職場での電話対応や履歴書の作成時など、「退社」と「退職」の使い分け方が分からなくなった経験はありませんか?似た言葉ではあるものの、間違えて使用すると思わぬ誤解を生んでしまうことも。
そこで、今回は「退社」と「退職」の正しい使い方や、その他の類似用語について解説します。本記事を読めば、シチュエーションごとの使い分け方を理解でき、誤用を未然に防げます。ぜひ参考にしてみてください。


目次
退社と退職の違い
「退社」と「退職」は同じ意味で使われることもあれば、そうでない場合もあります。それぞれの言葉の意味と使い方や、誤解を招かないためのコツを解説していきます。正しく理解し、迷いなく使い分けられるようにしましょう。
退社の意味
退社には「仕事を辞める」、「その日の勤務を終えて職場を出る」という2つの意味があります。どちらも「会社から退く」という点では同じですが、その意味合いは大きく異なります。「退社した」と伝えるだけでは相手に誤解を与える可能性があるため、適した言葉を補うのが望ましいです。
仕事を辞める場面では「先月末付けで」、勤務終了して職場を出る場面では「本日は」などの言葉を補足するとよいでしょう。
退職の意味
退社とは異なり、退職は「仕事を辞める」という1つの意味しか持ちません。転職のために仕事を辞める場合のほか、定年を迎えて会社勤めを終えるときや、契約期間が終了するときにも使えます。
ただし、会社のほうから雇用契約を切られたときは「解雇」となります。「その日の仕事を終えて帰宅した」という意味で「退職」という言葉を使ってしまうと大きな誤解を与えることになるため、注意が必要です。
「退社・退職」の使い分け方と例文
ここでは、「退社・退職」の使い分け方を例文とともにご紹介します。「仕事を辞めたことを伝える場合」と「すでに帰宅したことを伝える場合」の2つのパターンで解説します。今後誤って使うことを防ぐためにも、ぜひ覚えておくとよいでしょう。
仕事を辞めたことを伝える場合
「退社」も使えますが、前述したように「勤務終了して職場を出る」という意味も含んでいます。相手が混乱する可能性があることを考慮すると、「退職」を使うほうが無難です。
例えば、取引先から電話で連絡があり、同僚が仕事を辞めたことを伝えなければいけないとき。伝え方の例は以下の通りです。
【例1】「◯◯は◯月◯日付けで退職いたしました。後任は◯◯になりますので、◯◯におつなぎします。少々お待ちください。」
【例2】「◯◯は先月末をもって退職しております。別の者におつなぎしますので、ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
特に電話は相手の顔が見えない分、より分かりやすい言葉で伝えたほうがよいです。「退社」を使うのは極力避け、併せて例文のように退職時期も補足するとよいでしょう。
また、取引先の方が困らないよう、後任や別の担当者にすぐに取り次げるようにしておくとスムーズです。ただビジネスマナーとしては通常、会社を辞める際は取引先に挨拶をしに行きます。
取引先での情報共有に漏れがあることも考えられますが、同僚の退職が取引先に伝わっていない場合は、こちら側の不備と捉えるようにしましょう。取引先と円滑な関係を持続させるためにも、臨機応変に対応する姿勢を見せることが大切です。
すでに帰宅したことを伝える場合
ここでも、取引先からの連絡を想定して、同僚がすでにその日の仕事を終えて会社を出た場合の伝え方の例を紹介します。帰宅の旨を伝えるときは、「退職」ではなく「退社」を必ず使いましょう。
電話口で誤って「退職」と口にしてしまうと、思わぬ誤解を生む恐れがあるので気をつけてください。
【例1】「◯◯は本日すでに退社しております。明日も出社予定ですので、折り返しご連絡するよう申し伝えます。」
【例2】「◯◯は時短勤務のため16時に退社いたしました。よろしければ、代わりにご用件をお伺いします。」
「定時で」や「〜時で」と時間の表現を添えるとより分かりやすくて効果的です。また、次に出社するタイミングが分かっているようであれば、それも併せて伝えるようにするとより親切でしょう。あらかじめ用件も聞いておくと、取引先から連絡があった旨の詳細を後で同僚に伝えられます。


履歴書における「退社・退職」の書き方
転職活動の際、企業に提出する履歴書においても「退社・退職」の使い分けには注意が必要です。ここでは、退職理由の書き方などの細かい部分も詳しく解説していきます。履歴書を作成するうえでの参考にしてみてください
「退職」を使うのが無難
履歴書に前職の情報を書く際は、会社勤めであればどちらを使用しても問題はありません。ですが、「退職」を使うほうが一般的であり無難でしょう。「退社」という書き方は履歴書ではあまり用いられません。
また、公務員や教師などであれば、勤め先は会「社」でないため、退社ではなく退職を必ず使いましょう。ほかにも勤め先の形態によって、「退行(銀行の場合)」「退庫(信用金庫の場合)」「退所(研究所の場合)」「退庁(官公庁の場合)」などの言葉で退職を表すことができます。
思わぬミスを防ぐためにも、基本的には「退職」を使うことをおすすめします。どんな勤め先でも使える言葉です。
退職理由の記載方法
履歴書には、基本的に退職理由を記載します。といっても具体的な内容まで書く必要はなく、書き方としては以下の2通りがあります。
・「一身上の都合により退職」=自身のキャリアアップなど、自己都合により退職したとき
・「会社都合により退職」=倒産や経営状況の悪化による解雇など、会社都合により退職したとき
ただし、やむを得ない事情があった場合はそれが分かるように記載することでポジティブな印象を与えられます。「出産・育児のため退職」、「配偶者の転勤に伴い退職」、「配偶者の海外転勤に伴い退職」など、これらはすべて上記の「一身上の都合」に当たりますが、ここは一言理由を記しておくとよいでしょう。
特に転職を何度か繰り返していた場合、採用担当者によってはあまり心象が良くないことがあります。そのため、一目見て納得する理由を書いておくのも転職活動を上手く乗り切るポイントと言えます。そのほか、パートや派遣の契約終了に伴う退職だった場合は、「契約期間満了につき退職」と記載しましょう。
退職予定の記載方法
現在の会社を退職する予定がある場合も、履歴書にしっかり記載しておくようにしましょう。退職日が決まっていれば「現在に至る(◯年◯月◯日退職予定)」、日程が決まっていなければ「現在に至る」のみの記載で問題ありません。「現在に至る」は引き続きその会社に勤務中であることを示す言葉です。
無職ではなく、現在も働いているということのアピールにも繋がります。また、退職予定日を明確に記載することで、採用担当者にいつから勤務可能なのかを伝えられます。仮に内定を出す方向で話が進んでいる場合、先方の会社にとっても採用に関する社内調整がよりしつけやすくなるといった利点があるでしょう。


その他の「退社・退職」に似ている言葉
「退社・退職」にはほかにも似ている言葉があり、つい混同してしまいがちです。今回は、「退勤」「離職」「辞職」「帰社」という4つの言葉について、使い分け方をそれぞれ解説していきます。似たような言葉ではありますが、意味するところを正しく理解しておくようにしましょう。
退勤
退勤は、勤務時間終了によりその日の業務を終えることを表す言葉です。退社の「勤務を終えて会社を出る」と近いですが、会社を出るとは限らない点が異なります。例えば在宅やカフェで仕事をしていた場合、勤務が終了すれば「退勤」となりますが「退社」ではありません。
また、勤務時間終了前に会社を出る場合には退勤という言葉は使わないので注意しましょう。ちなみに、退勤の対義語は出勤です。この相対する2つの言葉は、勤怠に関わる用語として使われることが多く見られます。
離職
離職は「仕事を辞める」ことを表すため、退職と似た意味になります。会社を辞めたあと失業手当を受けるために必要な「離職票」など、雇用関連の手続き面で登場することが多いです。
また、「離職中に資格取得のための勉強をしていました」「親族の介護のため離職中です」といった形で、仕事をしていない状態を表す際にも使えます。「退職中」とは言わないため、ここは相違点の1つと言えます。
さらに、離職には「職務を離れる」という別の意味も含まれています。「以前のプロジェクトから離職し、今回の新規プロジェクトに参加しました」など、何かの業務から外れて別の新しい業務を始める際にも「離職」という言葉は使えます。この場合は会社を辞めたわけではないので、シチュエーションによる使い分けを注意しておきましょう。
辞職
辞職も「自らの意思で職を辞める」ことを表しますが、一般的な会社員がこの言葉を使う場面はあまりありません。「内閣総辞職」「役員が責任をとって辞職」といったように、一定以上の役職に就いている人物がその職務を降りる際に使われる言葉です。
「辞職願(辞表)」といった使われ方もよく見られます。また、この場合一般の社員は「退職願(退職届)」となるので誤用しないように気をつけましょう。


「退社・退職」に関するその他のQ&A
ここからは、「退社・退職」に関するその他のよくある疑問について回答していきます。実際に仕事を辞める際の挨拶の場面や、アルバイト歴を履歴書に記載する場合など、意外と適切な使い方が分からないケースも多いでしょう。
その時になって悩まないためにも、ここで解説する回答を参考にし、好印象を与えられるような言葉選びができるようにしておきましょう。
仕事を辞める場合の挨拶は退社?退職?
スピーチの場合もメールの場合も、退社ではなく「退職」を使うのが一般的です。前述したように、退社には別の意味も含まれているため、会社を辞める際の挨拶として用いるのはおすすめできません。
辞めることを確実に伝えるためにも、退職を使いましょう。今回は、社外向け・社内向け両方のメールでの挨拶例を紹介します。
【社外向けの例】
件名:退職のご挨拶(□□株式会社 ◯◯◯◯)
株式会社□□ △△部 ◯◯◯◯様
大変お世話になっております。□□株式会社の◯◯◯◯です。
日頃より一方ならぬお引き立てを賜り、心より御礼申し上げます。
この度、私事で大変恐縮ですが、×月×日付けにて□□社を退職することとなりました。最終出社日は×月×日の予定でございます。
在職中、◯◯◯◯様には何かとお力添えいただきましたこと、改めて感謝申し上げます。誠にありがとうございました。◯年間という短い間ではありましたが、大変お世話になりました。
引き継ぎは、同じ部署である◯◯◯◯へ行っております。退職までにしっかりと業務を引き継ぎますので、どうぞご安心いただけますよう何卒よろしくお願いいたします。後任者については下記の通りになります。何かございましたら、ご連絡いただけますと幸いです。
後任者名:◯◯◯◯ 連絡先:◯◯◯-◯◯◯◯-◯◯◯◯
後日改めて◯◯◯◯がご挨拶に伺いますので、変わらぬご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
本来であれば、直接ご挨拶を申し上げるべきところ、メールでのご挨拶となりましたこと、お詫び申し上げます。
末筆ながら、皆様のさらなるご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。
【社内向けの例】
件名:退職のご挨拶
お疲れ様です。△△部の◯◯◯◯です。
私事で恐縮ですが、この度一身上の都合により本日付で退職する運びとなりました。
本来であれば直接ご挨拶するべきところ、メールでのご連絡にて失礼いたします。
入社して×年、皆様には大変お世話になりました。改めて感謝申し上げます。
至らぬ点も多々あったかと思いますが、日頃の業務を通じて皆様から多くのことを学ばせていただきました。
今後も、ここ□□社で培った経験を活かし、引き続き精進していきたいと思います。
なお、退職後の連絡先は下記となります。何かございましたら、こちらの連絡先までご一報いただけますと幸いです。
メールアドレス:◯◯◯@〜 携帯:◯◯◯-◯◯◯◯-◯◯◯◯
最後になりましたが、皆様の更なるご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
今まで、本当にありがとうございました。
お身体にはどうぞお気をつけください。
またメールを送るタイミングは、社外向けの場合は2〜3週間前、社内向けの場合は最終出社日の夕方頃に送るのが望ましいでしょう。社内向けメールは会社によってタイミングがさまざまなこともあるため、過去受け取った挨拶メールの送信日時を参考にするのもおすすめです。
履歴書のアルバイト歴は退社?退職?
アルバイトの場合も、履歴書への記載は「退職」で問題ありません。そのほか「勤務終了」なども使えます。
また、一般的な会社員とは異なり、退職理由は添えなくてよいとされています。シンプルに「退職」や「勤務終了」のみで締めくくって構いません。
「退社・退職」の使い分けを知り適切に使用しよう
複数の意味が含まれていたり他にも似たような言葉があったりと、混同しやすい「退社・退職」。本記事の内容を参考にして、日頃から誤用を防ぐようにしましょう。
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