就職活動では「新卒」という言葉をよく耳にします。新卒に似た言葉として「第二新卒」や「既卒」もあります。就職活動や転職活動をスムーズに行うためにも、それぞれの意味を正しく理解しておくことが大切です。この記事では、それぞれの言葉の定義や就職活動における特徴を紹介します。


目次
新卒とは? いつまでが新卒?
新卒は「新規卒業」や「新規卒業者」の略で、一般的に当該年度の3月以降に学校を卒業する、もしくは卒業見込みの学生のことを指します。
学校には四年制大学だけでなく、高校や専門学校、短大、大学院も含まれます。浪人や留年を経験した学生も、当該年度3月以降に卒業する見込みであれば新卒です。
つまり、新卒に年齢の決まりはなく、「新卒者」の採用枠においても、年齢上限を定めた法律はありません。
一方で厚生労働省は平成22年(2010年)、学校卒業者の厳しい就職環境を改善するために「青少年雇用機会確保指針」を改正しました。この改正では、新卒の採用枠に「学校等の卒業者が学校等の卒業後少なくとも3年間は応募できるものとすること」と定められました。
この改正より既卒3年以内であれば、新卒採用枠での応募を受け付ける企業が増えています。対応は各企業によって異なるため、募集要項を事前に確認することをオススメします。
第二新卒とは?新卒との主な違い
新卒に似た言葉に「第二新卒」「既卒」があります。特に転職サイトなどでは頻繁に見かける言葉です。
第二新卒とは一般的に、新卒で企業に入社後、3年以内で離職して転職先を探している人を指します。年齢や勤務年数などに明確な定義はなく、比較的あいまいに用いられます。
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、平成30年(2018年)3月に卒業した新卒のうち、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で36.9%、新規大卒就職者で31.2%です。
つまり、新卒で入社した社員のうちの3割強が3年以内に会社を辞めています。これらの離職者が再び就職活動をする場合、第二新卒と呼ばれます。
人材採用には大きく分けて「新卒採用」と「中途採用」とがあります。企業にとって新卒採用は、事業継続のための人員バランスの最適化や将来の幹部候補の育成などが目的であるのに対し、中途採用は事業拡大や人員補充を目的として行われることが多くなります。
そのため一般的に中途採用で求められるのは、社会人経験が3年以上あり、即戦力として期待できる人材です。第二新卒もどちらかといえば中途採用に分類されますが、社会人経験年数の少なさから即戦力よりも、将来的な可能性重視で採用されるケースが多く見られます。
転職市場において第二新卒は、ビジネスマナーが身についている点や、同業種であれば基礎的な知識やスキルを備えている点などから歓迎される傾向にあります。
参照元:新規学卒就職者の離職状況


既卒とは?
既卒とは、高校や専門学校、大学などを卒業したあとに、正規職員として一度も就職した経験がない人を指します。一般的に卒業後3年以内の人が既卒とされています。例えばフリーターなど非正規雇用で働いている人、資格取得を目指して勉強中の人、そのいずれでもない方が該当します。
既卒は、新卒や第二新卒のどちらにも該当しません。しかし先述したように、政府は卒業後3年以内の人材を新卒枠で採用するよう、企業に働きかけています。近年は、少子化により新卒採用での若い人材の確保が難しくなっていることから、企業側も既卒に目を向けています。例えば卒業後3年以内などを条件に、既卒であっても新卒枠や第二新卒枠での応募を受け付けている企業もあります。
正規雇用経験のない既卒でも、就職の機会は高まっています。
新卒採用枠での就活の特徴
新卒採用は多くの企業で行われており、求人の幅が広い点が特徴です。日本国内の企業では、新卒採用は4月入社がほとんどであり、採用活動を行う企業と就職活動を行う学生との双方にとって、スケジュールが立てやすいというメリットがあります。
一方で、同年代の新卒が集まるため、就職活動では自己PRが重要になります。髪形やスーツなどの身だしなみ、挨拶を含めた面接マナーは基本事項として厳しくチェックされます。数多くの応募者の中から選んでもらうためにも、自己分析や面接対策は入念に行う必要があります。
人気の企業では特に、自己分析に加えてどれだけ深く企業研究をできているかがポイントです。企業研究が不十分だと、説得力のある志望動機を語れなかったり、採用担当者の印象に残るエントリーシートを作成できなかったりしてしまいます。もちろん面接対策もしっかりと行います。想定外の質問にも臆せず答えられるようになるには、友人や家族、就活エージェントなどの第三者の意見をもらいながら練習を重ねると効果的です。
新卒枠で応募する際のメリットやデメリットについてはのちほど詳述します。
第二新卒枠での就活の特徴
人材採用には大別して新卒採用と中途採用とがある点には既にふれましたが、第二新卒や既卒は、中途採用枠への応募となるのが一般的です。しかし大手企業などでは、第二新卒枠の採用を別フローとして募集している場合があります。
第二新卒には明確な定義がありません。ただし、第二新卒は学校卒業後に企業に就職し、3年以内に転職活動を行う人を指します。つまり、年齢の目安は以下の通りです。
- 高校卒業者:21歳程度まで
- 四年制大学卒業者:25歳程度まで
- 大学院卒業者:27歳程度まで
もっとも年齢の基準は企業によって異なるため、事前に情報収集することをオススメします。
転職市場では、第二新卒は歓迎される傾向にあります。就業経験があるため、基本的なビジネスマナーは習得していると見なされ、結果的に採用コストの削減につながるからです。年齢的にもまだ若いことから、新しい職場や業務にも柔軟に対応できるだろうと期待されます。
中途採用では即戦力となる知識やスキルを求められるのに対し、第二新卒枠では将来的な可能性や成長性などのポテンシャルに注目されます。
第二新卒の場合、前職を3年以内の短期間で辞めているため、企業側から「またすぐに辞めてしまうのでは」と懸念されることがあります。企業の懸念を払拭するためには、自己分析と企業研究を丁寧に行い、転職を希望する理由や入社意欲の高さを伝えることが重要です。
第二新卒枠で応募する際のメリットやデメリットについては以下で詳述します。


新卒枠で応募するメリット・デメリット
新卒採用と中途採用とでは求められる人材像が異なりますが、卒業後3年以内の第二新卒・既卒が新卒として就職活動することには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
メリット: 大量採用枠の恩恵を受けられる
新卒枠で就職活動して採用されるメリットとして、大量採用枠の恩恵を受けられることが挙げられます。
新卒採用は4月入社を目安に一括での採用を行います。多くの企業で新卒採用を行っているため、業種や職種など、豊富な求人の中から仕事を探すことが可能です。
新卒枠は就労経験のない学生の採用が前提であり、企業としては現時点でのスキルよりも、将来的な可能性に期待する傾向があります。
充実した研修制度も魅力のひとつです。新入社員に対して研修期間を設ける企業は少なくありませんが、特に新卒採用枠での人材に対しては、育成や企業文化の継承という観点から、さまざまな研修が行われます。研修内容としては、ビジネスマナーやビジネス思考の習得に加え、基本的なPCスキルや、配属先で必要とされるスキルの学習などが挙げられます。
企業によっては新卒の研修に3ヵ月から半年程度の時間をかける場合もあります。新人研修で社会人としての基礎を学び、同年代の若者と切磋琢磨しながら経験を積める点は、新卒枠での応募・採用ならではの特徴です。
デメリット: 新卒者と比較されるため不利になるケースもある
第二新卒は、就労はしたものの短期間で離職した、あるいは離職を前提とした状態で、採用枠を新卒と競います。そのため、例えば能力面で新卒と同程度と評価された場合には、企業は一から育てられる新卒を採用する確率が高いといわれています。
そこで第二新卒は、短期間といえども就労した経験を活かし、自身のスキルや強みを伝える必要があります。例えば、実務経験を積まなければ取得できない資格や職場での実績は、積極的にアピールすることをオススメします。
前職の退職理由は、ほぼ間違いなく聞かれる質問です。「仕事内容がきつかった」「人間関係がうまくいかなかった」といったネガティブな回答は相手によい印象を与えません。新卒で就職活動をしたときとは違う視点で企業を選んでいること、前職での経験やそれを活かしたいという意欲などを前向きに伝えることが重要です。
既卒も同様で、学校を卒業してからの空白期間をどのように説明するかは、大きなポイントになります。自己PRや志望動機など、できるだけポジティブな印象を与えられる内容を準備しましょう。
IT企業や機械・製造業、コンサルティング・金融業界などでは、慢性的な人手不足から積極的に第二新卒を採用しています。例えばITエンジニアなどの同じ業種間の転職で、かつ技術やスキルを要する職種の場合は、新卒枠ではなく、第二新卒枠や中途採用枠の方が内定を勝ち取れる可能性があります。
第二新卒・既卒が新卒枠で応募する際には、業種や職種の調査に加え、企業の求める人材像をよく確認することが重要です。


第二新卒枠で応募するメリット・デメリット
第二新卒枠で就職活動を行う場合にもメリットとデメリットがあります。しっかりと両者を理解した上で転職活動の判断を行いましょう。
メリット1: 自身の適性を理解し、社会人としての基礎力が備わっていると見られる
第二新卒は、一度は正規雇用を経験しています。そのため新卒に比べて、自身の適性をある程度は理解していると見なされます。短期間での離職はマイナスに捉えられる側面もありますが、一方で失敗を経験したうえでの転職活動だからこそ、ミスマッチが起こりにくいと考えられます。
企業側では、基本的なビジネスマナーやビジネス思考が身についている点も評価します。特に若い人材を求めている企業では、第二新卒枠は、採用コストをかけずに若手を採用できる機会だと捉えています。
メリット2: 柔軟性やポテンシャルを期待される
第二新卒は前職の在職期間が短いこともあり、新しい企業の風土や業務にもなじみやすいとされ、柔軟性に期待が寄せられます。
年齢的な面でも将来的に成長できるというポテンシャルが重視されるため、業種や職種が未経験であっても、新卒と同じように門戸を開いている企業もあります。
就業経験が少ないことは企業も理解しているため、転職後、すぐに成果を求められることもありません。
企業の求める人物像と自身の適性がマッチしたときには、新卒と同じようにフレッシュな気持ちで仕事に取り組み、じっくりと成長できる点もメリットです。
メリット3: 選考期間が短い
企業の規模にもよりますが、新卒の採用活動は多くの人数を募集することもあり、スケジュールに則って行われます。
一般社団法人日本経済団体連合会では、学生が本分である学業に専念できるよう、採用選考活動開始時期について、「広報活動は卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、選考活動は卒業・修了年度の6月1日以降」と定めています。
大学3年次の夏休み期間に実施される就業体験(インターンシップ)も含めると、新卒の就職活動はおおよそ1年がかりで行われます。採用されても就業は4月からであり、すぐに働きはじめられるわけではありません。
現職の仕事の調整や面接のスケジュールによっても異なるものの、第二新卒の転職活動期間は一般的に1~3ヶ月程度とされています。
採用された場合、入社時期は内定が出てから話し合うことになりますが、現職の仕事の整理や引き継ぎなども踏まえ、入社日はおおよそ1~3ヶ月後に設定されます。とはいえ、新卒での就職活動に比べればスピーディーです。
参照元:経団連:採用選考に関する指針
デメリット: 自社に適応できるかどうか疑われる
第二新卒枠の募集は、新卒採用に比べると求人の数が減ります。そのため採用情報によく目を通し、自身の希望や条件に合う求人を探すことが大切です。
直接的に新卒と比較される機会はありませんが、第二新卒は新卒で就職した企業を早期退職している、もしくはする予定であるため、「同じような理由ですぐに辞めてしまうのでは」と思われやすい面があります。
就職活動に際しては企業研究をしっかりと行い、採用する企業側に納得してもらえる転職理由や志望動機を準備することが重要です。
新卒と第二新卒、それぞれの特徴を踏まえた就活を
就職活動においては、必ずしも新卒が有利というわけではなく、第二新卒などでの転職の方が採用につながる可能性が高いこともあります。
PaceBoxは、プロフィールを登録すると企業からオファーが届くオファー型転職サービスです。転職を検討している方は、ぜひPaceBoxを活用し、自分にぴったりな転職を実現しましょう。
