未経験者が事務職に魅力を感じ転職したいと考えたとき、どのようなことを把握しておけばよいでしょうか。本記事では、事務職の種類とその業務内容から、転職する際に有利な資格やスキル、どのような人が向いているのかまで、広く解説します。
第二のステージとして事務職を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。


目次
未経験で転職するのは難しい? まずは事務職の業務内容をチェック
転職を考えるとき、自分の経歴に関連した仕事を選ぶ場合と、まったく初めてのことにチャレンジする場合の2通りがあります。すでにある程度のキャリアを積んでいるならば、それを土台にさらなるステップアップも目指せますが、未経験の場合、一からその仕事の知識を学んでいく必要があります。そのため、おのずと「未経験の職種への転職は難しい」といったイメージを持たれることが多いと思います。
厚生労働省では、ハローワークなどにおける求人、求職、就職の状況(新卒を除く)を取りまとめ、求人倍率などの指標を算出した「一般職業紹介状況」を月次で公表しています。
2023年3月に公表された「令和5年1月」のデータ(参考統計表)によると、有効求人倍率(求職者1人あたり何件の有効求人があるかを示した指標)のうち、職業計は1.29倍(全国計、常用・パートを含む)、そのうちいわゆる事務職は0.52倍(全国計、常用・パートを含む)となっています。つまり1人に対し、0.52件の求人しかなく、ほかと比較しても、事務職は人気の高い職種であることがうかがえます。まず前提として、未経験での事務職への転職は、少々難易度が高いことを念頭に置き、しっかりとした準備や対策をすることが肝心です。
また、ひとくくりに事務職と言っても、近年は仕事内容も細分化され、さまざまな種類の事務の仕事が募集されています。どのような事務職に応募するかによって、必要とされるスキルも異なるので、それらをあらかじめ知っておくことが転職成功のコツだと言えます。
ここからは事務職の主な7つの種類について、ひとつずつ解説します。
参照元:一般職業紹介状況(参考統計表)


1. 一般事務
一般事務は、おそらく多くの人がイメージするようなスタンダードな事務職です。近年はOA事務(パソコンなどを使用して主に資料制作などを行う事務職)と合わせて、「一般事務・OA事務」と称されることもあります。一般事務では、具体的に以下のような業務を担当します。
- 請求書などさまざまな帳票類の整理、管理
- パソコンを使った書類作成
- オフィスにかかってきた電話対応
- 発送や受け取りなどの荷物対応
- 顧客情報などのデータ入力
- 来客対応など
後に紹介する専門性のある事務職とは異なり、部署に関係なく幅広いバックオフィス業務を担うこともその特徴です。特別なスキルや資格を必要としていないケースも多く、未経験者でも採用されやすい事務職のひとつだとも言えます。営業事務は、社内にいる営業担当者の業務をサポートする仕事が基本です。営業担当者が第一線での営業活動を担う一方で、営業事務は、営業の仕事と深く関わりながら、営業担当者から指示を受けプレゼンテーション資料などの作成や、受発注業務、商品の払い出しなど在庫管理を行います。また部署にかかってきた電話の取り次ぎや来客対応をすることもあります。
2. 営業事務
社内でのデスクワークのみならず、企業によっては社外業務を担うことがあるのも営業事務の特徴です。資料を作成するためのパソコンスキルはもちろん、円滑にコミュニケーションを取るためのスキルや基本的なビジネスマナーの知識も求められます。
3. 人事事務・労務事務
人事事務や労務事務は、自社で雇用している従業員の採用や退職、異動にまつわる手続きや勤怠管理、給与計算などを行い、従業員が安心して働けるようにサポートする職務です。従業員が仕事中にケガをした場合は労災の手続きをしたり、面接に来た求職者の案内、面接の日程調整などをしたりすることもあります。
会社の重要なリソースが「ヒト・モノ・カネ」と言われるように、人材の確保は企業にとって非常に重要な課題です。特に人事事務では自社にマッチした人材を採用し、適切に配属していくための人事企画に関わることもあります。人事事務や労務事務も、自社のミッションをよく理解した上で、ミスのないように事務作業をこなしていくことが求められます。
4. 経理事務
経理事務は、日常的に発生する支払いや受け取りといった現金出納業務、伝票の仕分け処理、帳簿作成、従業員の経費精算などがメインとなる仕事です。銀行へ出向き、預け入れたり振り込んだりするなど、直接お金を取り扱う業務内容もあります。
日次のみならず、月次や年次といったある程度大きな金額を扱うこともあるため、とにかく慎重さと正確性が求められる職種と言っても過言ではありません。転職先として経理事務を希望する場合は、簿記の上位資格を取得したり、商法や法人税法などの法律知識を身に付けたりしておくと採用に有利になる傾向があります。
5. 貿易事務
貿易事務は、その名の通り、貿易会社をはじめ海外の取引が多い商社やメーカーなどにおいて、輸出や輸入など貿易に関するさまざまな手続きを担当する事務職です。
一般的に、海外との取引は、国内のそれと比べてはるかに大きなリスクがあるとされます。言葉や認識の行き違いから代金の支払いが滞ったり、長距離のための輸送遅延、事故が起こることも考えられます。
貿易事務には、そうしたトラブルやリスクを最小限に抑えるため、取り引きする商品について数量や価格など細かな条件や内容を書面にし、あらかじめ先方としっかり認識を合わせた上で手続きを処理する能力が求められます。もちろん、英語などの語学力のほか、貿易に関する専門知識が必要になることもしばしばです。
6. 総務事務
総務事務は、会社の運営に必要な物の準備や管理を中心に、従業員が快適に働けるように職場環境づくりをサポートする事務職です。業務範囲は多岐にわたり、企業規模などによっても異なるものの、一般的には以下のようなものが挙げられます。
- 社内で使用する備品管理
- イベント運営
- オフィス管理
- 防災・防犯対策
- 従業員やその家族、取引の冠婚葬祭対応など
中小規模の企業では、この総務事務が人事事務・労務事務と統合され、兼務しているケースもあります。
7. 法務事務
法務事務は、営業担当者などが取引先と交わす契約書について、法的に問題ないかどうかチェックし、管理することが主な仕事です。法律は、不定期で改正されることがありますので、その都度、知識や情報のアップデートも求められます。
法的トラブルが発生したとき、いち早く顧問弁護士などへ取り次ぎ、問題による損失を最小限に抑えるための対応を取ることも法務事務の重要な役割です。これらの業務は専門性が高く、幅広い法律や法務に関する知識が必要となる場合もあります。特に大学で法学部を卒業した人などは、得意分野を活かすことができる、やりがいのある事務職のひとつだと言えるでしょう。
また、特許事務とも呼ばれることのある知的財産や特許の管理などに関する仕事を、法務事務が兼ねることもあります。事務職の中でも専門性が高い職種のひとつだと言えます。


事務職への転職で取得しておきたい資格3選
事務職は、書類を作成・整理などを行う、いわゆるデスクワークだけではなく、ときに専門的なスキルが求められる場合もあります。また、転職という点では、ほかと比べて人気の高い職種であることから、そういった資格を取得していることが採用を左右する大きなポイントにもなるでしょう。ここからは、事務職へ転職するにあたり、まず取得しておきたい基本的な資格を3つ紹介します。
1. 日商簿記検定
「日商簿記検定」は、日本商工会議所と各地の商工会議所が主催し、毎年50万人以上が受験するともいわれる、国内最大級の簿記試験です。財務諸表を理解する力や企業の経営管理の基本的な知識が問われる資格で、事務職従事者の中でも、最も取得している人が多い資格のひとつです。目安となるのが2級。2級以上を取得しておくと、現場で実際に使える技能の持ち主として評価してもらえる可能性があります。特に経理・財務系の事務職で働きたいと考えるなら、この日商簿記の資格を取得しておくと有利になるでしょう。
2. MOS(Microsoft Office Specialist)
事務職は専門知識を求められることもあるものの、その土台として、パソコンスキルは不可能といっても過言ではありません。特にマイクロソフト社のOffice製品(WordやExcel、PowerPoint)は、取引先に関する資料作成やデータ整理に欠かせないソフトウェアのため、ビジネススキルの基本として習得しておくことをおすすめします。
さらに、そのスキルが客観的にどの程度のレベルかを、採用担当者に判断してもらえるように取得したいのがマイクロソフト社が主催している「MOS(Microsoft Office Specialist)」です。Office製品に関する知識やスキルを保有していることを具体的に証明できることから、事務職への転職時に役立つ資格と言えます。
3. 日商PC検定
「日商PC検定」は、日本商工会議所が主催しているパソコン検定の名称です。日常業務に欠かせないパソコンスキルのみならず、ITを活用するために必要な知識も問われる検定資格になります。
日商PC検定がほかのパソコン検定と異なる点として、国家資格と民間資格の間になる公的な資格であることが挙げられます。実施自体は民間団体や公益法人が行うものの、文部科学省や経済産業省などの官庁や大臣が認定することから、広く認められた信用性の高い資格であると言えるわけです。ハイレベルな事務能力を持っていることをアピールできるので、ワンランク上の事務職を目指すなら、ぜひチャレンジしてみてください。


事務職で必要になるスキルとは
事務職へ転職するために「日商簿記」や「MOS」、「日商PC検定」の3つ資格の取得をおすすめしましたが、実際に働く際には、どのような技能・スキルが求められるのでしょうか。次からは、一般的に事務職の仕事の現場で求められる3つのスキルを紹介します。
社内外と円滑にやり取りができるコミュニケーションスキル
事務職というと、自分のデスク上で書類整理しているようなイメージを持つ人は少なくありません。しかし、実際は部署内あるいは社内の部署間でのやり取りをすることが多く、また社外の取引先と調整したり資料送付、受領などをこなしたりすることもあります。そのため、そうしたやり取りを円滑に進められるコミュニケーションスキル、またそれぞれの場面に応じた臨機応変な対応力も、事務職に重要なスキルと言えます。
事務職の種類や企業の風土にもよりますが、そうした人とのコミュニケーションが苦手な人や、黙々と一人で作業をしたい人にとっては、苦痛に感じる場面があるかも知れないことは、念頭に置いておきましょう。
作業を迅速にかつ正確にこなすスキル
事務職では、請求書や契約書などをはじめとして、さまざまな種類の書類を扱います。テンプレートがある場合もありますが、ときに取引先や内容にあわせてオリジナルなものを作成することも求められます。さらに経理などではお金に関わる事項に、法務などでは法律に関わる事項に触れるので、ほんのわずかなミスが大きなトラブルに発展してしまうリスクもはらんでいます。
そのため、ミスがないように細かなところまで逐一チェックし、迅速に作業をこなしていくことも、事務職にとって大切なスキルです。
また、たいていの書類には締め切りが設けられているものです。それに間に合うように迅速に対応する能力も求められます。厳しく自分を律し、スケジュールを管理、調整するスキルも、事務職においては必須です。
パソコンや各種ソフトを使いこなせるスキル
昨今は、政府が主導しているDX(デジタル・トランス・フォーメーション)推進の影響もあり、アナログ的な紙帳票からデジタル帳票へと移行したり、システムそのものを改修したりしている企業も少なくありません。そのため、事務職もパソコンでソフトを操作する機会はこれからも増えていくと想像できます。つまり、パソコンを使えることが事務職の大前提と言えます。
ただ、ひとことでパソコンスキルと言っても、企業によって使用しているソフトが異なることも往々にしてあります。特に未経験で事務職への転職を考えている人は、どのようなソフトでもある程度抵抗なく使えるように、基本的な知識を身に付けておくことが大切です。


事務職に向いているのはどういう人?
未経験でも、これから事務職へ転職するためには、採用に有利となる資格を取ったり、スキルを身に付けたりすることは重要なことです。しかし、そもそも事務職に向いていなければ、素晴らしい資格・スキルを持っていたとしても活かせません。ここでは、どのような人が事務職に向いているのかを分かりやすく解説します。ぜひ自分自身を振り返りながらチェックしてみましょう。
臨機応変かつ柔軟に対応できる人
近年、データ入力など日々発生するルーティン作業は、ツールの導入などで自動化されている場合も多くあります。また、問題の対処方法まで、業務がマニュアル化されていることもしばしばです。
その一方で、突発的な業務が発生することもあり、その際は臨機応変に対応しなければなりません。たとえばアポイントなしでの来客や、急な仕事の依頼などは、十分考えられます。そうしたときに、その場その場に応じて最適な対応を柔軟に考え、スピーディーに対処することも求められます。もちろん、自分ひとりで勝手に判断せず、必要に応じて上司や先輩に相談するなど、適切な処理ができる人は、事務職に向いていると言えます。
地道な作業に苦手意識がない人
バックオフィス業務を一手に担う事務職は、カバーしなければならない業務が多岐にわたります。先に記したように社内外の関係者とコミュニケーションを取らなければいけない場面もありますし、入力作業といったデスクワークに集中しなければいけないときもあります。特に後者のような、一見地道と思われる作業に対しても、苦手意識を抱かないで対処することが大切です。
部署内外の人を陰で支えることはチームにとって、ひいては企業にとっても重要な役割となります。そこにやりがいと感じ、目立ちにくい作業もコツコツとこなしていける人は、事務職に向いていると考えられるでしょう。


基本的な知識やスキルがあれば未経験でも事務職への転職が目指せる!
事務職は、高度な知識が必要とされるものがある一方で、パソコン操作をはじめとした基本的なスキルなどがあれば未経験でもチャレンジできる職種もあります。「PaceBox(ペースボックス)」は、経験豊富なキャリアアドバイザーに相談しながら転職活動を進められるサービスです。事務職への転職の足がかりとして、この機にぜひ無料登録してみてください。
