実は明確な定義のない「スタートアップ」ですが、経済産業省も「成長のドライバーで、将来の雇用、所得、財政を支える新たな担い手」であると大きな期待を寄せています。本記事では、スタートアップ企業への転職のメリットや注意点について解説します。


目次
スタートアップ・ベンチャー企業に転職するメリット
20代、30代、40代の人のスタートアップ企業・ベンチャー企業への転職には数多くのメリットがあります。
やりがいを感じられる
スタートアップ企業は大手企業などと比較すると、従業員数はかなり少ない反面、一人ひとりに任される仕事は多く、従業員の裁量の範囲も広くなります。新人だから、転職してきたばかりだからといって、雑用やほかの従業員のサポート業務ばかりやらされることはありません。
スタートアップ企業では、仕事をゼロから作り出していく過程に関わることができ、自分が関わったビジネスが成功したときの達成感はひとしおです。スタートアップ企業では仕事にやりがいを感じることができます。
社長や上司との距離が近い
スタートアップ企業では、入社してからすぐに重要な仕事を任されることもあり、社長や役員などの経営陣とも直接、意見を交わせる機会もあります。
例えば、ほとんどの大企業では社長と意見交換をする機会はおろか、同席するような機会さえ、まずありません。一方、スタートアップ企業では、まわりの同僚や経営陣の考えを聞いたり、自分の意見を反映してもらえたりすることも多く、仕事に対して前向きになれるだけでなく、業務もスムーズに進みます。将来、自ら起業したいと考えている人にとっては、経営のノウハウを勉強できる、またとないチャンスともなります。社長や上司との距離が近く、経営陣とも比較的簡単にコミュニケーションが取れることは、スタートアップ企業に転職する大きなメリットのひとつです。
自分でルール作り・変更ができる
大企業では、前例や慣例などの社内でのルールが多く、ルールから逸脱することで咎められたり、批判を受けたりすることもあります。上司から伝えられたルールに従って仕事を進めることが正しいやり方だと考えられています。
スタートアップ企業では、少数精鋭で業務を進めていることもあり、従業員が自分で仕事のルールを設定したり、変更したりできます。言い換えれば、業務の新しいやり方にチャレンジするためのハードルが低いということです。例えば、現在担当している業務に関して新しい方法を考えたり、勉強会に参加して覚えたスキルを試してみたりといった提案も、スタートアップ企業ならあまり躊躇せずに行えます。
自分で作成・変更したルールがうまくいかなかったときでも、ルールを元に戻したり、さらに新たなルールを作ったりすることに対して厳しい目が向けられることは多くはありません。ルールの作成・変更がすばやく実行に移されるスタートアップ企業は、さまざまな業務にチャレンジしやすい環境にあります。新しいことにどんどんチャレンジしたい性格の人にとっては働きやすい職場です。
急速に成長できる
大企業は従業員数が多く、業務は細分化されています。そのため一人が担当できる業務の範囲は限定されがちです。さらに多くの大企業では新人に対する研修制度が整っており、実務を任されるのは研修の終了後です。入社後にいきなり実務を任されるようなことはほぼありません。
一方、スタートアップ企業では、研修制度が設けられているところはそう多くはありません。むしろ入社後すぐに実務を任されることが多く、しかも一人が担当する業務の範囲は、大企業に比べれば相当広いことが一般的です。いきなり実戦の現場に立たされるわけですから、必然的に業務の遂行能力を向上せざるを得ず、実務のノウハウを覚えるスピードも早くなります。
入社後すぐに難易度が高い仕事を任されることは、向上心がある人にとっては自分を磨くまたとないチャンスです。言い換えれば、常に新しいことにチャレンジし、勉強を続け、自分から提案や質問をしていかないと、幅広い業務をこなしていくことはできません。
スタートアップ企業では可否を問われる案件が即断即決されるため、やるべき仕事は次々に出てきます。常に前向きで、新しい知識を貪欲に求めるタイプの人はスタートアップ企業に向いています。


スタートアップに転職するときの注意点
急成長中の若い企業であるスタートアップ企業にはメリットだけでなく、注意すべき点もあります。
年収が下がる可能性がある
大企業で正規雇用として働いていれば、一般的には年収は安定すると言われています。昨今、実力主義が叫ばれているものの、まだ年功序列で上がっていくことが一般的です。
対して、設立して間もないスタートアップ企業では急成長中とはいえ、経営が軌道に乗っているとは言い難い面もあります。給与は低く抑えられがちで、年功序列ではないことも多くあります。
また事業が軌道に乗っておらず、赤字決算を続けているような場合は、人によっては転職前と比較して給料が下がる可能性があります。
一方、日本経済新聞社の2022年「NEXTユニコーン調査」では、回答企業の2021年度の平均年収は650万円だったとの数字もあります。この額は上場企業の平均を45万円(7%)上回っており、年収において大企業とスタートアップ企業との逆転現象が見られる場合もあります。
ただし、一般論として考えれば、スタートアップは現在よりも近い将来の成長に期待をかける企業です。スタートアップ企業で仕事を任されるやりがいを取るのか、大企業で安定した収入を取るのかという選択を迫られることもあり得ます。
参照元:NEXTユニコーン調査
福利厚生が充実していないことがある
大企業では、有給休暇や家賃補助などの福利厚生が整備されていることが一般的です。対してスタートアップ企業では上記に加え、健康診断の補助、資格取得時の補助、リフレッシュ休暇やボランティア休暇といった法定外福利厚生が整備されていないところが多くあります。
もちろんスタートアップであっても、企業によっては独自の福利厚生プランを考えているところもあります。経営が安定してきて軌道に乗ると、人材確保の点からも福利厚生に力を入れはじめる企業が多いようです。
福利厚生に関しては応募する前に企業調査を行って、入社後にどのような生活を送れるのかをイメージしたうえで転職を決めるのがベストです。
安定性に欠けている
スタートアップ企業は急成長を遂げている一方で、大企業と比較すれば、経営状態が盤石なものとはいえません。中小企業庁が発表している「小規模企業白書」によれば、5年後の企業生存率は81.7%です。日本は欧米諸国に比べて起業数は少ないものの、生存率は高い水準を保っています。
とはいえ、スタートアップ企業の経営が厳しいことは間違いありません。スタートアップ企業は社長のワンマン経営のところも多く、キャリアアップを目指して日々努力を続けていても、社長個人の判断で突然廃業の可能性もあります。
もちろん、すべてのスタートアップ起業が成功せずに数年で倒産するわけではありません。そのリスクを承知でチャレンジするか、安定を選んで大企業で働くのかを転職前にじっくりと考えることが重要です。
参照元:小規模企業白書(p,109)


スタートアップへの転職に向いている人とは?
それではスタートアップ企業への転職に向いている人とはどのようなタイプの人でしょうか。
これまでに説明してきた「年収が下がる可能性がある」「福利厚生が充実していないことがある」「安定性に欠けている」といったリスクを許容でき、かつメリットであるやりがいやスキルアップを望んでいることが条件ですが、さらに以下のようなタイプの人であれば、スタートアップ企業への転職に向いていると考えられます。
臨機応変に対応できる人
スタートアップ企業では、経営に関する意思決定が早く、会社の業務内容や営業戦略、売り上げ計画などが、それこそ朝令暮改のごとく変わることもめずらしくはありません。
スタートアップ企業は少数精鋭であり、各従業員が責任のある、重要な仕事を任されていいます。仮にある業務の担当者が退職するようなことがあれば、突然、その業務の担当者に抜擢されるかもしれません。さらに外部企業との業務提携や製品の価格見直しなど、さまざまな部分で変化は日常茶飯事のように起こります。
目まぐるしく変化する状況を自分が学ぶ機会であるととらえ、臨機応変に対応できる人は、スタートアップ企業への転職に向いています。
自分で仕事を作り出せる人
スタートアップ企業では、業務管理だけを専任で行っているような従業員はいません。大企業とは異なり、業務に対して上司からの指示が細かく出されるわけではなく、自らの判断で業務を進めていかなければなりません。
個人の裁量範囲も大きく、たとえ前例がなくとも、自らが新しい企画を発案したり、自分で取り組む課題を見つけて、クリアしたりといった積極的な姿勢が求められます。上司からの指示待ちではなく、経営者目線で仕事を作り出せる人や、大企業にはない自由な発想ができる人はスタートアップ企業に向いています。
積極的に取り組み、成長を続けられる人
スタートアップ企業では即戦力が求められ、入社後すぐに重要な仕事を任されることもあります。そのような環境では、積極性は何よりも重要です。
自分の業務スキルを会社側が教育してくれるのを待つのではなく、自ら学んでいくことが大切です。「なければ作る」「言い出しっぺがやる」といった積極的な姿勢が求められます。あくまでも受け身ではなく、主体的な姿勢を見せることができる人はスタートアップ企業への転職に向いています。
スタートアップは変化を楽しんで成長したい人を求めている
スタートアップへの転職で重要なのは、その企業特性に自分が適しているのかを見極めることです。安定よりもやりがいを求めて積極的に仕事に取り組む人はスタートアップに向いています。自分の適性に不安のある方はPaceBoxの経験豊富なキャリアアドバイザーに一度相談してみることをおすすめします。
