を扱う業界は、営業未経験の30代でも転職しやすいです。メディアや広告の営業職には業界への強い熱意と、収益性などの数値を管理する能力が求められる傾向があり、アピール次第では転職も難しくありません。
また、人材業界は就職希望者に寄り添う人間性が営業職に求められます。どちらも経験以外の資質が求められるため、未経験の30代でも転職しやすくなっています。人材業界は企業数や求人数が多いことも、転職が容易な要素です。
DXの推進やIoT商品の開発が普及したことによって、IT業界の市場は拡大しました。市場の拡大でさまざま分野への営業活動が活発になっており、営業職が不足しがちになっています。
個人向け・無形商材の業界
金融や保険、福祉、介護、冠婚葬祭、旅行など個人向けの無形商材を取り扱う業界も、未経験の30代でも転職しやすくなっています。高齢化が進み、介護や福祉は需要がありながらも人材不足が問題となっている業界です。ケアサービスの従事者だけではなく、営業活動の担当者の人材も不足しがちです。
ノルマを達成するとインセンティブが発生する保険業界は、結果次第では収入アップも見込めるため、営業未経験のビジネスパーソンにおすすめです。
個人向け・有形商材の業界
不動産やリフォーム、自動車など、個人向けの有形商材を取り扱う業界は、人の暮らしと密接に関わっています。営業として取り組んだ結果が顧客の生活に直結するため、やりがいを感じやすい業界です。
特に不動産業界は研修制度が充実している企業が多く、未経験でも働きやすくなっています。
営業未経験の30代でも転職は可能!
どの業界でも営業職は必要であることに加え、離職率が高いこともあって未経験の30代でも需要があります。
ただし、面接や応募書類で実績以外の経験やスキル、知識などをアピールする必要があり、徹底した面接練習も不可欠です。自己流では不安が残る場合は、キャリアアドバイザーのサポートを受けてみてはいかがでしょうか。
