仕事を辞めたいという考えが頭をよぎるのは、働いている人なら誰にでもあることではないでしょうか。しかし、勢いだけで本当に仕事を辞めてしまうと後悔することにもつながりかねません。この記事では仕事を辞めたくなる代表的な理由について触れ、その上で仕事を安易に辞めないための対策や、会社を辞めるときに意識したいポイントについて解説していきます。


目次
給料や人間関係が多い!仕事をやめたくなる代表的な理由
仕事をやめたいと思う理由は人それぞれですが、給料や人間関係、仕事内容、社風などが原因になることが多いようです。この段落では仕事を辞めたくなる代表的な理由について解説していきます。
給料が低い
給料は仕事のモチベーションに大きく関わります。自分の働きと給料の額が見合っていないと感じたときや勤続年数が長いのに給与額が上がっていなければ正当に評価をされていないような気持ちになるでしょう。仕事内容が良く、人間関係に問題がなくても、仕事のモチベーションが下がることもあります。給与額が上がらないというのはそのぐらいシビアで、給与額が低いことを理由に仕事を辞める決断をする人は少なくないのです。
人間関係が悪い
人間関係の悪さを理由に退職する人は後を絶ちません。どのような職場でも人間関係の良し悪しはあるものの、人それぞれ許容できる限度はあります。例えば、上司があまりにも厳しすぎる職場やパワハラやセクハラなどのハラスメント行為が横行している職場、ミスを押しつける同僚がいる職場だと辞めたいと考える機会が増えるでしょう。特に、ハラスメント行為については人によって許容できる限度が異なるため、問題が解決しづらい場合もあります。世代によってハラスメントのとらえ方が異なるのも、問題解決が遠のく理由といえるでしょう。
人間関係が劣悪な職場では精神的な負担が重くなり、人によっては心身の調子を崩すこともあります。どんなに仕事が好きだとしても、こじれた人間関係の中でまっとうに働き続けるのは困難なことなのです。


体力的にきつい
体力的にハードな職場で働き続けるのは大変なことです。平日は終電まで仕事をして休日出勤もあるとなると、体力的な限界を感じるようになるため、仕事を辞めたいと考えてしまうのも無理はありません。仕事の時間が長くなり、プライベートの時間を大幅に削られてしまうと、ストレスを発散する機会も奪われてしまいます。もちろん中には、働きすぎた結果体調を崩してしまう人もいるでしょう。働き方改革関連法が成立し、働き方改革が進められたことで残業時間の見直しが行われつつありますが、中小企業の中には法律を守れていない企業も少なくないのが現状です。特に、従業員数が少ない企業では、1人にかかる業務負担が大きくなりがちで、仕事を辞めたいと考えてしまう人も中にはいるでしょう。
社風が合わない
社風が合わないのも働く上で大きなストレスとなる場合があります。例えば、利益優先で顧客を大事にしない職場や、残業をすればするほど仕事の評価が高くなるなど、偏った社風の職場で働き続けるのはストレスの原因となります。逆に、アットホームで飲み会や社員旅行など社員同士の交流を大事にする職場であっても、コミュニケーションは必要最小限でよいと考える人にとっては苦痛となるでしょう。社風は個人の力で変えられるものではなく、同僚などに相談をしても理解を得られないケースもあります。我慢できない状況が続くと会社を辞めるという結論になりがちです。
仕事がつまらない
仕事がつまらないことを理由に、仕事を辞めたいと考える人も多いです。仕事がつまらなくなる原因としては、単純作業が多いことや、業務内容が自分の好みに合わないこと、業務の範囲が狭いことなどがあります。もちろん、仕事を適切に教えてもらえず、いつになっても仕事のやり方が身につかないケースでも仕事をつまらなく感じるでしょう。また、人間関係が淡泊すぎて、仕事がつまらなくなるケースもあります。一度仕事がつまらないと考え出すと、自分の貴重な時間をむだにしているような感覚に陥りやすくなります。仕事はあくまでもお金を稼ぐ手段だと割り切れる人なら我慢ができるかもしれませんが、ほかにやりたい仕事や夢がはっきりとある場合は会社を辞めるという決断になりがちです。


一旦冷静になろう!仕事をやめたいと思ったときの対策
仕事を辞めたくなる理由やシチュエーションはさまざまですが、すぐに仕事を辞める決断をするのは避けたほうがよいでしょう。この段落では、仕事を辞めたいと思ったときにできる対策を紹介します。
信頼できる人に相談
仕事を辞めたくなったら、まずは家族や友人など信頼できる人に相談しましょう。1人で悩んでしまうと、視野が狭くなります。それに、気分が落ち込んでいるときは、ネガティブな思考にとらわれがちになるでしょう。仕事とは関係ない第三者に相談することで、自分では気づけなかった視点からのアドバイスをもらえるかもしれません。その結果、退職を思いとどまるケースもあるでしょう。信頼できる上司や先輩に相談するのもよいアイデアです。自分の力だけではどうにもならない問題でも、上司に相談することで職場環境を改善してくれることもあります。先輩などにたまっていた不満を聞いてもらうだけでも、心がスッキリとしてやる気が戻ってくる場合もあるでしょう。
なお、「仕事がつらいので辞めたい」というだけでは周りの人もアドバイスが難しくなります。また、「仕事を辞めたい」と言ってしまうと、「退職したい」という情報が一人歩きし、退職の覚悟を決める前に退職のうわさが立ってしまうリスクもあります。他の人に相談をしてアドバイスを求める場合には、できるだけ細かく具体的に、自分が何に悩んでいるのかを伝えるようにしましょう。そうすれば、悩みを聞いた人もアドバイスがしやすくなります。
冷静に状況を分析
冷静に状況を分析することでも、仕事を辞めるべきかどうかの判断がつきやすくなります。仕事を本当に辞めてしまう前に、冷静にそれでよいのかを考えてみましょう。例えば、会社を辞めた後のリスクを想像することは大切です。次の仕事はすぐに見つかるのか、転職活動が長引いた際に生活できるだけの貯金があるのかどうかなどは考えておく必要があります。また、今の仕事に対する不満をノートに書き出して、問題を可視化してみてもよいでしょう。ノートに書き出すことで、自分が何に嫌になっているのかを整理できますし、自分で解決できる問題とそうでない問題を分けることもできます。そうすると、仕事を本当に辞めるべきかどうかの判断もしやすくなります。
分析の結果、自分の頑張り次第で問題を解決できるようであれば、まずは努力してみるという姿勢も大切です。ただし、無理に努力をするとどこかでまた「仕事を辞めたい」と考える日が来るかもしれません。本当につらい場合には「1年努力してがんばって、それでも結果が出せなければ次の仕事を考える」というように、頑張る期限を設けておくのも一つの方法です。
気分転換してストレス発散
気分転換をしてストレスを発散することで、仕事のやる気が復活するケースもあります。常に仕事のことばかり考えてしまい、そのプレッシャーから仕事を辞めたくなるというのはよくあることです。そのようなときには仕事から離れて、自分の趣味に没頭したり、スポーツを楽しんだりするなどの気分転換が大切になってきます。仕事熱心で真面目な人ほど難しいかもしれませんが、仕事がつらいと感じたら仕事を完全に忘れる時間を作るよう意識してみましょう。
仕事を辞めたいと考えるほどの状況であれば、思い切って有給休暇をとるのも有効です。まとまった休みを使って気分転換し、心身がリフレッシュできれば、働く気力がわいてくるかもしれません。それに、休みをとって仕事から離れて心にゆとりができると、自分自身を客観視できるようになるので正確な判断もしやすくなります。逆に、どんなにリフレッシュをしたとしても、仕事に戻る直前になると具合が悪くなってしまうという場合には、退職や転職を視野に入れるとよいでしょう。


できるだけ円満に!会社をやめるときに意識したいポイント
会社を辞めるという決断には相当な覚悟が必要です。慰留される場合もありますが、逆に「やはり退職を取り消したい」と考えても取り消せない場合があります。慰留されて退職しなかったとしても、仕事がしづらくなることもあるかもしれません。特に、退職の覚悟を決める前に同僚などに「退職する」という話をしてしまうと、うわさが広がってしまい勤務先にいづらくなることもあるでしょう。退職の意思を伝えると、少なからず周りのあなたに対する対応は変わります。それだけに、退職の意思は慎重に伝える必要があるのです。
仕事を辞めたくなる原因としてお金の問題があることは述べましたが、お金の心配があるために退職の意思を固められない人もいます。自己都合退職では、退職後すぐに失業手当を給付できないケースがほとんどです。また、失業手当でもらえる額だけでは生活がしづらくなるかもしれません。退職の意思を固める前に、数カ月分の生活費の蓄えを用意しておきましょう。転職活動を先に行い、次の仕事を決めておくと、退職した後の生活面での心配も減らすことができるので、退職の覚悟が揺らがないものとなります。それに転職先が決まっていれば、会社も無理に慰留をすることがなくなるでしょう。
なお、転職先が決まらないうちに退職の意思を伝える場合は、繁忙期を避けるのが無難です。繁忙期だと慰留され、その後、退職の話がうやむやになってしまうケースもあります。それに繁忙期に退職の意思を伝えることで、周囲もあなたのことを常識がないと考えるかもしれません。会社を辞めるという覚悟を決めた場合でも、即日辞めるのは一般的ではありません。退職届を郵送して、突然出社しなくなるというのも好ましくありません。転職先が今の勤務先と何らかの取引がある場合もあるなど、おかしな辞め方をすると、転職先で仕事がしづらくなるかもしれません。
法律上では、退職の意思は退社予定日の14日前に伝えればよいことになっていますが、円満退社をするのであれば、退職希望日の1~2カ月前には上司に伝え、その後で退職届を提出します。企業によっては、就業規則で手続きの方法を定めている場合もあります。就業規則があれば前もって確認し、決められた手続きにのっとって退職の意思を伝えましょう。なお、同僚や同じチームの人へ退職の報告をするタイミングについては、上司に尋ねます。
また、会社に不満があったとしても、退職理由は前向きな内容を伝えるよう心がけましょう。例えば、「家庭の都合」や「新たな目標ができた」というように、退職の理由が自らにあるように伝えます。退職の理由を伝えるときに会社に対する不満を上司や同僚にぶつけても相手に不快感を与えるだけですし、余計なトラブルに発展しかねません。なお、会社や上司に対する不満をSNSに書くのも絶対にやめましょう。名誉毀損(きそん)や業務妨害で、会社から訴えられるおそれもあります。会社に対する不満は心の中にとどめ、仕事を辞めたら忘れてしまうのが一番です。
退職の意思を伝えたら、後任者にきちんと引き継ぎをします。後任者が決まらない場合は、ノートやパソコンのメモなどに仕事の内容を記載して、残った人が確実に仕事をできるようにします。また、会社から貸与されていた制服や備品、マニュアルなどは返却します。勤務先から文房具を支給されている場合に持ち帰ってはいけません。どんなに小さな備品でも返却しましょう。破棄しなければならない書類やノートは、シュレッダーで破砕します。顧客データなどは後任者に引き継ぎ、社外に持ち出さないようにします。これまでに転職先で使えるからといって、勤務先の顧客データを勝手に持ち出した人が逮捕される事例もありました。会社から貸与されていた物品はもちろん、仕事の過程で知り得た情報や顧客データを持ち出すのもNGであることをきちんと心得ておきましょう。
入館証や社員証、健康保険証は最終日に上司か担当者に渡します。そして最終日にはお世話になった人へのあいさつをしましょう。直接会えない取引先の担当者には、あらかじめメールなどであいさつをし、後任者が誰かを伝えます。そして、雇用保険被保険者証、健康保険被保険者資格喪失確認通知書、退職証明書などを受け取ります。なお、源泉徴収票や離職票は退職後、郵送で送られてくるのが一般的です。退職をしたら勤務先と関係がなくなるわけではないことにも注意しましょう。
退職の意思を伝えると、企業の担当者は新しく人を雇わなければなりませんし、後任者への教育をしなければなりません。職場の環境や体制を大きく変えなければならないこともあります。また、経理の担当者は離職票の発行や源泉徴収票の発行、退職金の計算などを行います。仕事を辞めるということは、ほかの人の仕事を増やすことにもなるのです。自分だけでなく会社に残る人のことをきちんと考えることが、円満退社へのカギを握っているといえるでしょう。
会社を辞めるのは甘えではない!状況次第では辞めるのも有り
仕事を辞めたいと考えてしまうこと自体は決して悪いことではありません。実際、職場環境によっては、今すぐ仕事を辞めたほうがよいという場合もあるでしょう。ただし、仕事を衝動的に辞めてしまうのはリスクがあります。仕事を辞めると決断する前には状況を自分なりに分析し、信頼できる人から客観的なアドバイスを受けるようにしましょう。その上で、冷静かつ慎重に仕事を辞めるかどうかを判断することが大切なのです。
